幻想トリップ   作:ニコラス―NICORUTH―

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 運命の時、来たれり。
―――汝一切の希望を捨てよ。
とはならないが、今回も戦闘なしでございます。


魔導王の素顔

 夜の帷訪れたアインズ・ウール・ゴウン魔導国王の間。四人の異形がそこにいた。

紺衣を纏った魔法詠唱者、バオー・ヴェル。

黒いマントを羽織る鎧の犬耳の戦士、カッツェ・フォン・ベルリヒンゲン。

そして、いつもの身なりの「 死の支配者 」、

アインズ・ウール・ゴウン。

彼の友、「 ペロロンチーノ 」の子とも云うべき麗しき吸血鬼シャルティア・ブラッドフォールン。

バオーは、その威圧感に胸が竦むような思いであった。事前にシャルティアから不問に処すと聞かされたが、それでも魔導王は何かしらを自分にしでかすであろうことは想像するに難くなかった。

唯一の救いはその場に、いつもならばアインズの側に控えている宰相の姿が見受けられないことだろう。最初に口を開いた、というか口は閉まっていたが話しだしたのは、アインズだった。

 

 

「 私のことは名乗るまでもなく知っていよう? 」

 

「 あぁ、なんてったって貴方がたから逃げたくて、必死だったもので。 」

 

「 アルベドの事ならば心配することはない。お前たちも自分の身を守る為にしたことだろう。最も本人は納得しかねるだろうがね。 」

 

「 聞けば聴くほど意外に感じますね。 」

 

「 お前たちを活かしておいた方が、メリットを見いだせるからな。特に私にとって。 」

 

「 どういう意味です、陛下? 」

 

「 私は長い事、YGGDRASILのプレイヤーを探し続けてきた。特に、同じギルドの仲間たちを。 」

 

「 なるほど。そういう・・・ 」

 

 バオーには察する事が出来た。魔導王は、孤独なのだ。YGGDRASIL衰退の果てに、この地に流れ着き、どういうわけか王として、国を治める立場についた。ここまでして、仲間の一人にも会えないとは、寂しいことこの上ないだろう。

そうして、根掘り葉掘り探し続け、自分たちを見つけるに至ると。

おそらくシャルティアのみならず、現在アインズ・ウール・ゴウンに属しているのは、彼を除いてNPCだらけなのだろう。

 

「 ところで、シャルティアから聞いているだろうが、先の件を不問とする見返りとして、お前たちに幾つかこちらの要望を聞いてもらおうじゃないか。 」

 

「 先ずは、これか? 」

 

 バオーは碧色のカプセルのようなワールドアイテム「 世界のるつぼ 」を取り出し、アインズに渡した。

 

「 話が早くて助かる。ワールドアイテムは、それ一つだけでも世界に凄まじい影響を及ぼす可能性を秘めたアイテムだ。他勢力が所持しているなら、回収するに限る。 」

 

「 それの力は・・・ 」

 

「 土地や気候の状態を変化させる、だったな。 」

 

「 そこまでご存知で。 」

 

「 悪い、オレが教えた。 」

 

 二人の間に入るように、バオーの隣の人狼が申し訳なさそうに答えた。

 

「 べべリスもやった。冒険者組合いったらなぜか英雄モモンとかいうカッチョいい甲冑の男に取り押さえられて、ここに強制連行されてこのイケメン骸骨と謁見したわけだ。 」

 

「 アインズ様に不敬でありんすえ?イケメン骸骨なのは同感でありんすが。 」

 

 シャルティアが砕けた態度のカッツェをその深紅の瞳で見つめる。表にはださないが、余所者の二人に対して何処か威圧的である。

 

「 それで、他には? 」

 

「 お前の仲間は何処にいる? 」

 

 なるほど。やはり仲間の行方か。魔導王は我々を根絶やしにするつもりなのかとも思えそうだが、シャルティアや本人曰く殺すつもりはないらしい。

彼とカッツェがそうなのか、はたまた仲間の幾人かがそうなのか。いずれにせよ、バオーには、何処に誰がいるのかさっぱり分からなかった。

 

