「死んだ?あの一瞬で?初心者用の狩場じゃないの?」
ヘッドギアを外して一言愚痴る。
それもそうだろう。心が折れかけても持ち直した、じゃあ行こうとなった瞬間に訳も分からず殺された、それもなんか見た事無い奴に。
あとデスペナルティってのあるんだね。24時間ログイン不可なんてすごいモノが。
「【爆進竜 ユーロビュート】、テメェの名前覚えたぞ。俺が絶対シバく」
しかし変わった名前だ。【ユーロビュート】なら分かるがその前に付いている【爆進竜】と言うのがよく分からない、二つ名みたいな奴か?そういうのならある程度分かるが…。
そう考えながら検索をかけると、他にも似たような名前の方式のモンスターがいる事が分かった。それらは総括して【
そんなのがなんで
その情報は何とも心躍るものだった。検索を続ければいろんなUBMと共に討伐者の名前が上がっていた。
「おぉー…沢山いるなぁ…まだ発売からそんな経ってないと思うけど…」
ちょっと羨ましい。俺は一日ログインできないし、検索してる内にある事が分かった。
デンドロ内では現実の三倍の時間が経過している。道理で時間感覚がおかしい訳だ。なるほどと合点がいった所で気付く。
…あれ?デスペナ24時間ってつまり向こうだと三日間居ないって事!?
「嘘だろオイ!?三日なんて経ったらあっと言う間に周りと離されちまうじゃねーか!?」
デスペナの重さを痛感させられながら、その日は他のゲームをしたり情報の検索をして寝た。
────────
■カルディナ・コルタナ
「戻ってきたー!やっとだぜ!」
遂に…遂に戻ってきたー!一回寝て起きて暫く時間潰してだから案外時間は経ってないけど、こっちではもう三日も経ってるんだからね、久しぶりと言ってもおかしくはない。
「…ん?」
町が静かだ。初めて来たときは活発な雰囲気にこっちも当てられて気分が上がっていたのだが、今はそれらが嘘のように静まり返っている。別に人が居ないという訳でも無い、現に俺の横を俯いたまま通り過ぎていく老人が居た。
なんだ?まるで葬式みたいじゃないか。
「あ、あの…なにかあったんですか?」
老人を呼び留める、何か少しでも理由が分かれば良い。それだけの気持ちだった。
老人はこちらを一度見た後、ポツポツと喋り始めた。
「商人のキャラバンが……モンスターに襲撃されたんだ…女子供も皆殺しにされた…。」
「っ……」
「護衛も付けた、ここいらでもそれなりに腕の知れた若者たちだったが、その全員が死んだと聞いた…。」
……。
「後方に居た別のキャラバンが急いで戻ってきて報告してくれたのだ……あれは【UBM】の襲撃だとな…」
【UBM】。胸騒ぎがしてくる、何かとても嫌な予感がして背中に汗が伝う。
「────名を、【爆進竜 ユーロビュート】と言うらしい」
胸騒ぎが、確信に変わる。
もう二度と戻らない人達。別れを告げることも出来ず砂に還って行った人達。
俺は誰も知らない。顔だって声だって知らない、だがこの心から湧いて来る気持ちは怒りだと分かり切っている。俺が言えた道理は無いが、俺はこの事態にはらわたが煮えくり返っていた。
俺が代わりになれたらどれだけ良かっただろうか、死んでも戻る事が出来るマスターだからそんな事を考えているのか?違う、もし仮に俺がティアンだとしてもそう考える。だが本当にその覚悟があるのかと問われれば口を閉ざすだろう。
オレだって本当の死は怖い、痛いのだって嫌だ。
おかしなことを言っているのは分かるが、これは……俺の居る世界とは違う。俺は戻って来ることが出来る。彼らの代わりに殺されたとて、三日後には何食わぬ顔で戻って来れる。ならこの特性を思いっ切り使ってやろうじゃないか。死んでも戻って来れるんだ、彼らに代わって俺が死んでやろうじゃないか。代わりに死んで、そして生き返って、俺がソイツに仕返しをしてやろうじゃないか。
一つの決心をする。
俺は、【
…その後、街はずれで一人ぼーっとしていた。あの事を聞いて、レベリングをする気が薄まってしまったのだ。
気が付けば日は落ちて、星の見える時間になっていた。時間の流れが速いという話を聞いてからだと、夜になるのもあっと言う間のように感じた。
「…勝つ為にはまずレベルを上げないとなぁ…」
一丁前に決意をしても足りない物は多い。レベルにジョブ…それに
「〈エンブリオ〉も、まだだし…」
早く出てくれよ。そう恨めしそうに左手にある第〇形態を見ると、それは突然光り出した。
「うわっ!?」
光は左手から離れて行き、徐々に形を形成する。それは高く積み上がり段々とシルエットが露わになって行く。
ぼやけたシルエットだったが、それが段々何なのかが分かって来た。
「…人?」
