幻想トリップ   作:ニコラス―NICORUTH―

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 予告していた通り、ナーベラル回です。オリジナルというか、エルデンリングからの魔法ばっかでてきますが、そこはご了承を。



月の下で

 翌日の晩。エ・ランテルよりすぐ上、トブの大森林。ここはおおよそ余人には手強いレベルのモンスターたちが生態系を形成している。そのヒエラルキーの一番上にいた3体の内、2体は魔導国に従う事となり、のこり一体、「 東の巨人 」もあっさりと討伐された。開拓の進んだ今となってもなお、人間にとって、依然この森が危険地帯であることに変わりなかった。

そう、人間にとっては。

 

「 ・・・静かだな。 」

 

 青白い月の照らす夜の闇のなかに、バオーはいた。この大森林にはナザリック地下大墳墓からかなり近かったものの、そのステルス性により、最近までその目を逃れていた彼らの拠点であった城、ブリュスタがある。その為、この地で過ごす夜というのは今晩が初めてではない。魔法を開発する合間に、外にでて、練習したりしていたのだ。そんな時は決まって夜だった。この森から見つめる月も久しぶりだ。幻想トリップにいた頃も、用事で他所に出向くことはあったが、こことカッツェ平野の月がとても美しかったのを覚えている。

月に見惚れていると思うのだ。やはりオレは、夜のほうが好きだと。

 

「 こんばんわ。 」

 

「 ・・・!? 」

 

 突然、後ろから聞こえてきた声に不意打ちを受ける。といっても物理的にうけたわけでは無い。気がハッと動転したという意味である。こんな夜中に出歩くとは、当然人間ではないだろう。

後ろを振り向くと、彼女はいた。

 

「 月が綺麗ですね。 」

 

 至って普通の旅人らしい服装の黒いポニーテールに髪を結っている見目麗しい女。バオーは彼女に会うために、この場に来たのだ。

 

「 お前が、ナーベラルか。 」

 

「 であれば、なんでしょうか? 」

 

「 オレが誰なのかって聞かないのか? 」

 

「 聞かずとも分かります。姉妹たちが貴方がたについて噂しているのを耳にしましたから。

新しくギルドに加入なさる方、それもアルベド様を倒しかけた実力者なのだとか。

ねぇ、雷帝?あの御方は、よく貴方のお話をモモンガ様や武人武御雷様になさっていましたよ。 」

 

「 その呼び名は好きじゃないな。 」

 

「 何故です?逞しくて強そうでしょう。それよりも――― 」

 

 ナーベラルはバオーに近寄り、その間近まで迫った時、その手を取って、自身の秘部へと押し当てた。

 

「 ―――! 」

 

 紺衣の男の内に込み上がる、なんともいえぬナニカ。男としての本能的に興奮しているというのもある。この女にソレが備わっていると知り、意外に思っているというのもある。しかし、それ以上に自分から進んでこのような行為に及んだ彼女の得体のしれなさ、ナーベラル・ガンマという異形の女に何処か戦慄している。

複雑ながらも、不快感や情欲、それらが一変に来て、混ざりあって言葉で表し難い。故に、なんともいえないのである。

男の顔のもとで、彼女は小声で囁く。

 

「 ―――どうですか?私のカブトムシ。とても大きいでしょう♥ 」

 

 なんとまぁ、下品なことか。アイツが見たらどんな顔をするか。

だが今は、コイツのナニを気にしてるばあいではない。

 

「 離れてくれないか? 」

 

「 いいじゃないですか・・・ 」

 

「 離れろ・・・! 」

 

 バオーの静かな圧に、ナーベラルは驚いて彼から距離を取った。

この男の質問攻めは続く。

 

「 女は何人抱いた? 」

 

「 数えていませんね。 」

 

「 蟲だからか? 」

 

「 以前のわたしならば、そう答えたでしょう。しかし、今は違います。 」

 

