「───グラウンドスパイクッ!」
【GUGya!?】
大地から突き出た槍が、ゴブリンの王の首元へと突き刺さり血飛沫をあげる。明らかな致命傷だ、油断はするべきでは無いが……勝負は着いたというところだろう。
【───!?】
「獄炎……剣ッ!」
唸り声をあげようとして、かひゅーっと喉に開いた穴から風を漏らすだけの巨体の首に大剣が振り下ろされ……首と胴が別れたところで、ようやく彼らはそれぞれの獲物を下ろす。
「すげぇ気迫だった。弱ってなきゃギリギリだったかもな」
「だが、これで打ち止めだろう。例の繭とやらも焼け落ちたみたいだし……」
「お疲れ様、とりあえず少し休んでていいですよ」
辺りに何もいないのは戦闘をしていなかった僕たちが、しっかりと確かめていた。油断は良くないが、緊張しすぎるのも咄嗟の判断が鈍る。
今は激戦を終えた戦士たちに、休息を与えるべきだろう。
戦闘終了からしばらく経って、状況確認が終わった。
結果として分かったのは……良いニュースと悪いニュース。
悪いニュースは、繭を設置した下手人であろう誰かは不明だということ。生み出したのは12魔将らしいが、それが今何処にいるのかはわからない。
そしていいニュースは、4階層も見てみたが……ゴブリンはここから先には向かっていなかったらしいという事だった。何かしらの命令を元に動いていたのだろうか?
「ここで1泊休みたいところだが……恐らく試験終了に間に合わない」
「それにその……気味も悪いですしね。2層のボス部屋まで戻ってからにしましょうか」
そして事件の証拠と戦利品を見つけるべく、鉱石化したゴブリンの残骸の転がる部屋を散策していると……部屋の奥に大きな宝箱を見つけた。ダンジョンでモンスターを倒したときに落ちるあれだ。
どうやらこの階層のボスは湧かなかったわけではなく、湧いた次からゴブリンたちに狩られていたらしい。いかに階層主が強いと言っても、流石にこの数のゴブリンには刃が立たなかったのだろう。
そして落ちた素材で武器を作り、更に効率的に階層主を狩る。もし発見が遅れていれば、とんでもない事になっていたのではないだろうか。
「ボスの討伐おめでとう、戦利品は君たちで……」
「馬鹿言っちゃいけねえよ、ノマルせんせ」
彼らは、ゴブリンの王の耳を革袋に詰めると……宝箱へ向けて僕達の背中を押す。
「あれだけのお膳立てがあって、ボス討伐は私達の手柄なんて……とても受け取れません」
「よろしいのですか? 学生の皆様にとっては、貴重な資金源に……」
「……ふん。結果を残した人間には、それ相応の報酬があって然るべきだろう」
「あっ、ありがとう皆……」
アルヴィン君はそう言い放つと部屋の入口の方まで歩いていく。
「……それとだな。怪我を負った仲間を、助けてくれたことにはその……感謝、しておく」
根は、悪い子では無いんだろうなぁ……
「さぁさぁ、早く中身を開けたまえよ!」
横にいるのがこいつなせいで、余計にそう思った。
宝箱の中には、大量の鉱石が詰まっていた。その中にはちらほらと、水晶や指輪のような鉱石やインゴット以外のものも見られる。加工された上でこれなら、かなりの回数フロアボスが討伐されたのだろう。
「うっ、ううん……」
その中にあった、球状の物体に───僕は思わず目を奪われた。
なぜなら、僕の記憶が確かならそれは……
「スキルアップの宝珠、珍しいけど大して使い道もないんだよねぇ。まあ、それなりの額にはなるんじゃないかい?」
思わぬ掘り出し物に、あがりそうになる口角を必死に抑える。
間違いなく賢者にだけは、知られてはいけない。
僕の『ハーメルンの上の方にあるやつ』に、続きがあるなんてことは。
ツェツィに目配せしてみれば、流石は姫様……顔色一つ変えていなかった。
だがしかし、彼女も僕の反応が見たかったらしく一瞬だけ視線が合う。
「そう……ですね、これで装備を新調するのもいいかもしれません」
「確かに、防具とかは特にA級冒険者とは思えないくらいの装備だからねぇ」
そもそもこの装備、買ったのは初ダンジョンアタックの前である。かなり良いものを買ったとは思うが、A級冒険者の装備としては間違いなく格が落ちる。その辺りも後々考えていかないといけない。
「おや、これなんて少し珍しい鉱石じゃないかい? 確か20回に1度落ちるかどうかとか───」
「戦利品はしまって、後で確認しましょうね」
箱の中身について言及し続ける賢者を横目に、宝箱の中身をマジックバック……ということになっている『縮小』がかけられている袋に詰める。だけどあまりにも重くて……筋力強化をかけてもらいながら帰路につく。
取り敢えずはこうして、ダンジョンで行われた試験とその事件は……一先ず無事に幕を閉じた。
「ノル君、ノル君ノル君! 怪我はない!?」
「だっ、大丈夫だよシエナ。大したことなかったから」
「呼んでくれたら、すぐかけつけたのに!」
「いや、シエナも仕事中だったでしょ……」
滅茶苦茶心配していた幼馴染への対応を、除いては。
宿に戻り、周囲の安全が確保できたことで……ようやく待ちに待ったスキルアップの宝珠を使う時が来た。
「運が良かったね、ノル君!」
「これまたラッキーだねぇ」
それにしても毎回思うのだが、こういうレベルアップのタイミングとかってピンチに陥ってから覚醒……みたいなものなのではないだろうか?
