目指せ、脱ヒーロー社会!   作:悪魔さん

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大変長らくお待たせいたしました。
あと数話で原作突入しようと思いますが、それまではちょっとした小話にしようと思います。


No.28 四元の狙い

 東京都庁第一本庁舎。

 高さ約240メートルの日本有数の超高層ビルであると共に、国際都市である東京の顔と言える超高層オフィスビルの10階で、コーイチは背広姿でデスクワークをしていた。

「ふう……ようやく終わったよ~」

 段東区でのシンポジウムの報告書をまとめ、コーイチは背伸びをする。

 

 〝個性〟の公的私用はプロヒーローのみ許されており、ヒーローを目指す者達は「ルールの下で〝個性〟を解放できるから」という理由が多い。悪い言い方をすれば、存分に〝個性〟を振るえない職業は廃れやすいという事でもあり、行き場のない〝個性〟はイリーガルな方に向かってしまうのだ。

 そこで西丸はヒーローとは別で治安維持及び防犯活動の為に〝個性〟の使い道を与えようと考え、都民の安全安心に資する施策を多様な主体と連携・総合的に推進していく「都民安全総合対策本部」を分割し、治安維持に特化した新しい知事部局「東京都首都防衛局」を設立した。

 主な業務は「治安対策の推進」「防犯設備の整備促進」「防犯ボランティアの活動支援」「更生施策の推進」などだが、この部局の最大の特徴は有事の際には〝個性〟を使用できるという点であり、都内であれば法律と条例の範囲内で東京都の責任の下で〝個性〟を使えるのだ。

 もっとも、あくまでも行政サービスである為に〝個性〟の行使は専守防衛と救助活動以外は許されず、ヒーローよりも公務員の特色が強いので法律上の制限もかなりあるが。

 

 そしてコーイチは、首都防衛局のトップであるナインに師のナックルダスターと共にスカウトされ、首都防衛局の職員として東京都に配属されたのだ。

「おう、苦労マン! お疲れさんなこった」

「ちょ、やめてくださいよ、恥ずかしいんで…」

 コーイチの肩を叩いて労う、狼男のような姿の平生型個性の大男――キメラこと(こん)鳥獣郎(ちょうじゅうろう)は豪快に笑う。

 彼もナインのスカウトで配属された身であり、その圧倒的なパワーはプロヒーローにも比肩し、力仕事であったり有事における実働要員として重宝されている。

「……で、どうだった? 向こうでの会議は」

「うーん…ひとまず現状維持って感じですね。あと、ウチとの連携は一度持ち帰って検討するって返事来ました」

「検討だと…? そのまましらばっくれる気じゃねぇだろうな…!?」

「それをしたら、流石に信用問題になると思いますけど……」

 コーイチは顎に手を当て考え込む。

 行政も信用が一番大切だ。もし失えば地域住民だけでなく他自治体や企業からの信頼も失いかねない為、下手に変なマネはできないはずだ。

 そうなると、やはり裏にはヒーロー絡み――特にヒーロー公安委員会が何らかの形で介入したのだろう。日本の超人社会において、ヒーロー公安委員会はどの勢力も無視できない権力を持っているのだから。

 とはいえ、表からも裏からも一目置かれる西丸と事を構えるのは賢明ではないはずだ。西丸は支持母体こそないが、あらゆる層から支持を集めるので、敵に回すのは得策ではないだろう。

「段東区は大丈夫だと思いますよ。西丸都知事が鳴羽田区長を務めてた頃から、色々と連携してたそうですし。それに余計な波風を立てて事態を拗らせたくないでしょうから」

「だといいがな…」

 キメラは腕を組んで唸ると、そこへ抜群のプロポーションと長い赤色の髪が特徴の女性が姿を現す。

 ()(さき)(きる)()――自らの髪を切れ味抜群の刃物に変化させ、自由に操る事ができる「スライス」という〝個性〟を持つ女性職員で、彼女もナインにスカウトされた身だ。

