目指せ、脱ヒーロー社会!   作:悪魔さん

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別名、地獄の轟くん家・Rebirth


No.19 人物としてのヒーロー

 蜂使いの一件が終わり、季節は流れて立冬となり。

 西丸は久しぶりの休暇を満喫していた。

「どうですか? 最近は」

警察(サツ)やヒーローが抜き打ちで様子見に来るが、組は問題なく運営できてるな」

 ベンチで腰掛ける西丸の隣で、スーツ姿でファーコートを羽織った強面――阿辺川天忠會幹部の米長路次也はタバコを吹かす。

 超常以前の暴力組織の流れを汲む天忠會は、近年の治安改善や元(ヴィラン)の社会復帰の進展を機に、資金獲得活動(シノギ)を従来の稼ぎ方から方向転換したという。

 みかじめ料や賭博をはじめとした非合法活動をやめ、自営業の運営で資金を確保する、いわゆるフロント企業を主体とした経済活動だ。特にヒーロー活動において(ヴィラン)犯罪で自動車が破壊される事が多い為、それらを引き取って保管・解体をする自動車ヤードの経営が〝熱い〟らしい。

ヒーロー(こんな)社会だと解体業は華がねェからこっちで独占、しかもヒーロー共が暴れる程に儲かる。ヒーローがいなくなっても需要はあるからな、しばらくは安泰だ」

「それで落ち着いてくれると助かります」

 西丸は朗らかな笑顔で答える。

 零細化の進む組織を立て直すだけで留まり、民間人や現代社会を脅かす様々な懸念が無く、違法活動を事業拡大して稼ぐのをやめてさえくれれば、西丸としては存在しても問題ないのだ。

 もっとも、政治家である以上、憲法で保障される生存権を否定するのは色々とアウトという事情もあるが。

「ところでだが、最近妙な奴がうろついてるのを知ってるか?」

「妙な奴…?」

 路次也は都内で目撃されている不審者について語り始める。

 ちょうど蜂使いの事件が終わってから、顔に斜めの傷痕が入った長髪の男を度々目撃する事が増えた。特別怪しい動きをしているわけではないが、何とも言い難い得体の知れなさがある。

 東京の裏社会では、この〝斜め傷の男〟が一連のトリガー事件の黒幕ではないかという噂が流れており、界隈関係者は大なり小なり警戒しているらしい。

「……実は先日、僕はヒーローと警察の合同会議に呼ばれましてね。ここ最近出没する〝新型(ヴィラン)〟の情報共有をしたんですよ」

「ほう」

 新型(ヴィラン)とは、蜂使いの事件前後を発端とした組織犯罪だ。

 なるフェスにおける停電の現行犯で拘束された鰻沢照生は、トリガーの過剰供与に耐えられるよう改造手術を施されていた。それを機に鳴羽田の界隈では改造手術を施されたと思われる(ヴィラン)が増加しており、凶悪な個性を持った者が暴れているのだ。いずれの事案もナックルダスター達や相澤、そしてターボヒーロー〝インゲニウム〟の活動によって最小限の被害で鎮圧されているが、西丸は「自分に対して揺さぶりを掛けようとしているのではないか」と推測した。

 トリガーとの薬物戦争を宣言した西丸は今なお高支持率をキープしており、政治生命に直結するような不祥事もない。捏造や印象操作をしようにも、そもそもストリーマーとして活動していたが故にネット界隈に詳しい為、その手の嫌がらせも通用しない。

 そんな「鉄壁の区長」を崩すには、治安撹乱を急激に進行させ、西丸の対応が追いつかなくし、少しずつ市民を政治不信に陥らせて……という事なのだろう。

「実力行使に出ないって事は、足がつくと困るって事だろ? 嫌がらせという線もあるだろうが、じわじわと政治的な追い詰めを狙ってる可能性もあるぜ」

「そこまでの立ち回りか……相当厄介だ」

 西丸は黒幕の警戒心の強さに目を細める。

 しかし、これは〝斜め傷の男〟の動きというよりも……。

(……いや、今は後回しだ。一介の区長では手に負えない)

 西丸は首を振って思考を切り替える。

 とにかく、今は専門家達と協力しつつ、引き続き新型(ヴィラン)に対する対策を取り続ける事が優先だ。

「ウチも三下の騒ぎで稼業ができなくなるのは困るからな……匿名の情報提供ぐらいならするぜ」

「ありがとうございます」

 路次也からの申し出に、西丸は感謝の意を伝えるのだった。

 