 前までのナーベラルの性格は、モモンガから聞いていた。恐ろしく人間が嫌いで、虫扱いまでしていたらしい。後に全滅することとなってしまう冒険者チーム「 漆黒 」とトブの大森林まで旅をしていた時も、その美貌に惹かれ、ナンパしまくるレンジャーを「 ナメクジ 」やら「 ヤブカ 」やらと罵倒していたらしい。心の底から。故にその当時、モモンとして活動し始めたばかりのモモンガは内心ヒヤヒヤしていたのだとか。

そして、ナンパしていた彼は、エ・ランテルで一度二人と別れた後に、仲間諸共殺害され、ゾンビになっていたそうだ。

最後に欲情するのが、口々に罵る結婚できそうにない地雷とは。

―――哀れだよ、炎に向かう、蛾のようだ。

とバオーは心のなかで嘆いていた。

 

「 ならば聞こう。今のお前にとって、人間とは? 」

 

 以前、モモンガにそう聞かれた時の答えは、「ゴミです。」である。

今回も、碌でもない答えが返ってきた。

 

「 この身の情欲の、捌け口です。ないし、苗床ですよ。 」

 

「 身体しか愛してないわけだ。抱いてきた女たちのことは。 」

 

「 世の中なんてそんなものでしょう?みんな最初は見かけを宛にするんですから。 」

 

「 美姫ナーベが形無しだな。弐式炎雷に泣かれるぞ。 」

 

「 良いではありませんか。こんな側面があっても。英雄色を好むというでしょう? 」

 

「 確かにそうではあるが・・・ 」

 

「 それに、弐式炎雷様は、お戻りにはなられませんから。泣こうにも泣けませんよ。 」

 

 ナーベラルは開き直っていた。姉のユリが自身の身に起きた変化と、創造主への感謝から幾万もの突きの修行を為したと聞いたのと、対象的に思えた。

彼女はやまいこへの最大限のリスペクトがあったが故にそこまでできた。だがナーベラルには、創造主である筈の弐式炎雷へのそれを感じられない。蔑んでいるわけでもないようであるが、無関心とでも言えるほどに、冷淡であった。

それ故に、バオーの中で、ある疑惑が大きくなっていた。

それは、エントマと会話をしていたときのことである。

 

 

「 旗が落とされていた? 」

 

「 うん。ナザリック第十回層には、アインズ様がいつも座ってる玉座の間があって、そこには至高の御方々の旗が掲げられてるんだけど、それがある日、一つ落とされてたんだ。誰かが魔法で破壊したみたい。いたずらにしては度が過ぎてるよ。 」

 

 エントマのその声色には、うっすらと怒気が含まれていた。この愛らしい仮面の下で、彼女が崇める者たちを貶す行為に憤りを見せているのがわかる。

バオーは、おおよそ察しがつきながらも、聞いてみることとしたのだ。

 

「 その旗は誰のだ? 」

 

「 ・・・弐式炎雷様。ナーベラルお姉様の創造主だよ。 」

 

「 あいつか。 」

 

「 知ってるの? 」

 

「 昔、ちよっとな。 」

 

 エントマは他に、現在の玉座の間の旗が弐式炎雷のもの以外のものも斃されているらしいことを教えてくれた。

わかっているのは自分から落としたらしいモモンガのものと、アルベドの生みの親であるタブラ・スマラグディナのもの、今は亡きベルリバー氏、デミウルゴスの創造主、ウルベルトのものだとか。

その為、バオーは確信を持つこととなる。

 

「 お前だな。アイツの旗を落としたのは。 」

 

「 それを知ってどうします? 」

 

「 どうします、か。 」

 

 バオーの感情の昂りとともに、その身に青い雷が迸る。夜の闇の中を、雷光に照らされ、紺色のローブが光を放っていた。弐式炎雷。モモンガを除いてこの男がよく知るかつてのアインズ・ウール・ゴウンのメンバー。「 雷帝 」の好敵手。彼とは幾度戦ったろう。彼の双刃を幾度受けたことだろう。幾度雷を放ったろう。そしてそれを躱しながら、韋駄天の如く駆ける彼を、未だに忘れずにはいられない。それ程までに、彼に敬意を払っていたし、引退したと聞いた時、どれだけショックを受けたろう。

