ストライクウィッチーズ -Fly By The Rainbow-【七色の空へ】   作:それいゆ

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貯めてた所を今回で出し切るので次回から解説と振り返りを混ぜながら上げていきたいです。


episode4『スパイク』

「どうだ~醇子、何か聞こえるか?」

「んー……何か話してるってのは分かるけど」

「え~っと…男の人もいる…のかな?」

 

3人張り付き作戦はどうにか窓の向こうで話している章香と敏子、そしてもう一人聞き覚えのない男性の声がしている所までは分かっていた。

 

「…男?でも今日来たのはあの中佐さんだけのはずだけど…」

 

謎の3人目に美緒も疑問を浮かべる。

 

「手紙の配達人とかそんなのかな?」

「いや、態々それを道場の一番奥で渡す事も無いでしょ」

「…もしかして話の本命はあっちの方だったりして」

「……有り得るな」

 

醇子の見解に徹子も同意する。

淑やかに談笑しているあたり、ただ話しに来るならその人物を隠すという事は無いだろう。

美緒達3人はそう考えていた。

 

「よくよく考えたら昨日から先生ちょっと様子がおかしかった気はするけど」

「そうなのか?」

 

先日の雨の中外出してから章香の言動に少し違和感を持っていた美緒はその内容を話した。

 

「うん、なんか……ちょっとよそよそしいっていうか……」

「…ま、まさか男が出来た訳じゃないだろうし」

「いや…それはない…ハズ」

 

徹子の冗談に美緒は少し自信なさげに返す。

 

「まあでも、話の内容は気になるわね」

「中佐さんと人払いして話す内容だからな」

 

結局美緒も章香が何を話しているのか気になっている様子だった。

 

「う~ん…和やかに話してるだけだなあ…」

 

バレる可能性を極力防ぐため、醇子は隙間から覗き見たりせず自分の耳と使い魔の耳を両方窓に当てて聴覚を働かせていた。

 

 

『じゃあ君の今後は私が………』

『そっちの方がいいでしょうね』

 

 

「…??」

「君」や「今後」といった言葉が耳に入ってきた醇子は少し首を傾げる。

 

「醇子、何か気になる事あった?」

「う、うん。先生が君は~って言ってたから…相手の男の人、若いのかも」

 

「若い?」

「そうだね。先生と中佐さんと話してるなら年配の方かなって思ってたけど…」

「確かに」

「でも若い男の人って……誰だろ?」

 

もはや話の内容より男の正体が気になってきた3人衆

 

「まさか……あの先生に限って……」

「ど、どうかな…」

 

先ほど冗談で言ったつもりだったが徹子も美緒も疑念は募っていた。

 

「う~ん、先生って指導とか空に上がってる時は凄いけど、普段は割と結構危うい所もあるし」

 

「せ、先生がお付き合いする人かあ…どんな人なんだろ…」

 

可能性の一つとして挙げているだけだが醇子はもう「それ」だと信じ込んで想像を膨らませる。

 

『外を見てもいいですか?』『ああ、勿論いいよ』

 

その一瞬惚けてる間に渦中の男性が立ち上がる音に気付けなかった。

 

「……え?」

 

近づく足音に反応する前に締め切られてたカーテンが開けられ、

窓に張り付いてた醇子は尚樹と目が合った。

 

「……あ?」

尚樹は「2階の部屋の窓」に張り付いてる少女を目の前にして理解が追い付かず驚く前に変な声を上げ

 

 

「ひゃああああああ!!!!」

 

 

まるっきり油断していた醇子はというと唐突に見つかった事で思考回路がショートして身を引いてしまい、思いっきりバランスを崩してしまった。

 

「うわ!な、なに!?」

「醇子!?」

 

突拍子もなく出た悲鳴に徹子はわけも分からず、のけ反ってしまった醇子を美緒は支えきれずに肩から足が抜けてしまい、そのままでは背中から地面に叩きつけられるような状態で醇子は身を放り投げてしまった。

