太陽が燦々と照らし出す平野の中、二つの軍が火花を散らす。
一つは、魔導王が忠臣、コキュートスとデミウルゴス率いる不死の軍勢。
一つは、「 王 」、カフ姦がすべし蟲の軍勢。
ハヤッセの
一番数の多いゾンビやスケルトンは勿論だが、それ以上に彼らが狙い撃ったモンスターたちがいる。
魔導国の主力である、デスナイトだ。彼らはこの世界に於いては強力なモンスターであるが、空への対抗手段を有していない。その為、このように、なにかしらの飛行手段によって空から迎撃すれば、なにもできず一方的に倒されてしまう。
しかし、この蟲人たちが真に警戒したのは、デスナイトではない。彼らが乗っている、炎を纏った骨の馬だ。
「 撃てい!撃ちまくれ!ソウルイーターを近寄らせるな!! 」
カフ姦は叫びを受け、兵士たちはソウルイーターにボーラを投げつけ、石火矢を放つ。
兵士たちの平均的レベルは10代後半程度なのに対し、ソウルイーターのレベルは30。力の差は歴然であり、矢一つ一つ自体は雀の涙ほどしか効果がないが、炎を纏わせたことでアンデッドの弱点である炎属性攻撃となって、降りかかる。
それらは確かに効き目があるようだ。
「 砲兵、撃てぃ!! 」
兵士たちが数台の大砲の動線に火をつけ、放たれた砲弾が不死の群れに炸裂。それらを爆風を伴ってデスナイトやデスプリースト、ゾンビを吹き飛ばす。蟻の王陣営のプレイヤーたち、ハヤッセ、ハイレ・グゥ、そしてカフ姦はその様をしかとみつめていた。
先の
今は、出方を伺いジッと待つこととしていた。
「 ハヤッセよ。ソウルイーターの数はどれほどだ。 」
「 まだまだいます。ざっと100ほど。 」
「 そんなにか。まだまだ油断ならねぇな。 」
ハイレ・グゥは以前部下から聞いたことを思い出していた。かつて、西側のビーストマンの国の都市一つが、3匹の野良のソウルイーターによって壊滅したことがあった。ビーストマンは人間の十倍もの身体能力を持った亜人種なのだが、それでも、一都市の人口九割が死に追いやられ、残されたものたちは、都市を放棄せざるを得なかったのだと。
それ故、現地の昆虫人たちも、このソウルイーターを酷く恐れているのだという。
実際ソウルイーターくらいのレベルでも、この世界では十二分以上の脅威である。その厄介な性質を警戒し、今回歩兵のソウルイーターへの接近を禁じているほどである。
そして、蟻の国軍には、それらに立ち向かう術が用意されていた。
「 敵軍尚も接近!先頭にデスキャバリエ。数200!このまま来られたら、押し負けます!! 」
「 なればあれを使うか。てつはう構えい!砲兵、大筒の次弾を用意せい!