 なお、彼女はキメラ同様、自身の事を個性名で名乗っている。

「ヒーロー共は、西丸とナインを邪険に扱ってるのよ」

「羽咲さん…」

「二人が目指す世界が、よっぽど不都合なんでしょうね。西丸に至っては、公安の連中に――」

「それ以上は止せ…スライス」

 そこへ、首都防衛局を監督するナインが現れ、スライスを窘めた。

「ナイン…!!」

「あの事件は西丸自身も語りたがらない…あまり深掘りするな」

「口は禍の元、知らぬが仏ってヤツだ」

 ナインに続き、首都防衛局局長になった黒岩武司(ナックルダスター)がスライスに釘を刺す。

 西丸の身に起きた「例の事件」は、表向きは未解決扱いされているが、実際は公安が絡んだ闇の深い事件なのであまり詮索しない方が身の為なのだ。

「あっ! 天動副知事、これ…」

「わかっている。先日の会議の件だろう……大よその見当はつくが」

 報告書を受け取ると、ナインはその場の全員に声をかける。

「その場で構わない、國松からある話を預かっている」

「國松副知事から…?」

「西丸も重く見てる事案だ、心して聞いてほしい」

 その言葉に、職員全員が息を飲む。

 一呼吸置いてから、ナインは語り始めた。

「――始まりは1ヶ月程前か……鳴羽田区を発端に、未認可のサポートアイテムが出回っている。今は都内だけで済んでるが、関東一帯に流されるのも時間の問題だろう」

「未認可のサポートアイテム、ですか…」

「サポートアイテムは原則、厳正な審査を行い消費者庁と特許庁に全て登録するよう法律で義務付けられている。……どういう意味かわかるな?」

「未認可という事は…もしかして武器の密造?」

 コーイチの呟きに、ナインは無言で頷いた。

 サポートアイテムは法律上、「〝個性〟を補佐・強化し、それを用いた活動の援助を主たる目的に着用する特殊装備」と定義されている為、国の審査を通らないと製造及び販売を許可されない。これを無許可で行うと違法所持・密造・特許侵害などに当たり、重い罪に問われる。安全性の低い特殊装備など、使用はおろか所持すら危険極まりないからだ。

 しかし、そんな危険物を裏で横流ししている者がいる。(ヴィラン)にそれが渡れば、甚大な被害が起きるのは明らかだ。東京都として、これを見過ごすわけにはいかない。

「私は西丸からこの部局の指揮権を一任されている……故に今回の違法サポートアイテムの横流しは、こちらで対処する事にした。間違いなく治安の撹乱を狙ってるからな」

「おお!! じゃあ、俺達が出張る時が来たって事か!!」

「いや…まずは情報収集だ。あまりこちらが大きく動くと、捌いている黒幕に勘づかれる。慎重にやれ」

 ナインは首都防衛局の面々に言い聞かせるように告げる。

 これは情報戦なのだ。下手に動けば相手に警戒されて逃げられる。確証を得るまでは大きく動いてはならない。

(それに、ヒーロー共が必ずしもこちらに手を貸すとも限らんしな…)

「おっ、張り切ってるねぇ天動君」

「四元…」

『よ、四元副知事!!』

 そこへフラッと白い毛先の中年優男・四元松太郎副都知事が現れ、ナインを除いた面々は慌てて挨拶した。

 四元もナインも同じ東京都副知事だが、東京都規則第百八十七号に基づく「職務代理順序」においては、四元の方がナインより上だ。

 同じ副都知事でも立ち位置的には上司に近く、西丸都政においては西丸の次に権力がある男なのだ。

「君が仕切ってるトコ悪いけど、ちょっと集合ね。大事なデータ見せてあげるから」

 その言葉に、ナインと首都防衛局の面々は怪訝な表情を浮かべる。

 四元はポケットから取り出したUSBメモリを見せつけると、ノートパソコンを拝借して慣れた手つきで操作。壁にかけられた大型の業務用ディスプレイと無線接続して映し出す。

 すると、そこには――

「……えっ!!?」

「ど、どういう事ですか!?]

