本作におけるアンダーグラウンドを展開します。
プロヒーロー職場体験。
雄英高校ヒーロー科が実施する授業の一環で、1週間かけてプロヒーローの事務所でプロの仕事を実際に体験する事で、より一層の成長を促す為に行われる。例年、雄英体育祭後にプロヒーロー側が生徒を指名し、指名を受けた生徒はその中から体験先を選ぶ事ができ、逆に指名がなかった生徒は事前に承諾を得ている事務所の中から体験先を選ぶ事となっている。
そして今年度から、東京都に設立された「東京都首都防衛局」が新たな体験先に追加された。都内であれば法律と条例の範囲内で東京都の責任の下で〝個性〟を使える知事部局は、その特殊性ゆえに東京の裏社会やグレーゾーンに接近するので、ヒーロー事務所よりもアンダーグラウンドな領域に踏み込む。その為、ヒーローの正義がまかり通らない世界に対する理解と寛容性が求められる。
誰もが躊躇う世界に手を差し伸べられる覚悟がある者が、この局へ足を踏み入れる事が許されるのだ。
「……成程、出久君は個別の指導があると」
《すみません、本当ならそっちに行ってもらいたかったんですが…》
西丸は相澤からの電話から、出久が首都防衛局へ職場体験に行く事ができないと知る。
しかし西丸はそれを咎める事を一切せず、むしろそうなる方がよかったのかもしれないと語った。
「相澤さん、出久君はもしかしたら余計なお節介を焼いちゃうかもしれない。ヒーローのやり方と考えが通用しない世界で我を通すと、厄介事になりかねない。焦凍君はあっちの都合を
《……普通に想像できちゃいますね》
「まぁ、早めに「絶対的な正義なんて存在しない」って事を出久君に教えたかったのは同感ですよ」
そう…東京都首都防衛局はヒーロー事務所ではなく、行政機関の一部だ。
プロヒーローや警察とは別の角度で東京都の治安維持を務める組織で、時には公安監視指定団体や裏社会の住人、表の世界から切り捨てられた者達と協力しなければならない時もある。そして貧困や差別といった社会の負の側面にも触れ続ける。それはヒーロー志望の若者にとっては、かなり刺激の強すぎる世界だが、これに関わらずに超人社会を生きるのは不可能と言える。
〝個〟の為ではなく、〝公〟の為。表も裏も秩序がある。――それが首都防衛局の基本理念だ。
「……そうだ。僕の要望なんですが、首都防衛局への職場体験にはぜひ障子君を呼んでほしい」
《障子ですか》
「彼の冷静さは首都防衛局に向いているし、焦凍君のように界隈への融通も利きそうだ」
その提案に相澤は電話越しで少しの間の後、返答した。
《……障子の方に打診してみます。轟はエンデヴァー次第になるでしょうね》
「仲の良さで言ったら僕が上ですが……まぁ、あの子の意思を尊重するまで。誰も来る気がないなら、それはそれで連絡ください」
《わかりました。それでは…》
相澤との通話を終えると、西丸は続いてナインに連絡した。
《私だ、西丸》
「ナイン、今さっき相澤さんと連絡を取ってね。このまま順調なら焦凍君ともう一人が来る予定だよ」
《焦凍……エンデヴァーの倅か。イレイザーヘッドが裏で手を回してくれるのか?》
「いや…最終的には当事者の意思の尊重で合意してるから、来なければそれはそれってところかな。…まぁ中々刺激の強い部署だからね、正直誰も体験先に選ばない可能性の方が高いと踏んでたんだ」
《違いない…》
そんな他愛のない話をしつつ、西丸はナインにある仕事を要請した。
「職場体験でもし彼らが来るのなら、首都防衛局の担当案件をやってもらおうと思う。いいかな?」
《……いいのか?》
「雄英は本格的な体験を望んでるからね。一問一答で世の中はできてない事を教えるいい機会だ」
《――わかった。その件は私が引き受けよう》
ナインが承諾すると、西丸は我が意を得たりと言わんばかりに笑顔を浮かべるのだった。
*
1週間後、首都防衛局は2名の生徒の職場体験を受け入れた。
