以前感想欄にて時系列は内部時間で3年目と言ったのですが申し訳ありません、1年目という事で宜しくお願いします。ふにゃふにゃ変えてすみません…。
・とあるマスター
私はしがないマスター。最近始めたばっかでレベルもまともに上がっていない。
ジョブも戦闘向きとは言えないものだけど何とか頑張っている。
初期国家はレジェンダリアにした、理由はなんかファンシーだったからという軽い物。
「MUSYU」
肩に乗った蜘蛛が私に一声かける。蜘蛛は手のひら大の大きさのであり、リラックスした様子でそのマスターに視線を送る。
「大丈夫だよ、そろそろ目的地だからね」
言葉は通じなくても意思の疎通は出来る、なぜならこの蜘蛛こそがこのマスターの〈エンブリオ〉であるからだ。TYPEガードナーのエンブリオはマスターと行動する事が楽しかった。
「────」
何かの声が耳に入って来る。遠くから響いているみたいで何を言っているのかまでは分からない。
「なんだろうね?こんな所で騒いでたらモンスターが寄って来ちゃうのに」
「MUSYUSYU」
全くだ、とでも言わんばかりに〈エンブリオ〉は声を発する。
かねてよりティアンが噂をしていたアクシデント・サークルだろうか?だとしたら随分と騒がしいものだ…と考えていたマスターだったが、その思考は数秒もすればどこか遠くへ飛んで行った。
「───!」
声の主が段々と見えて来る。黒い何かに乗った男性が声の主だったようで、その後ろには男性と比べて小柄な女性が乗っていた。女性はしきりに後方を見ながら男性と話をしている様で、まるで何かに追われているかのような余裕の無さを見せていた。
「すみませーん!だいじょ「「逃げろ!!!」」っ!?」
声を掛けようとしたらかぶせるように言われてしまった。しかし逃げろ?一体何から?
──刹那、男性たちの後方が爆発した。爆発の後から現れたモノには表示されるものがあった、つまりモンスターだ。
【ドラグスコーピオン】と表示された大型トラックサイズのモンスターは怒り狂ったように男性たちを追いかけていた。
そしてその進路上にはこの哀れなマスターがいた。
「えっあっ───」
なんとかしなければ、そう思ったが時すでに遅し。その男性たちが風の様に横を通り過ぎた直ぐ後に【ドラグスコーピオン】によって小石を弾くくらいの感覚で哀れなマスターはデスペナルティにさせられてしまった。
その後このマスターは自分を間接的にとはいえブチ殺したあの男性たちに復讐を誓った。
────────
・【騎兵】イグニッション
「さっきの〈マスター〉巻き込まれて死んでもうだぞ!?」
「クッソ何でこんなことになってんだ俺達は!?」
到底勝ち目の見つからないモンスターに追いかけられながら俺達はあーでもないこーでもないと論争を続けていた。
最初は本当に些細な事から始まった。移動中はどうしてもモンスターとエンカウントすることが多く、うんざりしながらもお得意の轢殺でどうにかしていたのだがその問題もある地点で解決した。
モンスターがぱったりと居なくなった。まるで
物凄い音が後方から聞こえ始めたからまさかと思ったがそのまさかだ。モンスターがいなかったのは
「おい早く仕留めろよヴォルフ!?」
「やれるんならもっと早くやってるっちゅーのォ!!」
ヴォルフが乱射するも殆どが甲殻に弾かれている。多少はダメージを与えられている様だがその量も心許ない、倒し切るとなったらどれだけ時間がかかる事やら。
掲示板を見ればモンスターについての板がある事を思い出した。なんでも等級のような物がいくつもあり〈亜竜級〉だったり〈純竜級〉だったり、他にもあったような気がしたが忘れた。
この等級についてもティアンの人から聞いた話をそのまま流している感じらしい、信用していいのかどうかとも思ったがその心配は無いとの事。
〈亜竜級〉は名前の頭に【亜竜】、つまりデミドラグ…そして〈純竜級〉は【ドラグ】が付く。
そして今俺達を追いかけてるヤツはヴォルフが言うには【ドラグ】…つまるところコイツは純竜級であり、説明が確かなら俺達に勝ち目が見つからない相手という事。
やれることなんてこうしてちょこまかと逃げてヴォルフに撃ってもらうだけ、俺は運転に集中して後ろなんて見れやしない。
『結構燃料減って来てますね、まぁこんなにふかしながらだと当然ともいえますが』
あとどれぐらい持つ?
