もちろん抵抗するで、拳で   作:暇けんぴ

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幕間2

 

 

 ビターガヴと酢賀との戦いを終えてからしばらくした日。

 この日、ショウマは絆斗とラキアを連れてデンテの住処に来ていた。その目的は、拳二から色々話を聞くため。

 

 その件の拳二はデンテからおつかいを頼まれて外出していたが、直ぐに戻ってきた。そしてショウマから話を聞き、拳二は自身の過去、そしてこれまでの行動の真意を話す。

 

「んで、まず俺の過去...ってことだけどなんにもないぞ?」

 

「いや、何もなかったらあんな馬鹿力あるわけないでしょ!?」

 

「アンタ、ショウマと同じ様なモンか?」

 

 ラキアの問いにショウマと絆斗はまさかと拳二を見る。

 

「うーん...実際どうなんだろうな、じいさん?」

 

「ハンティーの方が近いんじゃないか?」

 

「え、俺?」

 

「うん。だって俺、グラニュートのハーフと人間の子供だからな」

 

「「え? えええええ!?」」

 

「マジか...」

 

 拳二の告白に三者三様で驚く三人。

 そんな中、拳二の言う『グラニュートのハーフ』とは一体どんな存在を指すのか? それが気になった絆斗が問いかける。

 

「俺の親父がショウマと同じグラニュートと人間のハーフでな。とは言っても、親父の場合はショウマと違って『()()』だけどな」

 

「人工? それってどういう意味?」

 

 そして拳二は、グロッタにも教えたゾンブ・ストマックの極秘プロジェクトの内容を話す。それを聞いたショウマはあまりの内容に顔を青ざめ、絆斗は怒りに拳を振るわせる。ラキアも思うところがあるのか、目を鋭くさせていた。

 

 だがそこに更にグロッタも知らない事実が告げられる。

 

「その実験に使われたグラニュートの器官は、ストマック家の当主たちの妻から採取したらしいぞ」

 

「は? それって自分の妻を実験に使ったってことか!?」

 

「ああ、じいさんの兄貴の奥さんはもう先が長くなかったから安楽死させてから使って、二代目の妻は身体が弱かったみたいだから治療って名目で摘出してたみたいだぞ」

 

「...悪魔の一族だな」

 

「胸糞悪いな...」

 

「そこに自分と息子の遺伝子も組み込んでってやってたから、闇鍋だな」

 

「そんな軽いもんじゃねえだろ...」

 

「あれ? じゃあ俺と拳二さんって親戚?」

 

「そうじゃな。お前さんから見たら従兄になるな」

 

 絆斗とラキアはゾンブの狂気に震える中、ショウマと拳二はのほほんとしている。出自に親近感が湧いたのかゾンブのことは気にしていなかった。

 

「親父さんは今どうしてんすか?」

 

「今も立派にサラリーマンしてるぞ。おふくろと夫婦仲睦まじく暮らしてるみたいだし」

 

「人間界に馴染めてるようで安心したぞ」

 

「え? デンテ叔父さんは知ってるの?」

 

「ああ、なんせワシが兄貴たちから隠れて人間界に連れてきたからな」

 

「ええええええ!?」

 

「はあああああ!?」

 

「...だる、情報量多すぎだろ」

 

 次から次へと出される事実に三人の脳の許容量が限界を迎えそうになる。

 

 デンテがゾンブの計画に気づき、実験場に向かった際、一人だけカプセルの中からこちらを見つめる視線を感じたとか。その視線の主が幼き日の拳二の父親だった。

 他の実験体は強制的に休眠状態にすることでコントロール下に置いていたが、何故か彼だけ目覚めることができた。そして丁度そのタイミングでデンテが訪れたようだ。

 

 幼いながら生への渇望をその目に宿していた彼を見たデンテは、ゾンブたち関係者に知られぬように実験を凍結へと持ち運び、安全なルートが確保されてから彼を解放。人間界の拠点にて人間界について知りながら育てていった。そして一人で生きていけるほど成長したと判断したデンテは、彼を残してグラニュート界へと帰ったのだ。結局その後にまた人間界に住むことになるとはデンテ自身考えていなかったそうな。

