スローター・ハイウェイ   作:バカの棺

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十一話

・【騎兵】イグニッション

 

『…ところで、もう一つ言い忘れていましたね』

 

 何の話じゃ。

 

『ほら、以前言ったと思いますよ。良いニュースと良いニュースがある、と』

 

 …確かにそうだ。確か一つは聞いてもう一つが結局聞かずじまいだったな、聞かせてくれや。

 

『第二形態になった事でフォームチェンジが可能になりました』

 

 成程、つまりマイティーからドラゴンって事だな?

 

『…?よく分かりませんが新しい姿という事です。それに際して第一形態のスタイルが固定になりましたがそこまで重要ではないでしょう。なにせマスターの可愛い可愛いデュラちゃんが進化したのですからね』

 

 重要だからかいつまんで話しなさい。あーたが可愛いのは否定しねーからよ。

 

『マスターも隅に置けませんね。乙女にそのような事軽々と言わない方が良いですよ?というのは置いておいて、スタイルとしてはマスターの記憶を基に言うなればスポーツレプリカですね』

 

 ほっ……これで原付とか言ったらホントに目も当てられなかったから良かったよ。

 

『基本的にはマスターの要望を参考にできるだけやりくりしますからご安心を、修理も終わった事ですし早速乗りますか?初見だと驚くかもしれませんが』

 

 乗る乗る!やっぱデュラがいないと始まらないぜ!

 

◆◆◆

 

「ヴォルフ、十分歩いたしそろそろ楽しようぜ」

 

 集落を飛び出してからかれこれ二時間程経っている。既に視界には一面のクソミドリが広がっており、正直嫌になってくるぐらいには見慣れた光景であった。

 最初こそ新鮮に感じたのだがそれもずっと続けばもはや見慣れたものになり、そして飽きる。

 

「もしかしてデュラハン…えーとデュラハンさんに乗れるって事?」

 

「そうだ、アイツも修理が終わったらしくてな。丁度良かった」

 

 ってか『さん』付けはなんだか変な感じだ。そんな敬うような人柄でも無いだろうに…。

 どうやらデュラは紋章の中に居るのが好きでは無い様だ、今も出たがっているし早い所出してしまおう。

 さぁ出てこい、そして第二形態を俺に見せて見よ!

 

 紋章から蒼い炎が生まれ、そのまま目の前に飛んで行く。そうして地に落ちれば段々と姿を変えていき、段々と輪郭が露わになってくる。やがて蒼炎が晴れ、そこに残っていたのは──。

 

「これが私の新形態ウマ」

 

「安易な語尾付けはやめるザウルス」

 

 馬だった。頭が無いし体はメカニカルだしで厳密には馬とは言えないとは思うが。ていうかその語尾は何なんだ、ヒヒンとかじゃなくてウマかよ。

 

「四足歩行になったので(ここ)の様な地形は走りやすくなったはずウマ」

 

「それやめい。というか頭無くても大丈夫なのか?」

 

「今更な話ですよ、ちゃんと見えてますからね。置いてけぼりにされて寂しそうにしているヴォルフさんもしっかり見えてますよ」

 

「んえっ!?私!?」

 

「ちゃ~んと見えてますからね。私の背に乗るのですからもっと近づいて下さい」

 

「わ、分かった」

 

 おずおずとデュラに近づくヴォルフ。別に取って食いやしないだろうに何をそんなにビビッてるのだろうか。

 …というかバイクは普段から乗ってるけど馬は全然乗った事無いぞ?ガキの頃に言った乗馬体験以降は一回か二回ぐらいしか行ってないしまともに乗れるか不安だ。

 

「物は試しですよ。さぁお二方、私に乗るのです」

 

 乗りやすいように体を下げてくれたので乗る事は簡単にできた。すると以外にも体は覚えている様で、備え付けてあった手綱を握って自然と動かすことが出来た。

 そこで思い出したのだが俺には《騎乗》のスキルがあったのだった…という事はこの快適さはスキルも一役買っているのだろう。便利な物だなぁ。

 勿論デュラの補助もあるのだろうが、まるで自分の体なのではと思う程自由に動かせる。これでモータースポーツクラスの速度で動けるってんだから驚きだ。

 

「ハンドルの時もそうでしたがこうして制御されてると思うとなんだか興奮しますね」

 

「…え?」

 

「変な冗談はやめろよ!?ヴォルフが真に受けるじゃねぇか!?」

 

「では、そういう事にしておきましょうかね。ふふふ」

 

