ダフネ・ラウロスが強くても(エリート戦士ぐらい)いいじゃない 作:れいが
ロキ・ファミリアに入団した翌日、ウチを含めて新人はラウルさんとアキさん元いアナキティさんに連れられてギルドに赴いた。
そこで冒険者登録をするんだけど、その時にラウルさんが受付にいるミィシャを紹介してくれた。
ウチの1つ年上で、何故かロキ・ファミリアの担当をしてるそうよ。
ダンジョンへ潜る際の記録とかドロップアイテムの換金方法とか色々やってくれるそうだから今後、お世話になるわね。
それから次は武器を購入するためにヘファイストス・ファミリアのお店に向かった。
まぁ、ウチは外で待ってたわよ。使わないし、自前のがあるから。
皆、それぞれ得物を購入してその日はダンジョンへ潜らず、一度本拠に戻ると...リヴェリア副団長の長ーーーいダンジョンでの戦い方や注意事項を勉強する講習会を受ける事に。
終わった頃には夜になってて動いてもないのに皆ヘトヘトになってた。ウチもだけど。
あー...頭使ったから甘い物食べたいわね。今日は洋食にしてデザートを食べやすくしておくか。
「ふぅー...さて、お楽しみのデザートといきましょうか」
夕食のハンバーグとかパスタとかオムライスを食べ終えて、ウチはデザートに手を伸ばした。
最初にチョコケーキ。ココアパウダーのスポンジをチョコでたっぷりコーティングしてあるタイプ。
テカテカしてる表面にケーキ用のナイフを差し込むとスッと三角形に切り分けてお皿に乗せる。
冷めてるけどチョコはとろけたままでフォークで簡単に切れて、食べると口の中でねっとりした濃厚な甘味が口に広がる。
分けた1つ分を食べて、一度水を飲んで味を無くすと次はチーズケーキも食べる。
さっきのチョコケーキとは違う少し酸味を効かせてあるさっぱりした甘味で生クリームとの組み合わせが絶妙ね。
他にもティラミスやタルトも食べて・・・ふと3つの気が近付いて来るのに気付く。
アイズとティオナ、それと...この気は誰かしら?ティオナの双子ではないみたいだけど。
とりあえずウチは声を掛けられる前に、まだ半円形に残ってるチョコケーキとチーズケーキを切り分けてお皿に3人分を乗せておく。
「ダーフネ!」
「はいはい、好きなの取っていいから。あと...しれっと混ざってる君は?」
「私はお喋り好きで噂好きでギルド職員のミィシャさんともよく話が合う、誰とでも仲良くなれる美少女かつムードメーカーで火炎魔法が得意な才媛、エルフィ・コレットちゃんだよ! ヨロシクネ!」
「あー...こちらこそ。ダフネ・ラウロスよ」
長い。ロキ・ファミリアって結構真面目で固そうな団員ばっかりかと思ってたけど...意外にこういう子が居るのね。
まぁ、もしそうだったらウチは居辛かったと思うし、その点はありがたいかもしれないわ。
アイズに曰く、昨日ウチの料理を気に入ったからまた食べたいって事で一緒に付いてきたそう。
チョコケーキが乗ったお皿を手に取ったエルフィは一応、お行儀よく手を合わせてから一口食べて...すごく至福そうな表情を浮かべてる。
アイズとティオナもケーキとかタルトを美味しそうに食べてるわ。
「ん~~~!もう行きつけのお店のケーキを超えちゃった!すごく美味しいよ!」
「それはどうも。まぁ、そのお店の店長がショック受けると思うし、絶対教えないでよ?」
「あははっ、わかってるよー。でも、こんなに美味しいならお店を開いてもいいと思うなー」
そう褒めてくれるエルフィに、ウチはさっきの長い自己紹介の一部にあった誰とでも仲良くなれるって意味がよくわかったかも。
この才能があれば、ロキ・ファミリアみたいな所でもすぐに馴染めるでしょうしウチにも少しだけ分けて欲しいくらいね。
