ハーメルンのランキングの上の方にあるやつになってるんですよ、この作品(タイトル回収)
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王城からの迎えの馬車に揺られている。どうして庶民の僕がこんな事に……なんて、12魔将の討伐以外無いとは思うけど。その祝勝会が国を挙げて行われるという事で、街はお祭りムードとなっている。冒険者ギルドでも、一躍時の人と言うような扱いを受けているし。
もう一体の12魔将を倒した時は、魔王の復活を広めたくないという意向で詳細は伏せられていたものの……これだけ王都が賑わっているのを見ると、僕達の為した事の大きさを改めて実感する。
礼服は、いつのまにかオーダーメイドで王国側が用意してくれる事になっていた。あれよあれよと言う内にサイズを測られ、質の良い服に着られたモブが完成したと言う訳だ。
馬車の中は対照的だった。ガチガチに緊張した様子のシエナと、自然体のグレイ師匠。そして給仕のメイドさん。やはり場慣れしているのだろうか、いやそもそも師匠は顔に感情があんまり出ないんだけどさ。
だけどそれよりも目を引くのは……
「あの……」
「どうされましたか?もし困り事があれば、何なりとお申し付けくださいね」
「いや、何でこんなところにいるんですか……ツェツィーリア様」
「えっ、なんでツェツィーリアちゃんが!?」
「あら、ここにいるのはメイドのツェツィですよ?」
緊張しすぎてシエナは今の今まで気づいていなかったらしい。わざわざ茶色のウィッグまでつけて、メイドの真似事をしていたのはこの国の王女様だったのだから。もう本当に何でもありなんだな。
「実のところ、皆様とお話をしておきたかったんです。パーティが始まるとこうやって気軽に話すことも許されませんから……」
そう言って憂いのある顔を見せた彼女には、王族なりの悩みがあるのだろう。それでも、流石にお転婆が過ぎるとは思うが。
「褒賞なのですが……わたし……と言うのがお約束と聞きましたわ」
「えっと……」
「冗談ですわ、国の宝物庫からと言う事になりそうです。期待をしていてくださいね?」
「プリンセスジョークと言うやつですわ」なんて、にっこりと笑って言った彼女の言動に寿命が縮みそうになる。心臓に悪いからやめて欲しい、そして何処から何処までか嘘なのかが分からないのが一番怖い。
「そろそろ着きますわね、最後になりますが皆様は王の。ひいては国の客人に当たりますわ」
「そうなると……どうなるんですか?」
「皆様に無礼を働くと言うのは、王の権威に泥を塗るようなもの。舐められない為なら、ある程度は自由にしていただいて構いません」
そう言ってシュッシュッとファイティングポーズを取ってから馬車を降りていくツェツィー……メイドのツェツィ。そんな事を知らされてなんて無い、今初めて聞いたんだけど……!?
「さっ、最後の最後でとんでもない爆弾を落としていったね、あのお姫様……」
「あっ……変なのがいたら切り捨てて良いんだ、じゃあ気が楽だね?」
「待ってシエナ、良くない良くない……!」
緊張してた理由は剣が通じないからだったのか、通りでいつもより緊張しているように見えた訳だ。それにしても自然体というにはあまりにもぎこちない気もするが。そもそも帯刀は禁止だし、持ってるのは木刀……それはあんまり関係ないか。
どうやら国賓待遇と言うのは誇張でも無いようで、宿の一番高い部屋よりもずっと豪華な客室に通される。当たり前のようにメイドさんが控えているし、色艶の良い果物が籠の中に備え付けられている。
「落ち着かない……」
「僕も落ち着かないよ、これからどうなっちゃうのかな」
「取って食われる訳でなし、自然体で良いと思うよ?」
程なくして会場へと案内される。豪華絢爛な内装の会場を見ると、あまりにも僕が居るのが場違いに思えてくる。そして扉を開けた瞬間、とんでもない数の視線が向けられる。何とか判別できる話し声はやはり僕達に関するものか、ツェツィーリア様に関するもので。当然だが注目されている、今回の主役らしいから当然なんだろうけど。
料理のある、人のいなさそうなテーブルの近くに向かう。テーブルに着いた後も、まるで牽制しあうかのように誰かが話に来ることは無かった。いちゃもんの一つも貴族の方がかけに来ないあたり、やはり国賓待遇なる権力を感じる。
「よく、集まってくれた」
そして会場が静かになったかと思うと、部屋の奥から現れたのは……高価そうなローブと王冠を身に着けた初老程の歳の男性。
「此度は、12魔将『悪食』マーマルム及び───」
あれが国王様、ツェツィーリア様の御父上に当たる人なのだろう。当然だが、初めて見た。そもそもクロッカス王国の民でも、王を見る機会と言うのは早々ないはずだ。
「───『鋼鉄』シャリブレンの討伐を祝うものである」