人型だ、そんなものチェシャさんからの説明に入っていなかった。いやもしかするとガードナーか?とも考えたが、想定外の事で思考が上手くまとまらなかった。
それが完全に人型に固まると、光はようやく収まった。光のあった所には一人の女性がいた。
中世の喪服を思わせるものの華美な装飾も無く、露出の無い真っ黒なドレスと帽子、そしてうっすらと向こう側を見せるヴェールと星空を思わせる青を含んだ黒い髪、そこから見える瞳は鋭く青い炎の様な色をしていた。身なりは落ち着き払っていて、いかにも大人のレディーと言った所だった。
「……」
「……」
何がなんだか整理が追いつかない。第〇形態のエンブリオが光ったと思ったら今度は真っ黒な女になった……何を言ってるかわからねーと思うが俺もry
少し見つめ合っていると、目の前の女性が口を開いた。
「…〈エンブリオ〉、TYPEメイデンwithチャリオッツ。あなたの魂から生まれたモノ。今後は私が貴女の相棒枠になります。という訳なので宜しくお願いします、マスター」
「………????」
〈エンブリオ〉、までは分かった。その後の
「簡単に説明しましょう。私をはじめとしたTYPEメイデンは所謂レアカテゴリと言いましょうか。そしてTYPEメイデンは基本他のタイプを複合した物になります。私の場合はチャリオッツなので、纏めるとTYPEメイデンwithチャリオッツになるという訳です」
俺が口にする前に目の前の女性が答えた。
まさか俺の心が読めるのか?
「全てとはいきませんが、発言の意図…心の声といったものであればかなり、いえほとんど聞こえます、ですが聞こえないようにマスターが意識すれば聞こえません。恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ、私とマスターは以心伝心、半身の様な物ですからどんなに破廉恥な事を心で唱えても私は顔色一つ変えませんので」
「…えぇ…」
…え?たしか〈エンブリオ〉って本人のパーソナルだとか何とかで生み出されるって言ってたよな?……つまり?
「だから言ったじゃないですか。私はマスターの魂から生まれた半身の様な物だと」
俺にこんなパーソナル?があるとは思いもよらなかった…。
「あ、まだ名前言ってませんでしたね。只の自己紹介もつまらないですしこうすれば絶対わかりますよね」
そう言って目の前の女性……いや、俺の〈エンブリオ〉は────
──ポコ、と音が出そうな勢いで。まるで美少女プラモデルの頭を外すように自分の頭を両手で
「──ヒュッ」
「これで分かったでしょう?私の名は【首無御者 デュラハン】。気軽にデュラとでも呼んでくれれば………おや?」
首を取ったのが見えた瞬間、俺はショックの積み重なりで視界がブラックアウトした。
────────
「…それで、あーっと…俺の〈エンブリオ〉なんだな?」
「その認識で合ってます、何度も説明するの疲れるのでそろそろ認めてください」
目が覚めた時、手に持たれた頭と目が合ったのでもう一度気絶しそうになったが何とか持ちこたえた。
「それで名前がデュラハンと」
「そうです。丁度良いですし持ってみます?」
そう言ってデュラハン、もといデュラは俺に自分の頭を差し出してくる。
丁度いいってなんだよ丁重に断ったわ。
「…まぁ、何とはなしに話は理解できた。えーと要約すればおm「デュラ」…デュラは俺の〈エンブリオ〉で…レアカテゴリーのメイデンという訳か」
「その通りです。レアなのですからもう少し嬉しそうにしてください、じゃないと出て来た甲斐がありません」
最初の印象は寡黙で大人びた印象だったのだが、こうして話してみると全然寡黙じゃない。寧ろかまってちゃんな大型犬みたいな印象だ。
因みに初対面から今の今までデュラはずーっと真顔である。情緒どうなってんだよ…。
「ところでマスター、早速ですが私には固有のスキルがあるようです。一緒に確認してくれませんか?」
たしか〈エンブリオ〉には固有のスキルがあると聞いた。モチーフに通じていたり、タイプに合ったスキル内容になっている事が殆どの様だ。
という事は俺の場合デュラハンにある程度通じていて、かつメイデンに合ったスキルという事…メイデンに合ったスキルと言うものが分からん。
「ステータスの所から確か確認できますよ」
メインメニュー、ステータス…あったあった『〈エンブリオ〉』の項目が増えてる。開いてみるとデュラの名前とかステータスが乗っていた。
【首無御者 デュラハン】という名とタイプの表記。その他には騎乗時のステータスや俺に対するステータスの補正があった。
「騎乗?」
騎乗ってあの騎乗か?俺がデュラに乗る?肩車でもすんのか?