...そういえば、さっきからチラチラと昨日みたいにドン引きはされてないものの女性の団員からの視線が多い気がするわね。
もしかして皆も食べてみたいのかしら...気を遣ってるのかわからないけど、ここはエルフィに習ってウチの方から近寄ってみようかな。
そうと決まれば、ウチはまだ手を付けていなロールケーキとかバウムクーヘンを切り分けて、幾つかの大きめなお皿に乗せて席を立った。
「あれ?それどうするの?」
「皆にもお裾分けしようと思ってね。仲良くしていきたいし」
「そっか...うん。美味しいから、良いと思うよ」
ウチの提案にアイズは賛同してくれて、ティオナとエルフィも納得してくれた。
さてと、どこから渡そうかな...あそこのアキさん達が楽し気に話してるテーブルからにしよっか。
「アキさん、今日は色々教えてくれたお礼によかったらどうぞ」
「あっ...ありがとう、ダフネ。これも自分で作ったの?」
「まぁ、料理には自信があるから...2人も遠慮なく食べてほしい、かな」
「え?い、いいんですか?アキさんへのお礼なのに...」
「いやいや、こんなには食べられないから...ほら、リーネもラクタも食べて」
「で、では、いただきますね」
アキさんに勧められてリーネさんとラクタさんはウチに一言断ってからロールケーキをフォークで切って食べ始めた。
その途端に2人は美味しいって言ってくれて、アキさんも喜んでくれたみたいだからよかった。
ウチは一度席に戻って、次はラウルさんの所に向かった。昨日のお詫びも兼ねてちょっと多めに乗せてある。
「ラウルさん。今日の案内してくれたお礼と昨日殴ったお詫びです」
「え?あ、そ、そんな気にしなくていいっすよ。今日はともかく昨日のあれは事故っすから...」
「それでもウチの気が済まないから食べてください。皆の分もあるから」
「俺達にもか?なんか悪いな。ありがたくいただくするか」
「じゃ、じゃあ、いただくっす」
そうして食堂に居る皆にお裾分けしていって、割と好評だったから少しホッとした。
一部、シャロンさんとクレアって子がどこで買ったのか問いかけてきて、ウチが作ったって伝えたらクレアさんとカルミリアも揃ってビックリしてた。
そんなに驚かなくでも...まぁ、エルフィと同じように店を開けるって言われるくらいには美味しかったって事か。
関に戻ってみると流石に全部は食べられなかったみたいだけど、アイズ達は満足してた。
ウチは残ったデザートを食べてからアイズ達にお皿を配膳車へ乗せるのを手伝ってもらって厨房の方に持って行く。
厨房の料理人達はウチが持ってきたお皿を見るなり明らかに嫌そうな顔をした。洗い物を増やすなとかそういう感じかな。
だから、ウチはお手を煩わせないよう、ホイポイカプセルから食洗器を3つ出してトレイに1枚ずつ並べて入れていく。
全部を入れ終わってスタートのボタンを押す。ウチは鼻歌を歌いながら待って、明日は初めて潜るダンジョンがどんな感じなのか想像する。
料理人達が不思議そうに何をしているのか見ている中、軽やかな音が鳴ってウチはピカピカになった食器を同じ大きさずつに分けていった。
小型の食器棚に収納して食洗器と一緒にカプセルにしてケースに戻すとウチは厨房を後にする。料理人達は口を開けたままポカーンとしてたっけ。
翌日になって、昨日に引き続きラウルさんとアキがウチら新人の皆と一緒にダンジョンへ向かった。
カリン塔みたいに高いバベルっていう塔が大昔にモンスターが溢れ出てた大穴を塞いでて、そこの入口から入って行くそう。
螺旋階段を降りて行って奥へ続く通路を進むと、その途中から洞窟に様変わりした。
ここがダンジョンか...思ったよりジメジメしてなくて、そこまで暗かったりはしないんだ。
「ここからはモンスターが出現するんで気を付けてるっすよ」
