幻想トリップ   作:ニコラス―NICORUTH―

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オーバーロードにソウルイーターなるモンスターがいると聞いた時、私の頭の中に、西川兄貴の歌声が聞こえてきました。


ゴーレム職工のアトリエ

「 粗方、片付いたか。 」

 

 カッツェの周囲には、ゴーレムや無人パワードスーツの残骸が転がっている。その数は、数十にも及んでいた。それほどの数を相手にしたにも関わらず、彼は殆ど息を切らしていなかった。流石は前衛職といったところか。

 

「 それにしても、お前が来るとはな。 」

 

「 だってさ、平原をこの子で走ってたら、街の方から火の手が上がってて、煙も立ち込めてるんだもん。どんな面白いことがあるのか気になっちゃうじゃん。 」

 

「 面白いって、普通煙見て思わんだろうそんなこと。 」

 

「 ふふ、だってもう、人間じゃないしね。 」

 

 人狼の視線の先には、少女にも見違える見目麗しい優男。彼が、ゴーレムの殲滅を手伝ってくれたようだ。その美しさは古代中国の貴公子蘭陵王を思わせる。灰色の軽装鎧を着た、銀髪の左サイドに結ったサイドポニー。首には首輪がついており、青い瞳には、ハイライトがなく、深淵のように深く吸い込まれるよう。その手には不釣り合いな程悍ましい黒い大鎌が握られている。

乗っているのはアンデッドモンスター、ソウルイーター。なのだが彼のは魔導国で運用しているものとは訳が違った。レベル90代のソウルイーター・ロードとでも呼ぶべき代物だ。

彼女、いや彼の名はマカマカ。幻想トリップのメンバーの一人であるデュラハンである。

 

「 で、アレがボスキャラ? 」

 

 マカマカは口から紫色のビームを放ってゴーレムを破壊する巨大魔導王像を指差していった。

 

「 そうそう。アリスティのやつがまたやらかしてな。魔導王陛下が小っ恥ずかしいからとっとと壊せだとさ。 」

 

「 へぇ。泣く子も黙る死の支配者も、恥ずかしがり屋なんだ。それにアリスティ、あの子も相変わらずみたい。 」

 

「 まったくだな。どれ、一つ手伝ってくれよ、あれの撤去をさ。 」

 

「 いいよ。でも、魔導王様にボクのことも紹介してよ。 」

 

「 あぁ、わかった。 」

 

 人狼と首無し騎士を乗せた死の騎馬が、疾風の如く駆け抜け、ビームを躱しつつ、巨大ゴーレムに向かっていく。

その光景を目の当たりにするものがいた。

魔導王の忠実なる下僕二人だ。

 

「 アレ?ワーウルフとドッペルゲンガーじゃなかったっけ?デュラハンって聞いてないよ。 」

 

「 一人増えてるでありんす・・・! 」

 

 急に現れたマカマカに、アウラとシャルティアは困惑するのであった。

 

「 まさか聖王国の地下にこんなところがあるなんて。 」

 

「 デミウ・・・ヤルダバオトも知り得なかったろうな。この地下の存在を。 」

 

 ローブル聖王国地下。辺りは薄暗く、灯りが灯っている。そんな中に、バオーとアインズはいた。

石造りの廊下と天井。機械に繋がれた亜人種たち。彼らに反応は見受けられず、皆息絶えていると二人は判断する。

間違いなくここがアリスティの工房であろう。

しかし、不自然な点が目立っている。この場にあるのが、フレッシュゴーレムだけであるということだ。

 

「 ゴーレムは見当たりませんね。パワードスーツも。 」

 

「 それらはまた別の施設に保管してあるのか・・・ん? 」

 

 アインズは近くの作業台に置いてあった資料を手に取った。随分久しぶりにその文字を彼は目にしたのだった。バオーも彼がなにかを見つけたことに気づく。

 

「 それは? 」

 

「 ここで作られている魔力炉心とフレッシュゴーレムのデータですね。ご丁寧に日本語で書かれてる。研究熱心なものだ。 」

 

 アインズの閲覧する資料には、アリスティの狂気的な研究の数々が記されていた。

通常の人間種や亜人種ベースのフレッシュゴーレムとは別に、ギガントバジリスクやヒュドラをベースとした個体や、複数種のパーツを継ぎ接ぎした、「 スカーブ 」なるものまで作っていたのだという。彼自身は別段そんなものに忌避感はなかったが、やはり文明を発達させてしまう可能性を危惧していた。

 