 

 リサイクルショップ「ほっぱ~ず」。

 相澤は塚内警部の依頼を受け、鳴羽田界隈で発生するドラッグ及び個性犯罪に関する人体実験をする組織――警察は〝敵製造工場(ヴィランファクトリー)〟と呼称――の情報収集の為、同店の店員である堀田一郎・二郎兄弟から話を聞いていた。

「写真の男、鎌池(かまち)桐仁(きりひと)――あんたらの言う〝カマやん〟は個性犯罪者として留置されてる。先日、大型(ヴィラン)としてキャプテン・セレブリティが対応した奴だ」

「あー、そんな騒ぎあったな」

「あれカマやんだったのか」

 カマやんこと鎌池桐仁の近況を知ると、堀田兄弟は呆れながら重要な情報を口にした。

 半年程前、興奮(アッパー)系の成分が混ざったトリガーの「ヤバいの」が流行り始め、流石にマズい代物だと感じた堀田兄弟は手を出すなと言っていたが、案の定お頭が少し悪いカマやんは好奇心に負けてしまったようだ。

 相澤は二人の言う「ヤバいの」が、鳴羽田界隈を揺るがす〝敵製造工場(ヴィランファクトリー)〟に繋がるものだと確信した。

「今はその「ヤバいの」の話が聞きたい。売ってる奴、仕入先…その他()()()()におかしな動きはないか?」

「そうだね、そこは僕も気になるところだ」

 不意に、新たな声が三人の耳に入る。

 堀田兄弟と相澤が声の方向へ振り向くと、いつの間にか来客が立っていた。

「どうも、相澤さん。お勤め中でしたか?」

「西丸区長…」

「「はぁ!?」」

 まさかの人物に堀田兄弟は驚愕する。

 西丸は堀田兄弟のリアクションを見て苦笑しながら相澤の隣に座ると、気になっていた事を訊ねた。

「話に割り込んでしまってすみません。ちょうど僕も尋ねたい事があったので」

「いや…あなたもいると助かる。()()()は多い方がいい」

「多角的な視点、というヤツだね」

 互いに含み笑いを浮かべると、西丸は三人にある話を始めた。

「〝カニ流通網(ルート)〟?」

「ええ。先程、天忠會の幹部から気になる情報提供がありましてね」

「あんた、裏社会(アングラ)に関わり過ぎじゃないか?」

「あなたとタッグを組んでる事実がある限り、犯罪対策と就労支援の一環としての理論が通りますよ」

「ゴリ押し感が否めんな」

 西丸が路次也から受けた情報提供によると、冷凍ガニのパックの中にドラッグを紛れ込ませる違法薬物流通ルートが大阪にあるという。

 良くも悪くも昔気質のヤクザである天忠會は、西丸の薬物戦争宣言を機に陰で薬物の売人を排除してきたが、それはあくまでも売人がアングラの人間であった為。一般企業の業務用販路に寄生して個人名義の受取先に配送しているとなると、短期間で販路を乗り換えられるので尻尾を掴むのは容易ではない。

 しかも東京の特別区を勢力圏(ナワバリ)とする天忠會としては「誰に断ってばら撒いてるんだ」という話である一方、堅気への危害を禁ずる手前なので迂闊に手が出せないのだ。

「超常黎明期以前は、色んな組織がそれで金儲けしてたんだ。武器の密売とかね。でも〝個性〟の発現を機に徐々に廃れていき、プロヒーローの隆盛による摘発と解体、オールマイトによる日本の組織犯罪の撲滅で途絶えたんだ」

「金儲けの旨み自体がなくなりつつあったって事か…」

「そりゃあ〝個性〟の方が拳銃(チャカ)より強いだろ」

 堀田兄弟はコーヒーを飲みながら呟く。

 彼らの言う通り、個性社会においては従来の銃火器よりも〝個性〟の方が断然強い。その為、日本では犯罪組織の定番である武器の密輸はシノギとしてのメリットが少なく、流通ルートを独占して麻薬や覚醒剤の取引に利用しても麻薬取締官(マトリ)・警察・プロヒーローの共同摘発によるリスクを考えると、ビジネスとしては極めてリスキーなのだ。

