朝チュン、しちゃった   作:℃゛

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ジェーンと朝チュン

唐突に目が覚めた。

俺は寝つきは良い方で、昔から一度寝たら六時までは起きないことが特技の一つだ。

朱鳶さんや青衣さんにも俺の生活習慣は褒められていた。

それなのに、瞼を開くと目の前が暗いのだ。

 

当たり前にできていたことが出来なくなる……、これが老いというものなのかと戦慄しつつ、喉の渇きを感じて寝返りを打った。

俺が向いている方向のちょうど反対側に水のペットボトルが置いてあるはずだからだ。

 

すると……ふにゅん、という柔らかなクッションのような感触が顔に伝わってきた。

それと同時に、後頭部に何か温かいものが添えられたことを感じ、数秒かけてそれが誰かの手だと気がついた。

 

「寝起きは随分と情熱的なのね?新人ちゃん?」

「─────っ!?!?!?」

「こぉら、暴れちゃダメよ」

 

上から聞こえてきた聞き覚えのある声に焦って身を引こうとしたが、巧みに体を押さえつけられ、足を絡められて身動きが取れなくなる。

 

「おはよう、新人ちゃん」

「お、おはようございます」

「早速だけど、昨日のことは覚えてる?」

「あ、はい。ヤヌス区分局全体の飲み会に行ったところまでは──」

「その後は?」

「えっと、なんか飲んで……、そこまで、です」

「アタイが介抱したのよ」

「えっと、そ、それは申し訳なかったです。謝罪もしたいですし、一旦離してもらえますか……?」

 

そう言うと、俺の頭を抑えていた手が離れてゆく。

男の欲望が頭を抑えようとするような感覚を覚えつつ、それを理性で律して頭を離すと、そこにいたのはやはり同じ特務捜査班の治安官であるジェーンさんだった。

同じ特務捜査班といっても、ジェーンさんや朱鳶さんなど前線で戦闘や潜入をこなしている人たちと、書類仕事等雑務を引き受けて彼女たちが自由に行動できるようにと配属された非戦闘員の俺とでは実質別の部署のようなものだ。

だからこそ、何故彼女が俺を介抱してくれたのか検討がつかない

 

「え、えっと……、ご迷惑をおかけして本当にすいませんでした!」

「いいのよ、昨日はちょっと助けてもらったから」

「……俺、なんかしたんですか?」

「それも覚えてないのね?昨日の飲み会で、アタイがイヤな上司に絡まれてた時にアンタが来たの。『俺が飲みますよ、全然酒好きなんで』とか言って」

 

そう言われて、少しずつ記憶が蘇ってきた。

彼女に絡んでいたのはそろそろ異動で飛ばされると噂の男だった。

階級こそ上だが性格は下の下、セクハラにパワハラとやりたい放題の癖にごますりがうまいだけの男だった。

『一応俺も特務捜査班の仲間なのだから、仲間として彼女を助けなくては』とか、すでに少しアルコールが入っていたからこその義憤で駆け付けたのを覚えている。

 

「それで、その後のアンタはあいつに五杯くらい飲まされてダウンしちゃって…、それでアタイはアンタをダシにして抜け出してきたってワケ」

「すいません、情けないところを──」

「……アタイのために颯爽と駆けつけたアンタはカッコよかったわよ?」

 

口元を手で隠してそう言った彼女に、少しずつ頬が赤くなるのが自分でもわかった。

 

「…あとは、アンタがこれを見て何か思い出すかなんだけど──」

 

ジェーンさんはそう言って、被っていた毛布を取り払った。

すると、羽織っている上着以外何も着ていない彼女の体には所々赤いアザがあって、ベッドはぐしゃぐしゃで、俺は昨日の全てを思い出した。

 

「えっ、あ、あの、その……ええ、えっと─────」

「ふふふ、思い出したならいいの。もう一回寝る?それとも、もう一回スる?」

「えっ!?ちょっ!」

「焦っちゃって、かわいい」

 

頬が先ほどよりも強く熱を帯びているのを感じる。

そんな俺を見て、彼女はその笑みを深めた。そして、こちらに近づいて俺の腕を掴むとベッドの中に引き摺り込もうとしてくる。

 

「え、えっと、まずはベッドを片付けませんか!?マトモに寝られそうにないですし……」

「あら、シないの?」

「シません!……その、なし崩し的に始めるのは不誠実だと思うので」

「じゃあ、いつか()()()続きをお願いね?楽しみに待ってるわ」

「えっと、は、はい!しっかり指輪を用意しますので!」

「あら、恋人でもよかったのに、指輪までくれるのね?」

「は、はい。ジェーンさんが良ければ、ですけど」

 

すると、彼女はこちらに近づいて俺の両肩に手を置いた。

そして、手を腕へと這わせ、そのまま下へ下へと身体をなぞり、手に触れると指を絡めてきた。

お互いの手が絡んで、距離がぐんと縮まると彼女はこちらの耳に口を寄せて

 

「……ずっと狙ってたんだもの、逃すと思う?」

 

そう囁かれた。

別に悪い気はしない、それでも彼女との生活は心臓がいくつあっても足りないくらいドキドキしそうだな、と思った。

 

「ふふふ、かわいい」

 

ジェーンさんはそんな俺を見て、艶やかに微笑んだ。

 

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