スローター・ハイウェイ   作:バカの棺

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前回からどんだけ空けてんすかねこの馬鹿は。


十話

・【騎兵】イグニッション

 

 案内されて集落に着いたはいいものの、待っていたのは歓迎ムードという訳でも無かった。

 なんだか視線が冷ややかだし、中には女性だったり子供を家に隠す人もいた。

 

『歓迎されてませんね』

 

 んね。

 

「おい、ホントに案内して良かったのかよ?」

 

 小声で案内人に耳打ちをする。これでは居心地が悪いったらありゃしない。

 

「ホントは皆こんな感じじゃないんです…最近は皆ピリピリしてて…」

 

 羊毛種族自体、出自もあってか他種族に対してはあまり友好的ではない。少女はそのことをあまり分かっていない為、彼らに向けられる視線の理由が目下の問題だけだと考えていた。

 

「何かあったのか?」

 

「ここの所モンスターが活発化していて、この辺りでは見られなかったモンスターが増えてきていたんです。最たるものと言えばあなた方が倒した【ドラグスコーピオン】でしょうかね」

 

「そのせいで狩りも満足にできませんし、夜も安心して眠れません。そう言ったこともあって皆疲れてるみたいです。私も正直外回りがキツくなってきましたよ…」

 

 どうやら苦労をしているらしい。あのサソリが縄張りを張ったことでモンスターが寄り付かなくなったのは良かったらしいが、今度はそのサソリが集落に来るんじゃないかと大騒ぎになったともこの後聞かされる。

 

 その後案内人の家に着き、上がるように促される。

 いつもの感じで玄関辺りで靴を脱ぐと、驚いた顔をされた。

 

「…えぇと、汚いですし靴は脱がなくても…」

 

「いや履いたまま家上がるのはおかしいだろうがよ」

 

「え?」

 

「え?」

 

◆◆◆

 

「長に報告をしてくるので、少しここで待っていてください。あ、食料は勝手に食べないでくださいね?もし食べたいものがあったら私が帰って来た時に教えてください」

 

 パタパタと準備をして彼女は家から出て行く。ヴォルフと二人きりになる事は別に慣れているのだが、人様の家という事もあり少しぎこちなくなる。

 

「あ、名前聞くの忘れてた」

 

「あぁ…」

 

 グダグダである。あれからヴォルフは俺を完全にOK判定にしたようで、最初に見せてたエセ関西弁はなくなり標準語で喋るようになっていた。

 

「ともかく、人の居るところにこれて良かったね。あのままじゃ私達どうすることも出来なかったよ」

 

「助かりはしたがあんな腫物見るような目で見られるとちょっとクルものがあるなぁ」

 

 とはいえ、あれくらいの警戒の方がこの世界で生きていく上では必要なのだろう。ここはこちら側とは大きく違うから。

 

「仕方ない話でもあるか、それこそ周辺にあんなのがいたんじゃそうもなろうというものだ。責めるつもりは無いさ」

 

「……」

 

「ヴォルフ?」

 

「…ごめん、何でもない。優しいんだね、イグニスはさ…私だってかなりひどい事したはずなのにこうして一緒に居てくれるし…うん、本当に優しいよ」

 

 なんだろうか、変だコイツ。俺を見てるのか違う何処かを見ている視線で語りかけて来る。

 まるでここには居ない誰かへの当てつけの様にも、俺への感謝の言葉の様にも取れる言葉を慈しむ様に語る。

 過去に何かあったのだろうか、だがそれに踏み込むほど俺は無遠慮な男としては育てられていない。デキる男は引き際をわきまえるのだ。

 

「そんなに褒められちゃ照れちまうぜ。んなこと言ったらお前だって責任取って俺と一緒に居るじゃねぇか、俺的にはお前も十分優しいとは思うぜ」

 

「……優しいわけじゃ無いよ、私は…」

 

 『優しければ…』と後に付け足されたのを聞いた瞬間俺は地雷を踏み抜いたのだと理解した。コレ絶対踏み込んだらアカン奴だ。こんな直ぐにアウトゾーン行くとは思わないじゃんね、さっさと話題変えねーと。

 

『デキる男とは』

 

 やかましいわ。

 

「あ、あーっとそう言えばよ、お前の目的ってたしか【UBM】だろ?直近の奴は俺が倒しちゃったけど他にアテはあるのか?」

 

「うーん…パッとは思いつかない………あっ、レジェンダリアに一体いた」

 

「おっ?ちょうどいいんじゃないか?てゆーかなんでソレ選ばなかったんだ?」

 

「二十人近くで同時に仕掛けて全滅したって話だったから自然とナシになったの」

 

「おぉん…」

 

 そりゃ無理だ。無理無理。集団戦仕掛けて返りうちって事は相手も集団でいるかメチャ強な単独個体とかってなる訳だし妥当な判断だ。俺だってそうする。

 

◆◆◆

 

「…と、言いますと」

 

 痩せ細り、体からは長年の疲労が見える。しかしその眼光は衰えていない、そんな老人と少女が向かい合って話をしていた。

 集落という比較的狭いコミュニティな事もあり、対面の少女は怯えることなく老人の目を見て話をする。

 

