スローター・ハイウェイ   作:バカの棺

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あと一話くらいでひと段落付くと思います。


十二話

・【騎兵】イグニッション

 

「お前が言ってたのはアイツの事だろ!?ちょうどよかったなぁ俺達でぶっ殺すぞ!!!!」

 

 もうなんだかテンションがおかしくなってきた気がするけれど、このまま突き通すことにした。

 散々逃げ回っている内にヴォルフもグロッキーから戻ってきたようで、あのクソサソリの再演かの様に後ろでバカスカ撃っている。

 

「違う違うアレじゃないよ!?」

 

 …んぉー?

 

「名前もあんなのじゃなかったし!あっちは()()()()の〈UBM〉だから全然違う!」

 

 エッグい情報が出て来たが目を瞑ろう。というか今の状況に集中しなければならない。

 

 【蹂躙封鎖 パルメデス】。棺桶を背負ったゴッツくて巨大な騎士の様な見た目をしているそれは、両手に備え付けられているこれまた大きな筒──見立てが正しければカノン砲の様な物を元気にこっちへ向けて来る。

 向けてきた瞬間に進路を急転換しなければ直撃コース、何回も言ってるが直撃すればお陀仏間違いなしの威力だ。

 しかもよく見れば若干の偏差を入れて撃ってきている。このレベル帯で戦う相手かコレ?

 なんでそんなの避けれるかって?まぁ、昔やってたゲームで鍛えられたっていうか…向こうはアラート(聞こえた瞬間に回避しないと必中)が出るから親切ではある。

 ほぼトップスピードでジグザグ走行ができるのは第二形態さまさまと言ったところか。

 

 さっきから撃ってきているのは左手の砲だけだ。右手の砲は使われる様子が無い、嫌な予感がするが今は応戦するほかない。

 

「開けた所出るぞ!」

 

 ざぁっと緑の海を抜ければ日差しを一身に受けられるほどの開けた場所に出た。そこの中央辺りにはなんだかよく分からない石像だか銅像だかよく分からんものが立っていた。

 しかも進路上にあった、すっごい邪魔である。

 

「ヴォルフ!邪魔なコイツぶっ壊せ!!」

 

「了解!」

 

 何かを象った像なのはなんとなくわかったがこんな所に置いてある理由が分からん。

 ヴォルフの銃撃を浴びせれば何の抵抗も無く粉みじんになって風に流されていく。邪魔なものが無くなった事で速度を緩める必要が無くなった。

 幸い奴の移動速度はあまり早くないようで、歩いてこちらを追いかけているが置いてかれるばかりだ。このまま距離を離して対抗策を見つけよう、それが出来なければ奴が諦めるまで逃げ……るのはやめだ。ここで勝つ。

 

「《弾頭機動》」

 

 先程も聞こえた爆発音が聞こえたと思ったら、真横に奴がいた。そして向けられるカノン砲。

 

「────」

 

 デュラは前足を杭の様に地面へ刺し、勢いを殺す。その過程でヴォルフは前方へ投石器の要領で吹っ飛ばされていたが大目に見て欲しい。こっちだって必死なのだ。

 

「排除」

 

 目の前を砲弾が通り過ぎていく。もう少し止まるのが遅かったら直撃していた。

 

「やられっぱなしじゃ性に合わねぇな!!!」

 

 ロングソードを取り出して、【パルメデス】めがけて勢いを付けて斬りかかる。

 恐らくヤツ自身は鈍重なのだろう。あの《弾頭機動》は一時的な加速スキルで、鈍重さを補っているスタイルに見える。

 今はかなり近い距離にいる、そして速度勝負なら俺が断然勝っていた。

 つまり、懐に潜り込めるという事だ。

 

「デュラ!」

 

「一気に片づけます、決めてくださいね」

 

「応」

 

 逃げ続けていた先程とは打って変わり、今度はこちらから仕掛けに行く。左腕を搔い潜りながらヤツの懐へ潜り込む、ガラ空きだぜこの野郎。

 ぶった切ってやる。

 

 そう意気込み、【ユーロビュート】に食らわせた時の様に思いの丈振り抜く。刃は止まることなく俺達は切り抜けた。

 

「ハッ!どんなもん──」

 

 すると視界にとあるものが写る。銀色の、棒のようなナニカ…俺はソレに見覚えがあった。

 確かに刃は止まることなく、俺達は通り抜けただろう。だがそれは──。

 

「──お、折れたぁッ!?!?!?」

 

 必ずしもヤツを斬れたという事にはつながらない。抵抗は無かった?刃が止まる事は無かった?

