今回は箸休め回です。
「超級職ってぇのはよ……もぐ、条件があるらしいぜ」
「条件?」
喧騒に包まれるここは酒場、ティアンも〈マスター〉も一纏めになってごった返す場所である。
雰囲気は正にファンタジーあるあるな感じで、言い争いから殴り合いの喧嘩にもなっているがそれもすぐに止められていた。
そんな中で俺と相棒は街中で買ってきたものを食べながら次のステップの会話をしていた。
「そう、条件。今の【大騎兵】も調べてみればジョブの解放条件があったんだよ、【騎兵】のカンストとあとは一定ステータスを満たしている事……みたいな感じでさ」
「それが超級職にもあるという事ですね」
「十中八九そうだろうな。でもって条件はもっと厳しい……想像はつかないけどな」
身内に超級職の知り合いでもいてくれれば良かったんだがそう都合よくいるはずも無い。
ここにいる〈マスター〉もみんな超級職が欲しいと思っているだろうな、なんて事を肉を頬張りながらのんびりと考える。
対してデュラは……。
「しかしそんなに気に入ったのか?ソレ」
「それはもう勿論、グビグビいけますよ」
コイツあろうことかワインをラッパ飲みしてやがる。
おまけに酔う気配が微塵も見えないのがこれまた酷い、コイツいくらでも飲むから困ったものだ。
シュウと飯食おうって話出たから奮発して高めのヤツ5本くらい買ったらもうあと2本だ。飲みすぎだよ。
「それシュウと飲む用で買ってたの忘れた??」
「忘れていませんよ、マスター達では5本も飲み切れないでしょう?ですから私がこうして……ごっきゅごっきゅ、消費してるわけです。けぷ」
「……」
ぶどうジュースで済ませりゃよかった……!
「そんなに飲んでばっかだとバカ舌になるぞ?」
「ソムリエと言ってください」
「バカ舌じゃねぇなバカだ」
閑話休題。
シュウとの食事会までにはまだ時間があるので道具屋でアイテムを買い揃えることにした。ついこの前に全部使い切ってしまったので出費がかさむことかさむこと。
お金に関しては、後処理をしていたら近衛騎士団?だとかいう所の偉いおっさんから感謝状と共に色々貰ったので困っていない。色々とは言っても貰ったのは感謝状とリルと装備品だ。
そんでその装備品ってのがこれまた強いもので驚いたものだ。
【突撃騎兵勲章】というアクセサリー枠の装備品なのだが名前からもわかる通り俺と相性がすこぶる良い。
「ところでマスター、一つお忘れではありませんか?」
「?」
「ガチャ券ですよ」
「あったなそういや」
【モルド】を倒した後、再度ログインした時にもらった
まぁそんなヤツも今は俺の腕に巻き付いている訳だが。
そんな事もあったが本題はお詫びの中にあったガチャ券だ。
ガチャ……それは甘美な響き。
ガチャ……それは誘惑の名。
ガチャ……それは破滅への第一歩。
ガチャ────。
「ありましたね、これがガチャですか」
────ありましたか。我らの心を潤す甘美な誘惑。
「マスターがキモいです」
「だまらっしゃい」
……まぁ今のはキモいか、反省。
形としてはリアルでよくあるガチャガチャの形だ。お金を入れて真ん中のやつを回す、単純だがやっていて楽しい不思議な代物である。
道具屋のおっさんがやり方を親切に教えてくれたのでさぁやろう、なんて思っていたが列が出来ていた。殆どがマスターだったのでまぁあのお詫びからだろうな、という思いで渋々並ぶ。
途中でデュラが待つのに飽き始めたがなんとか間を持たせて、遂に俺達の番が来た。
当たりは勿論S、なんで一番上がSなんだろうとかたまに思うけど演出が派手なら気にしない気にしない。
リルの投入口に券を突っ込むとあら不思議、真ん中を回せるようになりました。
「回したいです」
「良いの出せよ?」
「お任せください、この私にかかればSなんて朝飯前で……」
「……」
「……Fだな」
「Fですね」
渋い色のカプセルが出てきた。分かり易くFと書いてあるのがなんとも腹立たしいが落ち着こう。このガチャはリルの投入額によって景品が変わるらしく、投入額の1/100から100倍の価値にまで変動するのだとか。
そんで出て来たF、これは1/100である。ガチャ券が投入額だとどれくらいになるのかは分からないが1/100だ、ロクなものじゃないのはよく分かった。
「……」
もうお通夜テンションである。パカリと開ければ出て来たのは【薬草】、【ポーション】よりも安価で効果もしょっぱい誰得アイテムだ。【ポーション】の原料として加工できるのだが如何せん生産職では無いし、勝った方が早いのが現実だ。
「……ま、まぁガチャってのはこんなもんだよ。ハハ……」
予想していなかったと言えば嘘になる。大抵ガチャというのは確率が渋い、こうなるのは当然の帰結とも言えた。
【薬草】も無いよりかはマシだ、枯れ木も山の賑わいってやつだな。
「マスター」
景品も出た事だし店を出ようと思ったら、デュラが俺の前に立つ。
「まだ、負けていませんよ」
────。
「我々は、幾度となく苦難の前に倒れそうになりました。ですがそれに屈したことはありますか?」
「……デュラ……」
「これは勝負です。勝つ為の勝負ですよ、マスター」
「だが俺達は、一度負けている」
「ならば、リベンジマッチですよ。一度負けたら二度勝てば良い、そうではありませんか?」
「負けたままでは、気分が悪いですから」
……あぁ、そうだな。
「負けてらんねぇよな……!」
俺は、何を負け腰になっているんだろうか。相棒に発破をかけられないと気付けないなんて、腑抜けていた様だな。
アイテムボックスを開き、リルの場所に手を差し込む。
俺達の戦いは、始まったばかりだ!
