幻想トリップ   作:ニコラス―NICORUTH―

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 オーバーロードが好きになったので、初投稿でござる。一番好きなのは、アルベド。これは譲れない。
デミえもんやナーベラル・ガンマもすこ。
とにかく今作は、パロディ、というか他作品ネタ多しとなっとります。
それもまた、YGGDRASIL衰退の要因ということにしていただければ、納得できるかなと思います。


ギルド解散の日

 時は西暦2138年、日本。一つのDMMORPGゲームがその物語に幕を閉じた。

「 YGGDRASIL 」。何よりの特徴は人間の戦士からスライムやアンデッドになれる恐ろしい程の自由度と、その全貌が不明であるということ。

多くのプレイヤーたちが、未知を探す旅にでて、ギルドを設立したり、他のプレイヤーと鎬を削ったのも今は昔。より12年前にサービスを始めたそのゲー厶は最盛期をとっくに過ぎ、様々な試行錯誤の末に、ひっそりと終わりを迎えた。

・・・筈だった。

 その12年の歴史の終焉を見届けんとしたプレイヤーたちは、その姿のまま、まったく知らぬ異世界へと転移してしまう。

嘗ての中世ヨーロッパの頃の面影を残しながら、YGGDRASILと同じ魔法や、モンスターが闊歩する世界だ。

プレイヤーたちは、さらなる未知へと挑まざるを得なくなった。その多くは異形種である。

 

 

 

 

 

 

 ある日のトブの大森林。自然豊かで危険なモンスターも多いこの地に不自然な、廃城が一つ。中では人間らしきものたちが大広間の一室の円卓を囲んでいる。といっても、幾人かは差異があるため、人間ではないと一目で分かるが。

 

「 というわけで、今日を以て幻想トリップは解散とするわ。 」

 

「 ちょっとまてギルドマスター! 」

 

 角の生えた竜人の少女に、赤いボロマントをなびかせる鎧を纏った犬耳の男が異議を申し立てる。その背には、男の全長ほどはあろう、巨大な剣が背負われている。

 

「 はい、カッツェ! 」

 

「 唐突すぎやしないか?ギルドを解散させるなんて悪手だろ!? 」

 

「 オレからもいいか? 」

 

 カッツェと呼ばれたワーウルフの男に、同調するものが一人。藍色のローブに黒髪をした男だ。

 

「 アンタもなにかあんの?バオー。 」

 

「 大有りだよ。現状をみるに今ギルドの戦力をバラすのは不味い。スレイン法国は崩壊し、魔導国がその規模を大きく拡大している。もし今バラして連中に捕まったら・・・ 」

 

「 ・・・! 」

 

 男、バオー・ヴェルの意見に、皆は騒然とした。彼ら、ギルド「 幻想トリップ 」は、異形種を専門的に取り込んでいたギルドであり、一人一人の練度も高い。実際最盛期のギルドランキングでは十位にランクインしていた程だ。しかしそんな彼らが警戒する勢力が一つ。

アインズ・ウール・ゴウン魔導国。

死の支配者アインズ・ウール・ゴウンを国家元首とする、一大勢力である。

幻想トリップのメンバーは、このアインズ王を自分と同じ境遇の者であると仮定していた。

丁度、自分たちの上、9位にランクインしていたギルドのプレイヤーだと。

その何よりの根拠が、リエスティーゼ王国との戦争時に起きた、大虐殺と呼ばれる出来事だ。

YGGDRASILでは評価の芳しかった超位魔法、

「 黒き豊穣への貢 」を使用し7万人、更にその副産物たる黒子山羊が5匹も召喚され、11万人、計18万もの人間を葬り去った大事件だ。

 

「 喝采せよ・・・我が至高なる力に、喝采せよ!! 」

 

 魔導王のこの言葉に、恐れずに拍手を送ったのは、彼の従者であるダークエルフの少年、ただ一人だけだったのだという。同盟を結んでいたバハルス帝国の兵たちは、その圧倒的な力の前に、皆笑い、絶望し我が先に逃げる他なかったのだ。