敵が怯んだところに砲を飛ばすぞ!! 」
死の騎兵たちが、骨馬たちが、死の群れ迫りくる。勇敢な虫の歩兵たちは、巨大蛾や巨大蜂を駆る騎兵たちは、王の名の下になにかをそれ目掛けて投擲した。
敵兵の間近に近づいたとき、それの中の火薬が爆裂した。デスキャバリエやデスナイトたちは、驚いた乗馬から振り下ろされ、地面に転がる。
てつはうと呼ばれる、鎌倉末期の元寇にて、蒙古軍が活用した、対騎兵用の爆発兵器。主にこのように馬を驚かせ、落馬させるのが使用目的であり、そうして相手の勢いを殺して矢で射抜くというのが、かの軍の戦法の一つだ。騎馬民族であり、馬の性質を良く知っていたが故に成立した古代モンゴルの兵器を、試験的ながら王は自身の戦力の装備として採用した。相手がソウルイーターを乗せたデスナイトや、デスキャバリエで構成された騎兵と歩兵で構成されているのなら、その主力の足を止められないか、と。
アンデッドに効くかどうかの懸念点こそあったが、今こうして、効果があることが結論付けられることとなる。如何にアンデッドといえど、純粋な知恵ならば生者が勝るようだ。
「 いまぞ!撃て!! 」
数十もの砲兵の大砲が、魔法詠唱者たちの〈火球〉が火を吹いた。屍の兵たちは滅多撃ちにされ、その不浄の身を焼かれ、砕かれていく。
「 ハヤッセ。MPは如何様か? 」
「 そろそろです。 」
「 ようし。そろそろ二発目を撃てい。彼奴らの大将を引き摺り出すぞ。 」
魔導国軍陣地。戦場の有り様をみていたコキュートス、デミウルゴスの両者は、完全にしてやられたと悟る。力で勝るはずの主力アンデッドたちが砲撃や、矢の雨に晒され、いいようにやられてしまっている。ソウルイーターに至ってはあからさまに狙い撃ちされていたのだから。しかも相手の騎獣はすべて飛んでいて、こちらの攻撃のほとんどが届かない。このままではなにもできずにやられてしまう。
「 これは不味いな。 」
「 先ノ魔法デ出鼻ヲ挫カレ、更ニハアノ兵器デ主力ノ勢イヲ削ガレタカ。 」
「 すまないな友よ。新興国だから戦力は少ないと高を括り、リサーチを怠った私の失敗だ。 」
「 己ダケデ気負ウナ。私モ゙、リザードマン二続イテ奴ラヲ侮ッテイタ。 」
コキュートスはかつて、トブの大森林で初めての戦を経験した時のことを思い出していた。
あの時も戦力自体は勝っていたが、地の利や相手の士気、奇策によって不覚を取った。
今回は開けた荒野というあの時の大森林よりは不利でもなく、戦力も十分に近かった。そして戦いもせず属国を願い出ると一見弱気な姿勢だからと相手を軽んじて、充分な調査もしなかった。その結果、最初に第十位階広範囲神聖魔法という戦術と、てつはつという兵装、それを用いた遠距離砲撃重視の戦略により、今こうして敗走の危機に瀕していた。
「 デスナイト、デスキャバリエ、ソウルイーター。こちらの主力は殆ど全滅か。 」
「 ソレニアノ天使モ゙健在。デミウルゴス、恐ラクダガ彼女ハ・・・ 」
「 同格だろうね。至高の御方々と。 」
デミウルゴスは、自身の生みの親のことを思い浮かべていた。彼やアインズと、あちらの大将核が同じ同等の力を有するならば、益々己の失態が際立ってしまう。
このままでは創造主たるウルベルトに合わせる顔がないとすら思った彼は、この事態を挽回すべく、奥の手に出ることとした。
「 こうなれば、これを使う他ないか。 」
デミウルゴスが取り出したもの。それは金色の悪魔の像だった。
6つの腕に宝石を掴んでいるそれには、第十位階魔法、
「 良イノカ?ソレハウルベルト様ガ・・・ 」
「 こうなっては背に腹は代えられない。相手が人間だけではなく異形種もいるだけ、ゲヘナの時よりはマシだ。さらに、これも使う。 」
彼は、もう一つこれによく似た像を取り出した。こちらは腕の本数が4本であり、手に持つ宝石も3つと少ない。
ゲヘナの折りに、アインズが彼に渡した、試作品の悪魔像だ。これはコキュートスにも、見覚えがあった。
「 王国ヲ攻メ落トシタ時、アウラガ持チ帰ッテキタモノカ。 」
「 あわせて、
呼び出された悪魔たちは、術者を攻撃できないからな。 」
「 承知シタ。 」