その2名とは、轟焦凍と障子目蔵。西丸の希望通りとなり、根回しに苦労したであろう相澤には感謝しかない。
これは最新の目薬をお礼に贈らねばと思いつつ、西丸はナインと共に受け入れた両者に挨拶をした。
「よく来てくれたね、二人共。相澤さんから多少聞いてるだろうけど…ここは東京都首都防衛局。ヒーローとは別で治安維持活動をしている組織だ。ここではヒーロー活動とはまた違った、社会の維持という側面を学んでほしい」
西丸はそのままナインにバトンタッチし、焦凍と障子に首都防衛局での一週間に及ぶ体験内容について語らせた。
「私がこの局を管轄する、天動司だ。この社会は表向きはヒーローや警察が治安維持をしている事になっているが、奴らの手の届かない領域もが確かに存在する。我々はそういった領域に目を配り、時に介入し、秩序を保っている」
ナインは淡々と続ける。
「お前達二人には、これから我々の担当する案件に関わってもらう。無論、相応の危険が伴う。それでも構わないか?」
ナインの問いに、焦凍と障子は顔を見合わせ、力強く頷いた。
「はい、覚悟の上です」
「俺も構いません」
その返答に、西丸は満足げに口元を緩める。
「よろしい。じゃあ早速だけど…今回担当してもらう案件について説明するよ」
西丸は一枚のファイルを取り出し、机の上に広げた。
「ここ最近、密輸の摘発事案が増えている」
「売人は警察やヒーローと一緒に捕まえてるけど、大規模な密輸ルートが新たに開拓された可能性が高い」
「初日からディープすぎる…」
職場体験を始めて一日目どころかまだ1時間も経ってないのに、いきなり密輸摘発に関わる事となり障子は思わず驚きを隠せない。
だが、彼はそれ以上に焦凍の反応に驚いた。
「薬物か武器、金塊とかですか?」
「ほぅ…悪くない返事だ」
(慣れるの早すぎないか?)
障子はクラスメイトに内心でツッコむが、焦凍の指摘は正しい。
東京は日本最大の消費地であり、世界中からヒト・モノが集まる為、裏社会にとって巨大なマーケットとなっている。
例えば、違法薬物は末端価格が世界的に見ても非常に高いので、日本の裏社会では主要な資金源になる。海外の非課税・免税地域で買った金塊を密輸すれば、日本国内の業者に売って消費税分の利益を上げる「闇の錬金術」で巨額の資金が動く。裏社会も表社会の情勢変化やテクノロジーの進化などに伴い、裏社会の密輸手口は急速に多様化・巧妙化しているのだ。
しかも今回の事案は、かなり厄介な密輸品だとナックルダスターは語った。
「密輸品は、サポートアイテムだ」
「サポートアイテムって、あのサポートアイテム…!?」
「ヒーローが所持している装備品に、違法なものがあると…!?」
まさかの答えに、障子だけでなく焦凍も驚愕。
プロヒーローが犯罪に加担している可能性が示唆され、衝撃が走る。
「…と言っても、ヒーロー共が犯罪をしてるわけじゃない。これは国内未認可のサポートアイテムが何者かによって密輸され、裏社会に出回っているという話だ」
「ここ最近、国内未認可のサポートアイテムの摘発と回収が鳴羽田と段東区で度々起きている。今回は違法なサポートアイテムの供給ルートを絶つ為、君達にも協力してもらう」
「付き添いはそうだな……コーイチとマミーがやれ。いざって時に突っ走ってしまっても対処できるだろ」
「あー…わかりました」
「了解でござる」
ナックルダスターの局長命令で、コーイチとマミーが焦凍と障子の付き添いに指名される。
二人はもう一人のコーイチという人物が、社会人になった出久のように感じ、少しだけ親近感が湧いた。
「コーイチ、マミー。ガキ共を連れて情報収集をしろ。何か動きがあったら、すぐ報告。必要であれば俺も出る」
「はい!」
「承知…」
こうして焦凍と障子は、コーイチとマミーと共に密輸問題に関する情報収集を行う為、東京都段東区へ向かったのだが……。
「ほ、本当にここに入るのか…」
