「それで、君の授かったスキルは?魔力量的におそらく魔法系だよね、魔法使いかその1つ上かな?」
ずっと気になっていた魔法の才能だが、あくまで一般的な『魔法使い』の域を出ないものらしい。剣聖のシエナがいるんだから僕も『賢者』レベルの才能があるんじゃないかなと期待していたが、現実は非情であった。
「いや、魔法系のスキルは貰ってないんです」
「えっ、本当かい?だったらどうしてここまでの魔力を……?体質によるものだけとは考えにくいんだけど」
「実はスキルでそういう事が出来るんです」
「……詳しく聞いても良いかな?」
スキルについて話し終えると頭を押さえていたグレイ師匠だったが、こちらに向かって神妙そうな表情を僕に向けた。
「このスキルで何が出来るかについて、誰かに話したかい?」
「えっと、両親とシエナには話しましたが……詳しい事を知ってるのはシエナだけかな?」
「結論から言えば───このスキルの事は広めない方が良い」
「このスキルは優秀なスキルだ。いや、優秀過ぎる。正しく『人にスキルを与える』ようなスキルだ。だからこそ、君を欲する人や疎ましく思う人は沢山いるだろうね」
冒険者パーティーで引っ張りだこなのはそう悪い話でもない気がする、これで僕も遂に物語の英雄になれたり───
「この場合の欲するというのは君のスキルをだ。もし私が権力者なら王城に幽閉して一生スキルを使うだけの道具として扱うだろうね」
「───えっ?」
「そして、神にのみ許された『スキル授与の儀』。これに似た奇跡を起こせると知ったら、教会は二つに割れるだろう。即ち、君を神の使いとして確立するか……神を騙るものとして亡き者にしようとするか。どちらにせよ、冒険者なんて夢のまた夢だね」
そんな事は想像もしていなかった。確かに、一人の人生を犠牲に国を強くできるなら……国は総出で僕を捕まえようとするだろう。他国に行くのなんて以ての外だ。どうしてもっと慎重に物事を考えられなかったのか。
「そう落ち込まないでくれよノル少年。まだ小さいんだからこれから学んでいけばいいのさ、冒険者の事も世界の事もね」
「グレイ師匠は国には言わないんですか?」
「君にこうして内情を話しているのが答えみたいなものだろう?いや、私は信心深い訳でも愛国心が強い訳でもないからね、ここの国の人じゃないし」
確かにグレイ師匠の耳は常人の“それ”より随分と長いし、顔も整っている。恐らくだが、エルフと言われる種族なのだろう。それでも、国に連れて行けば多額の賞金が出ると思うのだが。
「……ちなみに私の魔力量は増やせたりするのかな?いや、ちなみにだからね?決して魔力量を増やしてほしいという訳でも、『“それ”を黙ってる事の対価にしようと交渉しようかなんて考えた後、子供相手に大人気無さすぎるから止めとくか』なんて微塵も思ってないからね?」
「……で、本当のところはどうなんですか?」
「うぐっ。実はS級に上がるのに伸び悩んでてさ、藁にでも縋りたい気持ちなんだ。報酬なら何でも払うから試してくれない?」
「何でも……!?試してみますね」
魔法の才能を得てから、うっすらと人に見えるようになったオーラのようなもの。これが恐らく魔力なんだろう。
『
だから僕はグレイ師匠の
「えっと……表現が難しいんですけど、『既に記録されているものは後から変えられない』というか……僕が既に認識してしまっているものは後から変えられないみたいなんです」
「成程、私が『A級冒険者』と名乗ったから……あくまでその範囲から逸脱は出来ないのかな?それとも私の力量は私が理解してるからか?それでも、少し増えた事は確かだ。この恩は必ず返すよノル君」
「それじゃあ……しっかり魔法を使えるように見ていてください!」
「うんうん、任せてくれたまえ!何なら仕事よりもノル少年を優先するよ?」
「いや、お仕事はちゃんとした方が良いと思いますけど」
「そっ、そこは素直に頷いておくものなんじゃないかい!?」
そうこうしている内に、ついに魔法を使ってみる事になったのだが。
