つまり、お待たせしましたという事です。
「ふぅ……」
「意外とダンスも悪くないね、ノル君?」
「そうだね、また機会……があるかは分からないけど」
踊り疲れてテーブルへと戻る頃には、三曲ほどが終わっていた。体力的には問題ないんだけど、普段と違う事をすると神経を使うというか……それでも、すっごく楽しかったのは確かなんだけど。
「お疲れ様、君達らしくて良かったと思うよ」
「ありがとうございます、王道からは程遠いダンスだったとは思いますけど」
「それでもいいのさ、何たって今日の主役は……私達なんだから」
師匠からドリンクを受け取り、喉を潤すと……こちらに向かって歩いてくる人影が一人。白いドレスを着た、よく見慣れたはずの顔だった。
「今回の件、大儀でした。王国の第一王女として御礼を申し上げますわ」
「あっ、ありがとうございます王女殿下」
いつもとは全く違うツェツィーリア様の対応に、思わず反応がワンテンポ遅れる。公式の場所ではやはり、一国の王女としての顔で対応されるのだろう。こうして改めて見ると、冒険好きなお転婆姫とは思えない。
「褒章の件でお話がありますので、よければついてきていただけますか?」
「わっ、分かりました」
そう言って姫様に連れられてダンス会場を後にする僕達。注目を受けてはいるものの……誰かに話しかけられることは無かった。
「やはり、堅苦しいのは肩が凝りますね……!皆様も楽にしていただいて大丈夫ですよ?」
「あっ、ありがとうございます……?」
会場を離れると、大きく伸びをして急に表情を変えた彼女が話しかけてくる。ある程度は予想していたものの、ここまでコロコロと表情を変えられるのは才能だなと思う。流石は王女様だ。
「今回の件はお父様も物凄く褒めていましたよ?なにせ、12魔将の討伐報告は今回の件も含めて4件しかあげられていないのですから」
「うんうん、もう少し自信を持ってくれれば言う事無いんだけどねぇ」
そうやって褒められると凄く恥ずかしい。だけど何時か本を書いてもらうためには、人の前で話をするような事態も増えてくるかもしれない。なんとか慣れるような特訓をしなければいけないかもしれない。
暫く王宮の通路を歩いていると、やけに警備の厳重そうな扉の前に辿り着く。警備の兵は重要な場所を守っているであろうだけあって、かなり装備の質が良い。勿論実力もかなり高いのだろう。そんな兵士たちと一言、二言何かを話したかと思うと、彼等が道を開けて扉の姿が露わになる。
「ここが宝物庫です、少し待っててくださいね?」
あまりに分厚く重厚そうな扉の前、その錠前にツェツィーリア様が鍵を差し込むと……宝物庫の扉が独りでに開き始める。この扉自体が魔道具なのだろうか、僕には見ただけでは想像もつかない。
「こちらにあるものは、全て下賜して良い物だとお父様には伺いました」
姫様に先導されて部屋へと入る。部屋は流石宝物庫と言うだけあって、綺麗な宝石や高価そうな武器が並べられている。
「うわっ、高そう……」
「もっ、もちろん。わたくしでも構いませんが……」
『スキル:傍点』
最早恒例となっているフリを聞かなかったふりをしつつ、
「これはなんと、魔力を込めると氷の魔法が使える剣なんですよ?」
「えっ、面白いじゃないか……!」
師匠は氷魔法を使えるのに、何の役に立つというのだろうか。いや、それもまた……浪漫といえば浪漫なのか。
「この剣……」
「そちらの剣が気になるのですか?そちらは非常に頑丈なのですが……」
コンコンと剣の腹を叩くと、硬質そうな音が部屋に響き渡る。
「頑丈なだけなのです、遺物は特殊効果の類が付いているものも多いのですが……まあ、使い勝手は良いですわよね」
『スキル:注釈』
そんな剣*1を注視してみるが……成程、確かに複雑な効果は無いらしい。
