曰く、オルゴはラテン語で傲慢という意味で、デミーラはオバロでもおなじみデミウルゴス(グノーシス主義における、偽りの神)との事です。オルゴ・デミーラ自身、神さまに反旗を翻しているので、傲慢からは、ルシファーの要素もあるのかもしれません。
あと、オルゴ・デミーラといえば、種泥棒ことキーファの成れの果てであるという説もあります。
ラストダンジョンのラーの鏡( 写したものの本当の姿を見せる )がその根拠の一つなんだとか。
なんだか後の「 シンはジェクトだ 」に通づるものを感じますね。
異界送りしなきゃ・・・(エボン並感)
灼熱の太陽の下、悪魔と蟲たちが激突する。
先の
その時、
「
悪魔側の群のど真ん中で、眩い光と灼熱が炸裂した。この世にいることも憚られるような、悍ましき低位の地獄の民たちは、その半球形の光に呑まれ、消滅していく。
〈陽光爆裂〉。信仰系第七位階魔法。これを使えるものといえば、蟲人たちには「王」の他には彼女しか思い浮かばなかった。
「〈陽光爆裂〉!」
白と黒の翼を戴き天を舞う、乙女の清き聖なる光が、上級の悪魔の1体を貫く。
〈最終戦争・悪〉はレベル70代の悪魔をも召喚する。この高レベル帯悪魔召喚の権利をパスして、低位悪魔の量を増やすこともできるが、ユグドラシルプレイヤーが、蟻の国側に複数いることを知ったデミウルゴスは、悪魔象の〈最終戦争・悪〉9回分のリソースによって、高位の悪魔もすべて呼び出し、最大70レベルの悪魔9体を擁する大軍団を呼び出したのだ。
がしかし、これで召喚された悪魔たちは召喚者に攻撃できないことを除いては勝手に動き出す。故に連携は取れず、先のアンデッドたちと比べて脅威度は劣る。所詮は数合わせの烏合の衆なのだ。
せっかくの高レベル悪魔たちも、兵士たちはともかく、100レベルのクレリックであるハヤッセの相手ではなかった。その為低レベルの相手を兵とハイレ・グゥに任せ、彼女自身は強い悪魔を倒していくこととした。
「 やぁッ! 」
ハヤッセの十字架を象った槍の一閃で、60レベルクラスが一度に三体、首を斬り落とされ絶命する。さらに向かってきた悪魔たちをちぎっては投げるが如くねじ伏せていく。
「 宰相サマ二続ケ!! 」
兵士たちも、彼女の勇姿に鼓舞され、奮い立つ。前衛の歩兵部隊や巨大昆虫モンスターを駆る騎兵。その多くはレベル10後半程度。中には練度が高く、35ほどに至った蟲人もいる。
それらは「王」が軍を挙げて諸国を殲滅していた頃からの精鋭たちだ。
彼らは元々、人種や亜人に追いやられ、地下や森林地帯にて細々と暮らすことを余儀なくされていたが、西から来たカフ姦との出会いで、これらと戦うことを決めた。
以来、彼らは「王」に忠誠を誓い、彼が為ならば死も厭わないという。
歩兵の武器は対アンデッドを想定し、その多くが戦槌であり、副武装として腰に剣を挿している。悪魔をこれで殴打し、汚い色合いの肉塊に変えていく。騎兵は空から〈火球〉や矢によって、レベル50の戦車の悪魔を滅多撃ちにした。
その時だ。
『 自害したまえ。 』
その異様に響く声を聴いてしまった兵士たちは剣を取り出し、身体が勝手に動いてその身に突き刺し、体液をまき散らしてその場に倒れ、ものいわぬ死体となる。
人間や亜人の兵も同様だった。
「 なにが、起こって・・・! 」
刀鎧蟲の兵士は仲間の突然の自害に、呆然とし、その犯人であろう赤いスーツの男を目に捉え、
その丸眼鏡の先から、なにか恐ろしいものを感じ取る。
「どうしたのだね?
