幻想トリップ   作:ニコラス―NICORUTH―

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 今回も、元ネタはわかる人にはわかるオリキャラ登場の回。
時系列的には、前話の前に、なにがあったのかを数話かけて描く予定でございます。今回、下ネタもエロネタもなく、アインズ様の出番がございません。ご了承を。


蟻の国編
蟲の王、カフ姦


 アインズ・ウール・ゴウン魔導国がほぼすべての領土を統治している、大陸西部。その最東の西方の3大国、そのすぐ隣。

大陸中央西側。そこにも、人や亜人の国々が存在し、時折鎬を削っていたのだが、その種族間の均衡は突如崩れた。天秤がどちらかに傾くのではなく、横から殴り倒されるように。

 いつものような、日々の終焉は突然訪れた。人ならざる、異形の群れ、否軍勢の襲来だ。

その姿は様々。神話にでてくる天使や、悪魔を思わせるものや、人型の昆虫。それらは圧倒的な力でもって両陣営を蹴散らし、多くの国々を滅ぼしてまわる。

最も恐れられたのは、そんな彼らの中心ともよべる人物、通称「 王 」である。

彼は圧倒的な力でもって、一騎打ちに臨んだ人間の英雄たちを討ち滅ぼし、ビーストマンやミノタウロスといった亜人種を蹂躙する。それは恐ろしく凄惨な有様であったらしく、彼らは思わず、こう呟いたのだという。

 

「 何故、こんなことをするんだ? 」

 

 王の返しは、こうだった。

 

「 腹が空いた。 」

 

そうして、人種、亜人種の国々は王の軍勢の傘下となっていった。

この異常事態に、世界の守護者たる竜王も立ち上がるが、それもまた、敢え無く討ち倒されてしまう。もはや万事休すの民草は、「 王 」と、彼の築き上げる国を受け入れざるを得なかった。

 

 時はスレイン法国滅亡より、三月も経たぬ頃。

「 蟻の国 」。この「王」の統べる国はそう呼ばれていた。国を立ち上げる際に、名をつけるのを面倒くさがった「王」自身の意向により、そう呼ばれるようになった。人や亜人、そして王の同族たる異形種、「 昆虫人 」たちが共存し、調和を保っている。気候は寒く、農耕が盛んで林檎やほうれん草、馬鈴薯などが主な主産物となり、その規模もかなりのもので、供給も間に合っている。がしかし、その規模故に農家が作業中にポックリと突然死してしまう、いわゆる過労死が頻発し、国家を揺るがす問題となっていた。

そしてそんなこの国の首都王城。玉座の間にて、女が二人、王の前にひれ伏している。

一人は美しく、白と黒の翼を備えた青髪の女性。髪はツインテールに束ねている。この国の宰相である堕天使ハヤッセである。

もう一人もまた見目麗しい、黒い鎧を着た長身の女。桃色のショートボブで前髪で目が片方隠れている。分かりづらいがこの女もまた、異形種だ。

半魔巨人きりえらいと。軍司令官を担当している。この娘らと、「王」は、YGGDRASILのプレイヤーだ。自分たちの慣れ親しんだゲームの終焉を見届けようと最終日にログインし、そしてこの世界に転移することとなった。その後の彼らは西へ向かう事となり、今に至るわけである。

 

「 表をあげよ。 」

 

「 「はっ!」 」

 

 主、というよりリーダーの命に従い、二人は顔を上げて、王の顔をみた。

玉座には、これら以上の異形が鎮座していた。

緑色の外殻をした、人型の巨大アリ。身体は筋肉が発達しており、尾は爬虫類のそれのごとく長い。

彼こそがこの蟻の国の王である。

 

「 して、此度はなにようか? 」

 

 王の質問に、ハヤッセが答えた。

 

「 王よ。ブリュスタのギルドマスターより伝令です。魔導国の規模拡大に伴い、各々の身を守るべく、ギルドを解散したと。 」

 

「 アイテムも各自に分配し、城をでたそうです。 」

 

「 そうか。彼奴め、怖気づきおったか。 」

 