「えっ、それが良い……!」
「それならシエナさんにはこちらで、後で名簿に記載しておきましょうか」
どうやらシエナはその剣が気に入ったらしい。確かに前回の12魔将戦はこの剣があれば、もう少し楽に戦えただろう。僕としてはこの短剣のように魔力が通しやすかったりした方が嬉しいけど、純粋な剣士であるシエナには武器が壊れないだけで十分なのかもしれない。
宝石や装飾品にはあまり興味は無いが、魔道具らしきものもあるしどれを選んでいいものか悩む。何でも良いと言われると、かえって迷ってしまうのは仕方ないだろう。その全てに片っ端から注釈を振っていこうと思ったのだが……何故か部屋の奥に鎮座している宝玉に目が惹かれる。
「これですか?これは……ダンジョンから出土したとされている、スキルアップの宝珠ですよ」
そんな僕の様子に気付いたのだろう、ツェツィーリア様が解説をしてくれるらしい。
「そんなモノがあるなんて……」
「そう簡単な話でも無いのです、何故なら……」
何故使わないのか、例えばだけどオットーさんやツェツィーリア様に使えば戦力の増強が図れるだろう。そんな疑問を晴らすかのように、宝珠を自分に向けたツェツィーリア様から……宝珠が弾かれるようにコロコロと地面を転がる。
「あくまで進化するのは続きがあるモノのみ、騎士を聖騎士にすることは出来ても……聖騎士をさらに押し上げることは出来ないのです」
ツェツィーリア様のスキルは、『聖女』だと聞いたことがある。その上は存在しないから、これ以上進化する事は無いという事なのだろう。『剣聖』もどう考えても最上位のスキル群、ここの物を下賜されるような優秀な冒険者が、そんなものを選ばないのは自明の理と言えるだろう。
「精々が、王族で進化の余地があるスキルを引いたときに使う位でしょうか……そんな事は、ここ百年は起きておりませんが」
王族には優秀なスキル持ちが生まれやすいとは聞いたことがある、それが初代の王によるものなのか……優秀なスキル持ちと婚姻する事が多いからかは分からないけど。今の王様も確か優秀なスキルを持っていた……はずだ。
一目宝珠を見てみようとした瞬間の事だった、まるで惹かれ合うかのように、宝珠は僕の身体へと吸い寄せられ―――取り込まれる。その瞬間割れるように頭が痛み、立っていられない程の眩暈に襲われる。
「まさか……そんな事が……!」
「だっ、大丈夫ノル君!?」
「なっ、えっ……えっ?」
「待って……師匠……」
酷く世界がゆっくりに見える。心配するシエナ、事態を把握していない王女様と、事態を把握して杖を構えたグレイ師匠。頭の周りが早すぎるのは良いけど、流石にそれは判断が早すぎる。相手は一国の王女様なのだから。
| 傍点 | ルビ | 特殊タグ | プレビュー | 小説閲覧設定 | 一時保存 | 繧ケ繧ュ繝ォ繧帝?イ蛹紋クュ |
酷く気持ちが悪い、まるで触れてはいけない『何か』に触れてしまっているようなそんな気分だった。その場に立っていられずに、思わず床に座り込む。
| 目次 | 小説情報 | 一括 | 縦書き | お気に入り | 評価 | 感想 | 推薦 | ここすき |
新しく表れた青い字のウィンドウに描かれていたのは、理解のできない文字群だった。未だ一つ目のウィンドウすら使いこなせていないというのに、まさかウィンドウが増えるなんて思ってもいなかった。そもそも……
『スキル:注釈』
僕のスキル*2に……続きがあるなんて。大切そうな情報も、あまり大切じゃない情報も。はち切れそうな程な沢山の情報が、濁流のように頭に流れ込んでいく中で……
「何で……じゃがいもがこんなに人気なんだよ……」
そんな独り言を皮切りに、僕の意識は闇の中へと包まれていった。
文章の比率とか
-
地の文が多いほうが嬉しい
-
会話文多めの方が嬉しい