・???
何故こんなことになったのだろうか?自分はただ掲示板の情報を見て【UBM】に挑もうとしただけなのに。
どうしてこんな一面砂しかない所でぶっ倒れてる?何かの冗談だろうか?
否、そんな事は無く背中に照り付ける日光の熱が現実だと訴えかけて来る。
「……」
もとはと言えば移動費をケチったのが始まりだった。高い金を積んでカルディナ行の竜車に乗るのが正解だったが何を考えたのかそれを辞めて自分の足で行こうなどと考えてしまったのだ。
〈エンブリオ〉のせいと言えばそうではあるがこの相棒がいなければ自分はまともに戦う事が出来ない。前門の金欠、後門の金欠である。
しかし初心者用の狩場に【UBM】が出るなんてめったに聞く話じゃない。自分の所属している所でもそんな話聞いた事は無いからだ。
なんだかんだと考えても結局今の状況が好転することも無く現実逃避にしかならない。
「GLL?」
こんなにも衰弱している自分にもモンスターは寄って来る。現に【デミドラグワーム】が死んでるか確かめるようにツンツンと突いて来た。
「GLLYUUU!」
死にかけだと判断したのか捕食しようと襲い掛かる。このまま行けば情けなく倒れているこの者はすぐにでも絶命してしまうだろう。
このまま。そう、このまま行けばの話だ。
「うっさいわボケ」
ノールックで【デミドラ】にソレを突き出す。ソレは十字架を半分で割ったような見た目をしており、横に伸びている部分を握っていた。
バギン、と爆ぜる様な音が何度か鳴った後には【デミドラ】は光の塵となっていた。
「…ホンマ…かなわんわぁ…」
ぐったりと腕を落としたその人物はもう一度動かなくなる。
そこからどれくらいが経っただろうか、自害の二文字が浮かんだところで転機は訪れた。
遠方から
──────
・【騎兵】イグニッション
「お昼寝中でしょうか?」
な訳ないでしょうが。
「ですよね、おーい大丈夫ですかー?」
メイデン体のデュラは目の前でぶっ倒れてるヤツの肩を叩きながら呼びかける。
うん、応急救護はちゃんとできるみたいだな。これで事故った時も安心だ。
『AEDとやらも救急車とやらもここにはありませんがね』
まぁ、それは良いだろう。なにせAEDなら電気魔法とかだし救急車ならクソ速の竜車とかあるだろうしへーきへーき。
すると呼びかけが功を奏したかぶっ倒れてるヤツがビクッと反応を見せた。まるでセミファイナルだ。
「大丈夫か?水ならあるから飲ませてやるぞ」
「……!!」
『水』の単語に反応するようにソイツはビチビチと動き始めた。うわぁ…。
「きも」
「やめなさい」
それはともかく生きているのは分かったから一安心だ。死なれてたら後味が悪すぎるし。
アイテムボックスから水を取り出して飲ませてやるためにもうつぶせの状態から起こしてやる。
…顔は中性的?どっちかっていうと女性寄り…?
「…いや男の娘か」
「胸見て判断するのは普通にド失礼かと思いますが」
いやー失敬失敬。だがこの風体を見る限りティアンではない、十中八九マスターだろう。
今にも死にそうなこの人物に水を与える。口を開ける元気も無かったみたいだから無理矢理口を開けて飲ませる、これなんか見覚えあるな…。
あぁ、高校生で探偵なヤツだぁ。
「……ッ!ッ!」
水をいくらか飲ませていると元気を取り戻したのか体が動いて来る、さながら燃料だ。
まだまだあるぞ、ほれ飲め飲め。
「~~~ッ!!」
腕をバシバシ叩いて来たのでここまでにしておこう。
その間デュラは暇だったのか地面を指で弄っていた、ガキかお前は。砂を掴んで口に運んだ辺りで俺は見るのを辞めた。
「ブッ!?ゲホッオ”エ”ッ”!?」
???????
…………奇跡のアホは放っておいて目の前の奴に集中しよう。
幸い怪我と言ったものは見当たらず干からびかけたこと以外は健康そのものと言って良いだろう、しかし何故こんな所に一人でいるんだ?もしかして追いはぎにあったとか同行者から置いてかれたとか?
「うぅ~…ホンマ助かったわ、おおきに」
推定男の娘はそう言いながら体を起こして立ち上がる。背丈は俺よりも小さい、おおよそで160とかそのあたりだろうか。
「いきなり立っても良いのか?さっきまでぶっ倒れてたんだぞ?」
「えぇんちゃうか?ワイ頑丈やしー」
そんな適当でいいものなのかと若干疑問に思ったがまぁ本人が良いならいいんだろう。というか今更ながらコイツの服装なかなか場違いだな…修道服?で砂漠にいるとかアホだろコイツ。
『マズいですこれ』
もっとアホがいたなそういや…。
『マスターだって砂みたいなのを白い何かに振りかけて美味しい美味しいと言ってる記憶がありますが?』
…?………あぁそれきな粉だよ。砂じゃねーな。
『なんと。アレは砂では無かったのですか、これは失礼』
……………。
『気分が沈んでいるようですが大丈夫ですか?私の首でも持ちますか?』
コイツやっぱりネジ飛んでるんじゃねーか?