『今でも結構レッドゾーン近くですね、それこそここから10分でも逃げ続ければ無くなりますがあのスキルがあります。発動までに追いつかれれば終わりですが、現状でこの状態なので発動さえさせれば逃げ切れると思いますよ』
10分…長いんだか短いんだか…もうちょい何とかならんか?
「お二人でデスっときます?」
「「嫌だよ!!!」」
正直泣きそうだった。大の男がこんなことで泣くのかと言われそうだが実際怖い。後ろ見れないけど物音だけでデカイのがよく分かる、あと跳弾の音も。下手なホラゲーよりもよっぽど怖い。
「GYYYYY!!!」
「右、左、次に尻尾です」
言われた方向とは逆に動かすと、先程まで自分たちが走っていたところに大鋏が振り下ろされる。ついでに曲がりながら姿勢を落とすと頭上を丸太程の太さをした尻尾が擦過音を立てながら通り過ぎる。
…生きた心地がしない。
「っちゅーかおどれ随分余裕そうやなぁ!?」
「こっちは走る事しか出来ないしっつーか全然余裕じゃないが!?止まったら仲良死コースだぞ!お前の事頼りにしてるからなぁ!?」
「グッ……しゃあないのぉ!」
満更でも無いらしい。
この前肩掴んだ時も可愛らしい反応をしていたし意外と乙女だったりして。
こんな事考えてる場合じゃないな。俺にも何か出来る事はあるだろうか…?
『じゃあ《
今すぐ出来る事って言ったらそれぐらいしかない訳だしなぁ…とはいえ使えば死ぬのは確定だし何よりヴォルフをここに残して俺だけコルタナに逆戻りだ。
…いや待てよ?
「お前確かコルタナまで行ってはないよな?」
「そうやけど」
「じゃあお前デスペナっとけばアルター着くじゃん」
「…あ」
思いつかなかったのかコイツは、まぁ俺も思いつかなかったけど。
とはいえここで死なれたらマジでどうしようもなくなる。俺はここに取り残されて更にデスペナになんてなればコルタナに逆戻りだ、この二日越えて三日間の道のりと苦労が全部パァじゃないか。
「なぁまさかだけど『自分だけ死ねばOKじゃね?』とか考えてないよな」
一応の確認も込めて聞いてみるが返答次第じゃマジで詰む。
今の今までの印象だと『ワイだけ先に行かせてもらうわ!ほな!』とか言って逃げられそうなものだがさぁどう出る。
「んなこと考えてるわけないやろ。元辿ればこうなったのワイの責任やろ?絶対何とかしたるから安心しとき、二人じゃ無理やとしたらおどれだけでもしっかり送り届けたるからな」
今まで聞いたことの無い真剣な声でそう言われ、少しだけコイツの評価を改める。変な所で律儀なヤツだ。
会話中でもお構いなしに攻撃は繰り出される。その度に紙一重で避けられているがそれが何時まで続けられるかは分からない。
ここが砂漠みたいな障害物の無い地形であれば突き放せるかもしれない、現に【ドラグスコーピオン】は【ユーロビュート】よりは遅い、腐っても【UBM】という事か。
『特化の方向性かもしれませんね』
『私の推測が合っているなら【ユーロビュート】はAGI特化でこちらはEND特化だと思われます』
確かにそれはあり得る、【ユーロビュート】はコイツよりもずっと柔らかかったしそこら辺で売ってるような武器で傷をつけることが出来たから間違いでは無いだろう。
『あんな速度から勢い付けて斬られたらまぁ切れるでしょうね。同じだけの速度で走っている物体に卵をぶつけても甚大な被害が出る原理と同じでしょうし。あ、因みに今のソースはマスターの記憶ですからね、間違ってても責めないでください』
いや別に責める気無いけどよぉ。
…ところで残量は?
『現在24…いえ23%です、お披露目にはうってつけの状況ですね』
一回も使ってないからどんな感じになるか皆目見当はつかないがAGI+100%、つまり二倍になる事は確定している。この速度から二倍なんてあんまり考え付かないけど間違いなく【ドラグスコーピオン】を置いて行ける速度になる。
──だがそれでは逃げになる、つまらないではないか。
もしイグニッションがそう思わなければ、スキルの使い方は【UBM】であったころの【ユーロビュート】と何も変わらなかった。
「アイツのドタマかち割れる一発とか無いのか?」
「……賭けになってもえぇなら一つだけある」
『それもとびきり確率が低い』と後に付け足されるが満点の返答だった。
やれる可能性があるならやってやろうじゃないか、分の悪い賭けは嫌いじゃない。ティアンの命が掛かっていない時に限るが。
「ハッ。いいぜ、乗ってやるよ!俺は何をすればいい?」
「取り敢えず今は逃げ続けろ、その間にワイが準備しとく」
その発言と共に後方でジャコン、と機械的な音が発せられる。
ヴォルフの〈エンブリオ〉は銃器だから、予想されるのはドデカイ一発だろうか?