 もっとも、それは日本が銃規制の厳しい国家だからであり、海外ではまた違うだろうが。

「でも奴らは商売が目的というより「実験」の意味合いの方が強い。だからこそ、トリガーの扱いに適任だと考えた…」

「相澤さん、その通りだと僕は踏んでます。そしてその実験が今後起こす「デカい山」の為の投資だとすると…」

「……あんまり悠長にしてられないって事だな」

「そういう事です」

 西丸は厳しい表情で肯く。

 もし〝敵製造工場(ヴィランファクトリー)〟の目的が巨大な犯罪…それこそ国家転覆や社会秩序の崩壊を狙う類であるならば、時間はかけられない。

 一刻も早く、相手の正体と目的を突き止める必要があるのだ。

「……西丸区長、確か同級生が法務副大臣でしたよね? 彼にも力を貸してもらえないですかね」

「ああ、勇人の事? どうかなぁ…僕と違って、国政は色々としがらみがあるから……せめて法務大臣になってればなぁ」

「俺も他のヒーローに一応声を掛けてみます。人手は多い方がいい」

 相澤と西丸が話し合う中、堀田兄弟はとんでもない場面に出くわしてしまったと顔を引き攣らせるのだった。

 

 

           *

 

 

 一週間後。

 作成した予算案が区議会で通った事に区長室でホッと一息ついた時、自身のスマートフォンに着信が来た。

 画面を見ると、そこには「公衆電話」と表示されていた。

「誰だ……?」

 非通知ならば特殊詐欺の可能性が高いからと拒否するところだが、公衆電話は自分と関係がある人物が携帯電話を使えない状況に置かれている可能性がある。故に、まずは出てみようと判断した。

「――はい、西丸です」

《よう、ボス》

「…荼毘君か?」

 電話越しに聞こえてきた声を、西丸はすぐに理解した。

 電話の主は、フリーターで生計を立てる青年・荼毘。土木作業員と「ほっぱ~ず」のバイトを掛け持ちしながら生活しており、月に一度ある子供と顔を合わせている西丸の顔馴染みだ。

「珍しいじゃないか。今は静岡の方で働いてるんだっけ?」

《ああ…実は仕事とは別で、ボスに頼みたい事がある》

 荼毘の相談に、西丸は時計を見ながら「手短で頼むよ」と返す。

 彼によると、どうも親交のある轟焦凍少年が小学校の宿題で知っている大人に「職業インタビュー」をする事になったのだ。それならばフリーターとして荼毘にインタビューすればいいのではという話だが、当の本人は焦凍の今後に悪影響を及ぼすのは避けたいとの事で、ダメ元で西丸に協力を求めたのだ。

 親兄弟や家庭ではなく近所の顔見知りを頼っている焦凍少年の現状に、西丸は轟家の闇を感じ取った。

《あんたの方が俺より断然いいだろ? ……で、静岡(こっち)に来る予定はあるのか?》

「明日、静岡県庁で連携会議があるから出張する。その後でいいなら時間を作るけど…」

《ハッ、タイミングバッチリかよ。じゃあその日に頼む》

 西丸は了解の言葉を伝え、電話を切る。

 時計を見ると、ちょうど13時。お昼時が過ぎようとしている。

 そろそろ昼食を取ろうかと思った矢先、副区長の石井がやって来た。

「失礼します。今お電話を終えられましたか?」

「石井さん、ちょうどよかった。明日の会議なんだけど、少し寄っていくところがあるから僕の代わりにこれを勇人に…法務省に今日渡してほしい」

「これは…」

 西丸は机の引き出しから取り出した封筒を石井に渡す。

 石井は中身について問おうとしたが、西丸が首を横に振ったので何も訊かず、ただ一言「承知しました」とだけ答えた。

 

 

 法務省、法務副大臣室。

 来訪した鳴羽田副区長から預かった封筒を開けた大泉は、中に入っていた書類に目を通す。

「…これはあいつじゃないと思いつかないな」

 文面を読む内に、大泉の表情が鋭くなる。

 そこに書かれていたのは、西丸が考えたであろう「民間防衛」の原案だった。

 現在の秩序はヒーローに依存している傾向であり、警察もヒーローの上部組織として機能しているが実質はヒーロー社会の補完機構だ。困っている人を助けるヒーローとその恩恵に与る警察という関係である以上、ヒーローが何らかの形で機能できない、あるいは機能障害に陥った場合、国内の安全保障に決定的な欠落が生まれる危険性がある。

