スローター・ハイウェイ   作:バカの棺

16 / 20
速く主人公を超級職に就かせたいです。


十四話

・【騎兵】イグニッション

 

 俺、ふっかーつ。

 

「三日ぶりですねマスター、お顔を見る限り元気そうで何よりです」

 

 ログインした時に見えたのは何とも西洋チックな建物と噴水。これがまた綺麗なんだ、今まで海外に出たことなんてなかったがもうコッチで体験できるし行かなくてもいいかもしれないな。

 

 そしてそんな清々しい風景に映る黒点が俺のエンブリオであるデュラだ。

 

「なんか変な所とか無いか?この前のアレで結構無理させちまったからなぁ」

 

「安心してください、乱暴にされるのは慣れていますので。なんならもっと激しくしてくれてもいいのですがね」

 

「周りに人いるから止めなさい」

 

 めっちゃこっち見て来るじゃん。別に変な事言ってないんだけどね!?ホントだよ!

 ポテポテとこちらに歩いて来るデュラハンはなんだか画になる。性格に目を瞑れば見目麗しい女性だ、何物にも染まらぬ黒色の喪服の如き装いは周りの目を惹く。

 デュラはヴェールで顔を隠している、今の所コイツの素顔を見たのは俺くらいだろう。自分のエンブリオに対して言うのもアレかもしれないが結構好みな顔してる。

 

 とまぁくだらない話は終わりだ。そろそろ現実を見る時間が来た。

 

「…なぁ、どうしような」

 

「どうしましょうね。派手にやらかしましたのでさぞ顔が知れたのではないですか?」

 

「あ、見せる顔ありませんでしたね。ははは」

 

「やかましい」

 

 現在進行形で頭を悩ませるのは正に三日前の出来事。

 【パルメデス】を倒した後【首無し】のタイムリミットによって俺達は全速力でナビも無しにアルターへと向かった。兎にも角にも北へと進んで行き、モンスターとかは避けることなく轢き潰してそのまま進んだ。因みにヴォルフはこの時点で完全にグロッキー状態になっていた。

 道中で人が居たのでとても焦ったが、デュラがマスターかティアンかを見分けてくれたので一安心。マスターはぶっちゃけどうなってもいいのでティアンを轢かないように細心の注意を払う。

 結果としてティアンに危害を加える事は無く終わった。問題は到着後の話だ。

 

『ヴォルフさん、そろそろ着きそうなので事情説明の方よろしいでしょうか?マスターは今喋れませんし私が話すとそれはそれで問題なので』

 

『…』

 

『ヴォルフさん?』

 

 ギデオンの街並みが見えて来た辺りで問題は起きた。ヴォルフの野郎完全に堕ちてやがった、気絶でもしてたのだろう。そのくせ俺の事はしっかり掴んでやがる。

 この時点で残り時間は12分と予断を許さない状態でのコレだ。本当に焦った。

 

『マスター、これはもう強行突破しかありませんね』

 

 そしてデュラはまぁ、予想は付いていたのだが思い切りが良い。俺に似たのだろうか?

 

『まっ、待て!!そこの者!ってうわぁ!?!?!首が無いぞ!?!?』

 

『申し訳ありませんが止まる訳にはいかないので』

 

『モ……モンスターが街に入って来たァ!?』

 

『大事になってしまいましたね。なんだかテンション上がってきました』

 

 …ちょっと分かるのが悔しい。

 

 とまぁそんな感じで振り切ってようやくアルター、というかギデオンに到着。色んな建築物があったが落ち着いて見れる状況では無かったのでセーブポイントまで急行。

 途中何人かのマスターがこっちに向かって来たが相手してる暇ないからデュラに轢いてもらった。全員倒せたわけじゃ無いけどね。

 

『ここがセーブポイントですね、早い所済ませてください』

 

 了解。

 

 右腕が無かったもんだから色々不便だったが何とか登録することが出来た。これで死んでも安心だぜ!

 安心した所でタイムオーバー、全身が塵になって俺は消えた。周りが凄い驚いててなんだか笑えた。

 

「んで今に至るっつーわけだ」

 

「実際はここまでスムーズに進んでないですけどね」

 

「うるせうるせ」

 

「ところでマスター、レベルの方は如何ほどに?」

 

 レベル…あぁレベルね。

 シュっとウィンドウからステータスに映れば、そこに映っているのは【騎兵】レベル50の文字。遂にカンストである、やったね。

 ステータスも最後に見た時よりも格段に上がっているし、成長ってするんだなぁとしみじみしてしまう。こういうチリツモな感じ、嫌いではない。

 次のジョブはどうしようか?そもそもどんなものがあるかどうかもよく分からんし、取り敢えずジョブクリスタルでも見てみようか。

 

 クリスタルを探して少し歩けば人だかり、もしやと思って近づけばお目当てのクリスタルがあった。恐らくマスターが多く集まっているのだろう、わいわいと賑やかな事になっていた。

 

「何で剣のエンブリオ使ってんのに【魔術師】なんだお前」

 

