スキル『ハーメルンの上の方にあるやつ』   作:天野ミラ

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文章の区切りとか色々試行錯誤中です、見辛くなってたら申し訳ない。
見易くなってたら嬉しいんですけど!


27.ダンジョンの管理者

「みっ……ミービーちゃんなんですけど?あれ、翻訳が間違ってますかね……?ミービーちゃんなんだよねぇ!ミービーちゃんだぁよ……?」

 

「いや、通じてるから大丈夫。単語の意味が理解できてないだけだから」

 

 ダンジョンに管理妖精が居るなんて話も初耳だし、第一層担当ということは他の階層にも同じような存在がいるということだろうか?

 

「とりあえず、そのスライムはもう襲ってこないの?」

 

 未だ魔法を維持したままの師匠と、剣を降ろしていないシエナ。当然だが、彼女の言葉を鵜吞みにして戦闘態勢を緩める事はしない。彼女も敵である可能性があるのだから。一応スキルも使っておこう。

 

『スキル:ルビ(るび)

 

この子は私の言う事は聞くから(この子は警備用の守護者だから)問題ないんですけど!(壊されると結構困っちゃうんですけど!?)

 

「ほら、怖くない怖くない~」と続けるミービーと名乗った彼女と、黒いスライム。随分と世知辛い本音を覗いてしまった。守護者か、この先に何があるか分からなかったとはいえ……結果的に侵入しているのは僕達の方だった。

 

「それで、どうやって此処に入って来たんです?ここの入り口見つけ辛い上に、私達の言葉で書かれてるから普通は入ってこれない筈なんですけど……」

 

「手の内を明かしたくないんだ、偶々って事にしておいて欲しい」

 

 裏が無い事は確認したものの、手の内を明かすほどに信頼したわけじゃない。それに僕のスキルは出来るだけ内緒にすると、昔師匠と約束したわけだし。

 

「それで、この先に何があるのかな」

 

 シエナは未だ剣を降ろしていない、確かにこの先に何があるのかが分からない以上は警戒を緩めるのは早いだろう。

 

「この先には、私の居住空間と管理部屋と……転移用の魔法陣くらいしかないんですけど?」

 

 前者二つはともかく、最後の一つを聞いて衝撃のあまりその場で崩れ落ちそうになった。なんといっても転移魔法は───それこそ昔話にしか出てこないような伝説の魔法なのだから。それも、ダンジョンの階層間を移動できるだなんて、聞いたことも無い。

 

 少なくとも王都に害をなそうという人間……妖精?ではないのだろう。もう少し話を聞いてみるべきだと、僕はそう判断した。

 

「もう少し詳しい話を聞きたいな」

 

「立ち話も何なので、お客様をおもてなしさせてほしいんですけど!」

 

 そういう事で話がまとまったが、とりあえずパーティメンバーにどう考えているかを聞こうとしたところで……後ろから消えそうな程か細い声で僕を呼ぶ声がした。

 

「あの……ノル君?この魔法はいつまで維持してればいいのかな。第4小節の魔法を使わずに維持し続けるのってすっごい緻密な魔力操作が要求されるんだけど……」

 

「あっ、忘れてました……本当にごめんなさい」

 

 後ろを見ると、師匠の額には滝のような汗が浮かんでいた。僕のスキルを使えば少しばかりズルは出来るが、そうでない場合は……詠唱後の待機は結構集中力が要る。魔法使いの弱点とも言える、長い詠唱を保持したまま探索することが出来ないのはこれが一つの要因だった。

 

 

 

 扉を抜けた先は、意外にも綺麗で普通な生活空間だった。そもそもダンジョンの内部に居住空間がある事がおかしい事ではあるんだけど。この部屋の奥には扉が二つ、それと二階?への階段が見える。おそらくは管理用の部屋と移動用の魔法陣に繋がっているのだろう。

 

 少し待っていると、お茶菓子らしきものの詰まった箱と紅茶らしきものがテーブルの上に並べられる。賞味期限とか大丈夫なのか、そもそも彼女達に飲食は必要なのか?とか気になることは沢山あるが……

 

「お持ちしたんですけど……お口に合えば嬉しいんですけど!」

 

『特殊タグ:注釈』

 

 まずはこの紅茶とクッキー*1に毒が無いかを改める必要がある。疑ってばかりで申し訳ない気持ちもあるが、パーティメンバーの命を預かっている以上は軽率な行動はとれない。

 

「それじゃあ、頂きますね」

 

 クッキーを一つ齧ると、甘味が口の中に広がる。素朴な味わいだが、だからこそ素材の味を最大限引き立てているといえるだろう。そして、口に入れた時にピリッとした感じや変な雑味、それに身体の痺れは感じなかった。

 