 

「ッ!!!」

 

尚樹は躊躇わず窓の金具を叩いてそのまま開いた窓から醇子めがけて飛び出した。

 

「……え」

 

頭上を飛び上がる尚樹を目の前で見た美緒は状況が全く分からず、一瞬だけスローモーションのように彼を捉えたが、すぐに視界から消えていった。

 

「(どうにかなれ!!)」

 

地面に叩きつけられる前に尚樹は空中で醇子を捕まえ、そのまま身をよじって自分がクッションになる形で抱き寄せて地面に転がった。

 

「ぐぅ…っ」

「あ、あれ?私……え?」

 

『ドスッ』という鈍い音を立てて地面に倒れこんだ2人。

尚樹は下敷きになる形で醇子を抱き留め、醇子は何も理解できないままうめき声を出して自分を抱きかかえている尚樹を見つめるしかなかった。

 

「おい何だ!!」

悲鳴とほぼ同じタイミングで飛び降りた尚樹を追いかけるように窓から外を見る章香。

 

「なになになに!?!?」

敏子も先ほどまで落ち着き払っていた態度を思いっきり崩して文香の傍に立つ。

 

「あ…せ、先生…」

 

「…坂本?」

 

章香は青ざめた顔を見せる美緒の表情と窓から外を見て暫定的ではあるが状況を把握した。

 

---

 

「まず…坂本の説明を聞こうか」

「は、はい……」

 

尚樹が窓から落ちて間もなく、美緒と徹子の2人は事情聴取を受けていた。

 

体を叩きつけられた尚樹と外傷は無かったが相当混乱していた醇子を敏子に任せて医務室で待機させ、

美緒達から事情を聴くことにした。

 

「で、なんであんな事を?」

美緒は『2人の内容が気になったから』という事をそのまま話した。

 

「はあ……」

流石の章香も擁護しきれず、目頭を押さえた。

 

「…お、俺のせいなんです。気になるから手伝ってくれ言い始めたのは」

 

こらえきれず白状する徹子。

 

まさかこんな大事になると思わず憔悴しきってる様子だ。

 

「いや、まあ……うん。」

 

章香は徹子を責める気にもなれずただため息をつくしか無かった。

 

「お前たちはウィッチの素質がある。それはわかるよな?」

 

「「はい……」」

 

「なら、空でそういう感傷で短絡的に行動してしまえば失うのはなにか…分かるだろう?」

「今回は彼のお陰でたまたま無事だったが次もそうとは限らないからな」

 

「……うぅ」

「……」

 

徹子は俯いて何も言えず、美緒も申し訳なさからこらえきれずべそをかいていた。

「まあ……なんだ、何も伝えなかった私も私だな」

章香は美緒が泣くのを堪えている事に気遣うように言い、少しバツが悪そうに頭をかいた。

 

「いちいち処罰もしたりしないから、しっかり反省してくれ」

「はい……」

 

徹子はただ謝るしかできなかった。

 

「……(しかし)」

尚樹が迷わず窓から飛び出したあの瞬間を思い返し、章香は抱いていた疑問が確信になりつつあった。

 

「(あの判断力と対応……私や敏子…いやそれよりよっぽど場数を踏んでいるな)」

事情説明を終わらせ、2人と医務室に向かっている中でも章香は彼の行動が頭から離れなかった

 

「(一体あの子は…どれだけの間戦ってきたんだ…)」

 

-医務室-

 

「……」

意識は失わなかったが少し頭を打ってしまったのか呆けていた様子を見て尚樹は医務室のベッドに寝かされていた。

 

「はあ…こんな何度もなるかね」

 

空から落ちてきたと聞かされたすぐ後に窓から落ちていった自分にツッコむように自嘲した。

 

「…大丈夫そうかい?」

独り言を聞いて声をかけてきたのは敏子だった。

 

「あ、ええと…中佐さん」

 