この世界では、大半のものが到れるのは、第五位階くらいまでが精一杯。法国では第十一階と呼ばれていた超位魔法を使えるのは、必然的に彼らと同じ、YGGDRASILのプレイヤーである。

その後の数々の所業や、他国、種族を取り込み、拡大していく勢力故に、彼らは恐れていたのだ。

魔導王を。彼の国魔導国を。

その為、戦力を分散させるのは不味いとバオーは判断して、ギルド解散に異議を唱えていた。

 

「 こっそりとしていられるにも限度があるんじゃないでしょうか。 」

 

 バオーの意見に反論したのは、銀髪の少女。その赤い瞳には、何処か温かみが宿っているようだった。

 

「 イザヨイ・・・ 」

 

「 あすかみんが以前、魔導国らしき部隊と鉢合わせになりかけたそうよ。幸い逃げおおせられたらしいけど、おそらくバレてる。長身のサキュバスに、ビーストテイマーとドルイドのダークエルフ。それにデスナイト十数体だったわね? 」

 

 イザヨイが視線を向けたのは、耳の尖った黒い忍び装束の少女だ。

 

「 うん。間違いないよ。あれは宰相アルベド。

またの名を大口ゴリラだよ。 」

 

「 しかしそこそこの規模だな。あのデスナイトがそんなにいるとは。 」

 

「 この世界じゃ、恐ろしい化け物扱い、だったな、マリッサ?YGGDRASILでもそこそこ厄介だったが。 」

 

 カッツェが腕を組み、バオーが目を見やる先には、とんがり帽子に法衣、いかにも魔女といった風貌の女だ。

 

「 あぁ、その見解であってるよ。この世界の一般のレベルは10がせいぜい。レベル35台のデスナイトは脅威以外の何物でもないだろうが、別にそうってだけでもないらしい。 」

 

「 どういう意味だ? 」

 

「 こないだエ・ランテルって街にいったっていったよな? 」

 

「 あぁ、お前が啓蒙の杖を使ったっていうアレか。 」

 

 カッツェの茶化しを、マリッサは華麗にスルーする。

 

「 その時に、街中をデスナイトたちが警備してたんだよ。あそこは魔導国の領地だから、アレのホストは魔導王で間違いない。デスナイトたちのお陰で街にはモンスターが寄り付かない。奴らはそのまま、エ・ランテルの守りになってるのさ。 」

 

「 アンデッドをセキュリティにねぇ。考えたもんだな。 」

 

「 YGGDRASILの賜物ですね。 」

 

 バオーと巫女装束の少女、サーナはアンデッドの労力運用という魔導王の見事な政策を賞賛した。

 

「 感心しとる場合か。 」

 

 カッツェがツッコミを入れ、ギルドマスターはそれに捕捉した。

 

「 そうよ。魔導国軍は着実にその戦力を伸ばしてる。スレイン法国が潰れた後は特に顕著になってるわ。 」

 

 竜人の少女の面持ちは深刻なものだった。この世界に転移してからというもの、彼女はギルド長として、多くの敵の目を欺いたり、時には戦いを挑み討ち滅ぼしたりした。しかし、今回の相手は違う。

幾多の国を滅ぼし、傘下に納めた、恐るべきアンデッドの国だ。

 

「 連中は人類至上主義国家だった。それがいなくなりゃ、魔導国はやりたい放題なわけだ。なんとも傍迷惑な男だ、アインズ・ウール・ゴウン。

同じ魔法詠唱者として、尊敬に値はするが、戦いたくはない相手だ。 」

 

「 果たしてやりたい放題出来ると思うかねバオー?評議国やら連合国とやらが黙ってなさそうだが。 」

 

「 だがよマリッサ。連中がこれまでの魔導国の動きに介入してきたか?どうせこの先も指咥えてみてるか、魔導王様におべっか使って命乞いするべな。

まるで2コマしか描いてないマンガみてぇにな。 」

 