「そこまで強くないにしても、油断したら一溜りもないからね」
そう注意する2人。確かにこの先に小さい気が幾つも動き回ってるのがわかる。
皆は緊張してるけど、それだと余計に力んじゃうからいざって時に空回りしそうでちょっと不安だわ。
そう思ってると先導しているラウルさんが前方で何かを見つけたみたい。
外でも時々見かけるゴブリン。
気が読めない人でもわかるくらい弱っちい相手から、アキさんが1人を指名して倒せるか実力テストを始めた。
当然、苦戦する事もなく倒してくれたからウチらはそのまま次の階層へ降りるべく奥へ進んで行った。
あっという間に5階層まで到達して、順番としては最後になるウチの番が来た。
本来、駆け出しの冒険者のステイタス向上のために潜るのは1階層から4階層までらしいけど...どうやら、冒険者になった洗礼として連れて来たらしい。
「ダフネは武器を使わないって言ってたけど...拳闘でいいのかしら?」
「まぁ...見ててもらったらわかるよ」
「そう。じゃあ...あっ、ウォーシャドウがいるわね...」
アキさんの視線の先には全身が真っ黒な人型のモンスターが徘徊してた。
リヴェリア副団長の講習会で教えてもらった新米殺しって呼ばれるモンスターだっけ。
...たったあれくらいの気しかないモンスターで殺されるなんて、よっぽど弱い奴だけだと思うわ。
ラウルさんは新米を相手にさせるには危険では話すと、それにアキさんも同意しかねるような難しい表情を浮かべた。
2人はウチがアイズとのやり取りを見てないから、そう心配してくれてるんだよね。だけど、ウチの実力を知ってもらうためにもやらせてもらわないと。
「2人とも。とりあえず見ててもらっていい?」
「え?い、いや、無理に実力を見せてもらう必要はないっすよ?」
「もしもの事があったらリヴェリア様に何を言われるかわからないし...」
「大丈夫だって。近付かずに倒せるから」
2人にそう答えてウチはウォーシャドウに気付かれないぐらいの距離まで近付いて行く。
皆が背後で見守ってくれてると、ウォーシャドウは顔をこっちに向けてギョロッと単眼を向けてきた。
ウチは掌を前に突き出して気を集中させる。その間、ウォーシャドウは接近してきて長く鋭い爪で攻撃しようとしてくる。
「ダフネさん危ないっすよ!?」
「早く回避してっ...え!?」
掌に集まった気は光球となって眩い光を発している。
ウォーシャドウとの距離が狭まってきて、ウチはタイミングを見極めると気功弾を押し出すように放った。
一直線に飛んで行った気功弾が直撃したウォーシャドウは粉々になり、ドロップアイテムどころか魔石諸共消し炭になった。
ラウルさんとアキさんはもちろん、スピリッツソードを見た事がある同じ新人の皆でさえも気功弾の威力に愕然としてた。
「...もうちょいコントロールすれば魔石もドロップアイテムも残したまま倒せるから今回は大目に見てね?」
「...あ、はいっす」
「今のが気、っていう体内のエネルギーを使った技なの?とんでもない威力ね...」
「あれぐらいはほんのデコピンみたいなもんだよ。もっと威力を上げれば山どころか月だって壊せるし」
そう答えると皆真顔になって絶句してた。あり得ないと思いたいけど、嘘でもなさそうだから困惑してるのかも。
その後は何とか我に返った皆と一緒に地上へ戻る事にした。その道中も降りる際に出てきたモンスターが現れてきたけど、難なく倒して無事に地上へ戻った。
新鮮な空気を吸って深呼吸をしてると、アキさんから話しかけられる。
「ちょっとフィン団長と一緒に話し合わない?上層だと貴女には役不足ってわかったから」
「そう理解してもらえて助かるわ。多分、フィン団長もその辺は察してくれると思うし」