「 ブリュスタを出た後、直ぐに宛も知らせずに別れました。それ故に、仲間の行方は分かりません。一人を除いては。 」

 

「 一人? 」

 

「 アリスティというゴーレム職人ですよ。ローブル聖王国で作品作りに精をだしているときき、帝国の闘技場に彼女のゴーレムを駆り出そうと思っていた次第です。これはうちのギルドマスターの証言です。パワードスーツも作ってるとか言ってました。 」

 

「 やはり、か。 」

 

 アインズにも身に覚えがあった。デミウルゴス、基ヤルダバオトの一件で聖王国と縁ができた戦闘メイドの一人が、ナザリックに帰還した時に、パワードスーツに乗って帰ってきたのである。

何処で手に入れたのか聞いたところ、彼女に曰く、

「 親切な機械人形から貰った 」とのことだった。

 

 

 

「 お前たちのギルドマスター。名はレ・ムゥでいいな?所持しているのは、黄金律の環。 」

 

「 何故知って・・・まさか!? 」

 

「 そうか。なるほど、アンタが持ってたんだな。アレを。 」

 

「 その通り。 」

 

 アインズは、一冊の本を取り出す。表紙に顔のついた、不気味なそれは、バオーにも見覚えのあるものだ。ギルドマスターから、仲間の一人が持ってると聞かされ、すっかりその気になっていたが、やはりあの場に残っていたようだ。

 

( マリッサあの野郎・・・! )

 

「 このマジックアイテム、リブロムの書は色々と教えてくれたよ。お前たちが我々に怯えて、逃げ出すことを画策したこと。あの会合の場にいた者たちの他にも、プレイヤーが散らばっていることも。 」

 

「 私の手柄でありんすえ。 」

 

 シャルティアは誇らしげにそういった。

 

「 シャルティア、少しの間でいいから、席を外せ。外にでているんだ。 」

 

 アインズはそんな彼女を一瞥しそう命じた。

 

「 わかりんしたえ、アインズ様。

それでは。 」

 

 シャルティアはしたり顔でドアを開けて、部屋を出る。

バオーは、シャルティアの立っていた場所から、オフィスに佇むアインズに視線を変える。

何故下僕をわざわざ退室させたのだろうか。

 

「 さて、ではお前たちに問おう・・・ 」

 

 アインズは自分たちになにかを聞きだそうとしているようだ。彼の手に渡ったリブロムの書は、元々マリッサが製作したマジックアイテムなのだが、使用すれば、その場での出来事を知ることが出来る。魔導王があの日何が起きたのかを把握しているのも、マリッサが置いていったあの本でことの次第を知ったからにほかならない。それでこれ以上、なにを聞こうというのか。

こうしてでた魔導王の一言は、

 

「 なんで逃げちゃうんだよ!? 」

 

であった。

 

「・・・へ? 」

 

 バオーは呆気に取られた。

 

「 なんで逃げたんだよ!?せっかく他ギルドを見つけて、久しぶりにギルド戦が出来るとこっちはワクワクしてたんだぞ!? 」

 

「 あぁ、それは申し訳ない。 」

 

「 実に、何年ぶりくらいすかね? 」

 

「 数年ぶりです。それまでずっとプレイヤーを探してたんですよ。特に仲間を! 」

 

「 それで、ギルド名を・・・なるほどねぇ。 」

 

 両者はこの時確信に至る。これが彼の素なのだと。魑魅魍魎統べる魔導王アインズ・ウール・ゴウン。彼も元々は自分たちと同じ、この世界に転移してきた、元人間なのだ。

 

「 んで、どういった経緯で建国を? 」

 

「 どっかでオレが冗談で世界征服がどうとかっていってしまったらしくってそれを真に受けられて・・・ 」

 

「 引くに引けなくなっちゃった? 」

 