「 もうそろそろ突っ込んできそうではあるがな。で、ギルドマスター。 」

 

「 はい、バオー。 」

 

「 話しを聞いてる内に、色々と納得した。魔導国はマトモにやりあえばおそらく勝ち目はない。

全員で掛かっても、全滅するがオチ。だからギルドを解散し、全員が隠れ潜んでやり過ごす。

そうするしかない。なぁ、カッツェ。 」

 

「 おう、オレもコイツは賛成だ。だが、オレたち二人の疑問は多分同じだ。 」

 

「 大きく分けて二つ。一つは俺たちが保有しているアイテムのこと。もう一つは、この場にいないメンバーのこと。 」

 

 バオーの言う通り、この広間を見渡すと、幾つか席が空いている。一応、YGGDRASILが終わるから、皆集まるようにと、ギルドマスターことレ・ムゥが呼びかけ、すべてのメンバーが集結していたのだが、彼らは今何処にいるのか。

 

「 この場にいないものは皆他国に拠点を置いてるわ。例えばアリスティは聖王国でオートマタやらパワード・スーツを作ってる。 」

 

「 聖王国?それって確か・・・ 」

 

 サーナは聖王国という名前を覚えてはいなかったが、脳をフル回転させるまでもなく、カッツェがあっさりと答えを教えた。

 

「 魔導王を信仰してる宗教の本拠地だな。魔皇ヤルダバオトとかいうヤツが暴れて、先代女王が惨たらしく殺されたとかなんとか。 」

 

「 はぁ、そうでした、よね。しかしアレを信仰するとは正気を疑いますよ。 」

 

「 まぁ、自分の身内に優しいらしいから、慕われるのもわからんでもないがね。 」

 

「 で、もう一つ。アイテムの件。特にワールドアイテム。うちも結構持ってたろ。 」

 

 バオーがその話題を出すと、一同みな揃って、「 あぁ、そういえば。 」といった感じで騒ぎはじめる。

ワールドアイテム。YGGDRASILの中でも最高位のクラスに位置する神器とでもいうべき代物だ。世界樹の葉が変化したという設定のアイテムで、それ一つが絶大な力を持つ。幻想トリップも幾つか所持しているが、魔導国の勢いをみるに、あちらも持っている可能性が高かった。これらが魔導王の手に渡るのを防がねばならないので、このまま置いておくわけにはいかない。

 

「 それぞれ分担して、所持しておくこととするわ。

100レベなんだし、よほどのことがない限り、やられないもの。ギルドアイテムは私のほうで処分しておく。 」

 

「 頼むぜ、レ・ムゥ。 」

 

「 任せといて。さ、仕分けを始めましょうか。 」

 

「 ・・・! 」

 

 その時、サーナがハッとしたように、目を見開いた。その唇が震えているのを見たカッツェはなにが起きたのかを察する。彼女はドルイドであるが、ビーストテイマーとしてのスキルもある程度使えるのだ。その為、自身の下僕になにかあれば、すぐに察知する事ができる。

 

「 もう来たのか!? 」

 

「 うん・・・見張りの魔獣たちが、やられてる。 」

 

「 数は!? 」

 

「 分からない・・・でもあっちも魔獣を引き連れてる。ビーストテイマーが向こうにいる。 」

 

「 あの時の子だ! 」

 

 あすかみんは声を荒げた。更にその瞬間、遠方から凄まじい爆発音が、連続して一同の耳に響いた。

真っ先に反応したのは、バオーだ。

 

「 奴ら、爆撃地雷を踏んだようだ。 」

 

「 お前が用意した地雷原か。この分じゃ、ゴーレムの防衛線が突破されるのも時間の問題か。 」

 

「 悪いが先に取りに行く!カッツェ、お前も! 」

 

「 おう! 」

 

〈 転移 〉

 バオーとカッツェが、その場から消える。

 

「 ギルドマスター! 」

 