会場が一息にざわつく、これもまた……聞いていない。まるで悪戯が成功したかのようにこちらを向いて、こっそり微笑んで見せた国王様を見て思った。あっ、この人が間違いなく『あの』ツェツィーリア様の御父上なんだなと。
「余が長い話を好まぬのは、皆も知っての通りであろう。クロッカスに───栄光あれ」
思考を現実へと慌てて引き戻し、テーブルに置いてあるグラスを手に取る。その合図を皮切りに、立食タイプのパーティが幕を開ける。カラッカラに乾いたのどを潤すためにグラスを空にしたは良いものの……緊張のせいで全く味が頭に入ってこない。
「おっ、落ち着かない……」
「やっぱ豪華すぎて落ち着かないね……」
「いや、そうじゃなくて……ドレスがひらひらしてて落ち着かないなって。変じゃないかな?」
どうやらずっとソワソワしてたのは、服のせいだったらしい。村にいた時はワンピースやショートのパンツを着ていた印象があるけど、流石にドレスを着ていたのは見た事が無い。やや暗めの赤いドレスは、シエナの長い黄褐色の髪に良く似合っていると思うんだけど。
「よく似合ってるとは思うけどな、僕は凄く好きだよ」
「そっ…………そうかな?」
「君さ、そういう所だぞ本当に」
何故かグレイ師匠に脇腹を突かれれる、それと時を同じくして演奏隊が音楽を奏ではじめた。周りもそれにあわせて恐らく踊り始めるのだろう、師匠に教えてもらった通りだ。王国式は少し勝手が違うかもなんて言っていたが、今の所教えてもらった作法やルールに差異は見受けられない。
「よければ、僕と一緒に一曲踊ってくれる?」
「うっ、うん!」
こういう時にレディから誘わせてはいけないとは、師匠に教えてもらった通りだ。あまりにも柄じゃなくて背中がむず痒くなるけど、作法だというのなら頑張って耐えようじゃないか。
場所こそ違うけど、練習した通りだ。それに、ある程度は技術が求められるものの、曲調もダンスもゆったりしたものだ。それは、このパーティのダンスの目的が踊っている間の歓談にある事からだろう。
それでもどんな風に踊ればいいのか、緊張のあまり頭から飛びかけてしまっていた。こんな時の為に一時保存していた『あれ』がある。
『スキル……』
| 傍点 | ルビ | 特殊タグ | 整形・置換・変形 | プレビュー | 小説閲覧設定 | 一時保存 |
『プレビュー』
昨日丁度見せてもらった、お手本のようなグレイ師匠のステップが脳裏に流れている。こういう時にお手本が鮮明に思い出せるというのは本当に便利だ、学力を試すような試験では正にチートと言えるような性能だろう。
お手本をなぞってゆったりとステップを踏み、少しぎこちないながらもダンスを始める。やはりシエナも緊張していたのだろう、お互いに言葉を交わさないまま時間が過ぎる。それでも、一曲目が終わったあたりでようやく周りにも目を配る余裕が出来てきた。
「ノル君はさ、魔王を倒したいの?」
「僕は……」
投げかけられた質問は、残りの12魔将を意識してのモノだろう。国や世界の為を考えるなら、明日にでも他の12魔将を捜しに行った方が良い。だけど、僕は魔王を倒して世界を救う……なんて、大層な志を胸にソノヘンの村から旅立ったんじゃない。旅立ちの日、心に決めたあの原動力、『何時か本になるような、めくるめく冒険の旅』……そんな旅がしたくて冒険者になったのは今も変わってはいない。
「いや、そういう訳じゃ……無いかな。それでも、ソノヘンやクロッカス王国が無くなるのは困る」
「うん、私も嫌だなぁ……」
お互いにゆったりとお手本通りのダンスを踊りながら、考える。綺麗なステップはお手本通りと言えばそうなのだが……何処か味気ないように感じてしまうのはどうしてなのだろうか。
「変に意気込まなくても……いいのかもね」
「うん?」
「結果的に魔王を倒しちゃうみたいな……そんな冒険譚があっても良いと思わない?」
自分で口に出してみて、それがなんとなくしっくりと来た。別に積極的に誰かの行動をなぞる必要なんてない。僕達の冒険譚は、他の誰のモノでも無いのだから。一曲目が終わりを告げたようだけど、それでも僕はもう少し……
「良ければ……もう一曲踊ってくれる?」
「うん……喜んで!」
プレビューを切って、僕達はダンスを続けた。お互い一曲目よりぎこちなくて、何度か足を踏みかけるような危ういタイミングがあった。正直、何とかダンスの体を保っているといった有様だったけど……
「ちょっと、早すぎるよシエナ……!」
「それでもついてきてくれるでしょ、ノル君?」
そんな二曲目のダンスの方が僕とシエナらしくて、一曲目よりもずっと楽しかった。
文章の比率とか
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地の文が多いほうが嬉しい
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会話文多めの方が嬉しい