私の顔になにか、ついてるのかね?」
男は何気なくそういって、笑みを浮かべていた。
この瞬間、刀鎧蟲の戦士はこの男がなんなのかを悟る。
悪魔だ。それも上位の。
「 オラァ!! 」
さらに、男に巨大ななにかが飛びかかり、拳の一撃で殴り飛ばす。吹き飛ばされた男は、その場にいた悪魔を下敷きにして、横になっていた。
「 よう、兄弟。調子は良いか? 」
黒肌の筋骨隆々、並の男よりも大きな身体。そして、テカる独特な格好。
刀剣蟲の目には、この男がいつも以上に頼もしく思えた。
「 見回り隊長殿! 」
「 下がってな、怪我すんぜ。 」
ハイレ・グゥは味方に一瞥し、立ち上がったスーツの男と対峙した。
「 いい一張羅だな、ええ? 」
「 見たところキミも同族のようだが、あまり宜しいとは言い難い身なりだな。 」
「 何故だ?ハイレグはいいぞ?身体によくフィットしやがるからな。 」
「 ・・・これ以上は語るまい。名を聞こうじゃないか。 」
「 ハイレ・グゥだ。アンタはなんていう? 」
「 私は、デミウルゴス。ナザリック地下大墳墓第七階層守護者だ。 」
「 第七。そうか、あの八階層の一つ上か。にしても、"偽りの神"ときたか。中々いい名前じゃねぇか。 」
「 お褒めに預かり恐悦至極だよ。さて・・・ 」
デミウルゴスは兵を率いてひたすらに悪魔を薙ぎ払うハヤッセの姿を見つめる。
「 さすがは天使といったところかね。〈最終戦争・悪〉だけでは物足りないか。 」
指をパチンとならすと、ハヤッセの前に、さらなる悪魔が呼び出される。
威圧感を醸し出す、巨躯。外腿と肩から上腕にかけて、楕円状の鱗があり、悪魔らしい翼と尾は炎を纏っていた。
「 憤怒の魔将・・・! 」
ハヤッセも良く知っていた悪魔だ。プレイヤーが呼び出しうる中でもレベルが特に高く、攻守ともに優れ、第十位階までの魔法も扱える。
「 なるほど。聖王国の騒動はアンタの仕事だったか。 」
「 そういうことだよ。さぁ、我々もそろそろ雌雄を決するとしようじゃないか。 」
デミウルゴスの姿が変わる。翼の生えたカエルを経て、それがより強固に、より怖ろしく。
指からは鋭利な爪が生え、その四肢はより発達していた。
一張羅を変わらずに着ているそれはいうなれば、ヒキガエルの巨人、いや魔神とも呼ぶべきか。脚の代わりに、ムカデのような禍々しい尾が備わっている。
彼のこの姿は、ナザリックで最も悍ましいとされていた。
「 な、なんという・・・ 」
刀鎧蟲をはじめとする、蟻の国軍の兵士たちはその姿に戦慄した。いったい以下ほどの業を詰めば、これ程の怪物へと化すのだろうか。
しかし、
「 なるほどな。奇しくも同じ構えってやつか。 」
ハイレ・グゥは、まったく動じてはいなかった。
まるで、変身するのが当然のことといわんばかりのその態度、言動からは、恐れや怯えといった感情は感じられない。
彼からすれば、プレイヤーやNPCの中に、変身して戦うビルドを組んでいる者がいるなど、珍しくもなんともなかったからだ。YGGDRASILはコンテンツの新規実装を除いては、殆どの詳細が明かされておらず、攻略サイトを頼ろうにも眉唾物の嘘しか書いてないなどザラであった。そのため、プレイヤーの多くは、手探りで職業を極め、種族レベルを上げていくこととなる。
故に魔法詠唱者などでも、魔術系魔法戦うものもいれば、魔術と信仰、両方にリソースを割くという、いわば「 メモリの無駄遣い♥ 」なビルドを組むものも多かった。その中で異形種ではじめたプレイヤーの中には、目の前のデミウルゴスのように、変身を旨とするものも、少なくなかったのだ。
といってもデミウルゴス自身はNPCであるのだが。
「 奇しくも、ということはキミもかな? 」
「 あぁ。オレも変身する。 」
刀鎧蟲の戦士は身体が震えた。彼らは蟻の国が建国される前に、他の亜人種より早くに「王」の傘下に下った。そのため、彼に限らず、刀鎧蟲たちは人間やミノタウロスよりも、最前線に立って戦っていたハイレ・グゥの姿をみているのだ。身体が一部変化しているところは見たことがあるが、変身ができるとは知らなかった。あの竜王との戦いでさえ、彼がそんな姿を見せることなく終わったのだ。