 それはそうだろう。接触した時点で、その刃は真っ二つに折れていたのだから。

 【パルメデス】にダメージは確かに通っただろう。1か?それとも3か?まぁそんなものだ。

 

 伝説級〈UBM〉【蹂躙封鎖 パルメデス】。重装甲高火力に加え、欠点になりうる鈍重さを瞬間加速の《弾頭機動》で克服したそれは、正しく〈UBM〉らしい理不尽ともとれる強さを誇っていた。相手の戦闘力を予測し、対処不能と考えると手を出さず自分の身で対処可能だと判断すれば攻撃に出る用意周到さも、また理不尽な要素になっていた。

 簡潔に言えば格下狩りである。

 

 ロングソード先輩逝っちまったじゃんね。

 

 おいおいおいおいおいおいどどどどーすんの?どーすんの?

 

『おちちち落ち着いて下さい深呼吸ですヒッヒッフー、まだ負けると決まった訳ではありませんから焦らず対処法を考えていきましょうねそうしましょうね』

 

 そうだ関節!こういうのは関節が薄くなってるから攻撃が通りやすいってよく言われてんだよ!

 

『成程間接キスという事ですね私はしてみたいですけどいえそういう話ではありませんねではそこにシフトしていきましょう』

 

 おめー大分焦ってんな!?いや俺もそうだけども。

 

『兎にも角にも今は動かなければ死んでしまいます。ヴォルフさんに狙いが行ってないのは幸いですが、勢いよく投げ出されましたからね…援護にはそこまで期待しない方が良いでしょう』

 

 そうと決まればヤツの間接攻めにシフトだ。見えただけでも肘、膝、手首といった関節部は見立て通り装甲が無い。駆動部が丸見えになっている、あそこを攻めて行動を制限すれば勝ちの目は見えて来る筈。

 

「脅威度修正」

 

「完了。武装制限解除」

 

 切り抜けて距離を離している最中、背後からとても嫌な言葉が聞こえた。

 制限解除…そこから想像できるものは要するに…。

 

「排除」

 

「逃げろ!さっきみたいにじゃなくて全速力で逃げ続けろ!!」

 

 回転音が三つ、正体は直ぐに分かった。さっきまで頑なに使わなかった()()の筒だ。

 左腕がカノン砲なら、こっちはガトリング砲ときた。ミニガンの様に小型化されたものでは無くそれこそ海外に存在するような航空機に取り付けられる破壊力満点の。

 

 唸るような轟音が鳴る。カノン砲はまだ避けようがあった、ギリギリだけど。

 

「うおおおぉおぉぉ──!!」

 

 もうなんか、言葉にすんのがアホらしくなるくらいの破壊力だった。暴風と呼ぶのが相応しい、蹂躙の名のままに当たり一帯を更地に変えるヤツは…間違いなく今まで戦った何よりも強大で恐ろしかった。

 確か等級みたいなのは知ってたけど…一つ上がっただけでこんなに強くなんの!?

 

 もっと早くならないと死んじまうよぉ!しかもMPは発動ラインまで行ってないから【ユーロビュート】も起動しないしよぉ!ツイて無いねぇホントに!!

 

 しかも俺の得物は折れて取り回しが変わっちまったから慣れるまでちょっと時間がかかる。これじゃ普通の剣位のリーチしかねぇや。

 

 武器!武器無い!?何かもっとピンポイントに切れて勢い付けてぶった切れるようなモノ!

 

「あったらもう出してますよ!今ある物で何とかするしかありませんよ!」

 

 『俺が逝っても頑張れよヒヨッ子…b』なんだかロングソード先輩にそう言われた気がする。

 まぁない物ねだりしてもしょうがないしやるしかないか。

 

「目指すは奴の関節部!動きを封じて一点集中でヤツを叩く!どうせああいう手合いはコアみたいな弱点がある筈だ!胸部か頭部か、その二つを特に狙う!」

 

「イェス、マスター」

 

「排除」

 

「「ヒュッ」」

 

 背後をひときわ強い風が通り過ぎる。カノン砲からの弾も来るんだった、完全に忘れてた。

 …あれ?