「四元副知事、この人って…!!」

「うん? まぁ、見ての通りなんだけど」

 画面に映ったのは、前髪の後退した柿色のトサカ髪と鋭角に尖った鷲鼻が特徴の老紳士。

 それは、一代で起業したライフサポートメーカーを国内トップシェアへと成長させた経済界の大物。個性社会においても世間的に名の広く知れた人物で、本来なら犯罪と縁遠いはずの人間だった。

 だがそれは表の顔。裏の顔を知る四元は、彼の逮捕にこだわり続けているのだ。

 

「デトネラット社代表取締役――()(ばし)(りき)()…私が追い続けている(ホシ)だよ…!!」

 

 

           *

 

 

 同時刻。

 4人いる東京都副知事で唯一の紅一点である遠見絵は、西丸と共にヒーロー活動の会議に出席していたのだが……。

(帰りたい……)

 あまりの居心地の悪さに、今すぐにでもここから逃げ出したい気分だった。

 しかし、それは何も遠見絵だけではない。第一線で活躍するプロヒーロー達も同じ心境である。

 その原因は――

「新たな行政機関の創設……我々ヒーローの仕事にまで横槍を入れるとは、随分と偉くなったな西丸」

「物事に対して担当・分担できる部署は多い方がいいという判断を下すのは、組織の長として当然でしょう?」

 スーツ姿のNo.2ヒーロー・エンデヴァーと西丸の空気が、目に見える程に険悪なモノになっているからだ。

 今回の会議では、プロヒーローが多様化・巧妙化する(ヴィラン)犯罪と社会情勢に対応する為、東京都内で起こる犯罪に行政の視点で対処・改善を進める西丸を参考人として呼んでいた。しかし、ほぼ初対面であるはずのエンデヴァーが西丸を異様に睨んでおり、それに気づいた西丸自身も「僕に文句があるならこの場で言ってくれないと困ります」と厳しい顔で応じた為、ピリピリしてしまったのだ。

 実はエンデヴァーが西丸にピリついているのは、()()()()()()()が原因なのだが、そんな事など周囲はおろか西丸自身も知る由もない。

「西丸都知事…都内に新設された首都防衛局は、どういった事案を担当してるんですか?」

 今回の会議で進行を務める田沼警部は、西丸に問いかける。

「メンバーである職員の方には、いわゆる「犯罪に強いまちづくり」を通常業務として担当してもらってます。有事の際には現場に赴いて市民の救助活動や避難誘導を行い、場合によっては専守防衛を絶対条件として〝個性〟の行使を許可してます。厚労省のマトリみたいな雰囲気だと捉えてもらえたらよろしいかと」

「我々インゲニウム事務所は、東京都首都防衛局のおかげでより迅速に対応できてます。こちらにも優先順位があるので、作業分担できるのは非常に助かります」

「実際、ヒーローじゃなくても対応できる案件が来る事も結構ありますしね…」

 東京で活動している飯田天晴(インゲニウム)と、保須市に事務所を構える〝ノーマルヒーロー〟マニュアルこと(みず)(しま)(まさ)()は、西丸が創設した首都防衛局を評価する。

 多岐に渡るヒーローの仕事の中には、専門外の案件が紛れ込む事がある。しかしプロヒーローは社会的支持が生命線であるせいで、抱える事案を選べない。その結果、小さなヒーロー事務所だと優先すべき仕事が進みづらい事もしょっちゅうある。

 そこで西丸が新設した首都防衛局が、ヒーロー事務所が抱える専門外の事案を代わりに行う形で行政サービスとして組み込んだ事で、人気職ゆえの弊害や課題が解消傾向にあるのだ。しかも東京都として取り組んでる為、仮に首都防衛局の管轄外だと判明しても別の知事部局に繋げるというフローができているのも大きい。

「……だがヒーロー免許を持ってないのだろう。自他の生命と財産を守る為に〝個性〟を公共の場で行使する事は、公務執行妨害と見なされない限りは防衛行為の一種と認められたとはいえ、な…」

 エンデヴァーは西丸を睨みながら苦言を呈する。

 プロヒーローは命懸けの職業であり、(ヴィラン)との戦いや自己犠牲で人々を守る事によって命を落とすケースが相次いでいる。エンデヴァーとしては、命懸けの現場にヒーロー以外が介入するのは危険極まりなく、万が一の場合も十分起こり得ると考えている為、第一線で働くプロとして、そこだけは容易に見過ごせないのだ。

 だが、その懸念も西丸は承知しており、既に答えが出ていた。

「首都防衛局の職員には、通常の東京都職員の選定よりも厳格な基準を設けてます。特に〝個性〟については人的・物的影響を考慮し、有無を問わず採用試験ではヒーロー試験のような個性実技試験を受けてもらっています」