『冗談ですよ、デュラハンジョーク』
『というより目の前のエセシスターさんのお相手をしてあげたらどうです?』
お前のせい……まぁいいか。
「でもなんだってこんな所に一人でいたんだ?追いはぎにでもあったのか?」
「追いはぎ!?んな物騒なのと会ってたらワイ怖すぎて漏らしとるわ!一人でアルターからココまで来たんやで」
アルターとは奇遇なものだ。丁度俺が目的地にしている所から来たとなれば道案内をお願いするのもアリかもしれないな。
何処を目的にしているかは知らないが、コルタナと仮定するなら割と近い所まで来ていた様だ。近いとは言っても移動手段によるが徒歩ならほぼ一日は掛かりそうだが。
てかシスター姿でエセ関西弁…。
「歩いて来たのか?見た所それと言った移動手段も無さそうだし」
「まぁそうなるわな」
「…っとそうや、おどれは何て言うんや?」
「俺?イグニッションだ」
「ほほぉイグニッション…長いからイグニスでええか?」
イグニスか、悪くない。
…ていうかそっちの方が語呂良かったかも…?
「イグニスで構わない、そっちは?」
「ワイはヴォルフ!全部言うと『ヴォルフ・ザ・トライバレル』や!よろしゅうな!」
「よく間違えられるから事前に言っとくがワイは女やからな!そこんとこ覚えとき!」
なんと女であったか。しかもよく間違えられると来た、余程その薄い胸は人々を惑わせてきたのだろう。
かく言う俺はどっちでも良い派なので特に気にしてはいない。小さいなら小さいでソレはいいものだからな。
ヴォルフの恰好をもう一度見てみると、色々な所に気付いた。左手の紋章は十字架と恐らく弾丸の様な物になっており、修道服らしきものには所々にベルトであったりポケットが付いている。修道服にアレンジを加えてタクティカルファッションみたいになっていた。
ソレは果たして聖職者としてはいかがなものだろうか。ちょっとまてよく見たらベルトに弾丸みたいなの付いてるじゃねぇかなんだよ戦うシスターってか?
「助けてくれたのは感謝するがこっちからも質問ええか?なんだっておどれはこんなトコに来たんや?前情報やとここら辺狩場でも何でもないしむしろあんまり好まれん場所らしいやないか」
その情報は間違いではない。実際今俺がいるところは初心者が来るような所ではなく中~上級者が来るような街からはかなり離れた所である。コルタナ周辺の狩場でよく見かけたモンスターは見る影もなく、時折地面から飛び出る【デミドラグワーム】だったり【ドラグワーム】をよく見かける場所であり俺は完全に場違いな存在だった。
『そう考えると今のマスターって物凄い場違いな存在ですね』
やかましい。これが(恐らく)アルターまでの最短コースなんだよ!根拠はこの前買っておいた地図!カルディナからアルターまではこの道のりが一番近いんだよ。
『道はどうやって決めたのでしたっけ?』
直線!
『………』
まぁ細かい事はいいじゃないか。現にここまで死なずに来れたんだし、それにこの道を使おうとしている奴も一人いたからあながち間違っている訳でも無さそうだ。
「俺達アルター目指してるんだよ。それで地図見た結果この道だ、このまま突っ切ればアルターの領土内には入れる計算だぜ」
「アルター目指してるんか?そやったらワイが案内できるなぁ、他の人が知らんような近道知っとるから助けてくれた礼に案内したるわ!もちろんワイの目的が終わってからやけどな!」
それは心強い、是非ともお願いしたいものだ。
……?、今少し揺れたか…?