「 これはますます捨て置けません。はやいところアリスティさんを見つけないと・・・ 」

 

「 なにか来ます。 」

 

「 ・・・! 」

 

 バオーとアインズの前方から、大きななにかが足音を立ててこちらに歩いてくる。暗闇の中に潜んでいるそれの全貌を、二人が知ることとなったのは、目と鼻の先に来たときだ。

 

「 あれは・・・! 」

 

 そこにいたのは、やはり二人の見たことのないモンスターだ。細身の人間のような体格、蜥蜴のような丸みを帯びたような、それでいてみるものに恐怖を与えてくるような、そんな感じだ。しかし・・・

 

「〈龍雷〉」

 

 アインズはそれをみるなり即座に第5位階魔法を放つ。この程度であれば、この化け物には蚊に刺された程度しかダメージが入らないかもしれないが、思いのほか効いた。

黒く焼き焦げたその怪物は倒れ、二度と動かなかった。

 

「 龍雷で死んだ? 」

 

「 これに載っていました。このモンスターの名は抹殺者。攻撃力に富むが、魔法耐性が恐ろしく低い、失敗作だと。 」

 

「 なるほど。それで第五位階で事足りたと。 」

 

「 しかしまさか、ここまでとは。どれほどの攻撃値なのかも、測ってみたいところですね。おや、丁度いいところに。 」

 

 アインズの前方、死んだ抹殺者の後ろから新たに3体が現れる。

 

「 まさかアレの攻撃を受けるつもりじゃ・・・ 」

 

 その瞬間、モモンガに抹殺者のパンチが炸裂し、その骨の身体が壁に激突する。

 

「 モモンガさん!? 」

 

 バオーが悲鳴をあげるが、土煙の中からでてきた

アインズはまるでどうということもないようにケロッとしていた。

 

「 なるほど。確かに打撃力はある。アダマンタイト級冒険者でも勝てるのは、ほんの一握りだけでしょうね。レベルは、大凡50といったところでしょうか。しかし、残念だ。 」

 

 アインズの肉の無い白骨の掌に青白い雷が収束する。バオーも得意とする、雷属性魔法だ。

 

「 完成品ならば、よりレベルは高かったのだろうが、恐らくそれはお目にかかれないだろうことを思えばな。

〈魔法三重化連鎖する龍雷〉! 」

 

 三つの雷が放たれ、異形の怪物たちを貫く。抹殺者たちは、それを受けて地に伏した。

第五位階にも耐えられないのだ。第七位階など喰らえばただの腐肉に成り果てるだろう。

 

「 こんなものか。だが・・・ 」

 

「 油断は禁物、ですか? 」

 

「 その通り。石橋は叩いて渡るに限ります。もう少し奥を探してみましょう。 」

 

 死の支配者と二重の影は、異端の腐肉人形蔓延る地下を巡る。

この時、アインズは不覚にも現在置かれた状況を忘れかけていた。何分久しぶりの探索ということで、心躍っていたのだ。YGGDRASIL時代は、たっち・みーやペロロンチーノ、ウルベルトといった仲間たちとダンジョンを攻略していき、やがてクラン

「 ナインズ・オール・ゴール 」の人数が多くなっていき、ギルド「 アインズ・ウール・ゴウン 」として再編された際の、ギルドマスターとしての初仕事が、ナザリック地下大墳墓の初見攻略であり、見事これを成し遂げて、ナザリックは彼らの拠点となり、今日に至るわけだ。

 ダンジョンの中を歩きながら、モモンガは当時の気持ちを思い返していた。未知の探索。YGGDRASILのテーマだ。あの頃はあのゲームの何もかもが知らぬことだらけで、新鮮で、今より無垢でいられ、楽しかった。それまでの人生の苦が苦にも感じられなくなるほどに、ギルドでの日々は充実していた。

が、それは今となっては昔のこと。仲間たちはギルドを去り、自分はそこに残って、この異世界に渡り、死の支配者となった。そして今では一国の王である。アルベドやシャルティア、デミウルゴスといったNPCたちはナザリックに残ってくれた自分に良くしてくれるが、やはり仲間の安否が気になって仕方がなかった。アインズ・ウール・ゴウンを名乗ったのも、自分に気づいて欲しかったからだ。

そして今、かつての仲間ではないが、プレイヤーと縁を結ぶことができ、ギルドにも加入してくれるとのことだ。最早望みは薄いがそれでもいつか、かつての仲間に会えたのなら、彼らを紹介してやりたい。アンデッドに成り果てたモモンガであるが、やはり当時のことは輝かしい栄光であり、かけがえのない日々であることに変わりなかった。その当時を思い返す程に、今のこの気持ちに懐かしさを感じているのだ。

