もちろん抵抗するで、拳で   作:暇けんぴ

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幕間3

 

 

 ある日のこと。

 いつも通り仕事が終わり帰宅していた時、息子から電話が来る。あの子から連絡が来るなんて珍しい。いつもは誕生日に僕たちから連絡することはあるけど、あの子から来たことはほぼない。

 

 何かあったのかなと思いながら、僕は電話に出る。

 

 

「もしもし、()()? どうしたの?」

 

 

『久しぶり、()()。元気にしてっか?』

 

 

 最愛の息子である拳二の声が聞けて心が弾む。やはり、いつ聞いてもいい声をしている。そろそろ彼女ができてる頃かな? なんて思いながら返事する。

 

「うん、いつも通りお母さんと仲良くしてるよ」

 

『そっか』

 

「拳二の方はどうだい? 叔父さんと仲良くしてるかい?」

 

『...ああ。いつもじいさんのお菓子買いに行かされてるけどな』

 

「ハハハ、叔父さんはこっちのお菓子が好きだもんね」

 

 僕をこの世界に連れて来てくれた叔父さんと一緒に暮らす息子。二人とも仲良くしてるみたいで嬉しい。今年は年末にでも妻と一緒に二人の下に行こうかな。

 そう考えていると、拳二は変なことを聞いてくる。

 

『なあ親父...じいさんってどんな人だった?』

 

「ん? いきなりどうしたんだい?」

 

『いや、長いこと一緒に暮らしてるけど、今思えばあんまりじいさんのこと知らないなって思って』

 

「うーん、僕も叔父さんと一緒に居たのは昔のことだからあんまり覚えてないよ? もしかしたら拳二の方が詳しいかも」

 

『親父から聞きたいんだ』

 

 いつもの覇気がどこか感じれない息子の声に、不安を覚える。叔父さんのことをここまで知りたがるような子だとは思わないけど...もしかして本当に何かあったのかな?

 

「叔父さんか...『道具』でしかなかった僕を『ヒト』として成長させてくれた恩人、かな。」

 

 ストマック家当主の実験によって生み出された人造人間。それもただの人間ではなく、グラニュートの遺伝子を組み込んだキメラの様なもの。そんな存在だった僕は、当主の野望のために作られた道具。一人ひとり使い潰され処分されていく様子を見ていた僕は、自分の命の価値が分からなかった。

 

 そんな時に出会ったのがデンテ叔父さん。当主に隠れてあの実験室に来た叔父さんと目が合った僕は、何故かあの時『生きたい』と思った。その意思を感じ取ったのか、叔父さんが僕をあそこから連れ出して人間界で過ごした。

 

 人間界で過ごす内に感情が芽生え、日々の暮らしが輝いて見えるようになった。そして叔父さんと別れ、妻と出会って結婚し、今では立派な息子がいる。

 

 今の僕があるのは間違いなく叔父さんのお陰。あの暗闇から救い出してくれた叔父さんがいたから、今がある。

 

『そっか...確かあそこから一緒に逃げて来たんだっけか?』

 

「うん。叔父さんが助けてくれて、こっちの家に時々様子を見に来てくれたよ」

 

『じいさんってそんなに気が利くんだな。俺には一切利かなかったのに』

 

「嘘だ~、拳二だって気づいてるでしょ? 叔父さんは隠し事できるタイプじゃないって」

 

『なっ!? 知らねえよ!』

 

 これは心当たりがあるんだね。というかありすぎるんだろう。今度行ったときにからかってあげよう。

 

「はいはい。拳二は気づいてない、気づいてない」

 

『馬鹿にするな!!!』

 

「ハハハ、照れてないで素直に叔父さんのことが好きだって言えばいいのに」

 

『好きって、そんなこと言えるわけないだろ!』

 

 昔から本音を中々言えない子だからね。それが原因で中学や高校の頃は苦労したけど、今はだいぶマシになったのかな? たまに叔父さんから貰う手紙には、拳二が褒めてくれたとか喜んでくれたとか書いてあったからね。父親の僕には恥ずかしくて言えないのかな。

 

「叔父さんも喜んでくれると思うよ?」

 

『っ...そうか?』

 

「うん、叔父さん拳二のこと大好きだし」

 

『じいさん...そっか』

 

「...ねえ拳二。もしかして、叔父さんに何かあった?」

 

『...じいさんが死んだ』

 

「え...」

 

 拳二から告げられた事実に衝撃が走る。まさか叔父さんが亡くなるなんて。まだまだ元気で、何十年も生き続けると思っていたのに。

 

 それから拳二から告げられる真実に、僕は心苦しくなるも、一番悲しんでるあの子の前で僕が嘆くわけにはいかない。電話口からでも声が震えているのが分かる。

 

「...拳二。今は泣きなさい。悲しみなさい」

 

『...親父』

 

「辛いなら言うんだ。苦しいなら言うんだ。一人で溜め込むんじゃなくて、声に出して言ってみるんだ」

 

『...俺があの時じいさんの傍に居てたら。ずっとそう思ってしまうんだ』

 

 それから拳二はため込んでいたものを吐き出してくれた。あの子は誰よりも強いから、一人で解決しようとする。その所為で、自分の手から零れ落ちたものを引きずってしまう。過去にも似たようなことがあり、その時は僕たちが付き添ったから何とか立ち直ったけど、今は一人ぼっちになってしまっている。

 

 今から急いで家に帰り、妻と共に拳二の下に向かおうかと考えていたが、それは杞憂だと分かる。

 

『はぁ...ありがとな、親父。おかげで少し落ち着けたわ』

 

「...本当に大丈夫かい?」

 

『ああ。いつまでもめそめそしてたらじいさんに揶揄われるからな。あの世でじいさんが安心できるように、頑張るわ』

 

「...強くなったね、拳二」

 

『そうか?』

 

「うん...さすが僕たちの息子だね」

 

『やめてくれ、恥ずかしい...』

 

「そういうところは変わらないね」

 

 息子が前に進もうとしてるんだ。僕たちは見守ることにしよう。

 

 その後、いくらか会話をし、通話を切る。久しぶりに息子と会話できたことを妻に自慢するとしよう。

 そう思い、僕は帰路につくのだった。

 

 

 

 


 

 

「少しは気が晴れたかしら?」

 

「ああ...ありがとな。二人きりにしてくれて」

 

「いいわよ。いつまでもしおらしくされると調子が狂うからね」

 

 父との通話を終えた拳二の下に、グロッタがやってくる。デンテの死を受け入れているように見えてどこか引きずっている拳二に、親に電話してみるよう助言したのは彼女だった。そのおかげで拳二は前に進むことができた。

 

 その後、二人はデンテとの思い出を語り合う。その思い出に笑い、驚き、涙を流したりと、各々のデンテとの記憶を共有した。そして、話はデンテに手を下したジープとリゼルをどうするかへと移る。

 

「この前のニエルブとの取引で私たちはまだ扉の間を行き来できる」

 

「それを利用して、ストマック社に乗り込む。俺がジープで、お前がリゼル。それでいいな?」

 

「ええ。あの小娘に一発入れてやるわ...!」

 

 そう言って拳を握りしめるグロッタ。そんな彼女に苦笑いしつつ、拳二も拳に力が入る。家族である大叔父を殺した罪は大きい。その罪の重さを叩きつける。そう決意する彼の瞳は赤く光っていた...

 

 

 

 

 To be continued……

 

 




もっとゾンブさんを外道外道させればよかったと思いました、まる
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