そんな弐式炎雷の旗を落とす。ナーベラルのこの行為は、バオーには許し難かった。

 

「 どうもしないな。ただモモンガさんにいわれてるんでな。お前を半殺しにしてやるだけだ。ゴブリンゲンガー? 」

 

 

「 ゴブリンを竿役扱いですか。カルネ村をご存じで・・・ 」

 

 刹那、ナーベラルに降りかかる青白い雷。

さながら怒りを買うことを指す雷が落ちるという言い回しの具現のようである。

 

 

「 知るかよカマドウマ。 」

 

 バオーの翳した右手から、白い魔法陣が展開されていた。第九位階魔法〈万雷の殲滅〉である。

落雷の衝撃ッ、土煙がたち込める。

それが晴れると、ナーベラルの立っていた場所の土が抉れているが、彼女自身は見当たらない。

何処にいった?といってもすぐにわかった。

―――転移魔法か。

そして、お返しはすぐに返ってきた。

 

「〈重力渦〉!」

 

 グラビティメイルシュトローム。100レベルにもダメージを与えられる重力属性魔法。漆黒の渦巻く球体が、前方からバオーに降りかかる。それに対して咄嗟に魔法を詠唱する。

 

「〈飛行〉!〈次元の移動〉!」

 

〈飛行〉。魔法詠唱者にはおなじみの空を飛べるようになる魔法と、下位の転移魔法である〈次元の移動〉である。本当ならば〈上位転移〉を使いたいところだが、MPを節約しなければならない制約上、こちらで十分だった。魔法詠唱者同士の戦いは持久戦である。先にMPが尽きた方が負けといって過言ではないのだ。同様の理由で補助魔法も、使える種類、回数、タイミングは限られる。

 かくしてその姿は一瞬にして消え、月を背にナーベラルと対峙する。

 

「 おや?同じ魔法で躱されましたか。運命を感じますね。 」

 

 どうやらあちらも、同じ魔法で対応したようだ。彼女は変わらず、薄ら笑みを浮かべている。

しかし、運命か。ある意味必然なのかもしれない。かつてのライバルの娘同然のNPC。それが自意識に目覚め啓蒙され、今こうして自分の前にいる。

確かに、ある種の宿命に近いものを感じるようだった。嵐呼びを取り出す、その眼光はナーベラルを捉えていた。

先の〈重力渦〉は、元来彼女の覚えていた魔法ではない。モモンガから、以前の彼女のことを、事前に聞いていたのだ。

曰く、当時のナーベラル・ガンマはプレアデスの中でも一番レベルが高く、雷属性に特化した魔法詠唱者であったのだという。

生みの親の弐式炎雷の極端なビルド思想が反映された結果なのだとか。

なるほどアイツらしい、とその時頷いていたのを覚えている。

がしかし案の定、目の前の彼女はレベルアップに伴い、それまで覚えていなかった魔法、スキルを会得している。エントマがレン・ スパイダーを呼べるようになっていたのと、ユリがゾディアック・アデプトのスキルや、〈化身観音〉を体得していたのと同じことが、ナーベラルにも起こっている。

本来ならば、相手の出方や情報を戦いの中で伺うものなのだろうが、そんなまどろっこしいことはしていられない。魔法詠唱者のメインとなる攻撃方法は必然的に魔法だ。

それはきっと向こうも同じ。

 

「 やる気満々のご様子。モモンガ様の仰せであるならば、仕方ありませんね。 」

 

 ナーベラルは、自身の着ていた服を脱ぎ捨てた。

 

「 ・・・! 」

 

 メイド服をベースに、鉄製のパーツが取り入れられ、腹部には、十字の剣のような意匠がある。

どうやらこれが、彼女のユニフォームのようだ。

 

