村を走って、問い続けた。
「オシエル君が今何処にいるか知りませんか!?」
「そう言えば最近見ないね?」
村中の人間に聞きまわった。
それでも返ってくるのは、要領の得ない回答ばかり。
「オシエル君って男の子が───」
「おっ、ノマル帰ってきてたのか! ん……最近見ねえな」
捜して、捜して、捜し続けて───
そのどれもが、徒労に終わる。
「ねっ、ねぇ? オシエル君……一緒に遊んだよね?」
「オシエル……そんな奴も居たような? そうだ、クッキー要るか? 作りすぎちまってよ」
皆が皆、一様に甘いものを作る習慣だけが残って……誰も彼のその後を知らない。
村長にさえ行き先を告げずに、あの歳の子供が村を出る?
そんな訳が無い、無いのに……その事に誰もが疑問を持たない。
「何で……誰も……?」
誰も彼がどうなったかを知らない、憶えていない人すらいた。
あんなにキャラの濃い子がいなくなって、気づかない筈が無いのに。
ただ彼が居た事を示すかのように、各家庭でお菓子作りだけが盛んになっていて。
それがとても怖くて、逃げ帰るように家に帰って。
家でくつろいでいた幼馴染の肩を揺さぶるように、掴んで問いかける。
「しっ、シエナは……シエナは……オシエル君を憶えてるよね!?」
「あっ、うん!? ……あれ、そうだよね? この村でスイーツが流行ってるのは……彼のお陰だから……?」
シエナですら何処かうろ覚えの様子で、彼の事を話している。
一度話したら忘れるはずの無いくらい特徴的な彼を、どうして……
こうなると当初の「彼の力を借りる」なんて話じゃなくて、シンプルに彼の事が心配だった。
何か事件に巻き込まれている可能性だって、未知のスキルによる攻撃を受けているまである。
「もしこの村に手掛かりが……あるとすれば……」
「オシエル君自身の事……だよね?」
この村でどれだけ交友を断っていても、彼の事をよく知る人物がいる。
本来はやっちゃいけないことだけど、彼自身の安否がかかっているとすれば───
「お話があるんです、神父様」
「おお、ノマル君……じゃなくて、ノマル男爵ではありませんか! 私は君のスキルには並々ならぬものがあると初めから思って───んん、どうやらお急ぎのようですな」
スキル授与の儀で人はスキルを受け取る、そして神父様が変わっていないのなら……
「この村に居たオシエル君のスキルについて、教えてくれませんか?」
「いくら領主様にと言えど、個人のスキルを無暗に明かすことは殆どない……それは理解しておりますね?」
それは知っていた。
唯一の手掛かりだと思って、それを承知の上でやって来たが……やはり……
「ダメ……ですよね……」
「ここからは私の独り言になるのですが……最近物忘れが激しくてですね」
神父様は初老に差し掛かっているが、未だハキハキとしていて物忘れが激しいようには到底見えない。
そんな神父様が、物忘れが……激しい?