「だってこれ儀礼剣なんだぜ、剣として使ったら一発で折れる」

 

 耳に入ってくる会話でも何やら面白そうな話がそこかしこで飛び交っている。本当に誰一人として全く一緒な状態では無いようだ。構成とかは似てても細かい所でしっかり違っている。

 

「TYPE:キャッスルを生かせる戦い方あるか?俺【騎士】なんだけど」

 

「籠城」

 

「お菓子の家で…?」

 

 やはり仲間でやっている人が多いのだろうか。もしくはこっちで仲良くなったタイプか、いずれにせよ一人ぼっちでいる奴は俺の視界には居なかった。

 

「…」

 

「………」

 

 そしてそんな事を考えていたらデュラが俺の視界に割り込んで来る。『私いますけど????』とでも言いたげな態度である。

 あと近い、もう当たってんのよ色々。

 

「ところで次のジョブなのですが」

 

「なんか案でもある感じか?」

 

「はい」

 

 なんと向こうからの提案とは思いもよらなかった。だがコイツの事だ、ろくでもない案をぶつけて来るに違いない。

 

「今の私達って結構速いと思うのです」

 

「まぁ平均以上はあると思うな」

 

「そこで思ったのです」

 

「今の速度で動き回りながらデバフ撒かれたら物凄く腹が立ちませんか?」

 

「クッソ腹立つわソレ」

 

 コントローラーあるタイプだったら絶対壊してるわそんなん。対人ゲームくらいでしか見たことねぇよ。

 

「でもやる側は楽しくないですか?」

 

「……それは分かる」

 

 そして俺もまぁ酷い性格をしている様で、されたらいやな事をまぁまぁしてしまう人間なのだ。勿論ゲームとかの中だけでしかしないけど。

 

「分かる…が、今はしっかり前衛のジョブで固めるべきだろうな」

 

「その心は」

 

「ソロデバッファーは難易度が高い、基礎部分を高めないと必要スキルが整わずに変なスキルばっか成長する」

 

「…そしてそうなるとどうなるか分かるか?答えは簡単、ガワだけ立派な雑魚が出来上がる」

 

「成程」

 

 何せバフデバフなんてのはあくまで補助だ。そいつらをメインに据えたソロプレイなんざよっぽど極まった奴かわきまえない奴。

 前者はさっきも言ったように基礎からしっかりして、その果てに独自で極めた根本がしっかりしている奴。例えとしては巨木の様なものだ。土台になる幹がしっかりとして、そこから実る果実がスキルと言った所か。

 そして後者は自らの独自性、オンリーワンに固執した結果生まれる逆張りだ。こういう奴らは基礎部分を蔑ろにして『自分だけ』の部分ばかりを大事にする結果、基礎を固めればまず出来ないような弱点が生まれてそこを突かれる。当たり前の基礎が出来ずに負けるくせしてそれを省みない、それどころか相手に対して侮蔑の感情を持つ……何の成長も無い。

 

「実際、俺はそんなやり方をして基礎を固めなかったことがある。それのせいで俺は弱かった」

 

「確かにマスターならやりそうですよね」

 

「あ”!?」

 

 閑話休題。クリスタルでジョブを物色すると以前見たようなジョブに加えて初めて見るジョブもあった。

 

「【大騎兵(グレイト・ライダー)】なんてあったっけ」

 

「マスターの記憶から検索します……無いですね。それくらい覚えておいてください」

 

 コイツはいつも一言余計なんだよ。まぁいい、名前からして今の【騎兵】の上級職と言った所だろうな。順当にいけばここに収まる……収まるが。

 

「ふむ…まだ早いな」

 

「早い?」

 

 確かに【大騎兵】をメインにして【騎兵】をサブにすれば系統が同じだからスキルも変わらず使える。そう考えるなら良いのかもしれない。

 だが問題はそこでは無いのだ。

 

「【騎兵】で習得したスキル、どれだけあるか覚えてるか?」

 

「えぇと…ひぃふぅみぃ……みっつ?」

 

「常時発動型の《騎乗》とこれまた常時発動型の《衝撃緩和》、この二つだけだ」

 

「三つも無かったという事ですか」

 

 そうなのだ。現状ジョブで習得したスキルがこの二つしかない…明らかに良くない事だ。このままレベルだけ上げて行けば中身スッカスカの数字だけ野郎の完成だ。それだけは何としてでも避けなければならない。

 他の部分、特にスキルだ。そのあたりを潤沢にしておいた方がいいのは明らかだろう。

 

「スキルがスカスカなままレベルだけ上げてもしょうがないし、地道に下級職から上げて行こう」

 

「言われてみれば確かにそうですね。私に頼りきりのマスターも悪くありませんが本人が気に食わなさそうですし、良い選択だと思います」

 

「ククク…それはそう。お前に頼りっきりじゃ嫌だからな」

 

 デュラの案も悪くは無いし、後々デバッファーでビルド組んでみるのもアリかもな。

 

◆◆◆

 

「…あれだけ言っておきながら結局【大騎兵】にしたんですね」

 

「よく考えたらメインにだけ経験値が入るわけじゃ無いしサブに置いとけば良くね?」

 

「……」

 

 おい溜息を吐くな俺がバカなことしたみたいじゃないか。

 

「実際バカでは?」

 

 ぐぬぬ…!