「 そうそう。だってみんなオレを全能の支配者だと思い込んでるものだから、ちょっとの偶然もオレの計算通りってことになってしまって、収拾がつかなくなってったんですよ。 」

 

「 はぁ~なるほど。 」

 

「 それは偶然だって素直にいえないよな。オレだっておんなじ事する。 」

 

 思っていた以上に、アインズが苦しい状況下にあるらしいことは、二人もこうして知ることとなった。

続いてアインズはそれまでの経緯を語った。転移した直後の事や、リ・エスティーゼ王国やスレイン法国を滅ぼすまでの経緯、バハルス帝国との関わりのきっかけ、そしてあの大虐殺などである。

二人は憤りなどは湧いてこなかった。寧ろ、ワクワクしていた。これまで異形種になってしまった自分に引っ張られぬように努めていたのが、馬鹿みたいだと思える程に。自分たちの力が、何処まで通じるだろう、と。YGGDRASILでは前代未聞の五体の黒子山羊が、三千世界の脆弱な人間共を蹴散らして周り、ジルクニフには悪いが恐怖に支配された哀れな帝国の下等生物たちが、まさに蜘蛛の子を散らすかのように我が先にと逃げ帰る様は想像するだけで心が躍る。

下等生物どもが呼び出した精霊やスケルトンを術者ごと、或いは逃げ惑う人々を雷の龍でもって粉砕し、電子レンジでチンするが如く、その身を黒く焦がす。

バオーには、それがとても素敵な光景に思えてならなかった。カッツェも、その狂ったように歓喜に震えるような表情から、同じ気持ちだと悟る。

同時にそれほどまでに、精神は人から既にかけ離れていることも、自覚することとなった。

自分たちは、最早人間じゃない。

オレタチは、化け物だ。

冷酷で残酷で、非道な異形種だ。

きっとそれで良いのだ。きっともう、そうでしかないのだ。アインズは、自身に残った人間性とは、人間だったころの残滓であると語っている。

ギルドマスターは人間性を失うなといっていたが、結局、最早人間でない以上、そんなものに拘る理由もない。ただ少数、身内の人間を尊重さえすれば良い。バオーにとっては、そしてアインズにとっても、それはおそらくジルクニフだろう。

 

「 どうかしました? 」

 

「 いや、とても素敵なお話だったと。 」

 

「 他に要望はあるかい、陛下? 」

 

 カッツェの問いかけに、アインズはハッとして話しを戻すこととした。

 

「 それで要望はあと二つ。一つは、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンへ加入していただきたい。魔導国の所属にもなります。 」

 

「 勿論喜んで受けます。なぁ、バオー! 」

 

「 まったくその通り! 」

 

 バオーは自身も知らず知らずの内に凄まじい顔をしており、アインズはどうもそれに既視感のようなものを感じていた。

 

「 素晴らしいお話やYGGDRASIL時代からの武勇をお聞きして、貴方のギルドに入らぬという選択をとれるはずが無い!よろしくお願いします、モモンガさん! 」

 

「 こ、こちらこそ。よろしくお願いします。 」

 

 アインズはバオーと握手を交わし、続けてカッツェはこう質問した。

 

「 で、オレたちはどのポジションに収まるので? 」

 

「 本当ならば、私と同等かそのすぐ下位にしたいんですが、それではナザリックのみんなが納得しないだろうと思って、守護者の下、位がいいかと。オレの直轄で、ですが。 」

 

「 わかりました。が、納得いかないか。それもそうだよな。 」

 

「 彼らは、創造主である旧メンバーたちを崇拝している、でしたよね。 」

 

「 そうですね。彼らはギルドメンバーたちの残していった、いわば子供のようなものです。

彼らの意思は、なるべくは尊重してあげたい方針です。 」

 

「 確かに、自我を持ったNPCにとって、オレたちは部外者。それが突然現れて、親と同等ですなんて納得いくまい。 」

 