 一体どういうつもりなんだよコイツは…。

 …でも、ヴォルフへの態度も柔らかくなってるから、それはいい事か。

 

「方角が分かっているのです、そうとなれば話は早いですからね。どこぞの誰かさんはよく分からん道しるべにしたせいで何日も迷ったらしいですが」

 

「ウグッ…」

 

「ははっ、そんな事もあったな」

 

 もはや懐かしいとまで感じるあのツンケンモード。そんなに時間は立ってない筈なのになぜだろうか、直近の出来事が濃すぎるからか?いや多分そうだな。

 

 ツンケンモードのヴォルフと会ってから迷いに迷ってレジェンダリア入り、アルターが目的なのに。取り敢えず探索していたら〈純竜級〉と遭遇してデュラをベコベコにして勝利。人里に案内されて何とかなったと思ったら速攻で飛び出る…いや追い出されたと言った方が正しいか?

 そんでその最中にデュラは第二形態に進化していた…と。

 いや濃いわ、朝ごはんに背脂醤油大盛りってぐらいに濃いわ。

 

 …こんなに状況が二転三転とするのは久しぶりだな。ちょっと楽しいかも。

 

 そう考えた瞬間、脳裏にとある声が浮かぶ。

 

『──ごめんね』

 

 俺の声でも、デュラの声でも無いそれを俺は確かに思い出した。

 視界に映る全てが燃えている。悲鳴が辺りを木霊する。体の中心から焦がされていくような熱を感じ、喉が焼け付くように痛む。

 

 何が『ごめんね』だ、ふざけるな。そんなので許されるか。

 どうして…どうして──。

 

 お前なんだ?

 

◆◆◆

 

・???

 

 周辺に反応アリ、脅威度判定。

 ……脅威度、基準以上。排除対象と認定。

 

 現状の戦闘力で対処可能と判断、現場へ急行し執行処理を開始する。

 

 排熱管理、及び火器管制に異常なし。

 

『■■に栄光あれ』

 

 《弾頭機動》点火。

 【蹂躙封鎖 パルメデス】…対象を排除する。

 

◆◆◆

 

・【乱銃士】ヴォルフ・ザ・トライバレル

 

 何かが爆発するような音が遠くで聞こえた。私の使う《穿つ銀杭(シルバリオン・ネイル)》の発射音をもっと派手にしたような、明らかに普通ではありえないような音が聞こえた。

 

「何だ今の?」

 

 イグニスも気付いたみたいで、首を傾げて辺りを確認する。私達を乗せたデュラハン…さんも何事かと足を止めて周りを見渡す。

 頭が無いから断言はできないけど首が周りを見渡しているような動きだから見渡していると言っておく。

 …正直に言うと、私はデュラハンさんとの距離感が分からない。ヴェールをかけているせいで四六時中顔は見えないし全身真っ黒でちょっと怖い、表情が見えないのが何よりも怖い。怒ってるのか笑ってるのか分からないからどんな話題が良いのか判断しかねるのも一因になっている。

 凄い冷静な人物かと思ったらいきなり凄いふざけるしで余計に分からない。

 

 未知とは恐怖である。誰かがそんなことを言っていた気がするけれど、デュラハンさんに関しては正にそれだ。分からないから怖いし距離感が掴めない。

 

 話が逸れちゃった。全員が一様に辺りを見渡しているけれど、それらしいものは何も見当たらない。もしかしたら私達みたいな〈マスター〉が戦闘でもしているのかも。

 

 …?

 

「なんか…風切り音?みたいなの……こっち来てない?」

 

「…確かになーんか近づいて来てる?なんつったらいいんだこれ…ひゅーって感じ?花火?」

 

 私が今住んでいる国で、夏あたりになると良く聞こえるものをイグニスは例えに出す。もしかしたら同じ国に住んでる人なのかな?

 彼の言う通り音は段々と大きくなっている。それこそ近づいてきているかのように。

 

 …何か、とても嫌な予感がする。

 

「イグニス…早い所離れようよ、絶対ロクな物じゃないよ」

 

「だな。触らぬ神に何とやらだ、さっさと離れちまおう」

 

 デュラハンさんに合図をすると呼応するように動き出す。このまま速度を上げて行けばすぐにでも離れて行けるだろう。

 幸い方角は見失っておらず、このまま北に進めば目的のアルターに着ける。長い道のりだった……主に私のせいだけど。

 

 パカパカと小気味良い音と若干の機関音を鳴らしながら軽快に走り始める。このまま行けばそう時間をかけずにアルター領土へ行けるのではないだろうか。

 