「 そうね、あすかみん。今ワールドアイテムを持ってるものは表にでて戦いの準備を! 」

 

「 私がでます!前衛職ですから、時間を稼げる! 」

 

「 私も!今持ってます! 」

 

 イザヨイとサーナが名乗り出た。

 

 

 

 

 廃城ブリュスタ宝物庫。YGGDRASILや、この世界で得てきたアイテムを保管しているこの部屋で、バオーとカッツェはワールドアイテムを探し、その傍らでマジックアイテム等の装備を整えていた。

 

「 邪教のべへリス。ワールドアイテムだ。カッツェ、これはお前に。 」

 

 そういわれ、バオーに赤い卵に人の目と口がついたような気味の悪いネックレスをカッツェは渡された。

 

「 おう。多分使わんと思うが。 」

 

「 お友だちが欲しくなったときに。たぶんそれもないと思うけどね。世界のるつぼはオレが持っとく。 」

 

「 じゃあ私はこれね。 」

 

 後から来たギルドマスターの掌には、金色に輝く幾つもの円弧が重なったかのような物体が浮かび、腕輪になって装備された。

ワールドアイテム、黄金律の環である。

 

「 ギルドマスター、敵の方は? 」

 

「 ワールドアイテムを既に持ってる連中を迎わせたわ。イザヨイにサーナ、それからあすかみんよ。 」

 

「 サーナはなに持ってたっけ? 」

 

「 クリスタルね。コラボの時の奴よ。 」

 

「 あぁ、あったな。それ。 」

 

「 YGGDRASILが下火になり始めた頃のか。色々と大昔の奴を取り込んだんだっけ? 」

 

「 だいぶ失伝してたゲームの奴だろ。なんてったっけ? 」

 

「 ファイナライズ・ファンシーだったか? 」

 

「 そんなことはどうだっていいわ。それよりもアンタたち、装備を整えなさい。それからポーションと蘇生アイテムも。 」

 

 レ・ムゥは焦りを禁じ得なかった。予定よりも魔導国の侵攻が早いのだ。あすかみんからブリュスタの存在が漏れた可能性を指摘された彼女は、魔導国が来る前に荷物を纏めてとっととおさらばし、身を潜めるつもりだった。しかし、彼女の想定していた以上に、魔導王は頭の回りが良いのか、現に彼らはブリュスタに攻め込んできたのである。

それでもなんとか冷静であろうと自身の気持ちを抑え込み、撤退の準備を進めていた。

 

「 リブロムの書は何処いった? 」

 

「 マリッサが持ってった。 」

 

「 アイツ・・・ったくしょうがないなぁ。 」

 

 トラブルメーカー気質な同じ魔法詠唱者の顔を浮かべ、バオーは少し苛立った。

 

 

「 チィッ・・・さっきからちょこまかと! 」

 

 丁度同じ頃、ブリュスタの外。月の下で同じように苛立っていたものがいた。漆黒の鎧を身に纏い、漆黒の翼をはためかせ、黒壇色のバルディッシュを振るう乙女。彼女の名はアルベド。アインズ・ウール・ゴウン魔導国宰相にして、本拠たるナザリック地下大墳墓守護者統括。兼ねてよりアインズ王とは別のプレイヤーを、部隊を率いて探していた彼女は、ようやく見つけ出し、こうして幻想トリップの一人、あすかみんと交戦している。しかし、耐久力に長けるアルベドに対し、あすかみんは機動力に優れた忍者である。攻撃は次々と躱されていた。

 

「 私はこっちだよ、大口ゴリラ! 」

 

「 その呼び名・・・! 」

 

 アルベドの怒りは更に加速化した。あすかみんの罵倒が、愛しいアインズ様を奪おうとする、あの第一〜三階層守護者がいつぞやいってたのと同じだからだ。

 

「 殺してやるわ、エロガエル! 」

 

「 エロガエル!? 」

 