 

「ま、こっから手広くレベル上げて行ってスキルも習得すれば大丈夫だぜ」

 

「…まぁ、いいですかね。正解なんてない訳ですし」

 

 そう、ぱっと見ただけでもパンクしそうなくらい組み合わせがあるのだから正解なんて言えるものは無い。自分なりに強さを見つけていく。

 往年のゲームにはあったテンプレがこれには無い。最初から最後まで自分に合った戦い方(唯一)を見つけていかなければならない。

 …なんて長々と言ってはいるが話は戻ってくるわけで、その戦い方を見つけるためには基礎を育てる必要があるわけだ。

 

「そうと決まれば早速レベリングと洒落込もうじゃないか、なぁに時間はたっぷりある」

 

 ふっ、とデュラは笑みをこぼす。コルタナ(あの時)とは違って、何かに追われてるわけでも無いし誰かの命が掛かってるわけでも無い。

 そう考えると、なんだか心持が軽くなってきたような気がする。

 …ヴォルフが気がかりじゃないと言えば嘘になるが…まぁまた掲示板とかで見てみるか。事件とかになってたら載るだろうし。

 

「では行きましょうか」

 

「おう!」

 

◆◆◆

 

・???

 

「全マスターの……視界情報…から、計算した……痕跡の位置…よ」

 

「ありがとう……とはいえロクなモンじゃないねこれ」

 

 二人…いや、一匹と一人の前には一つの画像が浮かんでいた。一見すればただの世界地図……それこそチュートリアルを経て初期セーブポイントを決める為の画像だ。

 違う所を上げるならば、今あげられている地図には一本の線が引かれている事。只の線ではなく、地図上に点在するとある点を繋いだものだ。

 

「ボクが最初に見つけたのがイグニッション君のあの画像、そこからはあんまり大きく動いてはいない…」

 

「過去のログ…見返したら……他にも…多いわ…」

 

 線の始点に指を当てればそこはグランバロアであった。そこからなぞって行けば天地、黄河、レジェンダリア、ドライフ、カルディナ。そして終点はアルター。何が目的なのかは分からない。

 そもそも目的なんてものがあるのだろうか?疑問は尽きないが、分かる事はある。

 

「手遅れになる前にボク達でどうにかしないといけないのは明白だね。今もこうやって会話できるのはあの二人が必死に演算を続けてくれているからだし」

 

 思い浮かぶのは気だるげと几帳面な二つの顔、それが今は真剣な顔をして演算を続けてくれている。それは早急にこの一件を片付けなければ危うい事実を物語っていた。

 

「ジャバウォックは……?」

 

「『引き摺り出せれば』だって、レドキングにも頼んではあるから準備は大丈夫。あとはタイミングだ」

 

「あんまり………猶予は…無いわね…」

 

 終点より先、不自然にならないように線を伸ばせば…やがて辿り着く場所がある。

 

「…王城……あー…」

 

 王城。【邪神】の居る場所であり、絶対に問題があってはいけない場所…だがそれを彼らが知るのはもう少し後の話である。故に彼らが懸念している物は一つ。

 

「【アルター】……アレに…接触するつもり…?」

 

「確信は持てないけどこの流れから見るにそのつもりが無くても接触はする。間違いなくね」

 

「斬られておしまいな気もするけど、なんだか嫌な予感がする」

 

「そもそも…あの痕跡が……今の段階でも…大問題よ…」

 

()()()()()()()()()()()()。崩れていないのは()()()()()()()()()()()から。レドキングも軽く言うけど大問題だよね」

 

「「……」」

 

「…あー…頭痛くなってきた」

 

「今日ばっかりは……同情する…わ、チェシャ」

 

◆◆◆

 

・???

 

 目が覚める。ソレは微睡から起き上がりあくびをしながら周りを見る。

 自分、自分、自分。全て自分であり、当たり前の光景である。

 ソレに意志は無い、ではなぜ微睡を?

 

 それは誰かの意志、飲み込まれた無数の一つが繰り返す無限の夢、無限の一日。

 ありとあらゆる物、事象、意識、全てが停滞したその日までの一日。

 

 何もかもを呑み込み静寂に帰した悪夢。喜びも、怒りも悲しみも。

 ソレに思考は無い、ひたすらに揺蕩う存在。ただ一つあるのは『同化、記憶、収納』という虫の本能じみたもののみ。

 故にソレは全てを呑み込む、全てに同情する、理解する。ソレは奪うモノ。

 

 ソレは名前を持たない。だが、ある(別世界)はソレをこう呼んだ。

 

〈簒奪者〉

 

 ソレはある一つの光景に興味を持った。自身から千切れた末端が迷い込んだ世界だ。




なにか問題点あればご指摘下さい。修正いたします。
1/12サブジョブに経験値入ると思ってたので修正しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。