 そこでかねてより、西丸は民間防衛の必要性を考えていた。有事や重要影響事態――日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態――の際、ヒーロー達が機能不全に陥ってしまった時に備えて市民による緊急即応体制を構築しておこうという訳だ。

 この考え方は、国民の協力を求めた民間防衛組織の設立・編成・訓練といった諸事項を定めたものであり、災害時の救援・救助活動はもちろんのこと、(ヴィラン)による大規模テロなどが発生した際にも対応できる体制を目指すものだ。ただし、現行憲法の例の一文に引っかかるのではというリスクがある為、まずはそこを変えねばならないが。

(そもそも属人化した社会なんて、崩壊はあっという間だぞ。西丸(マル)以外、誰も気づいてないのか?)

 大泉は天井を仰ぎ見る。

 自分も西丸も、無個性であるが故にヒーロー飽和社会を俯瞰して思考できる。だからこそ、この社会の歪みに気がつく事ができるのだ。

「民間防衛もそうだが、警察機構の強化も必要だな…」

 何だか一気にやる事が増えたように感じ、大泉は溜め息をついた。

「あ~、早く法務大臣になりてぇなぁ。そうなりゃワンチャン公安委員会委員長も兼任できるし。それか天下りで警察庁長官。マルは……東京都知事の方が性に合うか」

 そんな愚痴をこぼしつつ、大泉は西丸の原案を基に自身の考えをまとめるのだった。

 

 

           *

 

 

 翌日、静岡県。

 県庁での会議を終えた出張帰りの西丸は、ある公園へと向かっていた。

「確かこの辺りに……ああ、いたいた」

 西丸はベンチに座る二人に気づき、声を掛ける。

「やぁ、待たせたね」

「あ! 西丸さん!」

「……マジで来たのかよ、ボス」

「民意を尊重するのが政治家だよ、荼毘君」

 スーツケース片手に姿を現した西丸に、荼毘は呆れた笑みを浮かべた。

 相変わらず、行動力が凄まじいものである。

「まぁ、会議を終えた帰りのついでみたいなものさ。予定通り来れてよかった。……そろそろ寒くなるだろう、場所を変えたいと思うけどいいかな?」

 西丸は携帯電話で時刻を確認すると、二人を連れてファミレスへ向かった。

 本音を言えば喫煙席でパイプタバコを吹かしたいが、今回は子供がいるので副流煙に配慮して禁煙席で我慢する事にする。

 西丸が二人にホットココアを注文し、自身はホットコーヒーを頼む。立冬を迎えた昨今は冷えるので、温かいドリンクが身体に染み渡る。

「おいしい……」

「他人に奢ってもらう飯は大体美味いからな」

「そういう事は公言しない方がいいよ、荼毘君」

 荼毘の言葉に肩を竦めながら、西丸は焦凍に名刺を渡した。

「これ…」

「もしもの時の保険として、とっておくんだ。じゃあ、職業インタビューを始めようか、焦凍君」

「は、はい!」

 西丸に言われ、焦凍はランドセルからメモ帳と筆記具を取り出して質問を開始した。

 

 どんな仕事をしているのか。

 大変な事は何か。

 嬉しい事や楽しい事は何か。

 ヒーローと仲が良いのか。

 

 ありきたりな質問から個性社会で生まれた子供ならではの質問まで、西丸は焦凍の湧いて出てくる質問に一つずつ噛み砕いて丁寧に答えていく。

 それを眺めてた荼毘は「父さんじゃ無理だな、この対応」とココアを啜る。

「結構答えたけど、まだあるなら付き合うよ。あと20分ぐらいだけど」

「…西丸さん……僕、オールマイトみたいなヒーローになれるかな」

 どこか不安げな様子で言う焦凍に、西丸は「中々難しい質問をするね」と困った笑みを浮かべながらコーヒーを一口飲む。

 その上で西丸は、彼を真正面から見据えて告げた。

「焦凍君……真のヒーローってのは、世の救い・人の救いになる行いを積み重ねてきた人間が、皆に認められてようやくなれるものだと僕は思うんだ。オールマイトみたいになる事じゃなくて、目の前の人を助けたいという思いを大事にしてほしい。職業としてのヒーローではなく、人物としてのヒーローになる事を目指してほしい」