 あすかみんは驚いていた。エロガエルだなんていわれたことがなかったからだ。確かに、彼女は胸が大きいとよくギルドメンバーにいわれていたのだ。

そして、アルベドはそんなあすかみんの揺れる巨乳に、下までムラムラし始めていた。

 

「 そうやって動き回って、ユッサユッサとそんなデッカイおっぱい揺らしてぇ・・・私が今、どれだけ我慢してると思ってるのぉ!? 」

 

「 なにいって・・・ 」

 

「 私が勝ったら、アンタを貰うわぁ!! 」

 

 アルベドのバルディッシュの一撃が降りかかる。あすかみんは紙一重で躱すが二撃三撃と連続で繰り出される。

動揺していて反応が遅れたこともあり、それらは、得物の苦無で受け止めざるを得ない。

女悪魔の猛攻はやまず、あすかみんや回避や防御に手一杯だ。そのままではきりが無い。

彼女のビルドは忍術をメインにしている。

それを唱える暇を、アルベドは与えてくれない。

あすかみんはなんとか距離を取り、彼女の動きを鈍らせようとした。

 

〈 足殺し 〉

 

 対象に短刀を投げて、移動速度を遅めるスキルである。アルベドにはあまりダメージを与えられていないようだが、なんとか術を唱えるチャンスを儲けられた。

 

〈 不動金縛りの術 〉

 

 相手の身動きを封じる術だ。動けぬアルベドは意地でも距離を詰めようとするが、あすかみんはさらなる術を放った。

 

〈 影技分身の術 〉

 

 自分より弱い分身を生成する術により、アルベドを四方から包囲し、更に印を結ぶ。

 

〈 爆炎陣 〉

 

 爆炎と炎で相手を包み込み術だ。それを四人、といってもそのうち三人は分身なので実質2.5人分程の威力だ。

 

「 うぐ・・・! 」

 

 痛がる素振り自体は見せるが、あすかみんにはまるで効いていないように見えた。ここまでやって効かないとなると、彼女にはアルベドのビルドが如何なるものかがより明確に分かり始めていた。

 

「 やっぱり、タンクか。 」

 

 タンク。相手の攻撃を受けて、チームの盾になる前衛職の通称だ。これほどの強度を誇るアルベドはまさしくそれである。

 

「 そうよぉ。硬さと腕っぷしが自慢なの。あまり、手荒いマネはしたくないのだけど、あの方の、アインズ様の命なら仕方ないわよね? 」

 

「 やっぱり魔導王の差し金。目的は何!? 」

 

「 貴女たちのようなプレイヤーは、将来アインズ様の障害になり得るもの。夫に尽くすのは、妻の努めよねぇ?貴女も頂くけどね♥ 」

 

「 妻・・・!? 」

 

「 そう。私はあの方の為なら、なんだってするわぁ♥それが、愛ですもの。あぁ、モモ・・・じゃなかったアインズ様ァァ♥♥ 」

 

 傍からは分かりづらいが、アルベドは鎧、ヘルメス・トリスメギストスの下で、狂気的な笑みを浮かべている。あすかみんは混乱した。彼女はマリッサ程ではないが、この世界の情勢にはそこそこ詳しいつもりだった。魔導王は今、独身であり、籍を入れたという話しは聞かないのだ。

 

「 それよりも・・・ 」

 

 色々と頭が可笑しくなりそうだが、とにかくは現状を打破せねばならない。仲間の逃走までの時間を稼ぐ。

それには忍術では火力不足だ。タンクのアルベドに有効打らしいそれは与えられないのは、歴然であった。その為、彼女は・・・

 

「 うおおおおお! 」

 

 短刀二刀流に持ち替え、再び接近戦を挑む。

 

「 オラオラァ! 」

 

 先に攻撃を仕掛けた分身たちが、アルベドのバルディッシュの斬撃で消えていく。だが、あすかみんは恐れず、斬りかかる。

 

「 喰らえぇぇぇえ! 」

 

〈 半蔵流乱れ咲き 〉

 