 アインズ・ウール・ゴウン。目の前のギルドマスター、モモンガの他、異形種プレイヤーの英雄、たっち・みーや、上位者狩りこと、武人武御雷、エルダーブラックウーズヘロヘロ、設定魔タブラ・スマラグディナといった兵たちが集ったYGGDRASILでも指折りの強豪ギルド。彼らの拠点、ナザリック大墳墓は難攻不落の城塞として知られ、当時彼らに追随していた幻想トリップの2大メンバーである雷帝「 紺色のバオー・ヴェル 」ならび凶候「 黒鉄のカッツェ・フォン・ベルリヒンゲン 」も、第四階層までしかいったことがない。シャルティアともそこで縁があるわけだ。

今となっては彼モモンガを除いて、殆どのメンバーが去ってしまったらしいが、その形見と呼べる存在が残って彼と共にあるのは、どこか微笑ましく思えた。そんな中、バオーもかつて鎬を削った男のことを思い出していた。

 

「 ・・・弐式炎雷。 」

 

「 そういえば、好敵手だったんですよね、彼と。 」

 

「 極端なビルドだったが、すばしっこくてすばしっこくてたまらなかった。 」

 

「 良くいってましたよ。アイツは近づいてきたら逃げて魔法を撃ちまくるから多分友だちいないって。 」

 

「 まったく失礼な奴だよ。しかし懐かしい。 」

 

 弐式炎雷。かつてのモモンガの仲間の一人であり、バオーにとっては何度も顔を合わせた相手だ。

そういえばと気になる事が彼の中で一つあった。

 

「 アイツの作ったNPCもいるんですか? 」

 

「 ・・・ 」

 

 弐式炎雷のNPCの話題を出した途端、モモンガの雰囲気が重苦しくなったのを二人は感じる。

 

「 あの、気に障りましたか? 」

 

「 実はですね、最後の件はそれなんですよ。 」

 

 モモンガは、そういってあるものを取り出した。青い取っ手の先に、落花生のような殻に覆われた何かがついている。バオーはそれに見覚えがあった。

カッツェも以前、マリッサがこの魔導国にいった時、これを使ったと聞いていた。

 

「 啓蒙の杖・・・! 」

 

 

 

 

 魔導国の夜はおどろおどろしいながらも、静かなものだ。警備のデスナイトが、農場のスケルトンや魂喰らいたちが夜な夜なわくせかと働いているのだから。本場というだけあってその規模は、バハルス帝国などの属国の規模を優に超えている。このアンデッドの労力としての採用は画期的であり、これによって魔導国の作物は安く質が良いと評判でもある。人間と違って疲れ知らずで勤勉、文句一つも垂れないといいことづくめだ。

難点らしい難点といえば見た目が骸骨故に威圧感を与えてしまう事だが、これが好きという層も一定数存在する。

夜闇を歩く、この銀髪の少女もそんな一人。

 

「 アインズ様もなにをお考えでありんすかねぇ。外部のプレイヤーを仲間に引き入れようなどと。 」

 

 シャルティアは考えていた。といってもナザリック屈指のIQを誇るデミウルゴスやアルベド、それにパンドラズアクターには及ばないが、彼女なりに主人たるアインズの真意を考察していた。

こんなことは、いつものことだ。

 

「 それもよりにもよってアイツとは。 」

 

 彼女にとって、紺色のバオー・ヴェルとその相方は見知った仲だ。かなりの頻度でナザリックを訪れ、その度に追い返したり、やられたりしていた。

第5回層を守護するコキュートスは彼と面識がないらしいことを察するに、第四階層のガルガンチュアにビビったか、その辺りで力尽きていたのだろう。そんな男を何故、誉れ高きギルドに加入させたがるのか。実際ナザリックにおいても、ギルド幻想トリップを取り込むというアインズの意見に難儀を示すものは多い。がしかし、これまで様々な謀略を張り巡らせていた彼女の主人、アインズの事である。きっとなにか考えがあるのだろう。デミウルゴスもきっとそう考えている。