当時は「王」と行政官のらんらん、騎馬隊長トルルポの活躍が目立っていて、ハイレ・グゥがそんな姿になっていたというのに気づかなかっただけなのかもしれないが。
普段の彼は、千里の砦で外敵を警戒しているのが大半であるので、それを見る機会といえば、今くらいなものだろうが、本当にそうするのだろうか。
勿論、したほうが良いのが確かなのだろうが、デミウルゴスの悍ましいでは片付けられぬ形容しがたい姿を目の当たりにして、ハイレ・グゥもこういったものになるとなると、見てみたいという危険な好奇心半分、見たくないという恐怖心半分である。
「 悪いが、コイツ持っててくれないか? 」
ハイレ・グゥはサングラスを外して、刀鎧蟲の戦士に手渡した。
これを渡すということは、やはり彼も、これから異形の本質を晒しだすということなのだろう。
それをみていた戦士たちも、悪魔たちと戦いながら、この大男の異形の姿への変貌をしかと見届ける覚悟を決めた。
――例え、如何なる姿になっても、彼は彼だ。
「 うぉぉぉおおお!! 」
大柄な褐色の身体がより大きく肥大化する。そこから大きな翼が生え、同じく腕もより太くなっていく。顔はそれまでの人間に近いものから、毛が生え鼻もブタのように先が上を向いている形に変化する。その姿はまさしく、大角を生やした巨大なコウモリの怪人、といったところか。
「 おぉ・・・! 」
戦士たちは恐れを抱きながらも、どこかその姿に逞しさを覚えた。日頃の彼をみているということもあるが、もっと名状しがたい何かになるんじゃないかと身構えてみてみれば、おぞましくも悪魔らしいシンプルな、それでいていかにも強そうな、そんな安心感のある姿だったのだ。
「 さぁ、やろうか。 」
「〈悪魔の諸相おぞましき肉体強化〉!」
「〈悪魔の諸相おぞましき肉体強化〉!」
両者ともに初手はバフスキルだ。一時的に肉体を強化させさらに次のスキルも、同じだった。
「〈悪魔の諸相業魔の巨腕〉!」
「〈悪魔の諸相業魔の巨腕〉!さらに〈ゴモラの劫火〉!」
右腕がさらに肥大化、それで互いに殴りかかる。ハイレ・グゥのそれにはデミウルゴスのものとは違い、炎を纏い、溶岩のような様相となっていた。
「「うおぉぉぉおお!!」」
拳と拳が接触した衝撃で、周囲の兵士や悪魔が吹き飛ばされる。
そこから二人は次々に身体を変化させていく。
「〈悪魔の諸相触腕の翼〉!」
「〈悪魔の諸相鋭利な断爪〉!」
「 なんと・・・ 」
刀鎧蟲は絶句した。言葉を失いながらも、その戦いから目を離せなかった。自分たちとはまるで次元が違うのが明白であったからだ。
さながらそれは、神話の世界であった。
そして、彼らの反対側。
「 おおおお! 」
「 ムン! 」
「王」はコキュートスの四腕の斬撃を躱しながら、一撃二撃と着実に打撃を与えていた。ドルイドは信仰系魔法詠唱者であり、近接戦闘にもある程度の適正がある。がそこはやはり魔法詠唱者であり、本領はやはり魔法であり、前衛職には一歩劣る位だ。対してコキュートスは「ケンセイ」や「アスラ」といった上位の前衛職を修めており、武器戦闘において右に出るものはいない、序列3位の一角だ。
故に近接戦において無類の強さを誇る。
獲物である「 斬神刀皇 」も神話級に位置する業物。がしかし、体格差も相まって「王」ことカフ姦には致命打らしいダメージは与えられず、彼は少し押され気味であった。その理由は単純明快。
(速イナ・・・並ノドルイドガ身二ツケル技能デハナイ。)
カフ姦が、モンク程ではないがスピードに長けていたからである。
コキュートスが明確に3位ではなく、同列の一角である所以は、他のものとの相性差であった。
彼と同等に位置付けられるNPCは他には二人。
一人は守護者統括であるアルベド。もう一人は第九階層の事実上の階層守護者ともいうべき立ち位置にいる執事、セバスだ。