「彼らは率直に言って危険だ。【ドラグスコーピオン】をたったの二人で倒す?異常だ、異常すぎる。もしここで暴れられたらと考えると恐ろしくてたまらん、悪いが早々に出て行ってもらいたい。それが我々の意見だ」

 

「……本当に、その意見でよろしいのでしょうか…彼等は間接的ですが救ってくれたのですよ?もし【ドラグスコーピオン】が倒されていなかったら、何時ここに襲い掛かるのか夜も眠れないという声は今もあったはずです」

 

「確かにその点においては感謝している、だが向こうが何時牙を剥き始めるか分からないのも事実だ。そもそも迷い込んでこんな所に来るものかっ、断絶した地として先祖が選んだ土地なのだぞ」

 

「…それに、問題は他にもあるのだよ。アレと比べたら【ドラグスコーピオン】なぞ大した問題にはならない、縄張りから決して出ようとしないからな」

 

 少女は比較的楽観的に捉えていたが、長はその立場故に警戒心を隠そうともしない。父の、そのまた父の代から語り継がれる彼ら羊毛種族が他の氏族においてどのような扱いをされるのか…初めて聞かされた時は、子供ながらに連日悪夢にうなされていた事を長は今でもはっきりと覚えていた。

 そしてその発言の通り、彼らの問題は【ドラグスコーピオン】だけでは無かった。

 

「ヤツはいつどこに現れるのかが分からない、定期的に回っているという訳でも無ければ一か所に留まる訳でも無い。だがヤツが現れればそこら一帯が滅茶苦茶になる事だけは分かっている」

 

 焦土、木も緑も等しく灰燼に帰した光景を脳裏に浮かべながら老人は口にする。

 かつてその光景を作り出した怪物を長は目に焼き付けていた。悍ましさは無い、むしろ見てくれだけ言えば高潔な騎士かのようにも見えたソレは騎士に非ず。蹂躙の限りを尽くし人々に、モンスターにも平等に恐怖を刻み付けた。

 何の目的かもわからずにすべてを破壊しつくすソレは恐怖の二文字以外で表現することは出来なかった。

 

 少女と長の会話はその後も続き、最後は──。

 

◆◆◆

 

「という訳で、申し訳ないのですが明日にはここを……」

 

 二人そろって口をあんぐりと開けている。それもその筈帰ってくるなり顔色が優れなかったので訳を聞いたらコレだ。

 なんか散々な扱いだな…。

 

『この村全員殺りますか?』

 

 バカな事言ってんじゃねぇよ。お前が俺に対してそんな事を聞くのかよ。

 

『冗談です。マスターなら勿論そう言うと思っての発言ですから』

 

 そういう冗談はやめてもらいたいものだな…。

 

『そうですね、今のは些かライン越えでございました。以後気を付けましょう』

 

 …コイツ結構キレてんな、今のだって爆発寸前な感じじゃなかったか?

 とまぁそれはそれとしてだ。

 

「理由を聞いても?」

 

「この集落にとって貴方達は危険だという事で…その…」

 

 門前払いでこそないがこれじゃとんぼ返りだ。どうしたものかねぇ。

 

「【ドラグスコーピオン】を討伐してくださったのには皆感謝しているんです、私だって感謝してますからきっとそうです!でも長が言うにはですね…アレよりもっとヤバイのがいるみたいなんです。それだけでも十分悩みの種なのですがそこに貴方達が来た…という事らしくて…」

 

 とまぁ話を聞いてはいるが隣にいるヴォルフは結構キテるみたいでプルプル震えている、ステイステイ。ここでお前が手を上げるなら俺はお前を殺してでも止めるしかなくなっちまう。

 

「ヴォルフ」

 

「……分かった、ごめん」

 

 謝れて偉い。止まれて偉いぞ。

 

「まっ、そっちの言い分もわかったよ。こっちもいきなり来て留まらせろってのも嫌な話だとは思うからな、だがこっちにも条件はある」

 

 出てくのは良いが本来の目的の為に必要な事は聞いておこう、なんせレジェンダリアに旅行しに来たわけじゃ無いしな。

 

「アルター王国はここからどう行けばいい?」

 

「アル…?…ちょっと待ってくださいね…」

 

 駄目だ何もかもグダグダになって来てる。まさか分からないと来たか?コレマジで一回死んだ方が良いやつか?

 

「ありました!ここから北に向かえば行けるらしいですよ!」

 

 素晴らしい。パーフェクトだ。

 

「聞いたかヴォルフ!そうと決まれば早速出発だろ!ありがとな教えてくれてよ!」

 

「うぐぇっ」

 

 ヴォルフの首根っこを掴んで待ってましたと言わんばかりに少女の家を飛び出す。いきなり外に出たので周りの人達が驚いた顔をしているがこの際知った事ではない、遂に目的への大きな進歩であり現状打開の機会が訪れたのだ!こんなに素晴らしい事は無いだろう!

 

「ここまでありがとよ!じゃあな!」

 

 その一言でお別れとして彼達は再び森の中へ足を踏み入れる。

 そしてやはりと言うべきかやらかす。北端の森、その一部を消し飛ばした戦いはまだまだ始まってすらいない。




やっっっっっと書けました。何も進んでないカスみたいな終わり方ですが許して下さい、書いては消してを繰り返してエタりかけてたのでダメな人間です私は。
イグニス君お人好しすぎな気がしますが良しとして下さると嬉しいです。
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