「 似合ってるな。内面とは釣り合わぬほどに。 」

 

「 私を褒めてもなにもでませんよ。 」

 

「 いくぞ、親不孝者。 」

 

「 私に、親はいませんよ。カナブンさん♥ 」

 

 バオーとナーベラルの戦いが幕を開けた。

方や弐式炎雷という男に、敬意を表するもの。方や弐式炎雷という親を冒涜するものである。

 

「〈 魔法最強化!ほうき星! 〉」

 

「 〈魔法最強化!星砕き!〉 」

 

 バオーの手から再び魔法陣が現れ、それより青く太い光が放たれる。ブルームスター。第八位階の無属性攻撃魔法だ。

一方のナーベラルは杖を突き出し、同じく第八位階のスタークラッシャーを唱え、複数の重力弾を発射。これを相殺した。

残った弾が、バオーに迫る。

 

「〈次元の移動〉!」

 

 咄嗟に転移魔法を唱えると、一瞬にしてその姿は消え、背後を取り、嵐呼びに備わった刃で斬りかかる。接近戦に持ち込むつもりだ。

 

「 〈次元の移動〉! 」

 

 ナーベラルの姿が消える。バオーと同じ魔法だ。

彼より高い標高に、その姿が見えた。

 

「 〈魔法最強化!暗黒の流星〉! 」

 

 アステールメテオ。第九位階に位置する重力魔法であり、その名の通り、流星を落とす。第十位階の〈流星落下〉ほどの威力はないが、その数は一つではない。まさしく流星群である。

 

( そいつで来たか。 )

 

 無数に飛来する隕石の中を、バオーはさながらシューティングゲームのようにかき分け、華麗に回避していく。

重力魔法の多くは、対象を引き寄せ、逃げづらくする効果があるが、この魔法にはそれがない。

そのため、隕石の軌道さえ見切れれば、この通り躱して進める。しかしこれまた懐かしいものだと感慨深い思っていた。

 

―――レ・ムゥやマリッサとも、こうやって遊んでいたものだ。

幻想トリップには、ある特殊な修練のようなものが存在していた。「 弾幕ごっこ 」と呼ばれたそれの用途は、相手の飛び道具、ないし魔法の回避率をあげる事だった。YGGDRASILではそれが一体何処までの成果があったのかは測りかねなかったが、今まさに、それが活きているようだった。そんな刹那、ふとかつての仲間のことが過る。

今となってはギルドは解散となったが、彼らは元気にしているだろうか。

 

「〈三重魔法位階上昇化!魔術の輝剣!〉」

 

 ブリリアント・マジックソード。魔力で形成された輝く剣を相手に発射する魔法。

本来ならば第三位階に位置するそれは、〈魔法位階上昇〉によって、第八位階相当にまで威力が引き上げられている。

 よくYGGDRASILプレイヤーの多くは、

「 〈魔法の矢〉でよくね? 」とこの魔法を軽んじていたものの、実際にはそれとはまるで違う使用法が確立されている。

まず〈魔法の矢〉と違い、発射源が腕ではない。使用した場所に魔力が放出され、それが剣の形状を取って発射されるという仕組みである。その為〈魔法の矢〉と違って腕を介さない。

もう一つは・・・

 

「 !? 」

 

 その性質上、発射されるのは時間差であること。これこそがこの魔法最大の特徴である。流星が止んだ後、放たれた魔力から剣が形成される。通常ならば1本のところ、〈魔法位階向上化〉によって、4本、更に〈魔法三重化〉で効果が三倍になって12本にまで増加し、ナーベラル目掛けて放たれる。

 

「〈魔法位階向上化!岩石弾!〉」

 

 本来ならば、第四位階の重力魔法、ロック・ショット。こちらも〈魔法位階向上化〉で、第九位階に引き上げられている。重力によって浮き上がった岩石に、〈魔力の輝剣〉が突き刺さり、粉々に砕け散る。