「その目的ってのは一体?俺で良ければ協力させてくれ」
「ホンマか!?ってもおどれのレベル次第な所あるけどな。なにせワイの目的は【UB───」
その瞬間、目の前で爆発が起きた。一度だけではなく、二回三回と何度も続きその光景に俺は目を疑った。
巻き上がった砂が落ち着いて来た時見ることが出来た表示は三、そのどれもが【デミドラグワーム】と表示されており俺は絶望した。騒がしくし過ぎたせいでここら一帯の支配者の怒りを買ってしまった。
「…おいおいヴォルフ逃げるぞ三体相手は無理だろ!?」
肩をドンドンと叩いて逃げるように促す。デュラは既にチャリオッツ体に変化しておりいつでも逃げる準備は出来ていた。
怯えている俺とは裏腹にヴォルフは───、
「上等やないか」
笑っていた。
「助けてくれた礼にいっちょやったるわ。ワイの後ろにおればええ、1ダメージも通さんから安心せえ」
ニッと不敵な笑みを浮かべて言ったヴォルフの言葉を信じ切る事は出来なかったが、それでも状況が状況なので従わざるを得なかった。デュラへ同じように促すが、驚いた事にデュラは左手の紋章の中に入って行った。初めて見る動きだったので驚いたが今はそれどころでは無い。
「ヘッ、言う事素直に聞いてくれて助かったわ。なんせ離れられると逆にやりずらいからな」
「さっき言いそびれたがおどれの〈エンブリオ〉、メイデンか。変化後見る限りメイデンwithチャリオッツか?それともギアか?」
「ギア?よく分からないがお前の言う通りだ、何故分かった?」
「人型から変化するなんてーのは通常無い。あるとしたら風の噂で聞くメイデンくらいや、あぁでもそれ以外でも変化するタイプあるらしいな?他で言えば人型のガードナーもおるらしいしな」
俺の知らない単語が出て来るがお構いなしに話は流れていく、完全に置き去りにされていた。
「まぁなんでもえぇわ。おどれの〈エンブリオ〉もなんとはなしに分かったからワイの〈エンブリオ〉もお披露目や、言っとくがワイのはおどれの程
器用。その単語に少し引っかかったが、後の光景を見ればその意味もよく分かる。
「GLLYULYU」
【デミドラグワーム】は眼前の獲物を見定めていた。仁王立ちで構えるこの女は一体では勝てないが三体で掛かれば勝てる確信があった。その後ろにいる男は一体でもおつりが来る位だと考えており、最優先で排除するべきはこの女だと三体が同じことを考えていた。
「Form Shift──【
そう唱えるとヴォルフの左手、紋章から銀色の粒子が溢れながら右手へ移動した。そしてそれはヴォルフの身の丈程もある十字を形成しながら固まり、姿を現した。
銀色の十字架、縦と横の交差部には丸い穴が空いており中には左手の紋章と同じような十字架が入っていた。形的にあそこが掴む場所になっているのだろうか?
────
長辺側を【デミドラグワーム】達へ突き出して独特な構えを取る。右手で中心部の十字架を掴み左手で長辺を下から支えるように持つ。まるで銃でも構えているかのようだ。
右手で十字架を捻ると長辺が展開される。展開された中にあったのは筒、分かる者が見ればすぐに分かるだろう見た目をしていた。
交差部の十字架とは銃把であり、展開された部分はつまるところ銃身であった。
この場にいる者の殆どは彼女が何をしようとしているのかを理解した。
イグニッションはなぜ後ろにいるように言われたのかを理解した。
デュラはなぜ自分が器用と言われたのか理解した。
「食らえ──」
何も理解していなかったのは、彼女の眼前にいた【
────
・【???】ヴォルフ・ザ・トライバレル
「──虫ケラァ!!!!」
挨拶代わりに銃弾の雨をお披露目してやれば、正面にいた【デミドラ】は2秒足らずでハチの巣となってそのまま光の塵になる。
「「GLLYUUU!!??」」
残りの【デミドラ】は何が起きたか分からなかった。それは一秒と少しの時間だったが、それだけ行動が遅れれば十分だった。
「逃がすかァ!!!」
照準を残りの奴らに定めて引き金を引く。何重にも響く銃声の後には【デミドラ】の姿は無く、あったのは滅茶苦茶に荒れた砂漠だけだった。
ま、こんなもんやろな。レーヴと比べたら拍子抜けや、あそこときたら近場だから初心者用か思てホイホイ行ったら訳分らんまま殺されてデスペナやからなぁ…。
「フン、張り合い無い奴らやったわ。こんなんやったら第一でも良かったなぁ…弾代無駄にしてももうたー」
実は強がりである。あそこで【デミドラ】が怖気づかずに襲ってきてたらちょっとまずかったし切り札を切る必要が出ていたので最悪の事態は避けられた。
節約がし易い第一、第二に思いを馳せながら少しだけ後悔をする。火力を考えれば今の形態が最も適しているのだが如何せんばら撒く事になるので費用がかかる。
「改めて自己紹介や。ワイは【
「ワイの目的はコルタナに現れた【UBM】、【爆進竜 ユーロビュート】を討伐して特典を頂戴する事!協力してくれるんなら心強いわ、宜しくな!」
「ぁ………」
「どしたん?そんな気まずそうな顔しよって」
「いや…ソイツ俺が倒しちまった」
「──はぁ!?」
あーでもないこーでもないと書いては消してを繰り返してたら時間がかかり過ぎました。
ヴォルフはなんとなく予想がつくと思いますがとあるキャラをモチーフにしています。
【乱銃士】は【銃士】派生の乱射に特化した下級職です。秒間射撃数によって与ダメージ増加とかそんな所です。
5/31追記
そこまで大事ではありませんが少しだけ変えました。