そんなことを考えている内に、一軒家に辿り着く。彼女はここにいるらしい同胞に顔を見せに来たのだ。

あの杖でなにかを見てしまった彼女は、以前と大分変わってしまった。が、シャルティアにとっては自分と同じ、至高の御方々に生み出された存在に変わりなく、寧ろ趣味嗜好が自分に似通ってきて近親感のようなものが湧いていたりした。

ドアを開けると、聴こえてきたのは、喘ぎ声だ。

 

「 あぁん、ナーベ様。意地悪しないでぇ・・・ 」

 

「 ふふ、可愛い方です。ここがもう、降りてきたのではないですか? 」

 

 暗闇の中、女が二人、裸体を絡ませているらしい。そんな光景に少しドキドキしながらも、シャルティアは声を掛けてみることとした。

 

「 ナーベラル。 」

 

「 この声、シャルティア様ですか? 」

 

 同胞の来訪に気づき、窓から差し込む月光に照らされ、シャルティアに目を向ける見返り美人。黒い髪を後ろに結ったポニーテールの十代後半の少女にみえるが、彼女もまた、異形の存在だ。バオーと同じ二重の影であるが、創造主がかなり極端に創った為にこの姿にしかなれない。表ではその美貌故に美姫などとも呼ばれている。

 

「 アインズ様が、例の奴らを招いて、勧誘し始めたでありんす。 」

 

「 ・・・そうですか。アルベド様に手傷を負わせた方でしたね。シャルティア様は上手くいくとお思いで? 」

 

「 十中八九、あの二人はこちら側にくるでありんしょう。もといたギルドも既になく、大半の国は魔導国の傘下でありんす。そんな中でアインズ様が仲間になれと直々に申してるんでありんすから、当然首を縦に振らざるを得ないでありんす。 」

 

「 そう。では、歓迎して差し上げなくてはなりませんね。その時はシャルティア様も、ご一緒してくださるのでしょう? 」

 

「 勿論。あのクズオス共をヒイヒイ言わせてやるでありんすえ。 」

 

 シャルティアは昂っていた。いずれ迎えることになるであろうあの二人を、自身のいいように躾けられると思うとたまらなくなり、思わずニヤケ笑いをしてしまう。

一方の黒髪の女も、月下のベッドで女体と快楽を貪りながら、アインズの勧誘しているプレイヤーたちに、思いを馳せる。

 

「 二人のプレイヤー、それも片方は私と同じ二重の影。パンドラズ・アクターは煩くて堪りませんし、同族が増えるのは良いことです。

ヒヒ、楽しみだなぁ・・・ 」

 

 女の身体の上で笑みを浮かべる彼女の名はナーベラル・ガンマ。魔導王アインズ・ウール・ゴウンに仕えし戦闘メイド「 プレアデス 」の一人。なのだがその在り方は大きく歪んだしまっていた。

 

 

 

「 ある日を境に、ナーベラルは変わってしまった。女遊びをすることが多くなり、弐式炎雷さんの設定に反したような性格に変わってしまった。こないだなんかハムスケ、うちで飼ってるデカいハムスターみたいなモンスターを襲おうとしてましたし。

レベルも変動していたんです。それでもNPCリストでは正常で星に願いをでも、一度デスさせて復活させても、元には戻らなかった。 」

 

「 なるほどな。マリッサのヤツ、余計な真似をしてくれたようだ。 」

 

「 それで、彼女のレベルは今どうなってるんです? 」

 

「 初期の63から現在は100です。設定欄に変更などは見受けられず、ステータスは元のそれを伸ばしたもの。なにか、この杖について、知っていることはないですか。 」

 

 モモンガは何処か焦りを禁じ得なかったようだ。彼がNPCたちを我が子のように慈しんでいるのは、バオーたちも先ほど聞かされていたが、それが突然変貌すれば、困惑するのも無理はない。が、彼らはモモンガの望む答えを持ってはいなかった。