「よかった……本当にびっくりしたんだから……」

「あんな無茶智子だってしないわよ」

「あ、ウチの部下の事ね。優秀だけど向こう見ずでやんちゃしいの娘なのよ」

 

流石に目の前で窓から飛び降りる所を見てしまったからか、驚きと心配を隠せていない敏子は誤魔化そうとしてるのか矢継ぎ早に話しを続ける。

 

「す、すみません。咄嗟でしたから」

 

「なーんで謝るのよ。女の子一人守ったんだから大手柄じゃない」

「ね?醇子ちゃん?」

 

敏子がそう声を掛ける方を見ると、縮こまっている醇子がいた。

 

「君は…」

「う…えっと、その…」

 

割れ物を扱うような表情で恐る恐る声をかけてきた醇子だったがしどろもどろで上手く話せない様子だった。

彼はまだ気だるさが残る体を動かしながら上体を起こし、醇子の方を見て話す。

 

「気にしなくていいよ。それより君の方は大丈夫?」

「え、あ……」

 

逆に心配された醇子は驚きを隠せなかった。

 

「庇ったつもりだけど……どこか痛めたりしてない?」

 

「あ、はい…おかげさまで」

「……その、ごめんなさい」

 

「え?」

 

急に謝罪してきた醇子に尚樹は思わず聞き返す。

 

「私のせいで、あんな事になって……」

 

「……ああ」

 

彼女は尚樹が窓から落ちた原因を自分にあると感じているようだった。

 

「別に気にしなくていいよ。」

 

「で、でも」

尚樹は優しくフォローするが醇子は納得できない様子だった。

 

「まあ、確かに……危ない事したなとは思うけど」

 

少し考えたような仕草をしてから尚樹は話を続ける。

 

「まあ目の前であんな状態だったし……体が勝手に動いちゃってたからね」

「でも……」

 

醇子の表情は暗く、まだ自分を責めている様だった。

 

「も~醇子ちゃん?せっかく無事だったんだからメソメソしないの」

はにかみながら醇子を撫でる敏子。

 

「ま、まあ結果良ければなんとやら……だね」

 

「……ありがとうございます……」

 

尚樹のフォローに醇子は少し目を潤ませながら感謝を述べる。

 

「あ、あの……その……」

「ん?」

 

醇子は何か言いたそうにしてモジモジしている。

 

「どうしたの?」

 

「……名前」

「……名前を、聞いてもいいですか……?」

 

「ああ、そういえば言ってなかったね」

 

尚樹は名前をまだ名乗っていなかった事に気づいた。

 

「中川尚樹だ、君は…」

 

「たっ、竹井!竹井醇子です」

「醇子ちゃんか」

「は、はい!」

「よろしくな」

「……よ、よろしくお願いします!」

 

少し緊張気味だった醇子は顔を明るくして答えた。

 

「…ふふっ」

 

若い2人の邂逅に微笑む敏子であった。

 

そうしている内に医務室の扉をノックする音が響く。

 

「あ、どーぞ」

 

敏子が返事をすると扉が開いて入ってきたのは美緒と徹子を連れてきた章香だった。

 

「あ!美緒ちゃん!徹子ちゃん!」

 

醇子は入ってきた2人を見ると声を明るくし、駆け寄った

 

「あ…醇子…」

「…もう大丈夫そうか?」

 

気落ちしながらも醇子を気に掛ける2人、親友ではあるが1歳下ということもあって妹分のようにも扱っている醇子へ危ない目を合わせてしまった負い目もあり、

ばつが悪い気持ちになっているようだった。

 

「うん、もう大丈夫」

 

醇子は2人に笑いかけながら答えた。

 

「そうか……よかった……」

「心配させちゃってごめんね」

 

醇子の笑顔を見て美緒も徹子もようやく安心できた様子だった。

 

「……うん」

「尚樹くん、体は大丈夫そう?」

 

「はい、特には」

 

教え子の3人が落ち着いた所を見た章香は尚樹の様子を気にかけ、話しかける。

 