「一応聞くが何するつもりだ?合わせてやるよ」
「〈エンブリオ〉のスキルを使う、今の懐状況を考えれば精々二発が限界や。外せば終わりやから慎重に狙わなあかん」
「つまりゼロ距離だな?」
「そうなる」
丁度手札はある、ヴォルフの準備しているモノと今から発動する【ユーロビュート】のスキル…十分だ。
「ヴォルフ、俺の方はもう少しでとっておきのスキルが発動する。発動しちまえばAGI2倍でやろうと思えば逃げれるがどうする?」
今の改まったヴォルフの認識なら──
「決まっとるわ、あのクソサソリのドタマかち割るんが最優先やろがぁ!!」
──やっぱりそうだ、俺とヴォルフは似た者同士かもしれないな。
「…ハハッ」
「「ハハハハ!!」」
「「アイツぶっ殺す!!!!」」
こうなれば後は簡単だ、ヴォルフのスキルをぶち込む。
デュラ、少し無理言わせるけど大丈夫か?具体的に言えば───
これからやろうとしている事を伝えると、デュラの声色は若干の困惑と呆れが混じっていた。
『…良いですけどアフターケアしてくださいね?』
任せとけ、お前がして欲しい事ちゃんとやってやるから。
『じゃあ頭持ってください』
あた…分かったよ。
「イグニス!こっちの準備は終わったからいつでもええぞ!」
そろそろこっちの準備も完了するところだ、もう視界一面の緑は見飽きたし丁度いい。
もっと刺激的な光景を見ようじゃないか。
「こっちももうすぐだ、思いっ切りいくぜェ!!」
『残量………19%!』
ソレは【ユーロビュート】が散り際に行使し、そして特典武具に継承された力。
《爆燃騰血》発動。
刹那、爆発的な加速を得た。思わず振り落とされそうになるが森を駆けずり回っている間に上がった【騎兵】のレベル、それに伴って上がった《騎乗》スキルのお陰で何とかなる。
ヴォルフはどうかと思ったが、俺にしがみつく形で事なきを得ていた。
女性にしがみつかれるなんてこの人生で一度も無かったのでドキリとしかけたものの女性の魅力的(イグニッション談)な部分がお腹と同時に当たって来たのでドキドキがスン…と落ち着いた。
貧乳でも別に良いだろうが。そもそも貧と言う字が間違って───それは置いておいて。
景色が目まぐるしく変わり始める、突然の加速にハンドルを持って行かれそうになるが気合で持ちこたえる。デュラも制御しようと頑張っている様でハンドル…というか車体に俺以外からの力が掛かっている事から分かる。
デュラが先程から鳴らしている機関音は、竜の咆哮の様な音を一度鳴らしてからより一層音を強める。大気を震わせんばかりの轟音にヴォルフは思わず耳を塞ぎたくなった。
マフラーからは蒼炎を吹き出し始め、猛烈に吹き出した蒼炎が加速に一役買っている様でもあった。【ドラグスコーピオン】は発動前の状態で拮抗していた為、加速したイグニッションたちに追い付けず置き去りにされてしまう。
【ドラグスコーピオン】は自分の力量をわきまえている。追いつけないものは追いつけないとして早々に諦めていた。
今回はたまたま追いつけそうで追いつけない微妙な距離感だったので必死であったが本来はここまでしつこく追いかけるモンスターでは無かった。
速度に自信はないが装甲と膂力にはある程度の自信がある。足りない速度を補うために彼は待ち伏せをするようになりその影響で彼の縄張り、もとい行動範囲にはめったに他のモンスターが足を踏み入れなくなっていた。
「GYY…」
今回の獲物も追いつけないヤツだったか、内心でそう考えながら諦めようとした。
切り替えを素早くできなければこの自然では生きていけない。一瞬の躊躇が生死を分ける事を本能で知っている。
「────」
先程目の前で鳴り、それでいて自分を置いて行った音が近づいてきている。
戻って来たのか?警戒心の無いヤツだったのか?
