「スキル……っと」
『スキル:推薦一覧』
●推薦依頼一覧
★長期推薦─進行中─
・ソノヘンの村を開拓しよう! 報酬:???
★短期推薦─進行中─
・インフラの整備を行おう
・商人を呼び込もう
・人材不足を解決しよう
・家畜を飼おう
★感想推薦─進行中─
・ランキングから読書をしよう! 報酬:成果によって変動
・色恋関連 報酬:成果によって変動
▼受諾可能一覧
あれから感想で好き勝手言われていた気がするが、流石に叶えられない。
そもそも冒険者の男女パーティは、こういう色恋で解散しがちなのだから。
僕の冒険譚のジャンルを、えっと……なんだっけ。
そうだ、思い出した。ドロドロの昼ドラとやらにするつもりは無いのだ。
そもそもの話として、僕が恋や愛についてよく理解できていないというのもある。
そして不可抗力で受け取ってしまった、シエナとの報酬だが……
端的に言えば凄い良いものだったと認めざるを得ない、剣術の心得とやらがあるだけで……剣を振るう為の全ての工程にバフがかかるような感覚。むしろ、世の剣術スキル持ちはこれを受けながら戦っているのだろう。
「おぉ、凄く動きが良くなったねノル君!」
踏み込みは力強く、振るう剣は鋭く。
そして何より余分な力が入らない、間違った身体の動かし方を少しずつ矯正されていくような感覚。
それに加えて目や、筋力と言った剣を振るうものに必要な能力値も少し上乗せされた気がする。
正しく、魔法の才能の時のように……剣士としての才能が芽生えたかのようなものだ。
「凄いよノル君! それじゃあ、もう少しギア上げるね?」
「ちょっ、まだついていくので限界で……!」
剣を振るうシエナの姿が一瞬ブレる、僕と剣の稽古が出来るのを楽しそうにしてくれるのは良いが……剣士としては一般人に毛が生えた程度の僕が剣聖の剣技についていける訳もなく。
木剣が空を舞う、それはもう高く……お手本のように綺麗に。
弾かれた筈なのに、腕がジンジンと痺れている。
彼女に比べれば、得られた筋力なんてほんの僅かである。
いきなり僕が剣も魔法も使いこなせる最強の主人公になって、無双が始まる……なんて都合のいい話は有り得ない……とも言い切れないけど。それを目当てにして、努力をしないのは論外だ。何事も積み重ねが大事という事だろう。
そして……あの黒い本は一旦寝かせておくことにした。
確かに貴重な経験だったが、今の僕がもう一度挑んでも得られるものが多いようには思えないから。
もう少し彼女と打ち合えるようになってから挑むべきだ、最低限のラインに立ってから。
何事も順序を間違えてはいけないし、進んで死を体験したい訳でも無い。
村が襲われた時みたいに……必要性に駆られれば、やるんだろうけども。
そしてそんな一幕を挟みながらも……当然のように何も起きる事無く、日々は過ぎる。
それから少しして、商人のウルベルさんが鶏をもってやって来た。何時ものより一回りか二回り大きな馬車に乗ってだ。別れてからそれほど経っていないというのに、既にそこまで大きな馬車を用意できるとはいったい何者なのか……
「りっ、立派な馬車ですね?」
「街道がゴーレムによって急速に整備されておりましたので、急遽大きな荷馬車を新調しましてな」
その馬車の規模からも、彼のこの村への期待が見て取れる。渡した情報で十分採算が取れると踏んで、投資してくれたのだろう。その期待を裏切らないようにしなければならない。
「それにしてもあんなものを隠していたとは……閣下も人が悪い」
「……運良く用意できたものでして」
彼には伝えておくべきだった、商人は情報が命……彼からすればこの情報を色々と金に変えることも出来ただろうに。だが上手くいくか分からなかったのと、賢者との会話があるということにリソースを割かれてしまっていた。
「こちらが頼まれていたものですな。活きの良い鶏と、少数ですが山羊も揃えてまいりました」
「こんな短期間でこんなにも、ありが……感謝する」
気を抜くと口調が緩くなったり、丁寧になり過ぎたりしてしまう。基本敬語だから使い分けるのは中々に難しい。
「それで、例の品が完成したと小耳に挟みまして」
「えぇ、こちらに」
流石に外で話すような内容でも無いので、村長宅に彼を招き入れて商談を開始する。どれだけこの村で集めてきたものを、魅力的に彼にアピールできるか。それ次第で彼がどれくらいここでの商いに力を入れてくれるか、此処の魅力を伝えてくれるかが決まってくるだろう。