 あそこの街並みは好きだ。建築物も好きだし王都なら噴水もある、あそこは待ち合わせスポットにも最適だし何より綺麗だから気に入っている。

 イグニスには私のお気に入りのお店に案内しよう。あそこはとっても美味しいケーキを売っているから彼もきっと気に入ってくれる筈!あっ、でも甘いのが苦手だったらどうしよう…。

 

 ヴォルフはそう考え、少し浮ついた気分になっていた。

 因みにイグニッションは甘いのが大好きである。大好きとは言っても甘味が好きという訳であって、彼はホイップを口に直接突っ込んでニコニコするタイプのクソガキ舌なのであった。

 

「っし、じゃあさっさと──」

 

 行こうぜ。彼はそう言いかけたが、その言葉は……目の前の林が吹き飛ばされた轟音で掻き消された。

 

 

「「──ぅえ?」」

 

 左から右に飛んで行く土煙と樹木。樹ってあんなに軽々と飛んで行くっけ?

 というか何が起きたの?爆発?

 

 すると、晴れていない土煙の向こうから声が聞こえた。

 

「標的確認──」

 

 機械的な、抑揚を含まないその言葉を聞いた瞬間…天地がひっくり返った。

 

「排除」

 

「え」

 

 理由は直ぐに分かった、爆発的な急加速に置いて行かれたのだ。

 頭をゴチンと地面にぶつけて倒れる。悪態を吐きそうになったけれど頭上を通り過ぎた音を聞けばそんな事を言う気も失せた。

 

◆◆◆

 

・【騎兵】イグニッション

 

 煙の向こうから聞こえた声に、本能的な危険を感じた。

 あそこで動かなければ、間違いなく死んでいた。さっきまで俺達がいた所を通過したナニカ…弾丸だと考えればすぐに納得がいった。寧ろ避けられた分幸福と言えるだろう。

 

 飛んで行った方向にあった気は全て薙ぎ倒されている。確実に一発アウトな類だろう。

 

「ヴォルフ、牽制を…ヴォルフ?」

 

 後ろに手をやってみれば何も感触が無い。何が起きている?

 

『今の加速で落馬しましたよ』

 

「マッジかよお前!?」

 

 首を回して背後を見やれば、ヴォルフは地べたに叩きつけられていた。そういやアイツは《騎乗》を持っていないんだ、どうして失念していたんだ!?

 

 ぐい、と手綱を引いてヴォルフを急いで回収する。その間も謎の敵は俺を狙っているのだろう、駆動音の様なものが絶えず俺の耳に入ってくる。

 

 急に動きすぎたからだろうか、ヴォルフは完全にグロッキーになっていた。もうちょっと揺れたら吐きそうな勢いである。あっ結構ガタンっていったなこれ。

 おーヴォルフちゃんゲーゲーですか。

 

「ヤバくね?」

 

「ヤバいですよ」

 

 爆音が煙の向こうから鳴り、周囲の景色がどんどんと移り変わっていく。吹き飛ばされる林、燃え上がる森、飛んでくる巻き込まれたであろうモンスターの頭。

 端的に言ってここは地獄である。

 

【蹂躙封鎖 パルメデス】。晴れた煙から出て来たそれの頭上にはそう表示されていた。

 つまるところこれは〈UBM〉の仕業という事。ついてないったらありゃしない。

 

 砂漠で始まったデッドヒート。そして巻き込まれてグダグダになった森の探索。〈純竜級〉。案内された集落で碌に休むことなく飛び出て今に至る。

 

 あぁ、ついてないったらありゃしない。

 俺は本当についてない。

 

 だが〈UBM〉という事はヴォルフの目的達成にリーチが掛かったようなものだ。そう考えればいい事かもしれない。

 心の内にせき止めていた様々な感情…主に怒りだったが、それらがここに来て遂に爆ぜる。

 スロットルを全開に開けたようにぶち上げられていくボルテージは、下がる事無く最高潮を維持する。そうできるだけの燃料(怒り)を彼は既に持っていた。

 

「…ハハ」

 

「ッハハハ!!」

 

「ヴォルフ!!特典はお前に譲ってやるからよォ…」

 

【蹂躙封鎖 パルメデス】(テメェ)は死ねや!!!!!」




なんだか何もかもがグダグダになってる気がしますが温かい目で見守って下さると嬉しいです。このくだりが終われば少し落ち着いた展開になると思います。
何処かで掲示板回でもやってみたいですね、やり方よく分かって無いですけど。
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