これからの事をパーティメンバーと話し合った結果、僕達は───
「久しぶりだね、此処に来るの!」
「私はご一緒するのは初めてなので……ふふっ、少しワクワクしています」
王都にある、ウィスタリアダンジョンへとやってきていた。一旦の装備集めと、腕試しをここで行うことにしたのだ。
ウィスタリアダンジョンは全10層からなる、文字通り王都ウィスタリアの地下にある大型ダンジョンである。全十層からなるそこは、最深層である10層はその危険度からS級の冒険者にしか立ち入りが許可されていないらしい。
僕達が前回攻略したのは、第一層『はじまりの洞穴』、第二層『新緑の大森林』、三層『迷いの沼地』、そして第四層の『陽炎の砂原』までだ。と言っても第一層は攻略も何も、本来はスライムぐらいしか出ないはずなんだけど。それから5層の階段を降りたところで、探索を終えた訳だ。
前回ここを訪れてから、一年と少し。
僕達の実力がどれくらい上がったのか、試してみる丁度良い機会だろう。
勿論気を抜くつもりはない、油断は敗北……そして取り返しのつかない事態を招くのだから。
いつものように、第一層にある隠し通路から先へ進むと、いつものようにダンジョンにはそぐわない普通の生活空間が広がっている。その先に居る薄花色の羽を持った金髪の小柄な少女へと声を掛ける。
「お久しぶりです、これ手土産です」
「わぁ、手作りのお菓子なんですけど!? とっても嬉しいんですけど!」
ダンジョン管理用妖精Ⅲ-13型、通称ミービーちゃんは何時も通り独特な喋り方で僕達を迎えてくれた。
「本当はお茶をお出ししたいんですけど、お急ぎみたいなんですけど?」
「うん、それはまたの機会に」
「五層で良いんですよね? 無事のお帰りを、お待ちしているんですけど!」
魔法陣が淡い光を放って、次の瞬間には景色が切り替わる。
「何度見ても反則だね、これは……」
「学べるものなら学んでみたいですけど、ちょっと仕組みが違いそうで……」
恐らくは自身の管理するダンジョンに限定した、彼女達用の魔法なのだろう。
少なくとも今の僕には真似の出来そうにない代物だ、使えたとしてもあまりの魔力消費にカラカラに干からびてしまうだろう。少なくとも戦闘中に扱えるような代物じゃない。
目の前の景色に意識を戻すと、第五層は乾燥した砂漠と打って変わって、薄暗い地下のような場所だ。第一層にもあったドウクツヒカリゴケが、朽ち果てた坑道を照らしている。
第五層『永久の廃坑道』、この階層の厄介な所は魔物の強さだけではない、むしろ魔物だけで言えば第四層よりも弱いと言えるかもしれない。だがそこに棲む彼らが仕掛ける多種多様なトラップと、群れを作る性質上……攻略は困難を極める、らしい。
だが、薄暗いという環境的な難しさは……今回持ち込んだポーションが解決してくれた。
「夜目のポーション、人数分……」
「あっ、ノル君! 私のは大丈夫だよ?」
「あっ、うん……」
若干一名、例外は居たが……普通は暗がりでは普段見える筈のモノが見えなくなるはずだ。
薄暗い廃坑が細部まで見えるようになる、が……廃坑と言う事は、何かが採掘されていたという事なのだろうか。いや、恐らくはダンジョンだから初めから廃坑としてつくられた空間なのだ。だとすると、何か廃坑と呼ぶのは変な感じがする。ちらほら鉱脈らしきものも、残っている訳だし。
「僕が先導します……っとと、言ってる側から」
歩き出した矢先、足元には細い糸のようなものが張られていた。
その先には見え辛いが矢のつがえられたクロスボウが、その矢じりを光らせている。
飛んできても避けられるだろうが、わざわざ見えている罠に引っかかる必要も無い。
遠距離から糸を断ち切ると、スパンと言う風きり音と共に矢は坑道の壁に突き刺さる。
実際、薄暗いこのダンジョンの環境や罠は、非常に厄介だ。
そして罠があるという事は、その近くで待ち伏せている可能性も高いという事。
【ギギッ!】
耳に届いたのは不快感を感じる空気を押し出したような、高音。
暗がりから現れた彼らは、非常に小柄で……醜悪な見た目をした薄暗い色の肌をしている。