 忍者系スキル最強クラスの斬撃を放つ技だ。これとは別にハンゾウというモンスターがいるが、これは関係ない。あすかみんの短刀の連撃が、アルベドを襲う。が、そのまま受けてやるわけがない。

 

〈 イージス 〉

 

 ダメージ量を減らすスキルだ。斬撃の嵐をバルディッシュの柄で受け、反撃の一撃を放った。

 

「 ああぁぁあああ!! 」

 

 服が破け、あすかみんはふっ飛ばされ木にぶつかり、地面に倒れ込む。

 

「 な、なにが・・・ 」

 

 あすかみんは困惑した。先の一撃で、防具が破損したからである。一応、伝説級クラスの防具で、彼女のような忍者系ビルドのプレイヤーが装備する中では最高クラスの防御力を誇るはずなのだが。

 

「 流石は至高の御方々と同じ領域にいるだけあるわ。少し痛かったわよ。でも、服がはだけちゃったわね? 」

 

 勝利を確信してか、ヘルムを外すアルベド。月光の下に晒された薄ら笑みを浮かべるその顔は、その長い黒髪はいつにもまして美しかった。あすかみんも見とれてしまう程に。

 

「 どうして・・・ 」

 

「 それ、そこそこ上物の装備なんでしょ?でも、壊れちゃったら、元も子もないわ。 」

 

 迫りくるアルベドを目の当たりにして、あすかみんは防具がいとも容易く破壊された原因を悟る。アレだ。あのバルディッシュだ。

 

「 まさか、ワールド・・・ 」

 

「 そうよ。私の生みの親、タブラ・スマラグディナ様が授けてくださったものよ。 」

 

 「 真なる無 」。アルベドの持つワールドアイテムの名だ。対物体最強を誇るこのアイテムにおける物体とは、装備も含まれている。あすかみんのそれのような、動きやすさを旨とした防具には、相性最悪の武器だ。

これを打破するには、己もワールドアイテム、「 アムリタオーブ 」を使わざるを得ない。このアイテムは日に二度だけ、使ったものの体力を全快し、バッドステータスも解除する。しかし、それを使った瞬間、自分たちがワールドアイテムを持っているとバレるリスクがある。そして、あすかみんには、それを使うか否かの選択をする時間すら与えられない。

 

「 そぉれ♪ 」

 

 アルベドはあすかみんの破壊された防具の生地を掴み、ビリビリに引き裂いた。

豊満な胸がより剥き出しになり、アルベドは優しく揉みしだき始める。そう、以前別の名を名乗っていた頃の魔導王が自身にそうしてくれたように。

 

「 はぁ・・・はぁ・・・やめ、て・・・ 」

 

「 気持ちいいのね?こうやっておっぱい揉まれるの。喘いでるところも可愛いわぁ♪ 」

 

「 そ、そんな・・・ 」

 

「 私ねぇ、貴女みたいにタッパの小さい娘、大好きよぉ♥♥ 」

 

「 あぁ・・・♥♥♥ 」

 

 耳元で囁く、淫魔の吐息。それを受けたあすかみんは危機的状況下にありながら、気分が高騰してしまう。そして彼女は知らぬ間に、アルベドに抱きかかえられていた。この状態ではもう、逃げられない。

 

「 こっちの初めては、アインズ様に捧げたわ♥ 」

 

 アルベドは口元に、あすかみんの唇が運ばれ、そして・・・

 

 

 

 

『 〈 魔法最強化龍雷 〉 』

 

 突如として、淫魔に青い雷が落ちる。その時、解放されたあすかみんはハッとなって、その場から離れた。ドラゴンライトニング。第五位階の雷属性魔法。アルベド程のレベルを相手にするには役に立たないが、注意を引きつけるには申し分ない。

 

「 誰!? 」

 

 いい感じのムードを台無しにされたアルベドは怒り心頭だ。あすかみんという気に入った女を見つけ、つまみ食い、調教した後にアインズ様に献上しようという時に、水をさすが如く雷を放ったものの姿は、直ぐに発見できた。