コキュートスは、黒い象を受け取る。
「 私は後ろから仕掛ける。奴らがアンデッドを片付けたのを見計らって、今度はこちらが
デミウルゴスのその目の輝きは己の死を覚悟しているようだった。ここで負ければ、アインズ・ウール・ゴウンの名に泥を塗ることとなるのやもしれない。いや、すでにそうなっているのかも。あの日、この世界で初めてみた本物の星空を眺めて、アインズが語った世界征服の望み。それが自分のつまらぬ失敗で遠のくようなことは、そうして自分がいらない子になることは、避けねばならない。
その為ならば、己は如何なる対価も支払うだろう。
何故ならば彼は悪魔。何故ならば彼は
悪魔は契約者に見返りを望むが、彼もまた、己の多くを犠牲に、魔導王の野望の礎となることとした。
「 ナラバ私ハ、正面カラカ。 」
コキュートスもまた、覚悟を決めていた。
彼もまた、ただ一人残った
蟻の国の「王」。アレは確かに名君だ。
一度に数百もの中レベルクラスのアンデッドを消し炭にするものを配下とし、己もまた力を有するであろうが、それに奢らず王として兵を率いて戦に臨んでいる。
ならば自身も、全力でもってこれに挑むこととしよう。
二人は、ハヤッセが、再び
「 検討を祈るよ、友よ。
デミウルゴスは、瞬時に蟻の国軍の後ろに回り込み、先のお返しとばかりに第十位階魔法を叩き込んだ。
「
かつて、聖王国に攻め入った際に、その守りとなっていた砦をこの魔法で破壊したことがある。
同じように、巨大な隕石が降りかかり、爆発。
蟲の軍勢の、四割ほどを消し飛ばした。
「 王よ、これは!? 」
ハヤッセは、新たに現れた悪魔たちを見て、自分たちが一転して不利になったことを悟る。
「 してやられたか・・・のう? 」
カフ姦は、前に現れた悪魔を率いる冷気を纏うそれと対峙していた。
彼よりも強固な外殻と、四本の腕の一つに白銀のハルバードを持つ、昆虫人。
見るだけでそれが強者だとわかる。
「 スマナイガ、コチラトテマダ負ケヲ認メラレン。 」
「 余の前にでたということは、一騎打ちをお望みか? 」
「 死ヌ゙ナラバ、戦ッテ散ル。ソウ決メタダケダ。 」
「 ほう?大したものだ。よもや魔導国にかような武人がいようとはな。 」
「 王よ! 」
「 ハイレ・グゥ。後ろは任せる。 」
「 おう! 」
「 ハヤッセよ、兵を率い彼奴に付き、悪魔共を殲滅せよ。 」
「 御心のままに。 」
ハヤッセとハイレ・グゥは、後ろ、デミウルゴスと彼の呼び出した悪魔の大軍勢に向かっていった。
「 さて、一騎打ちに此奴は邪魔よな。 」
いよいよ、「王」自らが動き出す。
「〈 広範囲魔法最強化!炎の嵐 〉! 」
逆巻く紅蓮の炎が、まさしく嵐となって、悪魔たちを焼き払う。新たに呼び出された悪魔たちも出落ちとばかりにそれに巻き込まれる。
その様を見て、コキュートスはある人物を思い出した。オドオドしながらも、自分よりも強い、あの少年を。
「 ドルイドカ。 」
「 左様。不足か。 」
「 構ワヌ゙。王ヨ、名ヲ聞コウ。 」
「 余の名は、カフ姦だ。 」
「 我ガ名ハコキュートス。ナザリック第六階層守護者。コレ程ノ戦士ト戦エルコト、誇リニ思ウ。 」
コキュートスは、上の両腕にブロードソードとメイスを持ち、そして残った腕に、彼が創造主から授かった名刀を携えた。
「 斬神刀皇! 」
「 ほう。見事な一振りよな。そなたによく似合う。 」
カフ姦は、拳を構えた。
一方、その頃。
「 やめてください! 」
「 あぁ、見える!私にもマーレ様の宇宙が、まだ幼虫のカブトムシが見える!今日のおパンツは白色なのですね!! 」
「 あ、あぁ・・・! 」
女装のダークエルフの少年のスカートに顔を埋めるナーベラルを見て、モモンガの感情が抑制された。
やめて!すばしっこい「王」の一撃を受けまくったら、防御の薄いコキュートスがおなくなりになっちゃう!お願い死なないでコキュートス!貴方がいなくなったら、デミウルゴスはどの面下げて戻ればいいの!?兵はまだ残ってる(ほぼ全滅してる)。この戦いを制すれば、魔導国の勝ちなんだから!次回、コキュートス死す!アァインズ様ブチギレスタンバイ!