 

「詰んでね?」

 

「99%詰んでます」

 

「なら」

 

「「1%はある」」

 

「でしょう?」

 

 …ヘッ、よく分かってやがる。

 

「マスターの半身であり魂の片割れですからね。舐めてもらっては困ります」

 

「…じゃあ、反撃開始だな」

 

◆◆◆

・とある少女の記憶

 

『消えてくれ。お前なんか生まれて来るべきじゃなかったんだよ』

 

 何度も、何度も頭で繰り返された言葉。あの時、クリスマスだったかな。私の家族は永遠に引き離された……いや、もはや家族とさえ呼べなくなっていたかな。

 必死に喚いて弁解をしようとする母、血相を変えて激怒する父、青ざめた顔でそれを見ることしか出来ないお姉ちゃん、そして何も出来なかった私。

 お母さんがよく連れて来る男の人、友達だって言ってたけど本当の所は浮気だったって知ったのはいつだったかな?お姉ちゃんがあの男の人の子供だって分かった時?

 

 ぐちゃぐちゃになった家族は、それでも家族であろうとした。お父さんは私を引き取って、お姉ちゃんはお母さんと何処かへ消えた。

 私はお父さんの味方でいるべきだったと思う。だって被害者だもん。

 …でも、出来なかった。

 あの家族の中で、私が心を開けたのはお姉ちゃんだけだった。お人好しで、ちょっぴりお馬鹿で…それでも私の為に無茶をしようとするそんなお姉ちゃんが大好きだった。

 いつもイライラしてて怖いお母さんも嫌い。無愛想で怒りっぽかったお父さんも嫌い。

 お姉ちゃんに酷い事を言った私も嫌い。

 皆に酷い事を言われても笑顔でいようとしたお姉ちゃんは…大っ嫌い。

 

『お姉ちゃん…ずっと知ってて黙ってたの…?』

 

『それは…』

 

『どうして私にも相談してくれなかったの!?お姉ちゃんなんて大っ嫌い!』

 

 許したい、許せない。皆皆許せない、大嫌い。お父さんを許したい、許せない。お母さんを許したい、許せない。

 お父さんはある日拳銃で自決していた。本当にずるい人だ、先に逃げるだなんて。

 お姉ちゃん、お姉ちゃん…ねぇ、どうして謝ったの?私が酷い事を言ったのにどうして謝ったの?

 私は私が一番許せない。こんな自分をどうして許せるの?許せるわけが無いよ。

 だからなんだろうね、こんな独り善がりで醜い私の…望む形が()()()なのは。

 私に取り憑くこの悪魔()をどうか祓って(許して)ください。

 

 …きっとできないだろうね。

 この人生は…断頭台への行進なんだから、何時か裁かれるのを待つしか出来ないんだ。

 ねぇ、お姉ちゃん。どうか私を裁いて。

 

◆◆◆

・【乱銃士】ヴォルフ・ザ・トライバレル

 

「…」

 

 何も考えられずに空をただ眺めていた。脳裏に浮かんだのは小さなころの記憶、それもとびきりに嫌な記憶。

 だけどだからと言って何かが出来る訳でも無い。只存在する、私を私としてつなぎとめる楔のような物だ。

 

 …ようやく思考がまとまって来たと同時に現状を整理する。私はイグニスの後ろにいた筈が急停止で前に吹っ飛ばされた、さっきといい飛ばされることに定評があるのだろうか?

 物音が表す通りイグニス達は絶賛戦闘中だ。もしかしたら私に狙いが来ないようにわざと離れてくれたのかな?

 

「…っ」

 

 痛覚はオフにしているから痛みは無い、それでも体は思い通りに動かずよろめきながら立ち上がる。

 あれは【UBM】だ。私が求めて止まなかった物、実力の証明、強さがあるという動かぬ証拠。

 所詮は私のエゴだ、にもかかわらず彼は死力を尽くして戦ってくれる。もしかしたら逃げたくないから、というのもあるかもしれないけれど。

 

 簡易ステータスには【朦朧】の表示があるが【ヘルシング】で頭を叩いて無理矢理戻す。

 こんな所でおろおろしてられるもんか。立て、立って戦え!