「はい、騎乗です。スキルとは脱線しますが、私のチャリオッツとしての体を見ていただきましょう」
変身。なんて言葉を発しながら光を発して、収まったころにはデュラの姿はなく…
そこには自動二輪…つまりバイクの様な物が居た。成程、そういう事なら騎乗という事もチャリオッツという事も合点がいく。
全体は黒く染まっており、所々でデュラの瞳の様な青がアクセントとして入っている。シルエットとしては大型のスーパースポーツと言った所、俺的には滅茶苦茶カッコイイと思う。
「これが私のチャリオッツとしての姿です。ご要望とあれば多少は変えられますよ」
そう言うとガチャガチャと音を鳴らしてシルエットをアメリカンであったりネイキッドであったりに変えていき、原付の形で変形は終わった。
「どうです?このまま乗りながらスキルの確認でもしますか?」
「それはいいな…だが
────
「おぉー快適。運転自体も感覚レベルで出来るしいまのとこ欠点なんて無いな…強いて言うなら継続的にMPを消費するってとこか」
コルタナ周辺の砂漠をかっ飛ばしながら会話をする。辺りはすっかり夜になっており、上を見上げれば星が見えた。
いつだか憧れた景色が今見れたのだ。夢の一つがそうそうに叶ったのは良い事だ。
「フフフ、〈エンブリオ〉とはマスターのパーソナルから生まれるモノです。なのでマスターが望むこと、潜在的な部分を引き出す、または肯定することに喜びを感じると私は考えています」
俺の股下…つまりバイクの部分から声が聞こえる。
あくまで主観ですが。と付け足されたが、本当に生まれてから数十分の言葉かコレ。
「第〇はいわば観察期間。マスターの心がどういった物かを見て、そして理解しようとする期間です。精神的な年齢と言えばマスターと同じくらいかと思いますね」
そうかぁ…同じくらいかぁ…
「あそうだ、肝心のスキルを見てねぇ」
その為のちょっとしたツーリングじゃん、完全に脱線してたわ。
「あ」
忘れてんじゃねぇか。
「では早速見てみましょう、驚いて下さい。私はなんと第一形態にしてスキルを二つも持っているんですよ」
自慢げにそう言うが、俺にはそれが凄い事なのかがよく分からなかった。
『保有スキル』から見てみると、確かに二つあった。
《感覚共有》
《
この二つが現状持っているスキルの様だ。
「【感覚共有】は私の視覚、聴覚、嗅覚及び味覚…触覚以外のすべてを共有できるものになってますね。二つめはご自身の目で確認してください」
《感覚共有》なんて必要あんのか?と疑問に思うが口に出すには早いだろう。
どれどれ二つめは…随分まんまな名前だな────
「どうです?凄いでしょう?これならヤツに勝てますよ?」
確かに、これなら勝てる可能性は現状よりは格段に高くなる。さっきまでが10%にも満たないとしたら今は60%位かもしれない。
だがそれと同時に理解する、これはおいそれと使えるものでは無いと。正真正銘の最終手段になるだろう。
ついでに《感覚共有》が《
「確かに勝てるかもしれないが…中々振り切ってるなコレ…」
「今のマスターに最大限応えられるものですとも。後は私達次第です、強くなりましょう。彼らを守るためにも、晴らすためにも」
「応、そのつもりだ」
自然と
決行は、二日後。
決心とエンブリオの紹介回です。スキル内容は多分次話で出ます。
4/27追記
ごめんなさいデュラの容姿の説明ミスってました本当に申し訳ありません。
5/31追記
原作読む限り念話は特にスキルとか無くても出来るっぽいので削除しました。