 王、カフ姦はギルドマスターの及び腰に呆れていた。彼らは元々ギルド「幻想トリップ」に所属していたが、長であるレ・ムゥと反りが合わずに、西からこの中央部西側に移動してきたのだ。人種、亜人種の粛清は彼や現地の昆虫人たちが腹を空かせ、食糧を得ようとしたことがきっかけであり、成り行きによって、この蟻の国は成立したと言っても良い。そうしているうちに、ギルドは解散してしまっていたとあっては目も当てられない。とはいえ、レ・ムゥがそのようにでる相手といえば、やはり魔導王か。奴はかの国を特に警戒していた。

 

 

「 して、各々の動向は? 」

 

 カフ姦は、今一番知りたい情報であろうことをユーカに尋ねる。幻想トリップが無くなったとあらば、やはり気がかりなのは中央に行くときについてこなかった他の者たちだ。

天使は、深刻そうに答えた。

 

「 ギルドマスターレ・ムゥ、並びにマリッサ、サーナ、バオー・ヴェルら、メンバーの幾人かの所在は不明。何処にいるのかも、まるで見当がつかないそうです。 」

 

「 ならば他の者は? 」

 

「 カッツェ・フォン・ベルリヒンゲン、マカマカ、そしてアリスティ。現在わかるだけでも、3人のメンバーが、魔導王の傘下に加わりました。 」

 

 そうか、あの三人か、とカフ姦は納得していた。

カッツェは血の気が多い気質があるので、暴れられる職場を求めるであろうし、マカマカは面白がって魔導王に与することが容易に想像できる。

アリスティはおそらく魔導王自身が、彼女を危険視したのだろう。

放っておけば、何をしでかすかわからないのが、あのゴーレムクラフターだ。この三人の中で、一番の脅威といっても差し支えない。如何にアインズ・ウール・ゴウンといえど、面倒の種を放置しておくわけが無いのだ。

かの第八階層で、1500人ものプレイヤーを、そしてこの世界でその数百倍以上の生命を屠った男なのだから。

 

「 現在、魔導国は西部の大半を掌握、リ・エスティーゼ王国、並びにスレイン法国を滅ぼしています。 」

 

「 評議国の元首、竜王ツァインドルクスも死亡しており、ギルドも解散となった今、彼らへの抑止となりうる存在は、現状西には存在しません。 」

 

「 王よ、この国に奴らが攻め入るのも、時間の問題です! 」

 

「 どうか、ご決断を! 」

 

 ハヤッセときりえらいとが必死な様子で訴える。彼女らはこれまでカフ姦に信頼を置き、彼に剣を委ねる事とした、いわば忠臣たちだ。

そんな彼女たちの願いに、王はしばしの沈黙を守った後に、それを破った。

 

「 ハヤッセよ、一つ聞こう。 」

 

「 はい。如何に? 」

 

「 魔導国も農耕をしておったな。 」

 

「 はい。アンデッドで畑を耕していると聞いております。スケルトンが鍬を振るい、ソウルイーターを農耕馬としていると。 」

 

「 我らの方が、生産量は多いのでは? 」

 

「 数は多いなきりえらいと。しかし、質はどうか。あちらの方がずっと良いだろう。それに畑を耕すのに疲れ果て、農家が死ぬこともない。アンデッドが疲れ知らずゆえよな。 」

 

「 さように、ございましょうか? 」

 

「 作用だ。我らにとって、最も欲する恩恵よ。この地についてきた者たちの中に、ネクロマンサーはおらんかったからな。

ハヤッセよ。ウヌもパンを食うならば、より上質なコムギで作ったものを食いたかろう? 」

 

「 王よ、まさか!? 」

 

 ハヤッセが今想像できるのは、あまりにもリスキーな政策だった。

がしかし、王は、そんな彼女の様子に構わず、続けた。

 

「 余は、この蟻の国を、アインズ・ウール・ゴウンの属国と為したいと思う。 」

 

「 王よ、正気ですか!? 」

 

「 きりえらいと! 」

 

「 私は反対です!これまで幾万もの生命を奪った相手を、民たちはどうして受け入れられましょう!? 」

 

「 王の決定よ、控えなさい! 」

 

 自身の意見に意義ありとして食ってかかる半魔巨人に、王は冷徹に言い放った。

 

「 己らの身内ではあるまい。 」

 

「 そうですが、それでも・・・ 」

 

「 ならば無きに等しいであろう。 」

 