「人物としてのヒーロー……」

 言葉を反芻する焦凍に、西丸は「今はまだわかんないかもしれないけど、いつかその意味がわかるさ」と言って微笑んだ。

 その時、店内に焦凍を呼ぶ女性の声が響く。

「焦凍!」

「お姉ちゃん!」

「!?」

「おや、ご親族の方でしたか」

 焦凍と荼毘が驚く中、西丸は立ち上がると名刺を取り出して女性――轟(ふゆ)()に挨拶をした。

「初めまして。東京都鳴羽田区長の西丸伸太郎です」

「ええっ!? あの西丸区長!?」

 まさかの人物に、冬美は大慌てになる。

 西丸は席に座るよう勧めると、彼女にもホットココアを注文して差し出した。

「今日は出張で静岡県庁に行って、その帰りにたまたま焦凍君に会いまして。学校の宿題である職業インタビューに付き合ってたんです」

「そうだったんですか…。すみません、ご公務中だというのに…」

「いえいえ、政治家にとって子供達とのコミュニケーションは大事ですから。大人より子供の方が鋭い時もありますし、今日はもう帰るだけなので」

 恐縮する冬美に、西丸は「気になさらないでください」と言って穏やかに笑う。

「ところで、そちらの方は?」

「っ…」

 冬美に尋ねられ、荼毘は西丸をチラッと見た。

 その意図を察し、西丸は荼毘の肩にポンッと手を置く。

「荼毘君は僕の顔馴染みです。色んな事業でお世話になったので、ある意味ではビジネスパートナーですね。今はこの静岡で働いてるそうです」

「まぁ、そうだったんですか!」

「おい、ボス…」

「ウソではないだろう?」

 西丸の笑顔に、荼毘は渋い顔をする。

 確かに間違ってはいないが、些か誇張しているのではないかと思う。しかし西丸は全く気にせず、ココアを飲む冬美と焦凍と会話を交わす。

「へえ…冬美さんは教職を目指して?」

「はい、その為に今勉強を頑張ってて…」

「ヒーロー飽和社会のご時世に立派じゃないですか。今の国政はヒーローに予算を掛け過ぎてるというのに、あなたみたいに熱心な方が近い将来に即戦力になると思うと心強いですよ」

「も、勿体無いお言葉です……」

 日本一人気と噂されてる政治家のエールに、冬美はますます恐縮してしまう。

 その光景に荼毘は「冬美ちゃん…」とジト目を向けた。

 すると、西丸の秘書である立華が姿を現し、耳打ちをした。

「……どうやら、お開きのようだ。勘定は僕のポケットマネーから出すから安心してください」

「じゃあ、俺もここでお暇させてもらうわ。あばよ、ボス」

 荼毘はそう言って一足早くファミレスを去り、見届けた西丸は焦凍と冬美と共に退店。

 駐車場に停めてあった軽トラの助手席に乗り込むと、運転席の立華がエンジンをかけた。

「今日は僕の方こそご迷惑を掛けましたね」

「いえいえ、そんな!! こちらこそお忙しい中、焦凍にお付き合いしてもらって…」

「西丸さん、またね」

「ああ。焦凍君、また会おう。君がどんなヒーローになるか、楽しみにしているよ」

 手を振る焦凍に西丸も微笑み返し、軽トラは走り去った。

 帰りの車内では、西丸が立華と荼毘の様子について話していた。

「荼毘君は冬美さんを見た時、明らかに動揺していた」

「顔見知り…という事でしょうか? だとしたら先方が気づかないのはおかしいかと…」

「うん…まさかとは思うけどね…」

 西丸は車窓から見える駿河湾を眺め、ぽつりと呟いたのだった。




次回以降はスカイエッグの事件とか、都知事選とか、思いついた小話とか、立華の知られざる一面とか…まぁ色々やりながらデク君達の物語に移行していこうかなと思います。

ちなみに今後も、西丸の同級生がオリキャラとしてまだ出てくる予定です。
政治家と研究者は出したから、あとは芸能界と経済界と裏社会かな……。
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