 

「今行くよ、イグニス!」

 

 目の前に繰り広げれるは暴風雨の如き様相。されど怖気づく事無かれ、友が死力を尽くして戦っているのだから。ヴォルフは構わず飛び込んだ。

 

 〈高純度エメンテリウム〉使用。《穿つ銀杭》生成数…2、およそ12万リル。プラマイゼロだ。

 だがそれで充分。手持ちの札だけでどうにかする必要があるのはリアルでもこちらでも同じ話だからだ。

 切り札は二枚、それだけあれば十分だ。

 何せ、私だって負けたままは嫌だから。

 

「ハッ、遅いぜ!」

 

「そっちが吹っ飛ばしたんでしょ!?」

 

「そりゃ悪かった。しっかり謝んのは後にさせてくれ、って事で乗りな」

 

「いや、ここは私の戦い方でやらせて」

 

 これは私の決意、ここに来るまでイグニスに頼った戦い方をしていたから…私本来の戦い方で戦おう。強さの証明だから。

 

「なら、俺にもカッコつけさせてくれよ。連携プレイは得意なんだ、仲良く行こうぜ?」

 

「…うん!」

 

「俺は今の所走り回って注意を逸らしたりしか出来ない。攻撃は蚊の一刺しレベルだ」

 

「私はあんまり早くないけど…予想があってるなら、アイツの武器は壊せる」

 

「じゃあこの方針で行くぞ!ツーマンセルで行動だ。合図は…ちょうどいい、アレだ」

 

 前を見ればカノン砲をこちらに構える【パルメデス】が見えた。つまりはそういう事だ。

 

「排除」

 

 私達と向こうの距離は実に30数メートルだが【パルメデス】はそれなりに大きな体躯な為、距離感が少しおかしくなる。

 かけっこの合図の様に放たれる乾いた音、私は右に出てイグニスは左に出る。

 砲口は左に動く。狙いは彼だ、今はこの状況を利用させて貰おう。

 

 Form Shift──【The Punisher】

 

 引き金を引きながら駆ける。銃弾の当たり具合を確認すると、キンキンと音を立てながら明後日の方へ飛んで行った。

 跳弾、となれば打ち込む個所は限られてくる。奴の装甲は胴体や脚部、腕といった重要な部分は丸みや傾斜がかったものになっており、まともに通すにはかなり近づく必要が出て来た訳で。

 

「上等だ」

 

 思っていた以上に、自分は性格が荒っぽいのかもしれない。なんて考えながら近づく。必然的に狙うは頭か関節部。頭は動きこそ少ないがだからこそ最も守りが堅い、関節部は動きが多く容易に近づけば何も出来ずに死ぬだろう。

 

 だが、勝てる可能性があるのなら十分だ。さぁ、お前の手札を晒してみろよ。

 

「おどれの相手はコッチやぁ!!!」

 

 ヤツの正面まで接近すると、視線とカノン砲をこちらに向ける。やる事は簡単だ。

 一か八か。

 

「──疾ッ!!」

 

 銃口を突き出し、全力で斉射をする。爆発しなくても風穴を開けられそうな弾が、爆炎を背後に打ち出される。

 何故だろうか、今この瞬間は全てが遅く感じる。()()()撃てばいいか、どちらに避ければいいかが手に取るように分かる。

 

 この時のヴォルフは自覚していなかったが、彼女には才があった。銃の才能、そして戦いの才能。普通に生きていれば自覚する機会の無い物だが、Infinite Dendrogramを始めた事によりその才は花開く事となる。

 

 しん、と世界が静まり返る。心臓はうるさいのに、頭は今にも爆発しそうなくらい熱くなっているのに…思考はとてもクリアになっていた。体の熱さを無視するように意識は冷え切っており、いわゆるゾーンと呼ばれる領域に突入していた。

 

 悲しいかな。彼女が生まれ持ったその才能は…つまり簡潔に言えば()()()()()()に他ならない。だが彼女は友の為に、己の為に引き金を引く。

 もし彼女が道を違えた時、イグニッションとは袂を分かつことになる。それがいずれ訪れる未来なのか、はたまた来ることの無い妄想なのかは彼女次第となっていた。

 …が、その問題を憂えるのは場違いというものである。

 

 【ヘルシング】から放たれた銃弾は【パルメデス】の弾丸に何度か当たり、そして軌道を逸らした。本来であればこちらへまっすぐ飛んでくるはずだった弾はそのコースからずれ、真横を飛んで行く。

 

「……脅威度修正」

 

「ぶっ壊したるわブリキ野郎」

 

 ヴォルフ・ザ・トライバレル。今はとっても冴えている。




文章書くのって難しいですね。
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