そんなアインズの下に、親愛なる部下から一報が届く。

 

『 アインズ様。 』

 

「 シャルティアか。 」

 

『 例のプレイヤーでありんすけど、一人増えてるみたいでありんす。 』

 

「 え? 」

 

『 銀髪でソウルイーターに乗ってるデュラハンみたいでありんすえ。もしかして他にギルドのメンバーが加勢に来て、それも取り込みさらなる戦力増大を狙うという算段だったんでありんすね? 』

 

「 あ、あぁ、その通りだ。 」

 

『 流石アインズ様でありんす!このシャルティア、御身にますますの忠義を尽くすでありんすえ! 』

 

 〈伝言〉はこうして切れた。その瞬間アインズはバオーに新たに現れたプレイヤーらしき人物の存在を問いただすこととなった。

 

「 ど、どういうことですか!? 」

 

「 どうってどうです? 」

 

「 デュラハンですよデュラハン!銀髪のデュラハンが出てきたんですよ! 」

 

「 デュラハン・・・あぁ、もしかしてアイツですか。 」

 

「 アイツ?もしかして知ってる人で!? 」

 

「 一人いますよ。デュラハン。うちに。あの時いなかったしギルドマスターが話題に挙げたのもアリスティなんでモモンガさんは知らなかったですよね。でもアイツも良く来たもんだ。 」

 

「 どういう意味です? 」

 

「 気分屋なんですよ、アイツは。 」

 

 

 

 

 その頃、地上では。変わらず魔導王像が暴れ回っている。その本物そっくりの姿は、その数倍以上もの巨躯も相まって、より威圧感を醸し出している。

カッツェとマカマカの両者が攻撃を加え、そこら中に小さいヒビが入るも、一向に止まる気配はない。

 

「 ちくしょうデケェなあやっぱ! 」

 

「 いっちょ死んでくんない?〈心臓掌握〉! 」

 

 マカマカの手に心臓らしきものが掴まれ、それをそのまま握りつぶす。第九位階魔法〈心臓掌握〉。魔導王を象徴する魔法でもあるが、彼も使用することができた。しかし、ゴーレムは以前健在だ。

 

「 やっぱりゴーレムだもんね。効いてくれないか。 」

 

「 そうは問屋は卸してはくれん。 」

 

「 ならこれだ。〈朱の新星〉! 」

 

 炎属性の信仰系魔法。こちらも第九位階だ。そこそこ効き目はあるらしく、少しよろけるものの、魔導王像はすぐさまビームを撃って反撃する。

 

「 うわ! 」

 

 二人はそれを躱してみせた。

 

「 これじゃ壊しきる前に、こっちが力尽きるよ! 」

 

「 バオーがいりゃあなぁ・・・ 」

 

「 え、今いんのアイツ? 」

 

「 オレが突っ走ってハグレたけどな。 」

 

カッツェらが戦う中、民衆たちは、かつて魔皇ヤルダバオトを打ち滅ぼしてくれた魔導王アインズを模した石像が破壊の限りを尽くす惨状を憂いていた。

 

「 魔導王様・・・ 」

 

「 どうか、どうかお助けください・・・ 」

 

 天に変わり、王に祈りを捧げる人々。かつて家族を亡くし、兄弟を亡くした者たち。その多くは悲観にくれており、その中には、妹の後を継いで即位した王、カスポンドの姿もそこにあった。またあの悲劇が繰り返されるのか。民草には絶望の気配が漂う。

 だが、嘆くばかりではなかった。

 

「 皆さん!憂いてばかりいるのは辞めましょう! 」

 

 国民や兵士たちを鼓舞するものがいた。かつて魔導王の勇姿を誰よりも近くでみていた、ネイア・バラハである。その隣にはシズもいた。

 

「 我々はかつて学んだ筈です。努力せず弱いままでいるのは罪だと!このままだとまた聖王国は崩壊します!立ち上がるべきです!武器を手に取る時です!! 」

 

 彼女はかつてのヤルダバオトの一件を経て、アインズの圧倒的な力とレメディオスの醜態を見て、弱いままでいるのはいけないことだと悟り、魔導王への信仰と共に、それを国民へ伝えてきた。その結果この魔導王信仰は、聖王国北部にて、絶大な支持を得るに至る。信仰とは人の規範であり、寄る辺である。それなくして生きられぬものだっている。本人の本質を知り得るものなどいないが、この聖王国の民にとって、魔導王アインズ・ウール・ゴウンとは、亜人の軍勢を駆逐し、前女王をも殺害した残虐な悪魔を打ち倒してくれた英雄であった。そんな彼に少しでも報いようとするのは、当然の帰結であった。

