「『スキル:ハーメルンの上の方にあるやつ』……っと」
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スキルを発動させると何時も通りに出現した青いウィンドウ。
ただし出現した青白いウィンドウの数は以前と異なり3本、スキルのレベルが上がるにつれて順調に増え続けている。
「出来る事が増えて、スキルの事がまた一つ分からなくなった……」
一体なぜこんなことが出来るのかとか、此処から何ができるのかとか……疑問は尽きない。
「けど、そんな事を考えても仕方が無い……か」
恐らく答えの出ないであろう問いを考えても仕方がない、それよりもまずは目の前のスキルで出来るようになったことについて考える方が先だろう。
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新しいスキルのメニューを見ながら、それぞれで何ができるのかを確認していく。
マイページは見たけど、他は起動に消耗が激しそうで見送ったんだっけ。
自分の性能を数値化出来るなんて、それだけで考えられない程のアドバンテージがある。惜しむらくは他の人のステータスが分からない事だが……これ以上を望むのはそれこそ贅沢が過ぎるというものだろう。
そして、この中で一番消費が重そうなのが『ホーム』だ。
そんなホームは休みで余裕があるうちに、使っておきたかったので使ってみる事にした。
「何が出るのか……楽しみだね、ノル君!」
「そうだね。とはいえ、僕達に害になるものが出る可能性もあるから気をつけないと」
スキルとは言っても、何が出来るようになるかの法則性は無いに等しい。何かを
そしてスキルを使っても恐らく気絶するような事は無い筈だけど、それでも怖いので万が一に備えてシエナに横に居てもらっている。というより、迷宮から帰ってきて僕から離れる様子が無い。成分がどうとか、よく分からない事を言っていた。
一応スキルの実験をするとは伝えていたけど、他二人は外出している。グレイさんが買い出しに、ツェツィが私用という事だった。恐らくは、王女としての私用だとは思う。凄い名残惜しそうにしてたし。
「それじゃあ……使うよ?」
「うん! 魔物が出てきたら任せて!」
青白いウィンドウを注意深く監視して、息を整えてから───その名前を唱えた。
『スキル:ホーム』
ごっそりと、何かが持っていかれる感覚。それが『マイページ』で言う所の『SP』に当たるものだというのは、直感的に理解できた。だが、その量が尋常じゃない。まるで、シエナの強さに
ようやく消費が収まったと前を向けば……部屋に猛烈な違和感を感じる。
「扉……?」
そんな僕達の前に現れた……というよりも、初めからあったかのように存在していたのは、その辺にありそうな何の変哲もないドア枠と扉だった。
「なんで扉だけ……?」
……それが、部屋の中央に位置しているという事を除けばだが。
遂に現実を改変し始めた……のは今更として、何か物質を生成するというのは初めてではないだろうか? そして、SPの消費量からして目の前にある扉がただの扉であるはずがない。
「ノル君どうする? ツェツィちゃんとグレイちゃん待つ?」
「その方が万全だとは思うけど……多分、危険は無いと思う」
とは言えこの扉が……少なくとも命の危険があるような場所では無いと、なんとなく理解していた。何故分かるのかはおそらく、自分のスキルで作った物だからだろう。
「開け……てみよう、危なさそうなら撤退で」
「そうこなくっちゃ! それじゃあ私が先導するね?」
何の変哲もないドアノブに手をかけ、シエナが中を伺うかのように取っ手を回す。部屋よりも少しだけ明るい光が漏れ出たのを見て、この扉が別の空間に繋がっている事を確信する。
「これは……」
その空間の光源の為か、
ただし四方や天井は無限に続いているという訳では無く、近くを構成する物質の色に似た『何か』で区切られている。足を踏み入れると、踏みしめたのは間違いなく土の感触だった。
「足元、普通に土だ……」
「あの光体はどうやって浮いて……そもそもどうやって光ってるんだろう……」
何処からか吹いた風は、本当に何処から吹いているのかも分からないが……空気の循環の役割を果たしているらしい。そして、整備された敷石の道の先にあったのは……
「お屋敷……だよね?」
「お屋敷……だねぇ……」
赤い屋根の、そこそこ立派なお屋敷だった。少なくとも、僕やシエナの実家よりも数段大きくて立派だ。突如現れた扉、その中にあった空間と家。それが示すのは、スキルの名前が示す通り間違いなく……
「ホームをいつでも使える機能って事?」
「いっ、今時のスキルって持ち家までくれるんだね……?」
あまりにも異様な、スキルで現れた空間と家。そんなどう見ても人工的な建造物を前に……二人で思わず立ち尽くす。
「……ははっ」
「あはは……皆になんて言えばいいんだろうね、これ」
今までとはあまりにも異質なスキルのプレゼントに、思わず絶句するしかなかった。
扉を開けて中へと入る。と言っても、扉の中にあった屋敷の玄関の扉の事だが。室内の室外の室内という訳の分からない状況なせいで、分かり辛い。まあ、スキルで起きる事象が奇想天外なのは元から……というよりも名前からの話なのだが。
「わっ、広いねぇ」
「広すぎて……むしろ落ち着かないかもね」
玄関を開けた先には広間が広がっていた、光源は無いせいでほんのり薄暗いが……窓の外からの光で十分部屋の様子が分かる程度には明るい。賢者の屋敷程豪華な訳では無いが……生活拠点としては十分、いや十分過ぎた。
「念のため、前衛の私が先導するね? 生物の気配もしないし、大丈夫だとは思うけど」
「気配……? あっ、うん。僕も警戒しておく」
さらっととんでもない事を言ってのけたシエナの後ろをついていく形で、広間の奥へと歩を進める。まあ結果から言えば、危険そうなものは無かった。
探索の結果、食卓から寝室にお手洗い……そしてキッチンや浴場に井戸と言った生活に必要な部屋は粗方整えられていることが分かった。それどころか地下には貯蔵室まであるし、外では育てようと思えば園芸くらい出来そうなスペースがある。
そんな屋敷の食堂にあたる部屋で、一通りの探索を終えて僕達は休憩していた。まあ、茶葉もお菓子も無いから本当に座ってるだけなんだけど。
「これは……便利そうだね! 長旅の時も警戒が要らないのは凄い事だよ! すごい! さすノル!」
「便利だとは思うけどさ……」
確かに「これからの」冒険では便利だ、とても便利だろう。扉がどうなるとか、普段はどれくらいSPを消費するのかとか気になる事はあるけど……それよりも。
「ダンジョン攻略の時に欲しかったぁ……!」
それは、ゴツゴツとした洞窟タイプのダンジョンで二泊三日を過ごした僕としては、結構切実な願いだった。
食料を持ち込めば、重い荷物を背負う必要も無かっただろうし……気を抜ける安全地帯なんて、冒険者からすれば喉から手が出るほど欲しいものだ。それにこんな風に新鮮な風や柔らかい寝床が恋しくて仕方が無かった。
「まあそもそも、賢者さんの前で見せる訳にもいかないし……ね?」
「あっ、それもそうだよね」
とはいえ一先ず、宿へ戻る事にした僕達。ホームが出来たとはいえ、お金には困ってないしこれからも街にいる間は宿に泊まっていくだろうと思う。なんだかんだ、食事等が勝手に用意されるのは魅力的なのだ。
とりあえずは中に日持ちのする食料を買いだめておくべきか、それと便利そうな魔道具の類も。そんな事を考えつつも、時間は過ぎていく。
そんな訳で突然だったけど……こうして僕達は、拠点を手に入れた。