まぁ、結局は食えればいい。そう結論付けた【ドラグスコーピオン】は自分に近づいてきている音を仕留めんと構える。
大鋏を広げ、尻尾を頭上に持ってくる。さぁいつでも来い、いつでもお前達を仕留めてやる。
彼は万全の態勢を整えて迎撃の構えを取る。このまま行けば彼は間違いなく獲物をしとめる、近づいて来たものを自慢の武器で仕留めるだけなのだから。
【ドラグスコーピオン】は内心でほくそえんでいた。
五秒も待たずに音は目の前に来るほど近づき、
「GYYYSYAAA!!!!」
寸分たがわず反応し、ソレを鋏で打ち付ける。砕ける確かな感触を感じ取った【ドラグスコーピオン】は仕留めた獲物を幻視した。
そう、幻視なのだ。
────────
・【乱銃士】ヴォルフ・ザ・トライバレル
「──まずは一発」
「GYYYY!?」
砕けたのは、彼自身の鋏だった。
目の前に現れたのは蒼炎を纏ったナニカ……正確に言えば、ウィリーになっているデュラとそこから乗り出して【ヘルシング】を構えたヴォルフであった。
【ヘルシング】の銃口からは煙が出ている事から何かを打ち出したことが分かる。
【銀閃浄悪 ヘルシング】、第一形態である弾丸から進化した十字架型の銃器であるそれの特性は
製造に使うものはモンスターの素材であったり手元にあるリルであったりと融通の利く仕様になっていて、中でもヴォルフはリルでの製造を好んでいた。そのせいで常に金欠状態と言うハンデを抱えており、製造した弾丸を湯水のように使う事も拍車を掛けていた。
モンスターの素材を使おうにも討伐に必要な回復アイテムであったりをリルで買う必要があるのでどちらにせよリルが足らなくなり、追いうちの様に素材が弾丸に使えない毛皮であったりしたときは目も当てられなくなる。それならば素材を売り払って財布の足しにした方がよっぽど合理的だったのだ。
話題が逸れてしまったが、ヴォルフの言った賭けとは弾丸の内部製造に関係している。今まで射撃に使っていたのは最も基本的な弾丸で、リルでのレートは2リルで30発の15倍換算という
そして今しがた【ドラグスコーピオン】の鋏を砕いたのは【ヘルシング】の保有するスキルであり、ヴォルフが滅多に使わないものである。
「《
【ヘルシング】は通常射撃の形態から少し変わり、十字の上側…つまり短辺が開き【ドラグスコーピオン】に向かって突き出されている。その構えはさながら対戦車ミサイルの構え方と酷似していた。
「二発目装填」
吐き出された薬莢が答えであり、装填は完了された。鈍い音を立てながら地面に落ちる薬莢は腕よりも太い。
「こっちも行くぜェ!!!」
呼応するようにイグニッションが雄たけびを上げ、振り上げた前輪を【ドラグスコーピオン】の頭部に叩きつける。
亜音速手前の運動エネルギーを持った400kgを越える車体が何の躊躇いもなく頭部に打ち付けられれば、いくら純竜級といえど無傷で済むはずも無く甲殻には罅が入り一部は砕ける。
衝突の衝撃を受け切れなかったのか【ドラグスコーピオン】は後方へ後ずさった。
苦悶の声を上げるようにマフラーから甲高い音が上がるがイグニッションはお構いなしだ。
それが彼の決めた覚悟なのだろう、そして私の賭けに付き合ってくれている証拠でもある。
ならばそれに答えなくてはならない。
初対面で舐められない為…あと自分の目当てを先に狩られてた事、紆余曲折合って初対面はキツく当たってしまった事に罪悪感を抱えているがそれをなかなか切り出せない。
謝らなくては、謝らなくてはと移動中ずっと考えていたのだが終ぞ『ごめんなさい』の一言が言えないでいた。
これが終わったら謝ろう。そう考えて臨めばやる気が湧いて来るし、なによりやられっぱなしは気に食わないという所が彼と共通していた。
「ぶちかませ!!」
その一言を受け、イグニッションの後方から【ドラグスコーピオン】の頭部へと飛び移る。
片腕は使い物にならず頭は前輪がめり込んだ影響でひしゃげている、この時点で致命傷に見えたがそれでも純竜級。残った腕と尻尾は動きこそ鈍っているがこちらを捉えており、間違いなく直撃コースだった。
そうだと思った、やっぱり動くよね。
…でもこっちの方が速い。
「──死ねゴラァ!!!」
衝突音が鳴るぐらいの強さで銃口を叩きつける。この距離なら外すことは無い。
引き金を引けば、《
一発6万リルの銃弾…否、読んで字の如く銀の杭は狙いを過たず射出と同時に接触し──
【ドラグスコーピオン】の頭と地面を縫い留めた。
掲示板形式で何話か書いてみたいので出るかもしれません。
最後にお願いなのですが、感想欄でのお気持ち表明の様なコメントはご遠慮いただけると幸いです。ご迷惑おかけして申し訳ありません。