月に背に浮かぶ、紺衣の男。月光を受けてアルベドを見下ろすその姿は、強者の風格を感じさせた。

 

「 貴女、何者? 」

 

「 ブタゴリラに名乗る名は無い。 」

 

「 ブタ・・・! 」

 

「 お前のことをいったのだ、ブタゴリラ・・・! 」

 

 バオーも怒っていた。仲間のピンチに駆けつけてみれば、どことも知らぬ女淫魔が、ギルドメンバーであるあすかみんを陵辱せんとしていたのだから。

彼としては、できればこの卑しいサキュバスを生かして返したくはない。が、今の目的は仲間が全員逃げるだけの時間を稼ぐことだ。

 

「 誰が・・・ブタゴリラよぉぉぉお!! 」

 

 逆情しながらヘルムを装備し直し、飛翔したアルベドの怒りの一撃が迫りくるが、バオーは冷静に対処した。

 

『 〈 大顎竜巻 〉 』

 

 高さ百メーター、更に中に全長六メーターはあろうサメの影が見える竜巻が、アルベドに襲い来る。彼女はこの魔法を覚えていた。

あのヤツメウナギが精神支配を受けた時、アインズが繰り出した魔法の一つである。

嵐に呑まれ、足止めを喰らう。

 

『〈 魔法最強化 〉』

 

 バオーは、ここで一つ試してみることにした。

何を。開発途中の、新しい魔法だ。

彼は、「 蒼の薔薇 」なるアダマンタイト級冒険者チームの魔法詠唱者が、YGGDRASILにないオリジナルの魔法を開発したときき、自分も出来るのではないかと研究してみたのだ。

雷属性をこよなく愛する彼の目指したものは、

「 第十位階の雷属性魔法 」だった。

第九位階である〈 万雷の殲滅 〉の更に上を作ろうというわけだ。

様々な試行錯誤の末に、

第七位階〈 連鎖する龍雷 〉のそれを応用し、より威力を高め、ようやく完成に近づいたのだ。

それを今、試す時が来たのである。

 

「 何? 」

 

 サメの竜巻を突破したアルベドが目にしたのは、月明かりに照らされ、両腕に電気を纏い、構える男と、それを取り囲むように舞う、雷の龍だ。

魔法最強化によって、術者本人の想定よりも、大きくなっている。口の中に、アルベドくらいのサイズがざっと十人は入れるくらいのサイズだ。

最も、こんなのに食われたらひとたまりもないだろうが。

 

「 コイツを耐えれるか?コウモリゴリラ。 」

 

この龍状の雷に阻まれ、アルベドはバオーに接近出来ない。彼女は、なにが起きているのかを把握するが、時既に遅し。

青く光る目で睨む男は、お手製の魔法を放つ。

 

「〈 雷霊龍神 〉」

 

 コール・サカーニ。サカーニとはハンガリー古くより伝わる、天候の精霊の名だ。その名の意味は、「 ドラゴン 」。まさしく読んで字のごとく。

紺碧の龍は、淫魔をその口に呑み込んだ。

 

「 ガアァァァァァァァア!! 」

 

 アルベドの全身に、雷が走る。元々耐久力に秀でた彼女であるが、そんな彼女が、彼女の纏う鎧、ヘルメス・トリスメギストスが、打ち砕かれる。

このまま自分は死ぬかもしれない。

そんな時に脳裏をよぎるは、愛しきあの人。

自身の設定を書き換え、己の色に染めてくれた、あのお方。

至高の御方。無能な我が身をお許しくださいと、女は心の中で懺悔した。

 

「 モモンガ様ァァァァァア!!! 」

 

 女の絶叫が木霊した直後、雷龍は消え、アルベドは力なく地に落ちていく。その姿に、さっきまでの勇猛さは感じられない。バオーはモモンガなる人物の名を叫んだ彼女に思うところがあったのか、優しく受け止め、地上に降り立つ。

 