「無個性にもか」

「スタートラインを平等にするのが僕の主義なんで」

「むぅ…」

 エンデヴァーは納得していないような表情をしているが、その言い分に理解を示しているのか一旦矛を収めた。

「……そういう訳なので、東京都で活動する方は首都防衛局に遠慮せず声をかけてください。協力体制の構築を含めて、こちらで対応します。では、そろそろお時間なので」

 西丸は柔和な笑みを浮かべながら、軽く礼をして会議室を退出した。

 

 

           *

 

 

 一方、首都防衛局。

 四元の衝撃的な暴露を耳にしたメンバー達は、未だ困惑を隠せずにいた。

「あ、あのデトネラットの社長が(ヴィラン)って…どういう事ですか!?」

「は、話が急すぎて理解できません! そもそも、なぜ彼が罪を犯してるなんて話に…」

 職員達からの問いに対し、四元は飄々と応じる。

「まーまー、じゃあ最初に歴史の勉強からしよっか」

『ハァ!!?』

「君達は「異能解放軍」って聞いた事ある? 文科省が方針変えてなきゃ、高校の教科書には出るんじゃないかって思うんだけど」

「異能解放軍……あの〝デストロ〟が率いた過激派じゃねぇか」

 キメラの言葉に四元は満足そうに頷いた。

「そーそー! そのデストロの本名は、()()()主税(ちから)

「四ツ橋…!? まさか、デトネラット社の四ツ橋社長はデストロの!? じゃあ彼の犯罪は――」

「それとさぁ、異能解放軍って何をやらかしてたっけ?」

「えっと…確かテロ行為でしたよね? 大学のヒーロー社会学で習いました」

「…!」

 不意に、ナックルダスターは目を見開いた。

 犯罪対応専門家であった頃から培った極めて高い洞察力が、一つの可能性を弾き出したのだ。

「解体されたカルト色の強い組織……デストロの血と決意を継ぐ子供……大企業……違法サポートアイテム……」

「師匠?」

「…全国企業を資金源に勢力を拡大…及び違法サポートアイテムのバラ撒きを利用したテロ行為で日本の治安を崩壊させる…!! それがデトネラットの狙いか…!?」

「!? な…」

「おー、流石は()オクロック! 結構少ない素材だったと思うんだけど、よくそこまで辿り着いたもんだね」

 四元はナックルダスターに拍手を送るが、その場にいる者達にとってはそれどころではない。

 あのデトネラット社のトップが、事実上の国家転覆を画策しているのだ。

 これは首都防衛局(じぶんたち)で手に負える案件ではない。それこそ国が動かねばならない事案だ。

「し、師匠の言ってる事が正解なんですか!?」

「それ、早くヒーロー公安委員会や警察庁に伝えるべきよ!!」

「ハハハハ! それができれば苦労しないよ!」

 四元の返事に、嫌な予感を感じ取る職員達。

 そして彼等の直感は間違っていなかった。

「西丸君の友人からの情報提供だと、今の異能解放軍は社会的地位が高い連中が構成員らしいんだよね。警察庁長官よりも上の人達と繋がっちゃってんのよ。そう考えると、流石の西丸君でも迂闊に動きづらいんだ」

「そ、それじゃあ手詰まりって事じゃないですか!!」

「いやぁ、ここからが西丸君のスゴいというか、恐ろしい所になるんだけどさ………このままでいいんだって」

 西丸の下した判断は、一刻も早く解体するのではなく、泳がせるというものだった。

 国家転覆を目論むテロリストを見逃せという、普段の西丸を知ってる者からしても彼らしからぬ判断だ。

「む、無視するんですか!? ほっとくとより大きな被害に繋がりますよ!!?」

「まーまー、西丸君の言い分を聞いてよ。今は会議で不在なんだから」

 首都防衛局の面々は混乱しながらも、四元の話に耳を傾ける。

「この件についてね、西丸君は――」

 

 ――確かに国家転覆計画は捨て置けないよ。だけど古今東西、巨大になりすぎた組織を統制するのは至難の業……肥大化すればする程、些細なミスで破滅する。僕達はあくまでも東京都の安全が第一だ。

 ――それに彼らはカルト集団の側面がある。それを逆手にとって、僕の政策で追い詰めてやるさ。それに友達も多いしね。

 

「…ってわけなんだ。そんでもってこっからが本題だけど……どうする? 君達」

『!?』

 突然の問いかけに、面食らう首都防衛局の面々。

「ど、どうって…」

「コーイチ君の言ってる通り、この件はほっとくとエラい事になる。でも異能解放軍はデカい組織だ、下手な手を打つと西丸君を標的にされかねない。そして君達全員にも危険が及ぶんさ」