「裏の情報は、裏の人間が多い場所に限るからね~」
そう笑うコーイチだが、障子としては中々踏み込みづらかった。
無理もない。目の前の建物は阿部川天忠會――超常以前の暴力組織の流れを汲む「公安監視指定団体」の本部事務所なのだから。
「じゃあ、行きますか」
「……荒事になるのか?」
「それは相手も望まないはずでござろう。西丸伸太郎という男を敵に回す程、愚かではないはず」
焦凍が疑問を呈すると、マミーはそのように返しながら本部事務所の玄関に入る。
すると、目元を黒く塗ったセンター分けの黒髪の男が現れてガンを飛ばしてきた。
「首都防衛局…? 一体何の用だ?」
「あの~、組長さんとお話しできますか? ちょっと厄介な事が起きまして」
「………わかった、
コーイチの言葉で何かを察したのか、意外にもすんなりと通してくれた。
組員の男は四人を幹部達が集う部屋に案内すると、明らかに堅気には見えない人達の視線が集中した。
完全にガンを飛ばしている。
「
「あぁ? 上半期の監査はまだやろ。何をアホ言ってるんじゃ」
「いや、それが…かなりの面倒事が起きてるようで」
「……ほぅ、詳しく聞こか」
組長の春久は葉巻の紫煙を吐きながら、コーイチ達を見やる。
すると、窓際に立っていた左腕に「雷」の字の刺青を入れ工事用ヘルメットを被った男――〝
「…お前、〝弟君〟じゃないか!?」
「! アンタ、確かおっちゃんの…!」
『は!?』
ここへ来て、とんでもない爆弾が投下された。
何と雄英高校生の焦凍と天忠會幹部の宗二は、過去に面識があったのだ。
こればかりは障子だけでなくコーイチとマミーも想定外なのか口をあんぐりと開け、天忠會の幹部達も動揺を隠せなかった。
「…おっちゃん? おい、ちょっと待てガキンチョ! そのおっちゃんの名前はわかるか!?」
「? 須晃イサムだが…」
そんなリアクションが、ヤクザ達から返ってきた。
「そうか、イサムの兄弟の知り合いか! なら堅苦しい話は抜きだ、座れ!」
態度が一変した春久達に戸惑いつつ、焦凍達はソファに腰掛ける。
幹部達曰く、イサムの会社は誰もやりたがらない本部事務所の補修工事を唯一請け負っており、その縁で天忠會の面々は「オヤっさん」、組長の春久は「兄弟」と呼んで親しくしているという。その友好関係は深く、イサムの現場でもし欠員が出れば無償で組員を派遣する程である。
特に宗二は組の建設会社、いわゆるフロント企業を経営し、民間工事で共同施工を行う事がある。その為、イサムの工事現場に度々出入りしており、焦凍とはそこで彼が心底慕う荼毘という青年と共に知り合ったという。
クラスメイトの想像を超える破天荒な幼少期に、障子は少し引いた。
「――実は俺と障子は職場体験中なんですけど、面倒な案件に関わってる。何か知ってたら教えてくれませんか」
「……どんな話だ?」
「全国的に国内未認可のサポートアイテムが出回ってる。違法ルートを摘発しないと、日本中でテロリストがのさばる事態になる」
障子が焦凍をアシストして説明。
それを聞いた春久達は、その場で笑い出した。まるで笑い話だと、寝言は寝て言えと言わんばかりの反応だ。
「面白い話じゃねぇか。続きを聞かせろよ」
「取引が行われたのは鳴羽田区と段東区でござる」
「何人か捕まってるんですけど…こっちは大規模な密輸ルートがあるんじゃないかって推測してるんです」
その言葉を聞いた途端、自分達の縄張りで勝手な商売をしていると理解した幹部達はスンッ…と一瞬で真顔になった。
そして春久は、手にしていた葉巻を握り潰した。
「…そいつは、聞いてねぇぞ」
*
一方の西丸は、東京に置かれている全てのヒーロー事務所に通達を出した。
それは、巷を騒がす連続襲撃犯――〝ヒーロー殺し〟ステインに関するもので、エンデヴァー事務所と首都防衛局で対処するという内容だった。
「意外だね。彼と仲悪いんじゃなかったの?」
