★短期推薦─進行中─
・インフラの整備を行おう
・人材不足を解決しよう
残り二つとなったこの村の推薦タスク、それだけのタスクをこなしてきた村は元よりもかなり発達していて、元の村の面影すら……いや、最初から巨大な防壁のせいで面影は無かったか。後者の解決には時間を要するし、前者の解決と後者への準備を兼ねた日にしようと思う。
ところで『インフラの整備を行おう』とは、てっきり街道を作れば終わりだと思っていたのだが、それだけでクリア判定が出る訳ではないらしい。まあ確かに、今のままでは誰かがこの村を訪れても泊まれる場所は満足にない。
とは言え僕が街のインフラに詳しい訳もなく、そうなると取れる手と言うのは限られてくる。
『スキル:よみあげ』
『老ノマル』
▶『賢者アメティスタ』
『オシエル』
『戻る』
【えぇ? 街作りについての意見が欲しい? 全く、全くしょうがないなノマル君は! どうしても、どうしてもと言うのならこの私が手を貸してあげる事も吝かでは無いというか、まあ仕方ないから手伝ってあげようじゃあないか。その代わりと言っては何だけど、是非とも読んでみたい本が……】
間違いなく、優秀だ。
僕の心情を考えなければ呼び得と言っても良い程に、彼女の知識は素晴らしい。
そしてうちにも一人、そう言った事に関してはエキスパートがいる。
「お待たせしました。私でよければ、お力になれると思いますよ?」
【……ツェツィーリア女史も居るのか。ふぅん? 私が如何に他の国より優れた技術を用いてこの都市を発展させたか、教えてあげようじゃないか】
プルプラの賢者と、クロッカス王国の王女。
どちらの国も方向性は違うものの、あれだけ立派な都市だったのだ。
学べるところは学ぶべきだろう。
まず取り掛かったのは、主要都市のような地下排水の処理についてだった。
と言うのもこれを後から設置するよりも、建物を作る前に決めておいた方が段取りが組みやすい。
「王都では、地下に下水を処理するための排水路を整備していますね」
【プルプラは粘液上の魔道生物、分かりやすく言えばスライムに処理させることが多いかな。繁殖させ過ぎると溢れて大変だから、定期的に管理してやる必要はあるけどね?】
「───と言う訳だそうです」
「成程。便利そうですが、この村で管理するのは少々難しいかもしれませんね」
国のお偉いさん同士が、僕を通して対談するというとんでもない事態。これが人脈チートと言うものなのだろうか、少し違う気もするけど。冒険者が続けられなくなったら、そういう仕事にありつけそうだが……相手の体液を摂取しないといけないのは、かなり抵抗感がある。
「流石に宿の経営ノウハウは無いですから、誘致をするというのも手だと思います。実はウィスタリアに居た時に住んでいた「獅子の尻尾亭」のご主人が、そろそろ息子に宿を譲りたいと考えているそうでして」
【プルプラからも宿に限らず、幾らか希望者を募ってみよう。君の育った村に合法的に耳を置ける機会、逃すわけがないだろう?】
「そう言えばアンバーさんから錬金術ギルドの支部が建つという話を聞いて、冒険者ギルドも支部を建てたいという打診がありました」
実際ある程度大きな村には、冒険者ギルドの支部があったりするのだが……どんどんと大事になっていく。当然それだけの工事を自分たちだけで出来る筈も無く、石工や大工のスキル持ち、それに魔法使い大量に呼び入れて大規模な村の改修を続けていった結果───
数か月後に出来上がった『それ』を見て、思わず言葉を失う事になる。
「村の姿か……これが?」
「随分と盛り上がってしまいましたね? 少し過剰だったかもしれません」
「少し……?」
ずらっと敷かれた石畳、綺麗に並んでいる建物群。
ようやく外の防壁に中身が追い付いたと言えば聞こえはいいが、これを村と言い張るのは無理があるだろうかと言う規模になってしまっていた。短期間で此処まで成長してしまったのには、いくつかの理由があって……その発端は、実際に作業を始める頃まで遡る。
『特殊タグ:水平線』
ようやく工事に着手する事になったが、建物が完成するのは恐らく僕達が村を出てからになるだろうと考えていた。それも当然だ、中身だけとは言え街や村なんて数日や数か月で完成するようなものではない。