馬にまたがる騎士や兵士、成り行きながら王のみならず、農民や子どもまでもが武器を取り、魔導王像に対峙する。死ぬゆく憂いなどなかった。既に覚悟を決めた彼らは今、恩人たる王を模した岩の化け物に立ち向かわんとしていた。

 

「 聖王国が意地をみよ!魔導王陛下、万歳!! 」

 

「「 万歳!! 」」

 

「 万歳。 」

 

 ネイアやシズを筆頭とし、ローブル聖王国の国民すべてが国の危機に立ち向かおうとしていた。彼らは二人の戦士と交戦する巨大ゴーレムに対し、特攻を仕掛けんとしている。

この有り様を今は亡きカルカ女王がみたのならば、如何様に思うであろうか。彼らの心中は国を思うは勿論のこと、大恩あるアインズ王を特に強く思っていた。彼の為ならば、命を掛けることも厭わぬものすらもいた。アンデッドを毛嫌いしていた聖王国が嘘であるようだ。その忠義たるや、ナザリックの守護者たちにも比肩するだろう。

そして、その状況に焦るものがいた。

そのナザリックの第一〜三と、六回層守護者だ。

 

「 あわ、あわわわわわ! 」

 

「 どうなってるんでありんすか、あいつらの頭! 」

 

「 知らないよ、とにかくアインズ様に伝えなきゃ! 」

 

 慌ててアウラはスクロールを取り出した。

 

「〈伝言〉」

 

 広げられたスクロールが青い炎に焼かれ、アインズと通信がつながる。

 

「 アインズ様! 」

 

『 どうしたアウラ? 』

 

「 大変だよ!国民がみんな魔導王陛下万歳っていいながらゴーレムに向かってっちゃった!流れでシズやカスポンドも入っちゃってるよ!! 」

 

『 なんだと! 』 

 

「 どうしよう!このままじゃデミウルゴスの苦労が台無しになっちゃう!! 」

 

『 落ち着け!とにかくそいつらを止めるんだ!拘束魔法を使っても、オレの名前をだしても構わん!ナザリックに味方する人間たちを失うわけにはいかない!! 』

 

「 了解! 」

 

『 それとあのデュラハン、マカマカに顔を見せておけ。 』

 

「 マカマカっていうの、あの子? 」

 

『 一応アレも、引き込む予定だ。 』

 

 通信はこうして途絶えた。シャルティアは心配そうな顔でアウラに詰め寄る。

 

「 なんていってた? 」

 

「 全力でアイツラ止めろって!アインズ様の名前だしてもいいってさ。あとあのデュラハンにも挨拶しとけって。 」

 

「 なるほどあの人間たちをね。承知でありんす。 」

 

 シャルティアとアウラは聖王国の民の元へと急いだ。かたや真祖吸血鬼、かたやビーストテイマー兼レンジャーだ。素早い身のこなしによって瞬く間に民衆の前に立った。

 

「 なんだあの子たち!? 」

 

「 退け、危ないぞ!? 」

 

 国民たちは、突如現れた少女二人に、困惑する。彼らの素性を知る、シズとカスポンドを除いては。

 

「 シャルティア様。アウラ様。 」

 

「 シズ先輩、知ってるんですか? 」

 

「 うん。 」

 

「 人間ども、よく聞くでありんす。妾はアインズ様が下僕、シャルティア・ブラッドフォールン。 」

 

 名を名乗ったシャルティアから視線を向けられたアウラは、自分の名も名乗れといっているのがわかったので、そうすることとした。

 

「 同じくアウラ・ベラ・フィオーラ。アインズ様は君たちが犠牲になることを望んではいません。心意気だけは買ってあげるので、どうかこのまま捨て石になるのは待って貰えないでしょうか? 」

 

 基本下にみている人間たちに、「 死ぬな 」と願い出るのは初めてのことであり、アウラ自身もなんだか自分の国語が可笑しく偉そうな感じが否めなかったが、一応意思は伝わったようだ。

 

「 それはわかりました。が、魔導王陛下は何処へ? 」

 

「 ・・・あ! 」

 