「父としても大人としても相容れないと言っただけで、二度と仕事を一緒にしないとは言ってませんので」
副都知事の四元は、西丸の言い分に苦笑する。
「〝ヒーロー殺し〟なんて所詮は辻斬り…被害者の過半数が人気のない街の死角で発見されてる上、東京の路地は首都防衛局が知り尽くしてる。あとは時間の問題です」
不敵な笑みを浮かべる西丸に、四元は脱帽する。
実際は〝知識〟があるから、それを元に打てる手を打っただけなのだが…。
「さて…四元さん、僕はこれから保須市で講演があるので、あとの仕事をナインと遠見絵さんとで分けて処理してください」
「気をつけてね、あの辺り物騒だから」
西丸は脱いでいた背広を羽織り、執務室を後にする。
直後、スマートフォンが鳴り響き、西丸はすぐに通話ボタンを押した。
「もしもし。どうしたんだ、ミカド」
《伸ちゃん、朗報だ。ステインの情報が相当集まった。口頭でいいか?》
情報屋を営む元同期の情報収集力に感心しつつ、西丸は耳を傾ける。
《ステインの〝個性〟は血液関係だ。血液を摂取する事で、相手の身体の自由を奪える。過去の事例から推測するに、拘束時間はO型・A型・AB型・B型の順で長くなるんだろうな》
「……」
《正直、〝個性〟だけなら特別強い訳じゃねぇのさ。だから奴のフィジカルがヤバい。戦闘技術と身体能力の高さ、尋常じゃねぇ。それこそオールマイトかエンデヴァー以外でタイマンで勝てるヒーローはこの国にいねぇだろうな》
ステインの真髄は、独学で鍛えた基礎戦闘力である――その事実を知り、西丸は
もしここへ来て全く違う状態……それこそ、オール・フォー・ワンによってもう一つの〝個性〟を与えられてたりしたら、ステイン逮捕に向けた作戦が完全に水泡に帰してしまうからだ。
「よくわかった。ありがとう、助かるよ」
《あー、そうそう。最後に言っとくけどよ》
「?」
《保須の方が少し荒れそうだ。講演あるんだろ? 行くんなら
ミカドの忠告を聞き、西丸は目を細める。
裏社会の情報王と言える彼の言葉は、限りなく真実に近い。持ち前の〝知識〟も含めれば、間違いなく起こり得る未来と言える。
それはつまり、ここ数日の間に
(確かあの事件、脳無が2・3体出てきた気がするな……)
「この世界」は自分が随分と介入したから、それ以上現れる可能性も十分にあり得る――西丸はそう読み、秘書の立華だけでなく他の首都防衛局の職員を連れて行く事に決めた。
そうすれば、いざという時の保険になる。
「――ご忠告感謝するよ」
「いいって事よ。伸ちゃんのいねぇ世界はつまらねぇからな」
ミカドはそのように語ると、通話を切った。
それに続く形で西丸は、秘書の立華に連絡を取る。
「もしもし、虎太郎? 少し事情が変わってね――」
その頃、東京港連絡橋ではクロス・ギャングによるバンボディトラック襲撃事件が起きていた。
「スゴい数のトリガーだネ、ツムジ」
「ああ。まさか未認可のサポートアイテムだけじゃなく、違法薬物も密輸とはな」
首領のツムジは、運転手の身体を踏んづけながらボヤく。
自身が倒すべき敵の一つ・異能解放軍の弱体化を狙い、彼らと関連がある組織の情報を得て攻撃したが、その中身が予想以上だった。
しかしこれも、氷山の一角に過ぎないのだろう…。
「海に捨てるカ?」
「……いや、その前に面倒な連中が来た」
「ダハハハ! 難儀だな、エンデヴァー!」
ツムジは大笑いしながら現場に駆けつけたヒーロー――エンデヴァーとそのサイドキック達を一瞥する。
「クロス・ギャングだな? ようやく尻尾を掴めたぞ…!!」
「ダハハハ!! 熱いじゃねぇか。地球の平均気温が3度くらい上がりそうだぜ」
「おい、どうするんだ」
「目的は果たしたんだ。ズラかるに決まってんだろ!!」
ツムジは腰に差したベルトから得物のポリプロピレン製木刀を抜き、片手で豪快に一振り。
「〝
ボンッ!!
『うわあああああ!!!』
(風の〝個性〟か!? 強すぎる…!!)