「第二ラウンド、開始だぁ!」
◆◆◆
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
「まだです、まだ負けてません!」
「待て待て待てお願いだからもう止めよういや止めろマジでホントやめろください」
「第二ラウンドは終わってません!」
現在、貯蓄含め全財産が20万と少しに突入しました。お詫びでいくらもらったと思う?300万だよ?それがすっ飛んでんのよ?全部Fなんだが?
コイツ全部最大額の10万でやってるからホントにひどい。
「お前そこまでは聞いてねぇよ!」
「言ってませんから」
「まさかガチャやりたいがために俺を焚きつけたとか言わねぇだろうな!?」
「さぁ何の事ですやら……」
「(金切り声)」
ダメだコイツ何とかしないと俺の財布が消し飛ぶ。
「お前……お前次で最後だからな、どっちにせよあと二回しか出来ねぇけど」
「なら────」
「させねぇぞバカチン」
投入額、10万。最後の勝負が幕を────。
「あ」
あー終わっちゃったね。今の意味ないじゃん、解散解散。
「S出ました」
あーもう俺の相棒最高すぎんか?やっぱり持つべきものは相棒だなぁ!
「今更出た所で収支はマイナスの赤字突き抜けてんだよバカチン」
おっと逆だ。
「あそれ開封」
キラキラして派手なカプセルが開かれる。嬉しい気持ちも多少はあるけども、それよりお詫び含めた財産の殆どが消し飛んだ事実の方が重たくのしかかった。
とはいえ、素直に喜ぶべきだろう。Sは実に投入額の100倍だというのだから、10万の100倍だから実に1000万!それだけの価値がある何かが出る事は確定しているという事!というか価値だけで言えば収支プラスじゃないか!
「「……お?」」
出て来たのは意外な事にしっかりとした武器だった。
名を【黒土】、鞘も柄も黒く染まった刀が景品という事になる。
……名前だけ聞くとなんかいい感じな気がするけど騙されてはいけない。鞘をよく見ると札がバカみたいに貼られている、絶対曰く付きだこれ。
スキルもなんか恐ろしい事が書いてある。
《黒土》、自身以外で触れた者の速度と耐久を大幅に下げる黒霧を放つ。使用時、使用者へ【呪怨毒】が付与される。
この【呪怨毒】は【呪毒】という状態異常の上位版との事で、その効果はより苛烈なものになっている様だ。スキルのメリットの大きさと比べればイーブンどころか俺からすればプラスまである。HP消費ならぶっちゃけ【首無し】で完全無視できるし……。
「当たりの部類ですね」
「ま、最後に良いのは出たな」
なんかしてやったり感出してるけど金銭的に見れば負けの部類ではあるからな?価値だけで言えばプラスになっているがなんとも……。
とはいえガチャの厳しさを知ることが出来たし、良い教育にはなったのかもしれないな。
その後、結局食材の買い出しを忘れていた俺達はシュウに土下座して料理を作ってもらったのだがこれが美味いのなんの。『結構抑えた』と言ってた意味がよく分からんかったけど滅茶苦茶美味かったから、またご馳走になりたいなんて事を二人で考えたのだった。
【黒土】 かつての持ち主は民と領土を守る高潔な人間だったが、持ち主の死後は賊に持ち去られ他者の領土を荒らし無実の民を手慰みに切り捨てる悪逆非道へとなり下がった。切り捨てた者とかつての持ち主の怨念により妖刀へ染まる。兵を強固に、そして俊敏に駆け回らせた朝露が如き霧は腐り落ち、己に触れる全てを絡め取り朽ちさせる。