バオーは飛び散る石塊にも目もくれない。

ナーベラルの間近にまで、再び接近し、今度こそ嵐呼びを振り下ろす。

対するナーベラルも、ケラウノスIIIの柄で受け止める。

 

「 魔法詠唱者が接近戦とは・・・! 」

 

「 悪いかい? 」

 

「 いいえ。構いませんよ。 」

 

 最初、バオーはこの戦いを持久戦だと思っていた。それは魔法詠唱者のビルドが、MPで戦うものだからだ。それを注視するが故にHPは疎かになりかける。そこを突くこととした。回復魔法にも、リソースを掛けざるを得なくなるであろうことも考慮して。嵐呼びが、その形状から近接戦闘にもある程度耐えうるのも理由の一つだ。

 それから、魔法詠唱者同士の戦いとは思えぬ、近距離戦が繰り広げられる。

 

「 でも魔法詠唱者らしくして欲しいですね! 」

 

「 そうかよ。 」

 

 

 

 

「 始まったか・・・。 」

 

 二人のいる地点から少し離れた場所。木々に囲まれた大自然の中、モモンガは〈遠隔視の鏡 〉で、彼らの様子を伺っていた。

その側には彼の腹心。守護者統括と彼が息子と表する軍服の男。その周囲には、複数のデスナイトが警戒している。

 

「 ンナァインズ様。何故、彼とナーベラルを戦わせようとお考えに? 」

 

 パンドラズ・アクターは率直な疑問をモモンガに投げかけた。

 

「 愚問ね。アイツは他にも、魔法を開発しているもの。それを把握する為よ。ですよね、アァインズ様? 」

 

 アルベドの答えに、モモンガはその白い頭蓋骨をコクリと振る。

 

「 その通りだ。加えていえば、今ナーベラルが覚えている魔法も知っておく為でもある。あの杖のせいでだいぶ変わってしまったからな。改めて、彼女を知るというのも、大切なことだと判断したまでだ。といっても、今使ってる魔法の大半は、エルデンイベント以降に実装されたものだ。アルベドのいうような、オリジナル魔法は今のところ見受けられない、か。それよりも、問題は・・・ 」

 

 魔法の内容以上にナーベラルの行動にこそ、モモンガは気が惹かれている。

彼女は自身の創造主である筈の弐式炎雷の旗を自ら落とした。許される行為であるか否かはともかく、想像以上の変化に、戸惑いを禁じ得ない。

それを隣でみていたパンドラズ・アクターはある行動にでた。

 

「 お許し下さい父上ェ!! 」

 

「 父上!? 」

 

 土下座である。どうやら旗の件に関して、後ろめたいことがあるようであるが、アルベドは彼がモモンガを父と呼んだことの方に、気がいっていた。

 

「 ど、どうしたんだ、パンドラズ・アクター!? 」

 

「 実は・・・ん私はナーベラルが旗を落としたことは、以前から知っていたのです! 」

 

「 そ、そうなのか。 」

 

 パンドラズ・アクターは、何故そのことを黙っていたのかを説明し始めた。

旗が落とされたと聞いた時、アインズは事態が深刻になり、ナザリック内での腹の弄り合いや、殺し合いに発展することを危惧し、この件について深入りするなと釘をさしていたのだが、彼は誰が落としたのかが気になって、こっそりと調べることとしたのだという。

宝物殿を抜けだし、玉座の間の旗をみたところ、弐式炎雷の旗には、物理的にへし折ったような形跡はなく、何者かが魔法で落としたのだと知る。

とすれば犯人は魔法詠唱者になるわけだが、ナザリックの中で、〈上位道具破壊〉を会得している魔法詠唱者とは一人しか考えられなかった。

がしかしパンドラは、モモンガがメンバーを大事に思っていることを知っていた。それゆえに、彼がそんなことをするはずがないとも思い、洗い流すこととなる。その結果、ある人物が劇的に変化していることを知った。