この内、彼はアルベドの守りを突破できるだけの火力はあるものの、セバスの俊敏な動きには反応しきれない。これに照らし合わせれば、カフ姦はセバスに近いタイプの戦闘スタイルなのだ。
が、しかし、そこはやはりドルイドなのだろう。
よく目を凝らせば、セバスよりは僅かに遅いスピードだ。
「 ソコカ! 」
コキュートスのブロードソードが、カフ姦を捉え、振り下ろされる。
「 剣刀蟲! 」
カフ姦の両腕の甲に、長い蟲が纏わりつき、文字通り剣となって装備され、斬撃を防ぐ。
コキュートスはさらに斬りかかるが、これらも見事に捌かれていく。
さらにメイスとブロードソードが破壊され、そこから蹴りをいれられ、後ろに引きずるように後退する。
(ムシツカイ・・・ナルホド。ソウイウコトカ。)
砂が舞う中、コキュートスはドルイドである筈のカフ姦が何故あそこまで近接戦をこなせるかについて結論をつけることができた。
彼はマーレのような純粋なドルイドではなく、シャルティアのような、いわゆる魔法戦士と呼ばれるビルドなのだ。
当初はドルイドが、武器も持たずに自身と殴り合えている理由が分からなかったが、魔法戦士であるならば、それなりに自分と近距離で戦えるのも合点がいく。
「 すまぬな。余を純粋なドルイドだと思うていたのだろう?ウヌをだますような形になってしまった。 」
「 構ワナイ。手ノ内ヲ隠シ、欺クモ戦術ノ一ツダト心得テイル。 」
以前、アインズが精神支配を受けてしまったシャルティアと戦った時、こういっていたのを彼は覚えている。
「 PVP、プレイヤーvsプレイヤーにおいて重要なのは、どれだけ虚偽の情報を相手に上手く掴ませるかだ。 」
アンデッドの弱点である火属性や神聖属性の魔法を使えるシャルティアは、当然のことながら彼にとっては相性最悪の相手であり、また序列的には、アルベドやコキュートスよりも強い。それ故にアルベドはシャルティアを戦おうとするアインズを止めようとしたし、デミウルゴスもそんな彼を行かせたアルベドを責めていたりしていた。がしかし、これ程の天敵を前にして、後に魔導王を名乗ることとなる「 死の支配者 」は、シャルティアに偽の情報を掴ませ、今はいない至高の御方々の武具まで動員して、見事に勝利してみせた。
あの時のことを、コキュートスはよく覚えていた。
〈 完全戦士化 〉を発動させたアインズがたっち・みーの鎧であるコンプライアンス・ウィズロウと自身の創造主である武人武御雷の武御雷8式を装備した時は、彼自身も興奮を覚えていたの。
それ故に、カフ姦のビルドへの予想が外れたことを、彼は不快には思っていない。それどころか、あの時のアインズと同じように、相手が自身に勝とうと手を尽くす強者であり、それでいて、詫びも入れられる器であると知り、カフ姦への好感を抱いているようだった。
それ故に、この場で討たねばならないことを、コキュートスは憂いていた。が、決着をつけねばならない。意を決して断頭牙を地に突き刺して、斬神刀皇を構えた。
「 ゆくぞ 。 」
「 来イ! 」
カフ姦は、砂の中を疾風の如く駆け、コキュートスに迫る。
「 〈風斬り〉! 」
斬神刀皇の斬撃が、かまいたちが如く、風の刃となって「王」に迫る。
「 〈硬甲蟲〉! 」
カフ姦の左腕に、新たに盾のような蟲が纏わりついて、それを弾いてみせた。
ここで咄嗟の判断で、コキュートスは切り札の一つを使うこととした。
「 〈不動明王撃〉! 」
コキュートスが、斬神刀皇を振り上げると、彼の背後に、神仏が顕現する。
彼のかつての主が得意とした、五大明王コンボの一つだ。
「 三毒を切り裂け・・・〈倶利伽羅剣〉!! 」
明王の剣とともに、斬神刀皇は振り下ろされる。
人を蝕む三毒、貪・瞋・痴を切り裂く一撃は、大地をも抉り、辺り一面は、砂が舞い散る。
その様子は、後方にいた者たちの目にも映っていた。
「 王ぉぉぉおぉぉぉぉおおおお! 」
真っ先に反応したのは、悪魔たちを軽並殲滅したハヤッセだった。
