【朗報】ワイの鯖、見覚えのある奴しかいない件   作:エタル丸

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まだまだ続く、アノス視点。


滅びの掌

 

「そら、そこだ」

 

輝く黒炎の右手に、まるで黒き粒子が生き物のように絡みついている。

 

滅びを内包した<焦死焼滅燦火焚炎(アヴィアスタン・ジアラ)>が、放たれた弾の数々を一方的に溶解させ、滅ぼしていく。

 

「そう易々と──」

 

<縛死の魔眼>が俺を鋭く睨みつけ、アサシンは素早く攻撃態勢に移った。

 

「──いくものかっ!!!」

 

アサシンの身体を中心に、莫大な魔力が渦を巻いている。それは次第に周囲の空間を呑み込み、現実が彼女の心象風景へと置き換わる。

 

『──我等が罪は赦されず、されど我は進む』

 

アサシンは静かに、言葉を紡いでいく。

 

最初は黒く、領域は果てなき闇に覆われた。

 

『空の空。その一切は全てが虚しく、されど我等は歩み続ける』

 

次に白く、領域は汚濁なき純白に包まれた。

 

『その道の果て。矜持を踏み躙られ、我が魂が穢され尽くそうと、私は贖罪の道を歩み続けよう』

 

最後は灰が降り積もった。

 

固有結界(セカイ)は黒き灰に溢れ、発動していた<焦死焼滅燦火焚炎(アヴィアスタン・ジアラ)>も何時の間にか消えている。

 

そうして彼女の切り札──宝具は発動された。

 

虚しき終焉、その死を以て贖わん(サラカエル・ヴァニタータム・アレイオス)

 

「くはは、凄まじい魔力だ。そいつを待っていた」

 

──瞬間、アサシンの力が急激に減衰した。

 

だがそれ以上に、別の箇所から尋常ではない力を感じた。それは彼女の銃から発せられたものだ。

 

「さらばだ、名も知れぬサーヴァント」

 

彼女は銃を構え、その銃口を俺へと向ける。

 

それに撃ち抜かれれば、間違いなくこの身は滅び去るだろう。くはは、なかなかの宝具だ。

 

これほどの脅威、これほどまでの力を前にしては、さしもの俺も認めざるを得ない。

 

引き(がね)を引く音とともに、俺は瞬時に魔法陣を描く。まさかこの世界で使うことになろうとはな。

 

霊基(いのち)を引き換えにした攻撃は強力だ。流石の俺も、まともに受けてやれぬ。ゆえに──」

 

描かれた魔法陣から蒼き炎が漏れ出した。

 

それは固有結界(セカイ)を焼き尽くさんと唸りを上げ、空間を滅ぼし、放たれた魔弾へと一直線に向かう。

 

「<覇弾炎魔熾重砲(ドグダ・アズベダラ)>」

 

蒼き恒星が轟音を立て、向かってくる銃弾を飲み込まんとした。しかし──

 

「ほう?」

 

その銃弾が蒼き恒星に触れた瞬間、<覇弾炎魔熾重砲(ドグダ・アズベダラ)>が抵抗虚しく弾け飛んだ。

 

何の抵抗もできず、一方的に。

 

「……ふむ、これでも深層世界の魔法なのだがな。カラクリを見せよ」

 

一直線に飛来してくる銃弾。

 

そんな死の具現たる魔弾に伸ばした俺の掌は、夕闇色に染まっていた。

 

「<掌握魔手(レイオン)>」

 

俺は全てを殺す凶弾をぱしりと握り締める。

 

「……!?」

 

魔弾は死の力を撒き散らし、あらゆるものを殺さんと暴れるが、俺はそれを力づくで掌握した。

 

そうして魔弾を掌握していくうちに、それが内包する秩序(概念)の一端に触れ、ようやく理解できた。

 

「なるほど。これはお前の権能か」

 

「……だとしたらどうする?」

 

「答えるまでもあるまい」

 

そう俺は答え、<掌握魔手(レイオン)>の右手に黒き粒子を纏わせていく。

 

「確かに大した権能だが──」

 

ぐしゃり、と魔弾を握り潰す。

 

「まだ足りぬ」

 

間髪入れずに俺は魔法陣を描いた。描かれたそれは幾重にも重なり、俺の身体に積層していく。

 

「<波身蓋然顕現(ヴェネジアラ)>」

 

波身蓋然顕現(ヴェネジアラ)>は、可能性を具象化させる。俺は夕闇の指先から紫電を放ち、球体魔法陣を描いた。そうして今回、生じさせた可能性は──

 

「<掌魔灰燼紫滅雷火電界(ラヴィアズ・ギルグ・ガヴェリィズド)>」

 

握りしめた<掌握魔手(レイオン)>の手を空に掲げ、一〇の可能性の魔法陣を描く。

 

そうして溢れた紫電が走り、魔法陣同士を繋ぎ合わせ、一つの魔法陣を構築していった。

 

 

 

 

 

「………………」

 

私は眼前で起きている光景に固唾を呑み、ただ黙って見ているしかなかった。

 

自身の本能が大音量で危険信号を発している。

 

依代の少女も、大天使としての自分でさえ、アレ(・・)にその身を晒せば間違いなく滅びる。

 

存在の一片さえ残さずに、だ。

 

だが身体が、その魂が硬直して動けない。動けない、動けない、動けない──!!!!!

 

「ッ……ア……グァ……!」

 

先程までの余裕は消え失せ、残っているのは「逃げろ」という本能の叫びのみ。

 

今、銃口を向けているこちらが有利なはずなのに。今すぐにでも引き(がね)を引ける、私の方が圧倒的に有利なはずなのに──引けない。

 

引けるわけがなかったのだ。

 

目の前の、世界の終末を彷彿とさせる光景に、私の全ては時が止まったように動けなかった。

 

怖ろしく、悍ましく、そして何より──

 

「………………」

 

私は見惚れていた。

 

文字通り、魔眼()を焼くほど美しいその光景に。逃げなければ、回避しなければならないのに。

 

滅びの紫電が私に、固有結界(セカイ)に降り注ぐ。領域にある、あらゆる全てを滅ぼさんと迫ってくる。

 

私、は──ワ、タシ、ハ……ヮ、タ────




サオリェ……絶対に召喚してやるからなァ!!
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