その人物こそが、ナーベラル・ガンマだった。

曰く、ある日啓蒙の杖なるアイテムを持って帰ってきた時を日切りに、人が変わったようになってしまったそうなのだという。

啓蒙の杖なるアイテムは、アインズが持っているため宝物殿には置かれていなかったので調べようがなかったが、彼女の変化は押して測る事ができた。モモンとして表で活動している時、彼女は空き家に女性を誘い、性行為に及ぶことが多くなったのが、その最たるものだった。アレだけ下にみていた人間と交わっている事実が、以前までの彼女ではなくなった何よりの証左だったのだ。

そうしてある時、ナーベラルに聞いたのだ。

 

「 貴女にとって、至高の御方々とは? 」

 

 

そしたら彼女からこう返ってきたのだ。

 

「 敬愛すべき方々ですよ。ただ一人、あの男を除いては。 」

 

 その時、パンドラズ・アクターは察した。

―――彼女が、旗を落としたのだ。

と。

 

 

「 父上の言いつけを破ってしまった以上、どうしてもいいだせなかったのです!しかも、彼女、その後にン私を襲いかけたのです。ンエロ同人みたいんにぃい〜♪ 」

 

「 そうか。すまなかったな、パンドラズ・アクター。 」

 

「 すまなかった?すまなかったのこちらです父上!んどぉかン私に罰ぅを〜♪ 」

 

「 いやいやいいから。そういうのは。水に流せ。それよりも、他の旗についてはどうだったかわかるか? 」

 

「 はい。それが全く見当つかなかったのでございますぅ〜♪ナーベラルの落とした旗と違って、なにかで叩き落とされたような形跡があったので。

ン魔法詠唱者の彼女ではないと思いますが〜♪ 」

 

「 そうか・・・ 」

 

 モモンガは何処か残念そうである。仲間の旗を落としたのが、誰なのか。気になるところだが、打ち止めにせねばきりがあるまいし、彼自身あまり深入りしたくもなかった。

ナザリックの誰かなのだろうが、なにかしらのわけがあるのだろうし。

 

「 んところで父上。なにゆえ私たちはこんなところにぃ〜♪ 」

 

「 人気のないところといえば、ここかカッツェ平野しかなかったからな。第六階層の闘技場も、こないだの修繕が済んでいない。本当は彼の受け持った件も兼ねてバハルス帝国の闘技場を借りたかったが、あそこは魔法の使用を禁止している。

それでこのトブの大森林を選んだ。モモンもナーベもここに仕事でいる、ということにしてな。そして・・・ 」

 

「 そして? 」

 

「 竜王、ですね? 」

 

「 そうだ、アルベド。レベル100同士のぶつかり合いだ。規模が大きくなる以上、奴らが黙っていない可能性がある。そのために我々と、別の位置にアウラとマーレ、カッツェとマカマカ、エントマにシャルティアを待機させたのだ。これで十二分に奴らを迎え撃てるだろう。 」

 

 モモンガが最も警戒するもの。それは他の敵対的なプレイヤーもさることながらであるが、ある意味それ以上に厄介な存在たちだ。この世界の主ともいえる存在、竜王。その中でも、始原の魔法と呼ばれる、特殊な魔法を行使する真なる竜王である。

彼らは他の竜王と手を組んで、プレイヤーを目の敵にしているので、バオーとナーベラルの戦いに介入してくるやもしれないと考え、こうして迎撃体勢を整えたのである。

 

「 さてと・・・ 」

 

 アインズは視線を、〈遠隔視の鏡〉にむける。

二人は未だに、月の下で、かち合っているようだ。

 

( 他にもなにかあるんでしょう?バオーさん。見せてくださいよ、オリジナルの魔法。 )

 

 モモンガはワクワクのあまり、感情抑制が入った。




 次回、魔が差さなければ、バオーvsナーベラル、そのニ。お楽しみに。
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