「 それでも奴は、人間の大敵なんですよ!多くの人命を奪った魔王!それが魔導王です!尻尾を振ったとしても、私たちはともかく彼らの安全が保証される確証はないんですよ!? 」

 

「 アンタだってだいぶ殺してるでしょう!?いい加減人間に肩入れするのやめなさいよ! 」

 

「 私たちだってそうだったんですよ!?レ・ムゥさんがいってたじゃないですか!如何に化け物になっても、心までそうなってはいけないと! 」

 

「 控えよ、きりえらいと。 」

 

「 ですが、王・・・ 」

 

「 ニ度いわすな、控えよ! 」

 

 王は、その怒気、その覇気によって、その一言のみで両者を圧倒した。その威厳、威光はまさに、王者のそれであり、それまで口論に突入していたハヤッセときりえらいとは、ただ黙る他なかった。

 

「 のう、きりえらいとよ。ウヌもわかっていよう。人間とは、己らの身内以外の者にまでは気を利かせられぬ、己らさえよければそれで良い生き物ぞ。それは亜人も、異形種も同じこと。

西の者たちの被害が、これまで我らにどう飛び火した? 」

 

「 ・・・ 」

 

 半魔巨人はただ俯くばかりだった。確かに王のいうとおりである。これまで、魔導国は西方で悪虐の限りを尽くしてきたが、それが自分たちにどう影響したろうか?ギルドが解散になったくらいでこの場の者たちや己らの仲間や人民に被害らしい被害など齎してはいない。

今仮に攻めてきたとしても、それは西方からこの中央部へ駒を進めただけにすぎない。

 

「 申してみよ。これまで彼奴らの行動で、我らが不利益を被ったことはあるか? 」

 

「 ありません!私の、突発的な行動で、王の機嫌を損ねてしまいました、申し訳ありません! 」

 

 きりえらいとは、自身が反発した理由は、人間たちが魔導王に怯えるからだと考えていた。本人の言うように彼女とて、元は人間である。ならばこの蟻の国を元同族に住みよい国にすべきだと思っている。故に魔導国に属国になるのは避けねばならないとしたが、先ほど王の一喝を受けた際に、冷静になった彼女は、それが魔導王への憤りから来るものだと悟る。彼への敵意は、国民全員を彼の脅威に晒すものであり、魔導国と殺し合うことになれば、ナザリック第八階層のアレラまででてくることになるかもしれない。

そうなれば、より残酷な未来が待ち受けている。

それこそを避けねばならなかった。己のくだらぬ反感で、この国のすべての生命を危険に晒そうとしていたこと、恥じねばならない。それに魔導国と交流を築ければ、過労死問題を解消できるかもしれない。そう捉えれば、王の、カフ姦の考えも悪いものではない。この半魔巨人は、人間性の残り滓がより多く残留しているが故に、どうしても人間ありきで考えてしまうのだ。

そのため、ある程度の選択に、人間の勘定がでてしまう。

が、カフ姦はそんな彼女を罰する気はなかった。人種のことは正直どうでも良いが、彼らの身を預かる立場上、それを顧みねばならないのも事実であるからだ。

 

 

「 良い。ウヌを誅する暇があるならば、彼奴らへの書状を書いておった方がまだ有意義だ。ハヤッセよ、これを皆に伝えよ。 」

 

「 はっ! 」

 

「 きりえらいとよ。 」

 

「 はっ! 」

 

「 腹が減った。馳走を用意せい。 」

 

「 ははっ!直ちに!! 」

 

 二人は部屋から退出していった。この場には、カフ姦一人のみが残る。

 

( さて、あちらに下ることは決めたが、実のところ、魔導王がどれほどの切れ者かは測りかねるところだ。彼奴を試す材料が必要だ。 )

 

 そうして、カフ姦は横に置いてあったあるものに目を向ける。なにかの盤と、駒がいれられた容れ物が二つ。これはYGGDRASILがある漫画とコラボをした時のイベントで、彼が得たものだ。他にも、ボードゲームをいくつか持っていた。

( よし、あれらにするとしよう。 )

 

 カフ姦は、魔導王への余興を設けることとした。

 




 次回、コキュちゃん軍featデミえもん、襲来。ご期待くださいませ。
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