まあ、そんなのは物語の主人公だけなのだろう。スキル以外は特筆することのない村人だった僕にとって、そんな都合の良い展開は早々起こり得ない。
このスキルがここからどのような変化を遂げるのかは気になるが、何よりスキルの基礎能力が上がるのがありがたい。許容量が増える……と言うか、出来る事の幅が増えるというか。
「それじゃあ……その、倒れてもちゃんと受け止めるから!」
「気絶は、できればしたくないけどね」
もし気絶しても良いように、ベッドへと腰掛け……袋から例の物を取り出す。手のひらに乗せると宝珠がまるで吸い込まれるかのように、すっと身体の中へと取り込まれていく。
そして気を失い───そうになってなんとか堪えた。
『スキル:
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「増えてますね……」
「増えてるねぇ……」
遠見の石板を使って、視界情報を皆へと共有する。
スキルを使うと、やはりというべきか……また新しい項目が増えていた。
正直なことを言えば、今ある能力だけで使い余しているのにこれ以上増やしてどうすればいいのか……スキルで出来ることは多くても、使う側の僕はあくまで人間だ。そんなにいっぱい能力を渡されても、使いこなせない。
そして肝心のウィンドウだ。
どれも気になるところだけど、一つ一つ確認しようと真ん中のマイページを選択する。
他の項目は、消費が激しそうな感覚があったからだ。
『スキル:マイページ』
【名前】ノマル・フトゥー
【年齢】16
【スキル】
【HP】294/294
【MP】680/680
【SP】313/314
【力】270
【防御】250
【魔力】580
【素早さ】270
▼装備
▼使用可能魔法33種
▼備考
ぶわっと、画面いっぱいに広がるウィンドウの数に思わず目を瞑りそうになる。
そこに書かれていたのは目を疑うような情報だった。
だがそれを見た瞬間から、ツェツィの様子がおかしい。
「ぜっ、是非! 『ステータスオープン』と言ってみてください!」
「恥ずかしくない? まぁ、良いけどさ……ステータスオープン」
そう言っただけでは画面は出てこないので、スキルのマイページを発動させると……現れた僕のステータスらしきもの。どうやら▼部分は中に情報が格納されているらしく、その欄に指を近づけてみると……
『スキル:マイページ』
【名前】ノマル・フトゥー
【年齢】16
【スキル】
【HP】294/294
【MP】680/680
【SP】312/314
【力】270
【防御】250
【魔力】580
【素早さ】270
▲装備
・魔鉄鋼の短剣 氷属性魔法の攻撃力/消費魔力低減15%(装備効果)
・灰色銀の杖 魔法威力+25%魔力操作補助15%
・スライムの首飾り 食事による魔力回復量を強化する
・鉄の胸当て 保護箇所のダメージ低減
・鉄の肘当て 保護箇所のダメージ低減
・魔道士のローブ 保護箇所のダメージ低減/魔力回復量+5%
▼使用可能魔法33種
▲備考
・剣術 中級剣士相当
・魔力操作 上級魔法使い相当
・イベント誘引(旅が
「きゃっ! 本で見た通りです! でも、こうしてみると本当に……異界の勇者様みたいですね」
異様にテンションの高いツェツィ、こんなに年相応にはしゃいでいるのはあまり見ないから新鮮だった。
そんな彼女の様子はおいておいて、このように中に詳しい情報が拡張されているようだった。
ちなみに、このステータス……書き換えはできなかった。残念だが、当然だ。
それにしても最後の欄には見覚えがない。一体、何処で……
「旅立ちの日になんかやってたやつでしょ? まだ効果があるんだねぇ……」
あっ。旅立ちの日の、おまじない程度の傍点の事か。
もしかしなくてもそのせいで、厄介事に巻き込まれてたり……?
いや、その御蔭で成長できたし結果オーライだ、うん。
そんな都合の悪い思考を頭の片隅へと追いやり、僕達はマイページの確認を進めることにした。