とは言えこの商談はもうすでに半分成功しているようなものだ、何故って……それは当然、見込みがない村だと思っているのなら、この大きな馬車は用意されていない。
恐らくはそういう意味合いも兼ねて、大急ぎで用意したのかもしれない。
優秀過ぎて敵に回すのが怖いが、味方で居るのならこれ程頼もしい相手も居ないだろう。
切れる手札は幾つかある、別に勿体ぶる必要も無いから一枚ずつ切っていくべきだろう。
「まずはご覧いただいた通り、この村の作物は多量の物と比べ質が良く……そして病気にもかかり辛いです」
「ほう、言い切りますな。閣下を疑う訳ではありませんが、何か種を売り出したりは……」
来た、正直聞かれると思っていた。
だからこそその対策も、想定はしていた訳で。
『特殊タグ:震える』
「今の所は、とだけお伝えしておきます」
「……飯の種を教える商人は、そうそういませんな。これは失礼な事をいたしました」
言葉を振るえさせて、威圧感を醸し出す。
存外にこれ以上踏み込むなと言う警告、脅しのようになってしまうがここは僕達の生命線だ。
踏み込まれると、互いに良い結果にならないだろう。
「今後も、品質向上に邁進していきますので……成果を持って納得して頂ければと」
「滅相もございませぬ、閣下がつまらない嘘をつくような御方だとは微塵も思っておりません故」
事実、この村の作物の質が良いのは僕のスキルに依存するところがある。
そして今後も薬草などの質は、高くしていく予定だ。
これを証明するのはリスクが高く、伝える必要も理由もない情報だ。
この村に著名人が買い付けに来るという情報だけで、ある程度の裏付けを取れているからこそ彼もこの村への商いに前向きと言う所があるだろう。
「そしてこちらが、この村に滞在している錬金術ギルドと試作した薬です」
「アンバー様が滞在しているというお話は伺っておりました、成程……」
これは彼が絶対に知らないであろう、目新しい情報だ。
乾燥の粉薬と虫避けの水薬、その効力は凄まじく……虫よけに関しては小型の蟲系の魔物にすら効果があるのは実証済みだ。テント等にサッと振りかけるだけで、その日は虫に困らされないという何とも痒い所に手が届く一品。
乾燥の粉塵は、勿論濡れた時にも使えるが……それ以外にも水虫の対策になったりと、これも便利な一品だ。何より素材費が高くないので、魔道具などに比べてそこまで値が張らないというのが利点。
「今後も新商品は幾つか、開発する予定はあります」
「それはそれはそれは……成程、想像以上ですな」
食いつきは上々、これも狡い話だが……僕にレシピの権利が帰属している限り、この商品は競合他社がほとんど発生しえない。需要があれば、必ず売れるであろう魔法の品。冒険者の皆の為にそこまで値段を吊り上げるつもりは無いが、それでも赤字になる事は有り得ない品だろう。
此処までが僕が手掛けた特産品について、そしてここからはこの村を取り巻く状況を逆手に取ったものについてだ。
「ここから農業や、特産品の作成……事業の規模は拡大していく予定です。そして見ての通り、この村の防衛力は……」
「近隣の村どころか、街と比べても高いレベルにありますな。これも閣下と王女殿下のご助力あってのものでしょう」
安定した土地としての魅力、この村の防衛が抜かれる事は早々ないだろう。ここを訪れる商人や旅人が増えれば、宿屋や鍛冶屋などの需要も上がり……結果として人や物が集まる。街道の整備もされていれば猶更に。
問題はこの場所の立地だが……他の街から離れているという事は、この村で休憩する旅人はそう少なくないと見込んでいる。宿屋の誘致だけでもかなりの金額が動く、兵士が常駐しているなら娯楽なども間違いなく必要になる。
彼がこの話に旨味が無いと判断するようなら、他の商人を頼るだけだったが……勿論そんな商人の伝手がある訳が無い。商談が上手くまとまったようで何よりだった。
『商人を呼び込もうをクリアしました』
報酬:情報の取得 → 『女の子にもてたい貴方に贈る調理レシピ100選!』
『家畜を飼おうをクリアしました』
報酬:情報の取得 → 『ホームの資源管理メニューを実装』
お菓子多めのレシピ本が、ドサリと音を立てて地面に落ちる。
報酬に何らかの意図を感じなくも無いが、料理のレパートリーが増えるのは嬉しいのでありがたく受け取っておくとする。ホームに増えた新機能については……また次の機会に説明するとしよう。