直後、猛烈な横風がエンデヴァー達に襲い掛かった。
エンデヴァーはすかさず〝個性〟で轟炎を噴出。ジェットエンジンの要領で耐えるが、彼の両サイドにいたサイドキック達はことごとく吹き飛ばされてしまう。
それもそのはず、ツムジが起こした突風は風速50メートル――木造住宅なら倒壊する威力の暴風で、人間が屋外で立っている事はほぼ不可能なレベル。それこそオールマイトでないと立っていられない暴風だ。
しかし、その暴風は数秒程で静まり返る。エンデヴァーは制圧の好機と見て、炎で作り出した槍〝イグナイテッドアロー〟を投擲するが……。
「そぉらぁ!!」
「ぬっ!!?」
ツムジは再び得物を振るい、二発目を放つ。
彼が巻き起こした暴風はエンデヴァーが放った炎の槍を一瞬でかき消すだけに留まらず、周囲の看板や標識が飛ばされ向かってきた。
これを火力を上げて破壊していくが、全てを撃ち落とした頃にはツムジ達は平ボディートラックに乗って去り始めていた。
「じゃあな、エンデヴァー!! 後始末よろしく!! あとNo.1ヒーローになったら葛餅贈ってやるよ!!」
「ぐっ…!!」
エンデヴァーはギリギリと歯ぎしりするが、その後を追う事はしなかった。
橋の上での大規模戦闘は、ヒーロー側としてもリスクが高い。ましてやツムジの〝個性〟を用いた攻撃は洒落にならない。
追撃して街中であの爆風を放たれれば、被害は甚大なのは火を見るよりも明らか。エンデヴァーは追撃を断念せざるを得なかった。
「……エンデヴァー」
「! お前達、無事だったのか」
「何とか……」
すると、吹き飛ばされていたはずのサイドキック達が戻ってきた。
どうやら、吹き飛ばされた先でバーニンが即席のクッションを作り、全員無事だったようだ。
「アレがクロス・ギャングの首領…ツムジの〝個性〟ですか…」
「何て威力…」
「――いや、奴はまだ本気ではなかった。俺にはわかる」
エンデヴァーの言葉に、サイドキック達は絶句した。
一振りであらゆる物を吹き飛ばした男が、まだ加減していた――その事実に、戦慄が走る。
「それに奴と一緒にいたあの中国人…龍燕だ」
「りゅ、龍燕!? あのチャイニーズマフィアの!?」
「じゃあ、ツムジは中国の裏社会と!?」
「いや、それはない。龍燕は組織を抜けて本国から出国したという情報を得ている。奴のバックには中国系犯罪組織はもういない」
エンデヴァーは断言しつつ、今回の成果を振り返る。
ツムジを逃したのは、確かに痛い。しかし彼の〝個性〟と仲間がわかった。特に彼の戦闘力の一面を確認できたのは、今後のクロス・ギャング壊滅に大いに役立つ。そう考えれば、必ずしも悪い結果ではない。
しかし…。
(奴の狙いは何だ…? 金目の物を一切盗まずに逃走とは……む?)
エンデヴァーは、道路に転がるトラックの荷物を見て目を丸くした。
「……まさか」
「エンデヴァー?」
「いや…ひとまず後処理だ」
――クロス・ギャングは単なる
史上最多の事件解決数を誇るNo.2ヒーローとして、ツムジ達が徒に破壊を繰り返す悪党の集いではないとエンデヴァーは直感するのだった。
今回の話の補足。
出久君は原作通りグラントリノの元へと行きましたが、この一件にはオールマイトだけでなく根津校長も絡んでおり、「出久の事で西丸都知事に心配を掛けさせるのは申し訳ない」という意図があります。
相澤さんはどうも「自分の余計なお世話が本当に迷惑になるという事を学んで来い」という考えだったようです。
続いて、君の幼き日々。イサム社長の「横の繋がり」が、まさかの展開を生みました。
生徒の一人が浮浪者どころか極道と顔見知りという状態は雄英としてはスキャンダルでしょうが、そもそもエンデヴァーが悪いんだよなぁ~……う~ん……。
まぁ厳密に言うと「焦凍の知り合いである現場監督のおっちゃんが極道と交友関係があり、自身も知らずに顔を合わせた」ってなのでね。
そしてツムジの戦闘シーン。
「裏社会の〝象徴〟になる」という大きな野望を持ってるだけあり、並みの
次回はステインが登場。
西丸と久しぶりの再会があるかも…。