 

 そんな話をデンテから聞いたショウマたちは、デンテの意外な胆力に驚きつつも感心していた。

 

 そうしてしばらくは両親の馴れ初めや幼い頃の拳二の様子などを話していた彼らだったが、ある程度話が盛り上がったところでラキアが拳二にあることを聞く。

 

「そういえば...アンタとグロッタ。どういう関係だ?」

 

「確かに。前にグロッタと戦った時もお互い知ってるようだったけど」

 

「あの時は馬鹿力同士がやり合ってるって思考放棄してたけど...確かにそうだな」

 

「おいコラ、ハンティー。後で犬〇家にするぞ」

 

「っ!?」

 

「んで、俺とグロッタの関係だっけか? んー...なんだろな...喧嘩相手? 遊び仲間? なんて言えばいいんだろな、じいさん?」

 

「遊び仲間じゃろうな。よく二人で山を荒らしおって...この歳であの惨状を修復するのは大変なんじゃぞ!」

 

「いや、あれは仕方なくというかなんというか...まあ、うん!」

 

「「えぇ...」」

 

 遊びであちこちにクレーターを作るとは一体...? と思ってしまいそうになるが、ラキアは正気を取り戻して追及する。

 

「俺が酢賀の研究所に行ったとき...あの時グロッタと一緒に現れたが、一体どういうつもりだったんだ?」

 

「マジか...俺たちが酢賀と戦ってた時にそんなことあったのか?」

 

「...あの酢賀って奴が作ったビターガヴ。あれには俺がさっき話した実験の技術が使われてると考えてな。それでアレを知ってるグロッタに、ストマック社の中に実験室に辿り着いた奴がいるか探ってもらってたんだ」

 

「...確か酢賀はニエルブって野郎に協力してもらったって言ってたな」

 

「うん...ニエルブなら俺のガヴを再現することだってできると思う」

 

「俺のヴラムスタギアを作ったのもニエルブだしな」

 

「実際、ニエルブが関わっていた。まあ、もうあそこはグロッタが破壊したから二度と再現できないとは思うけどな」

 

「え、どうして? ストマック社にとってその実験って有用なんじゃ?」

 

「...色々あるみたいだぞ」

 

 ショウマの疑問を濁す拳二に、絆斗とラキアが訝し気な視線を送るが、拳二はそれに気づいていながら無視して話を切り上げる。結局うやむやとなってしまった拳二とグロッタの関係。それを探ろうと、絆斗とラキアはそれぞれ行動することを決めたのだった。

 

 その後、拳二が宣言通り絆斗を犬神家状態にしたり、ついでにと戦闘特訓を三人に施したりと賑やかな一日となった。

 

 三人が帰った後、二人きりとなった住処に来訪者がやってきた。

 

「最近しょっちゅう来るけどいいのか? ラキアンが寝返ったり、アルバイトが倒されたりで色々大変なんじゃないのか?」

 

「どの口が言ってるのよ。兄さんとニエルブが頑張ってるみたいよ」

 

「お前も頑張れよ...」

 

「あら?じゃあどんどん人間を攫っていいのかしら?」

 

「...それは勘弁してください」

 

「お前さんら...まったく...」

 

 拳二とグロッタのやり取りを聞いていたデンテは呆れてしまう。

 

 実験場を破壊したあの日から、グロッタが住処に来て一緒に過ごすことが多くなった。心境の変化があったのか知らないものの、まあいっかと拳二は特に気にすることなくいつも通り過ごしていた。なお、デンテは彼女の変化に薄っすらと気づき、家族として嬉しく思っていた。

 

 この日もまた例に漏れずやってきたグロッタは、拳二たちと一緒に人間界のお菓子を食べながら和気あいあいと話していた。最近は人間界の食べ物にも興味が持ち、たまに二人で出かけたりしている。そんな彼女に、デンテはかつての家族の時間が戻ってきつつあると感じていた。願わくば、他の兄弟たちとも一緒に、と思ってもいた。

 

 大叔父が感傷に浸っている中、グロッタは拳二と出会ってから気になっていたことを聞く。

 