「 まったくよく焦げる。ブタらしいブタ。だが猪のように勇猛果敢。イノブタだな。

・・・食ってやるのは、オレの務めではないか。 」

 

 二重の影という異形になってしまったわが身にも、他者を思う心が残っているものだと我ながら感心されられ、懐より赤いポーションを取り出し、栓を開け、半分ほどだがアルベドの口に含ませる。

残りの半分は彼自身が飲んだ。麗しき淫魔の傷はみるみるうちに癒えていく。先ほどのそれが嘘であったかのように。

健やかに眠る女の顔を、紺衣の二重の影は覗いた。

 

「 意識があるなら覚えておけ、宰相アルベド。

・・・オレの名はバオー。

紺色のバオー・ヴェル、なんて呼ばれてた。 」

 

 随分と、昔のことを思い出し、染み染みとするが、そういえばと在りし日のこととは別に忘れていたことがあった。

仲間のことだ。あすかみんは隙を見て逃げおおせたようだが、他の三人、先行して迎撃に向かったイザヨイとサーナ、自分と同じくその援護に回ったであろうカッツェだ。

彼らならば後れを取ることはないだろうが、少し不安になるところだ。が、直ぐにそのモヤモヤは解消されることとなる。

 

『 いえゆい のぼめの れんみり よじゅよご・・・ 』

 

 透き通るような、綺麗な歌声が、大森林中に響き渡る。意味はパッと見れば分からないが、縦に読めば、古の物語の血濡れた夢の歴史を読み解くことが出来るとかなんとかと聞いて、解読したことがあるのを、バオーは覚えていた。

この唄の主は、サーナである。

彼女は、ある特殊な職業スキルを得たドルイドなのだ。

『 エルダーサモナー 』。サモナーのスキルを修めた者だけがなれるジョブだ。

YGGDRASILの売り上げが低迷し始めた頃、運営側には、多くの試みを取り入れる動きがみられた。

その一つが、今となってはお伽噺同然の、古のファンタジー作品の要素を取り入れるというものだ。

その一つが、サーナの持つこのジョブであり、彼女の持つ、ワールドアイテムである。

この唄を歌うことで、呼び出せるモンスターがいる。様々なバージョンがあれども、最も知られているのは、この唄の魔法によるものだ。

今回呼ぶのは、果たしてどちらか。バオーは期待していると、早速その姿をみることとなる。

 

「 ほう、今回はアレか。 」

 

 天に描かれた魔法陣から、それは現れた。

黒く逞しい肉体。朱色の大きな翼。その姿は西洋の竜を思わせる。

この世界にも、ドラゴンはいると聞いているが、アレだけ強大なものなど、かなり上位の存在くらいだろう、そう思えるほどに、その存在感は濃く、見るものの脳に、その勇姿が刻み込まれる。

それは、口にエネルギーを収束させ、それを地に放つ。

 

「〈 陽竜業炎 〉」

 

 サーナの持つ魔法の中で、二番目の火力を誇る召喚魔法。第十位階相当の無属性広範囲攻撃だ。凄まじい威力のそれは、大森林の木々を吹き飛ばしていった。その後に、耳元にギルドマスターの声が響く。

 

『 バオー! 』

 

 通信か。

 

「 レ・ムゥ。みんなは? 」

 

『 なんとか逃げおおせたわ。ギルドアイテムも処分済み。アンタも頃合い見てその場から逃げなさい。 』

 

「 了解。 」

 

 〈 陽竜業炎 〉でできたクレーターからおそらく〈 飛行 〉で飛んでいく仲間たちの姿を認めると、バオーも、その場を後にした。

 

 

 




 次回、バオー帝国に行く。心も化け物になりかけの彼はアインズ様に心折られ、大人になれないジルくんの強がりを一つ聴いてやれるのだろうか。ご期待ください。

ちなみにサーナの呼んだバハムートっぽいなにかの必殺技の読みは、〈 陽竜業炎 〉で、メガフレアです。
何卒よしなに。
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