それに工事とはいっても、こんな辺境の村でそんなに人を動かす事は出来ない。だからゴーレムを使おうと思っていたのだが、作れるゴーレムの数には限りがある。この状況を打破すべく感想で来ていた一つの策を試すことにした。一枚描いたゴーレムの魔法陣を保存して、それをテクスチャを張り付けるかのようにスキルを行使する。
『特殊タグ:挿絵』
1枚、2枚と魔法陣が増えていく。
最初は10枚も書き直しした魔法文字が、一瞬で複製されていく。
「我が命に従い、起動せよ───マッドゴーレム」
ズラリと起動した5体の泥のゴーレムは、物資を運ぶという命令に従って歩き出す。軍隊のようにその足並みは揃っていて、まるで軍隊のように規則的だった。それが何となく楽しくて、2種のゴーレムを作り続ける。
やがて20体程作った所で、魔力切れを起こして中断したものの……恐ろしい速度での複製速度だ。
そもそも魔法陣と素材さえあれば僕が魔力を使わなくても、魔法使いなら起動自体はそう難しいものではないだろう。簡単な作業しかさせられないが、これなら人手不足を一気に解決───
「───出来るなんて、少し調子に乗り過ぎた結果。ゴーレムの数は3桁を突破して……」
「本当に国に雇われるつもりはありませんか? 望むモノは何でも用意いたしますよ?」
「暫くは冒険者で居たいかな……」
川のように、犇めくように、切り出した石材や木材をゴーレムの群体が運び、並べて、積み上げていく。職人がする事は、指示を出しながらそれらを塗り固めるべく石灰や水等と混ぜた接合剤を塗り固める事くらい。自分でやったことながら、正直怖くなるくらいの光景だった。この光景を見て普通とは言い難い。
「本当に暫くはゴーレムを見たくないと思ったよ、本当にね……」
そして僕よりずっと魔力総量の多い魔法使い、グレイエル・スノウリリィが居たのもこの展開に拍車をかけた。精霊と出会ってからさらに強力になった魔力量を遺憾なく発揮して、ゴーレムを起動させ続けてくれた。
そして作ったゴーレムも勿論永久的に動き続ける訳ではない、そのための魔力もまた彼女が補充してくれていた。日夜問わず動き続けるゴーレムの魔力補充を快く引き受けてくれたものの、後半はかなりグロッキーそうな表情で魔力を補充し続けていた。
「魔族の強襲で家が潰れてしまった村人の為に、住居を建てたら……どうせなら新しい家が欲しいという声が続出したものですから」
「そのお陰で村人さんや、騎士の人たちも作業に加わってくれたから作業は早まったんだけど……」
設営地住まいだった騎士や錬金術ギルドの方々も、正式に滞在する場所が決まって嬉しそうにしていた。しかしこれでは、まるで何処か国でも落とすのかと言わんばかりの過剰な備えな気が……
「まさか、特別深い意味はありませんよ?」
「僕まだ、何も言ってないんだけど……」
「視線を感じたので。ふふっ、女の勘って言う奴ですよ?」
可愛らしい響きとは裏腹に、傍から見ればこの街は砦とそう変わらない。
そんなモノが国境に近い辺境の村に出来たとなれば、少なくとも他の国からすれば攻め辛いものとなるだろう。
ともあれこれで、ようやく人を迎え入れる用意が出来つつある。
今のところは完成していないが、領主である僕の家も現在着工中らしい。
それに関しては、それこそ今度戻って来た時に完成していれば良いなくらいの気持ちでいるから後回しだ。これだけの防壁と騎士団を賄いきれる下地を作るのが最優先で、そうしなければ無責任にここを離れづらいのだから。
とは言えその日はそう遠くないだろう、蠢くゴーレムの群れとコマ送りのように組みあがっていく建物を見て、そんな事を思った。
「ところで、ノルさんのお家だけ……大きいような気がしますね?」
「ツェツィ……気のせいだよ?」
「プルプラの魔道具まで用意して……ご両親想いですねぇ」
「うっ。実費、僕の個人用のお財布から出してるから……2人には内緒にしておいてね?」
「はいっ、分かりました!」
不公平かもしれないが、15になって直ぐに村を離れたのだ。
これ位の親孝行はして然るべきだろうと……いや、僕がしたかっただけだ。
【おっと、言い忘れておった。作成した挿絵は『魔法陣ジェネレーター by kohack_v | https://tsubokulab.github.io/MagicCircleGenerator/』によってつくられたものじゃよ】