 注釈が示す通り、少なくとも毒物の類は含まれて無さそうだ。食べてもよさそうだと二人に目配せをすると、シエナは恐る恐ると言った様子で紅茶に口をつける。本当は口をつけるべきでは無いのかもしれないが、ここで一切手を付けないのは相手を警戒しているというようなモノだし……それに相手の機嫌を損ねる事になるかもしれない。

 

「美味しい……ですね。何処の紅茶なんですか?」

 

「よく聞いてくれたんですけど!これは、第二層で取れた茶葉で作った紅茶なんですけど!」

 

 そしてどうやら嘘をつくつもりもないらしい。気を抜くつもりは無いが、直ぐにこちらをどうこうしようというつもりは無いようだ。

 

「押しかけるような形になってしまってすまないね、そこは謝罪させてもらいたい」

 

「別に全然大丈夫なんですけど?久しぶりにお客様が来て私としても嬉しいんですけど!」

 

 一応はこちらに友好的らしい、そもそもなんでダンジョンを管理しているんだろうか。何処のダンジョンもこんなものなんだろうか。

 

「どうして管理なんてしているんですか?というかそもそも何を管理して……?」

 

「それは私達がダンジョン管理妖精だからとしか言えないんですけど……人間は何で息を吸って、足で歩いて、ご飯を食べるの?って言ってるようなものなんですけど」

 

 そしてダンジョン管理は魔物が脱走しないようにしたり、ダンジョン内の環境が偏らないように魔素を調整したりしているらしい。その他にもいろいろやってくれているらしいが、これ以上の話は『業務上の機密保護の観点』?から詳しくは話してはいけないらしい。

 

「でも、どうしてわざわざダンジョン側が地上にモンスターを出さないようにしてくれてるの?」

 

「それは簡単な話なんですけど。ダンジョンマスターが王様と契約して、王都から漏れ出る魔力を吸わせて頂く代わりに国に利益のある素材を産出する事を約束したときの条約の一つなんですけど!」

 

「うぉっ……思ったよりとんでもないのが出てきた。ノル君達、間違っても外では話さないでね」

 

 王様……というのは、この国を興したという初代王様である『勇者』の事だろう。国の宝物庫あたりにはその事を記載した書類があるのかもしれないが、僕らみたいな一般人が決して知って良い情報じゃない。というかそれは機密じゃないのか、それじゃあ機密事項って何なんだよ。

 

「あの入り口を看破できるような人間なら使わせても良いって、お話になってるんですけど……間違っても、入り方を他の人に教えたりはしないでほしいんですけど」

 

「それと、行った事のない階層の転移魔法陣は規則で使えないんですけど!」そう言って紙の束を取り出したミービーは、ペンと書類をこちらへと差し出してくる。中身に目を通すと、一般的な契約書の類には見えるが……

 

『特殊タグ:注釈』

 

 契約書*2は、どうやら契約書の魔道具らしい。どのみちこんな場所とさっきの事実を世界に広める訳にもいかないので、それで階層移動の魔法陣を使わせてもらえるなら渡りに舟だが……

 

 念のため三度ほど、契約書を読み返してスキルを使ってみたが特に不審な点は見受けられなかった。パーティの総意として、この提案を承諾する事に決めた。

 

「わぁ、これでお友達が増えたんですけど!またのお越しをお待ちしてるんですけど!」

 

「こちらこそ、紅茶とお菓子ありがとうございました」

 

 無事に、契約が成立したという事だろう。契約の書かれた紙はそれぞれ僕達とミービーの体へと向かって行き、すり抜けて見えなくなった。

 

「もう遅い時間なので入り口まで送って行ってあげるんですけど、やり残したことは無いんですけど?」

 

「ああ、今日は帰るつもりだったが……わざわざ付き添いはいらな───」

 

「それじゃあまた今度なんですけど!」

 

 そう言い切るや否や、僕達の足元に魔法陣が現れ───視界が切り替わる。薄暗い道の、目の前にあったのはダンジョンの入り口。

 

「すっごいね?まさか入り口まで送ってもらえるなんて!」

 

「……あぁ、本当に規格外だ。戦いにならなくて良かったといえるね」

 

「えっ、えぇ……」

 

 すっかり暗くなった外へと歩き出す、こうして僕達の最初のダンジョンチャレンジは終わった訳だが……まさか、ダンジョン内とは言え、三人も同時に転移させるとは。今度行くときは王都でお茶菓子でも買っていくべきだなと、そう思った。

*1
製作者:ミービー。ダンジョン内で取れた素材だけで作られた紅茶とクッキー。彼女は三百年程前にお菓子作りにはまった時期があったため、味は王都の店と比較しても遜色ない。

*2
魔法の契約書:契約が破棄された時にあらかじめ決められた罰則を魔法によって与える

文章の比率とか

  • 地の文が多いほうが嬉しい
  • 会話文多めの方が嬉しい
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