「 余所見をしている場合か? 」
憤怒の魔将は、この堕天使を仕留めんと強力な攻撃魔法を放つ。
「〈獣王の雷熱線〉!」
〈魂と引き換えの奇跡〉で発動した、ある人物の生み出した青白い雷の光線を放つ雷属性魔法。その威力は第十位階に比肩する。しかし、
「 なに!? 」
ハヤッセは、凄まじい反応速度で飛翔してそれを躱した。
「 邪魔だぁぁぁぁあ!! 」
その目が、黄色に光を帯び、魔力に溢れた時、それは発せられた。
「〈至高の魔弾〉!ジャ!!」
至高の魔弾。攻撃スキルの一つ。習得できる職業が限られ、その知名度は高いともいえないマイナーながらも強力なスキルである。
目から万能属性の貫通効果を持った魔弾を発射する。その起源は、多数の神話の悪魔を取り入れ、霊障にまで見舞われたというとある企業のゲームであるといわれているが、その実態は定かではない。
真偽はともかく、かくして放たれた魔を穿つ閃光は、憤怒の魔将の強靭な肉体を貫き、消滅せしめた。
ハヤッセはそれを確認すると、「王」の下へと急ぐ。彼女の周辺の兵士たちもそれに続いた。
「 王! 」
「 王よ! 」
砂塵が晴れていく。その真ん中に二つの影。互いに対峙し、立ちすくんでいるようだ。
「 おぉ・・・ 」
次第にその姿が見えるようになると、兵たちは絶句した。
王の左腕が、野に転がっていて、その傷口からは血がでているではないか。
「 王・・・! 」
「 なんということだ!カフ姦王陛下が・・・! 」
「 いや、見なさい! 」
ハヤッセが指を差した部位に兵士たちは目を凝らした。コキュートスの腹部に、カフ姦の剣刀蟲の刃が深々と突き刺さっている。その傷口からも、血が滲み出ていた。
刃が引き抜かれたとき、さらに多量の血が溢れ出て、その場に蹲る。
傷の重さでいえば、コキュートスの方が重い。つまり・・・
「 見事ダ。己ノ身ヲ犠牲二シテデモ、勝利ヲ得ヨウトスルカ。サァ、私ヲ・・・!? 」
「 殺らぬ。 」
「 何故ダ? 」
「 先からいうておろう。余は、蟻の国を魔導国の属国と為したいとな。そなたも生かして捕らえるつもりだとも。しかしながら・・・ 」
カフ姦は、斬り落とされた左腕を見た。〈倶利伽羅剣〉が自身の身体を両断せんとした時、咄嗟の反応で右にそれたことで、この片腕だけで済んだ。しかし、もし動くのが少しでも遅れれば、カフ姦は死んでいたやもしれなかった。それくらいにギリギリの一瞬だった。
「 よもや、ここまでとは。恐れ入ったぞ。ソナタほどの者を、みすみす死なすわけにもいかぬ。 」
「 ・・・ナラバ、私ヲドウスルツモリダ? 」
「 ソナタには先ず、その傷を癒してもらうとしよう。ハヤッセ、このものに回復魔法を。 」
「 はいっ!しかしまずは王を・・・ 」
「 二度言わすな。先ずはこのものの傷を癒すのだ。 」
「 こ、心得ました、王よ! 」
ハヤッセは飛翔して二人の下に急ぎ、コキュートスへ回復魔法をかける。すると、彼の傷は段々と癒えていった。
「 私ノ傷ヲ治シ、ソノ後ハ? 」
「 一度国へ戻り、支度を済ませた後に西に向かうとする。魔導王陛下への謁見をすませ、属国の書状も届けでる。ソナタらの身の上をソナタらが持つワールドアイテムともども返還するのをついでにな。 」
「 ワールドアイテムヲ奪ウツモリハ無イト? 」
「 その通りだ。それに目を眩ませれば、魔導王は酷く怒り狂い、属国にしてもらえなくなるからな。 」
ナザリック地下大墳墓の守護者たちは、シャルティアの事件を機にワールドアイテムを持ち歩くようにしている。ワールドアイテムによる精神支配等のバッドステータスは、同じワールドアイテム所持者に効かないからだ。
それを奪わぬということは、やはりカフ姦王はアインズと戦うつもりはないのだとコキュートスは悟った。だが、友は戦をしてナザリック側に被害を出しておきながら、属国になりたいなどというこんな馬鹿げた提案に異議を申し立てるであろうかと不安にもなった。
「 シカシ、デミウルゴスハ・・・ 」