「まず魔法は3つのステップに分けられる。『詠唱』・『魔力を込める』・『発動』の3ステップだね。簡単な魔法なら、素質にもよるけどスキル無しで使えるとされているんだけど……見てみる方が早いかな」
「着火せよ───イグナイト」
そう言って木の枝に向かって手を翳した師匠の前に、火種も無いのに黒い煙が上がる。それと少し魔力のようなものが揺らいだような気がした。
「あまり火の魔法は得意じゃないんだけどこんな感じかな。見込みの良い子はこれで使えたりするんだけど……」
「やっぱり魔力を込めるっていうのが分からなくて……」
「うん、まあ普通はそうだよね。とは言え、ノル少年はスキルのお陰か人よりも『目が良い』らしい。私の魔力を目で追ってたよね?それ、普通は一晩や二晩で出来る事じゃないからね」
魔法の才能を願ったのと、小説のように世界を書き換えてしまうスキル『ハーメルンの上の方にあるやつ』 のお陰か『魔力を視る事』に関しては人より優れているらしい。
「そもそも人間は大なり小なり魔力を持っているんだ。人によっては小さくて見えないなんてこともあるかもしれないけど、完全に無いって訳じゃあない。もちろんノル君の中にも魔力は流れている。私の魔力をノル君に少し流してみるから、その流れを意識してみてごらん?」
そう言って僕の肩の上に手を載せる師匠。流れている自分の魔力に意識に目を向けると、確かに何かが流れているのが視える。これを集める───こうか?
「着火せよ───イグナイト」
僕の手元に先生のものより一回り小さい火種が現れる、それは木の枝を焦がすだけで枝に火がつく事はなかったものの……
「成功、成功です!グレイ師匠!」
僕でも魔法を使えたという、大きな証だった。
「うんうん、中々見込みがあるねぇ。魔法を使わなくても、自分の魔力の流し方に意識を向けるだけでも訓練になると思うから、家でもやってみるといいだろう。だけど、絶対に家で魔法を使っちゃダメだぞ?そういう子、結構多いんだから」
「分かりました、グレイ師匠」
恐らくは暴発を恐れての事だろう。確かに子供が急に魔法を使えるようになったら、おもちゃを与えられた幼児のようにそれを振り回してしまうかもしれない。家に引火したらとんでもない事になる。
そんな事があった魔法の修業を始めた日から、一月ほどが経った日の晩の事。夕食後にこうやってグレイ師匠と会話しながら村の外れに向かって帰ってくるのも、随分と日常に溶け込んできている気がする。調査が終われば師匠も王都の方に帰ってしまうんだろうけど。
「いやぁ、最近少しだけ調子が良くてさ、遺跡の調査も結構順調だよ。でも私にスキルを使ってこれなんだから『スキル授与の儀を受けたばかりの他の子供』なんかには絶対にスキルを使っちゃダメだよ?世間にもノル少年にも認識されてない力なら伸び幅なんて幾らでもありそうだし、代償に何を持ってかれるか分かったもんじゃない」
「えっ、あっ……はい」
思い出すのはグレイ師匠と出会う数日前の事……スキル授与の儀から少しして、裏山で大きな狼に襲われたあの日。シエナに既にスキルを使った後とは、僕には言い出せなかった。
「それで、上達の程はどうだい?まあ修業を始めて1か月だから、今が伸び盛りだとは思うけど」
「確かに上達している気はするんですが……」
正直に言えば、自分が今どれくらいの位置にいてどれくらい上を目指せばいいのかも分からない。師匠が本気を出せば、村外れとはいえ村に多大な被害が出るって言ってたし。
「上達のスピードは悪くない、ゆっくりやっていけば一人前の魔法使いにはなれると思うよ」
それはつまり、あくまで一般的な魔法使いにしかなれないという事だ。わがままな事は分かっているけど、物語で語られるようなそんな英雄に僕はなりたい。
「だけど、僕はもっと上を目指したいんです」
「……そういう事なら、魔法とはどう使うべきものなのか実際に見た方が良いだろうね。とはいえ村の中は敵もいないし、流石に狭すぎる」
「だから行ってみようか、『初めての冒険』ってやつに」
次回 ノマル君、初めての冒険
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紆余曲折と苦難を乗り越えてほしい