 

「 マリッサも、コレを創った時には大分イカれていたからなぁ。 」

 

「 これを使うと、神秘にまみえるとかなんとかといっていました。詳しいことはアイツに直接聞いてみないことには・・・設計データもブリュスタを発つときに持ち込んだんだと思います。 」

 

「 そうですか・・・しかし神秘ですか。 」

 

 モモンガは以前この啓蒙の杖を持って戻ってきたナーベラル自身からそんなことを聞いたことがある。曰く至高の四十人の一人、ブルー・プラネットが泣いて喜ぶような、宇宙がみえたのだと。

宇宙は空にあるのだと。

宇宙は空の先にあることぐらい、小卒のモモンガにもわかるが、この言葉の真意は、彼にも理解しかねる。今は、やれることを、やるのみだ。

 

「 で、どうしましょうモモンガさん。ジルクニフの闘技場の件は・・・ 」

 

「 それはこちらで任せていただきたい。それよりも気がかりなのは、聖王国の方です。 」

 

「 アリスティ、ですね。 」

 

「 はい。ゴーレムはともかく、パワードスーツを作れる人物がいるというのは看過しかねます。

オレは、文明の発達を危険視していますので。 」

 

 モモンガのこの一言は、荒廃した世界を知っている二人にも理解できた。パワードスーツのような機械を野放しにすれば、碌なことになりそうにない。それを作れるアリスティを放ってはおけないので、早急に対処せねばならないわけだ。

 

「 オレも、協力します。 」

 

「 オレも。丁度身体がなまりそうなとこだったので。 」

 

 バオーもカッツェも勇んで名乗りをあげる。二人の意思を確認したアインズは早速転移門を使える下僕に連絡を取る。

 

「 シャルティア、今すぐ来い。 」

 

『 わかりんした。〈上位転移〉。 』

 

 即座に銀髪の吸血鬼が姿を現した。

 

「 アインズ様、話しは纏まりんした? 」

 

「 ああ。彼らは私の直轄かつお前たち守護者の下に置かれる。それで納得してくれたよ。 」

 

「 つまり、コイツラを顎で使っていい、ということでありんすか? 」

 

「 そうなるな。が、殺すんじゃないぞ。 」

 

「 承知しています、至高の君。お前たち、これからじっくりこき使ってやるから覚悟するでありんす。 」

 

 シャルティアはそれまでの鬱憤を晴らせることに喜びを覚えてか、悍ましい程の笑みを浮かべてバオーとカッツェに顔を向けていた。

 

「 はは、あとが怖いな。 」

 

「 生きて帰ろうぜ・・・ 」

 

 二人は、目を合わせる。

 

「 その前にシャルティア、これより私たちは聖王国に向かう。シズが持って帰ったパワードスーツの製作者がいるらしいからな。勿論今からデミウルゴスやパンドラズアクターにも伝えていくつもりだ。 」

 

「 承知いたしんす、アインズ様。それで、そのゴーレム職人はどのように? 」

 

「 あぁ、彼ら同様、こちらへ勧誘し、抵抗するようならば恐怖公の下へ放った後、働かせるとしよう。るし★ふぁーさんが作れなかったレメゲトンの残り五体の悪魔像を完成させることを検討している。 」

 

 そうして、アインズは忠臣と息子同然の二重の影に断りをいれ、シャルティアの〈転移門〉で三人を連れて、ローブル聖王国に赴いた。

しかし、その時彼らは驚くべきものを目の当たりにしてしまう。

 

「 なんじゃあありゃああああ!! 」

 

 アインズですら声高らかに驚愕するも、無理らしからぬ話しだ。自身が命じて撤去させたはずの巨大魔導王像が動き回り、聖王国に火の手を上げさせているのだから。

思わず感情抑制の入ってしまう魔導王陛下であった。




 次回、アインズ様と他三人、全力で巨大ゴーレム撤去に励まれるの回。
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