 四元の呟きに、その場の全員は押し黙る。

 国家転覆を狙う異能解放軍と事を構えるとなれば、ヒーローでないにもかかわらず命の危険が伴う。この知事部局が専守防衛に限りだが戦闘行為が許されているのは、そういった背景があるからだ。

 逃げたいなら逃げて構わない。1400万人の都民の命と生活を守るのが仕事である西丸も、君達がむやみに命を投げ出す事は望まない。――四元はそう付け加えながら問い掛けた。

「……それでも東京都の為に、この国の社会の為に動けるかい?」

「愚問だな、四元」

「!」

 ナインの返答に、四元は目を見開いた。

「報われない者達を利用して下らない野望を成就させんとする組織は、破壊するに限る。……そうだろう」

 ナインの答えに、首都防衛局の面々は揃って頷いた。

 ただコーイチだけは何とも言えない表情を浮かべているが。

「……悪いね、こんなおじさんのワガママに」

「どの道避けて通れないだろう。連中にとっても、西丸を倒さねばならんだろうしな」

 ナックルダスターは拳を鳴らしながら笑う。

 超常黎明期のような社会情勢をゴールとする異能解放軍にとって、法律による治世での自由を求める西丸を退陣させる事は必要不可欠。彼に出し抜かれ続ければ、その目標も夢のまた夢となる。

 ならば是が非でも排除しようとするのは当然の事だ。

「そんじゃあ…着実に進めとくとしようか。異能解放軍壊滅作戦を…!!」

 悪巧みをするかのような笑みを浮かべ、四元は尻尾を掴むべく画策を開始した。

 

 

           *

 

 

 一方の西丸は、これから帰ろうとするところでエンデヴァーに呼び止められていた。

「わざわざ呼び止めて、何の用ですか? エンデヴァーさん」

「貴様に釘を刺す為だ」

 エンデヴァーの言葉に、西丸は目を細める。

 その圧迫感に遠見絵は顔を強張らせ、立華はいつでも動けるように構える。

「焦凍が随分世話になったようだな」

「子供が〝世界〟に興味を持つ事はとても大事ですから。…焦凍君は聡い子ですし、早めにそれを知って損はないでしょう?」

 西丸の言い分に、エンデヴァーは「知った口を…」と吐き捨てる。

「貴様の価値観を、焦凍に植え付けないでもらおうか」

「植え付けた覚えはありませんよ。それに僕の価値観を知ってどう思うかは焦凍君次第だ。いずれ焦凍君は自分の価値観を作って――」

「それは後でいい話だ」

 エンデヴァーは西丸の言葉を遮った。

「あれはいずれオールマイトをも超えるヒーローとする…そうするべく、()()()()()だ」

 ギラギラと野心に燃えるエンデヴァーに、西丸は冷たい眼差しを向けた。

(これがNo.2ヒーローか…)

「焦凍は有象無象とは違う世界の人間だ。貴様如きに関わる暇などない。――これ以上焦凍を惑わすな」

「何を言うかと思えば……自分がどんな人間になりたいかは、自分自身が決めるもんです。あなただって人の親ならわかるでしょう?」

 西丸はこれ以上の会話は不毛と判断し、踵を返した。

「迷うからこそ人間は成長するんです。……迷いや選択を与えないという事は、自分探しを奪うも同然だ」

「……!!」

「父としても大人としても、あなたと僕は相容れないようだ。……轟家の家庭事情に踏み込む気はありませんが、大人として焦凍君と関わる事はやめません。それでは」

 西丸は遠見絵と立華を連れ、静かに立ち去って行った。

 その背中を、エンデヴァーは腕を組んだまま一層険しい表情で見送るのだった。

 




本作の四元は、昼行灯ですがかなりの頭脳派です。そりゃ警察署長が前職ですから…。
そして発足した首都防衛局は、後々大活躍しますのでお楽しみに。

そしてエンデヴァーと西丸の不穏な空気。
エンデヴァー自身は、西丸の政策による実績は認めてはいますが、ショート君と接点を持っている事にちょっぴりお冠のようです。
ちなみに荼毘君の件はショート君自身が必死に口を噤んでるので、バレてないそうです。
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