ケイブゴブリンと呼ばれる、主に洞窟に棲む彼らの特徴は、通常のゴブリンよりも数段知能や身体能力が高く……夜目が利く事。
「うわぁ……生理的な不快感が……」
「この階層、さっさと抜けたいなぁ……」
「これはあまり……見ていて気分の良いものではないですね」
その涎を垂れ流す醜悪な面に、男である僕ですら不快感を覚えるのだから……他のメンバーの不快感は察するに、相当なものだろう。
「じゃ、さっさと進もっか」
とはいえそれでパフォーマンスを崩すほど、僕たちのパーティは甘くない。風を切るような鋭い音が響いて、1拍遅れて小鬼の首が落ちる。シエナの振るった剣閃が斬撃となり、醜悪な小鬼の首を切り落としたのだ。自分で言ってて、よく分からない。どう振るったら剣から斬撃が飛ばせるんだ。
やはりこの階層では、マトモな戦いにはならない。出合い頭の必殺、魔力の温存のためにシエナが1度剣を振るえば、首のない死体が出来上がる。ダンジョンだから放っておけば死体が消えるのは、正直な話たすかるところだ……あっ。
「ドロップだ……ノル君、どうする?」
「一応、やっておこっかな。ドロップ品に罪は無い事だし……」
心情的には複雑そのものだが、宝箱としてドロップしてくれるのだから汚れているということはないだろう。とは言え弓やクロスボウがドロップしても僕達で扱うメンバーが居ない。何とか宝箱の中身、その方向性を決められれば良いのだが……
『スキル:ハーメルンの上の方にあるやつ』
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無理だな、宝箱の中身を特筆すべきものにする事は出来るけど……中身を固定するような手法は無さそうだ、それもそうか。とは言え、前回来た時よりもずっと能力の出力自体は上がっている。
『スキル:
宝箱の
『特殊タグ:注釈』
首輪*1に注釈を───途中で見るのを止めた。ゴブリンだから、ドロップ品もそう言うのがある事は分かっていたけど。少なくとも僕は要らない、見なかった事にしたい。
「で、何のアクセサリーだったんだい?」
「……売りに出します、はい」
「そう言えば王城で見覚えがある気が……あぁ、いえ。そういう事ですか」
気まずい、けどまあ需要はある所にはあるのだろう。そう考えると確かに悪いドロップではない、間違いなく。気持ち早足になった僕らのパーティは、廃坑を進み続ける。
ゴブリンを殺して。
「
ゴブリンを殺し続けて、進む。
「
だが一向に、お目当てのアイテムは出そうになかった。
運が……下振れている。
進む事よりも、宝箱を出す事が目的となり始めた頃。
「あっ、宝箱だ~ノル君、あれ……やっとく?」
「うん、勿論……次こそ……!」
このダンジョンに入って、今日四つ目の宝箱がドロップする。
更に強調すれば、もっと良いアイテムが出るに違いない。
と言っても重ね掛けすればするほど、僕の消費は大変になっていくんだけど。
戦果があの首輪だけと言うのは、頂けない。
ここまで来たら、もう引き下がれない。
「ノル君、ギャンブルとかハマりそうだね……」
「……もし手遅れになりそうになったら、首を掴んででも止めてくれる?」
「ふふっ、任せて?」
『スキル:
その宝箱の
出てきたのは……指輪?
先程のと言い、アクセサリーにはあまりいい思い出が無いが……
『特殊タグ:注釈』
指輪*2来た、来た……! 短い説明だが、間違いなく当たりアイテムの類だ! 三段階の強調って偉大なんだな、ただ結構消耗が激しい。毎回やっていたら、皆の体力より先に僕のSPが底を尽きる。
「……国の宝物庫にあるようなアイテムじゃないですか、末恐ろしいですね」
「元が何だったのか分からないと、比較のしようが無いけどねぇ」
宝箱の中身を誰も観測できないとしたら、箱の中身が何時決まるのかはきっと誰にも分からない。つまり僕の能力を使わなかった場合の未来は、誰にも分からないのだ。『これ』がどれくらいの効力を発揮しているのかは、正直分からない。
それでも今は、ようやく便利な装備が出たのでヨシとしようと思う。
代わりに凄く、物凄く疲れたけど。