「そんな私でも、絶対に忘れてはいけないと固く決めているものがあるのですよ。それが……誰がどんなスキルを授かったか……です」
「もしかして……」
「とある一人のスキルだけ、思い出せないのです。それも……全く」
確実に何か、超常的な何かの力が働いている。
それがスキルなのか、権能なのか……それともほかの何かなのかは分からないけど。
「ありがとうございます、神父さん」
「いえ、ただの独り言ですから……忘れるのがよろしいでしょう」
神父さんに一礼してその場を後にする。
何も分からなかったが……分からないという事が分かった。
「何も分かんないんだけど……何か分かったんだね?」
「うん、此処まで来たら……見直してみるべきだと思うんだ」
『スキル:ハーメルンの上の方にあるやつ』
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見慣れた青白いウィンドウから、使うのはこのスキル。
『スキル:目次』
幼少期の僕達の体験の追想が───始まる。
【大丈夫、私───
もっと、もっと後だ。
【私はA級冒険者のグレイエル・スノウリリィ。『白銀の魔女』と言えば、伝わるかな?】
この辺りだ。
彼は旅人の特技を余すことなく知っていた、だからこそそのスキルを頼ろうと思ったのだ。
でも、この辺りにはまだ……不自然な点や手掛かりはない。
【そう落ち込まないでくれよノル少年。まだ小さいんだからこれから学んでいけばいいのさ】
【ノル君冒険に行くの!? シエナも行く……!】
【その方が───カッコいいだろう?】
【シエナ君を連れて逃げてくれ。これは君にしか出来ない事だ】
【ノル君ならきっと何とか出来るよ!】
【───ははっ、これが本当の白銀って奴か】
思わず、視界が揺れる。
溺れるような情報の波に溺れそうになる。
「ぐっ……!?」
「ノル君!?」
「大丈夫、大丈夫だから……!」
そんな過去を追想し続けるのには、全ての情報を取得し続けちゃダメだ。
まるで本を読むのように俯瞰的に、読者のように客観的に。
必要な部分だけを取捨選択して、拾っていく。
スキルを……制御するんだ。
【随分と魔法も上手くなったね、私が居なくてもしっかりと精進するんだよ?】
【勿論です、少しでも早く師匠に追いついてみせますから】
【にしても、少し露骨すぎたかな。まさか自分の髪と同じ色の触媒の杖なんて……】
……ん、今のは? いや、少し気になったが───今のは本題じゃない。
【吾輩はクロッカス王国騎士団が団長───オットー・マグヌスですぞ】
【今代の騎士団長と言えば、王国の盾なんて言われてる超有名人じゃねえか!】
───今代の?
何時騎士団長が変わったかなんて分かりもしないのに、わざわざ
それじゃまるで、先代の騎士団長を知っているかのような……考え過ぎだろうか?
【つまり──────私があなたより強ければ問題ないってことだよね?】
【……成程、受けて立とうではないか】
【私さ、ずっと“強くなりたい”って思ってたの】
【俺様こそが『魔族』。名はランドウィンだ。今から死ぬお前らが覚えても仕方ねぇけどよぉ!】
【私を───信じて】
【なら、探す手間が省けたじゃないか】
【魔王軍幹部直属───12魔将の『鋼鉄のシャリブレン』様だ。精々、自分の無力さを噛みしめて死んで行けよクソガキ】
【行こっかノル君! 誰も見た事のないお宝と景色を求めて!】
【行こうかシエナ! 山よりも大きいドラゴンを求めて!】
これで───終わ
り? 本当に?
何か、何かが隠されているのではないか?
そこにきっと、この問題を解決する───鍵がある。
『スキル:目次』
「───行【情報を表示するには権限が不足しています】」
拒絶感、このスキルを使っていて幾度か感じた異物感。
本能的に何かがまずい気がする、それでも僕はこの先で何があったのか……知りたい。
『スキル:目次』
「きま【情報を表示するには権限が不足しています】」
ならば、こうすればいい。
今まで自分では試した事の無かった、スキルを───スキルで強化する。
『スキル:傍点』
『スキル:
「したか」
パタンと本が閉じ───「そこまで」
「……え?」
声がした。
男性とも女性ともつかないような声が、確かに響いていた。
だけど辺りを見回しても何処にも居ない、何時も通りの村の様子が広がっているだけだ。
「のっ、ノル君? どうしたの? 急に辺りを見回して……」
「シエナには声……聞こえない?」
「ううん、全然聞こえないけど……」
だけど確かな声が聞こえた。
それなら一体───あなたは、この事象を良く知っているはずですよ?
「誰……いや……もしかして……」
……予想外でした、まさかそこまで必死に探すなんて。
私達は観測者であって、舞台に立つ資格など無いというのに。
確かに、知っていた。
こんな僕だけに聞こえる声を引き起こすスキルを、一つだけ。
「すっ、スキル……『よみあげ』!」
『スキル:よみあげ』
『老ノマル』
『賢者アメティスタ』
▶『??エル』
『戻る』
疑問には思っていた、『よみあげ』の残りの一枠。
その謎が今、ようやく……明らかになろうとしていた。