「 おう、カフ姦。そっちも終わったか・・・! 」
「 ハイレ・グゥ、いかにしたか? 」
「 オメェ大丈夫か?腕。 」
ハイレ・グゥと呼ばれた奇妙な格好の男の肩には、彼のよく知る顔が身体中に青痣を作って真っ裸で担がれていた。
「 デミウルゴス・・・! 」
どうやら、彼も敗れてしまったようだ。至高の御身に合わせる顔がないが、自分たちに勝ってみせたこの男に、負けた自分たちが反論する筋合いはないのだとコキュートスは腹を括ることとした。
「 気にするでない。これくらいどうとでも・・・ 」
「 解ッタ! 」
「 如何にした? 」
「 敗軍ノ将ノ身ダガ、オ前タチノ望ミヲ聞イテ頂ケル様、私カラモアインズ様二直訴シヨウ。 」
「 ウヌ。ならば、ソチの同胞の傷も治してやらねばな。ハヤッセよ、この者も・・・ 」
『 王よ。 』
突如、カフ姦の脳裏に声が響く。首都の守りを任せていた行政官だ。
「 らんらんか。いかにしたか? 」
『 きりえらいとが、王に不満を抱く人間たちを率い、謀反を! 』
「 なんだと!彼奴めとうとうしでかしたか!! 」
『 今は私とトルルポが中心となって抑え込んでおりますが、王よ、どうかお戻りを! 』
「 わかった。すぐに戻ろうぞ。 」
通信はこうして途絶えた。コキュートスはその様子をみて、概ね理解していた。
蟻の国で、なにが起こっているのかを。
「 〈伝言〉カ。誰カラダ? 」
「 国に置いてきた行政官からだ。我が首都の守りを任せておった軍司令官が余に噛みつきおった。 」
「 あの馬鹿、とうとうしでかしたのね! 」
ハヤッセは憤慨していた。が、ここでコキュートスは、一つ提案を出すこととした。
「 「王」ヨ。謀叛者ノ始末、私二モ゙手伝ワセテ貰エナイカ? 」
「 ほう? 」
「 いいのかよ? 」
「 構ワヌ。主二歯向カウ者、私二トッテモ他人事ニハ聞コエナイノダ。良イダロウ、デミウルゴス? 」
コキュートスにそう尋ねられると、ハイレ・グゥに抱えられた状態で、満身創痍の悪魔は、上体を起こして返答してくれた。
「 構、わんだろう。このまま、なんの成果も、ない方が、アインズ様に、合わせる顔が、ないからな。ただ・・・ 」
「 タダ? 」
「 一つ、私に、提案が、ある。 」
「 なんだ?申してみよ。ハヤッセ、回復を。 」
「 はい。 」
ハヤッセに治癒されながら、デミウルゴスは続けた。
「 魔導、国は属国から、犯罪者を、集めている。その用途は、いわずともわかるだろう? 」
「 うぬ。 」
「 そこで、彼ら、厳密には彼らの死体をだ・・・ 」
デミウルゴスの提案に、王も、ハヤッセも、ハイレ・グゥも、首を縦に振らざるを得なかった。
きりえらいとを生かしておけば、必ず蟻の国と魔導国、両者にとって不都合が生じるのは、自明の理であったからだ。
「 一ついい? 」
「 なんだね? 」
「 貴方の呼んだあの悪魔の使ってた魔法、アレを前に見たことがある。 」
「 つまり、なにがいいたいのだね? 」
「 彼、生きてるんでしょ? 」
ハヤッセはデミウルゴスにある人物の所在を聞き出そうとしていた。
一方、その頃。魔導国首都エ・ランテルでは。
「 なにすんだよ離せよ! 」
「 あぁ、これがマカマカさんの宇宙!女性的な身体でありながら、二つの金星が見える!これが宇宙の神秘か!! 」
「 頭可笑しいんじゃないのキミ!? 」
「 なぁ、アレ、ルプーにはやらないよな? 」
「 多分やるんじゃね? 」
「 マ、マカマカさん・・・! 」
マカマカの局部にも、ナーベラルが顔を埋めて啓蒙を高めていた。
カッツェと金髪の少女はそれに呆れ返り、
そしてモモンガの精神は今日も抑制されていた。
「 お姉ちゃん、怖いよ〜! 」
「 マーレ! 」
先に被害に遭った、ダークエルフの少年は、得体のしれぬ恐怖を感じていた。
死んだ死んだ詐欺にございます。次回、魔が差さなければ、自分から来るらしい蟻の国に怯える魔導王陛下。そして、あの人は今。デュエルスタンバイ!!