「アンタ、子供の頃からそんな馬鹿力だったの?」

 

「いんや、ガキの頃はまだそんなにだったぞ? せいぜい冷蔵庫持ち上げれるぐらいだったけど」

 

「...それも大概よ」

 

「本格的に力が増してきたのは中学からだったな。慣れない力に苦労してる俺を気味悪がって、周りの奴らが弄ってきたこともあったな」

 

「ふーん...そいつらはどうしたの?」

 

「もちろん頭にたんこぶの三色団子を作ってやったが?」

 

「やるわね! 私も可愛くなるようにお団子頭にしてあげたのよ」

 

「やっぱ団子だよな!」

 

「そうよね!」

 

 変な共通点に喜ぶ二人はがっしりと手を組み合わせ、そのままの流れで腕相撲を始める。何故か二人は話が盛り上がると今の様に腕相撲を始め、三回に一回の頻度で机を壊している。また始まったかとデンテは頭を抱えつつも、机の上に出してあるお菓子を急いで避難させる。

 

 そして勝負は拳二の勝利で終了した。もちろん、机もちゃんと壊れた。

 

「何回同じことを繰り返せば気が済むんかのう...」

 

「「ゴメンナサーイ」」

 

「コラ、そこ! 二人とも棒読みなのはバレてるぞ!」

 

「だってあんなんで壊れる机が悪い」

 

「そうよ。うちのテーブルなら早々壊れないわよ」

 

「人間界の物とグラニュート界の物を一緒にするんでない!」

 

 反省の色が全く見えない二人にデンテを叱りながら机の破片を片付けていく。それを正座でボーっと眺めている二人は、話の続きに入る。

 

「高校に入ってからもハブられてなんか嫌になってな...高校を中退して、それからずっとバイトを転々として今に至るって感じだな」

 

「ふーん...アンタがそんなに追い詰められるなんてね」

 

「あの頃は俺にグラニュートの血が流れてるって知った頃だったからな。自分が純粋な人間じゃないことを受け入れれなくて精神が不安定になってたからな。今はどうとも思わないけどな」

 

「...アンタからしたらグラニュートの血は汚れたものなの?」

 

「いや? グラニュートだろうと人間だろうと同じ()()だろ。種族の違いはあるけど今を生きているヒトに違いはないからな。どっちかっていうと周りと違うってことが嫌だったな。疎外感とか生まれてくるべきじゃなかったとかそういうことばっか考えるようになってたからな」

 

「そう...そんなに追い詰められてたのによく吹っ切れたわね」

 

「親父とおふくろが救ってくれたからな。二人と話して俺を愛してくれてるって改めて知れて嬉しかったんだ。それに、おふくろの方の親戚も俺を受け入れてくれたからな。それから何も怖くなくなった。『異物』と感じてたものを『個性』と感じるようになった。そうしたら世界がキラッキラに見えて、楽しくてしょうがないんだ」

 

「...」

 

 目を輝かせながらそう言う拳二を見て、グロッタは考え込む。自分はどうだったろうか。母親は自分たち兄妹に平等に愛を捧げてくれた。だが父親は、ある日からショウマとその母親に夢中になり、自分たちを疎かにした。祖父も自分の力は評価してくれるが、()()()()を見てくれることはなかった。弟たちも自分を畏怖し、どこか遠ざける。唯一兄が寄り添ってくれたこともあったが、それもショウマが産まれてからは減っていった。

 

 自分が昔から抱いている()()()の正体。それが起因して、最近家族とどう接すればいいのかわからなくなっていた。この違和感の正体を知ることができれば、自分も前に進めるのか。彼みたいに世界が輝かしく見えるのだろうか。

 

 一人深く考え込むグロッタの様子に、拳二は何を考えてるんだと思い、彼女の顔の前で手を叩く。その音にびっくりして意識を現実に戻したグロッタは、直ぐに拳二に突っかかる。いつも通りに戻った彼女に拳二は満足し、適当に往なしながら避難させていたかりんとうを手に取る。

 

 その後、結局住処を荒らす結果となった二人は、デンテから夜が明けるまで説教を食らうのだった...

 

 

 

 To be continued……

 

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