「そうか、なら良かった……本当にすまなかったな……」

 

「いえ……俺が勝手にやった事ですから」

 

「……ありがとう」

 

章香は深々と頭を下げた。

 

「あ、頭を上げてください!」

 

「いや、なんであれ教え子を救ってくれたんだ。感謝してもしきれない」

 

「私からも、本当にありがとうございます」

「……すみませんでした。」

 

章香につられるように美緒と徹子も頭を下げ、謝罪の言葉をのべた。

 

「あ、いや……そんな」

 

まさかの事態に尚樹はたじたじになっていた。

 

ーーー

 

謝罪の雨あられをどうにか収めて、尚樹は美緒と徹子とも自己紹介を交わしてた。

 

「坂本美緒です。海軍の練習生でこの講道館で先生…えっと北郷少佐に指導してらってます」

「わ、若本徹子…です。美緒と醇子と同じでウィッチになるために特訓してる…しています。」

 

美緒も徹子もまだ気まずいのか他人行儀が崩せていない様子であり、

特に徹子はまともに使ったことがない敬語を無理に言おうとしてしどろもどろなのが隠せておらず、

そんな所を見てもまだ気まずさが残っているのを尚樹は感じ取っていた。

 

「美緒と…徹子ね」

 

「はい、あの……本当にすみませんでした。」

 

また後ろめたさがあるのか、美緒が重ねて謝罪を口にする。

 

「大丈夫だよ。骨も大丈夫そうだし」

 

「でも」

 

美緒はまだ納得できていないようだった。

 

「……じゃあ、こうしよう」

 

尚樹は何か思いついたのか、人差し指を立てて提案をする。

「3人はウィッチっていうのになるために頑張ってるんだろ?」

 

「っ…は、はい。そうです」

 

「3人がウィッチになって……今度は俺がピンチになった時に助けて欲しいな。」

 

「え?」

 

「そんなんで……?」

「…う。」

 

まさかの願いに3人は驚きを隠せない様子だった。

 

「なに?自信ない?」

 

歯を見せながら煽るような物言いで語り掛ける尚樹

 

「ば!そんな事ない!」

 

徹子はムキになって反論した。

 

「なら……約束だ」

 

尚樹はそう言って握った拳を前に差し出す。

 

「約束っ……!」

 

その姿を見た醇子は胸がすくような表情で言葉を溢す。

 

「任せとけ!そもそもんな事にはならねえしな!」

 

そもそもピンチにはさせないとようやく笑顔を見せて答える徹子

 

「……はい!」

 

熱くなる目元をぎゅっ抑えて目を見開き、元気よく返事をする美緒

 

3人は意を決し、差し出された拳と自分の拳をぶつけあった。

 

 

 

「…雨降って地固まるって奴?」

「…そうかもね」

 

一件が収まった様子を見てそう呟いた敏子に対して、 章香は顔をそらしながら返事をした。

 

「?何よ章香、そっぽ向いて」

「……何でもない」

 

様子がおかしい章香に何事かと敏子は思ったがすぐに気づいた。

 

「章香あんた泣いて」「うるさ゛い……っ」

 

感極まってしまった事を敏子に突かれた章香は涙声で反論した。

 

「はいはい」

 

章香の背中を撫でて慰めながら敏子は再び尚樹を見る。

 

「(彼が何者なのか、まだはっきりとはしないけど…)」

「(……ま、悪い子ではないのかね)」

 

全てを知ったわけではないし、隠している何かがまだある事を理解しつつも敏子は今のところはそう結論付けた。

 

「(…これが全部彼の仕込みなら…もう騙されるしかないのかな……)」

 

章香の方はベッドの上の尚樹に質問攻めの徹子と美緒、それを窘める醇子の4人を横目で確認してそう思った。

我ながら脇が甘いなと自嘲しつつも一旦は彼のことを信じようと考えながら敏子の慰めにしばらく身を任せたのだった。

 

 

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