 ここに来て、二人は致命的は見落としがあったことに気づこととなった。アインズの所在だ。シャルティアは一度アウラを呼びに〈転移門〉で魔導国に戻ってからというもの、彼の姿を見ていない。恐らく聖王国にいるのは確かなのだろうが、一体何処に行ってしまったのか。親愛なる君はどちらに向かわれてしまったのか。が、ここに来て思わぬ助け舟が来ることとなった。

 

「 これくらいのこと、陛下のお手を煩わせるまでもないよ。 」

 

「 え、ええ!? 」

 

 アウラは驚いた。そういって自分たちの後ろに立ったのは、あの知らない内に増えていた男の娘デュラハン、マカマカであった。

 

「 アイツは手強いけれど、陛下はもっと強いからね。力が強すぎてかえって街が壊れちゃうんだ。だから、ボクらが来たんだよ。 」

 

「 貴方は、魔導王陛下の御使いで? 」

 

「 そうだよ〜。僕らが来たからには、アイツをチャチャっと解体するから待っててね♪ 」

 

 マカマカは笑顔でそう返して、農民や兵士たちを安堵させた。

しかし、そんな彼を怪しむものが一人。ナザリックの住民であるシズだ。

 

「 ネイア。 」

 

「 なんです先輩? 」

 

「 私、あの人知らな・・・ 」

 

「 あーはいはい、なんでもないよ。なんでもないよね、シズ? 」

 

「 う、うぅ・・・! 」

 

 アウラは咄嗟にシズの口を塞いで封じる。ここで話しをややこしくさせれば、せっかく落ち着くところの国民が混乱して、余計な被害をだしかねない。彼女には悪いがここは黙って貰うしかない。

 

「 ちょっとこっち来て。 」

 

 そのままダークエルフの少女はオートマタを連れて、少し離れた場所に歩く。

 

「 あの人のことは黙ってて。いい? 」

 

「 でもあのデュラハン、ナザリックの・・・ 」

 

「 味方になる予定なの。いい? 」

 

「 わかった。 」

 

 アウラはシズをなんとか説得し、シャルティアに目を向けた。

 

「 それじゃ、私これからアリスティって人探してくるから。金髪のショートにオレンジ色の目のオートマタだよね。 」

 

「 そうでありんす。気をつけるでありんすえ。 」

 

「 わかってるよ。 」

 

 シャルティアを一瞥し、ダークエルフの少女はどこへともなく飛んでいった。〈飛行〉ではなく跳躍でである。

 

 

 

「 地上が慌ただしくなっているようです。はやいところ、ここの探索を終えなければ。 」

 

「 であればトラップを警戒して、この門を開けるのを躊躇ってる時間はないですね。 」

 

 一方、アインズとバオーは大きな門の前にいた。その隙間から冷たい風がささ〜、と吹いているのを感じるに、この先になにかがあるのだろう。

 

「 また趣味の悪いのがいそうですね。 」

 

「 だとすればなにか。あの抹殺者の完成品でしょうか。 」

 

「 さっき見ることはないといってませんでした? 」

 

「 可能性の話です。さっさと開けてしまいましょう。 」

 

 白骨の手が鈍色の門に触れ、ギィーっと金属の擦れるような音を鳴らして押し出していく。こういうのは映画なんかじゃホラーシーンの前振りとかによくあったのをバオーは思い出す。もっとも、メンツは二重の影とアンデッドという異形種である以上は、恐怖体験とはならないだろうが。

かくしてその部屋の全貌が明らかとなる。

 

「 これは・・・! 」

 

 何体もの亜人種が緑色の液体に満たされた槽の中に浮いている。どうやらここがフレッシュゴーレムの工場であるらしい。

 

「 これ、みんな死んでるんですかね? 」

 

「 〈生命の骨髄〉 」

 

 アインズはここで相手の体力値を見れる魔法を発動する。が、槽の中のそれらいずれも、生命反応は検知できなかった。

 

「 間違いなく皆死んでいる。アベリオン丘陵で遺棄されていたものを回収したか。それで再利用というわけだな。 」

 

「 では、これはどうしますか?持ってかえってデスナイトの素材? 」

 

「 そうしたいが、ここまでのものをいっぺんに持って帰れない。〈転移門〉でナザリックに繋げて輸送するか。それよりも、上に戻りましょう。あのゴーレムを早急に対処しないと。 」

 

「 ですね。〈上位転移〉! 」

 

 二人はその場を後にした。このダンジョンになにかめぼしいものはなかったが、ここで感じた懐かしいものがどうか、時とともに風化しないように。バオーは心にそう祈る。

 




次回、ゴーレムこわれる。あと百合なくてゴメンね。
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