[NumberingTitle_選手交代_三頭犬ノ宴_逆侵食]
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いつもの様に職員室で千冬と真耶が休んでいると、そのアクシデントは突然やってきた。
ズンッ!!!!
鈍く地面が揺れて、何処からなのか解らない爆発音が聞こえた。
即座に千冬が座っていた椅子から立ち上がり、真耶ものほほんとしていた緩やかだった顔が真剣な表情に切り替わる。
「織斑先生!?」
「山田先生、直ぐに他の先生方へ召集をかけろ!! セキュリティーレベルを最大に引き上げておけ!! 後は各自の対応で生徒の避難が最優先だ!! 私は下へ向かう!!」
千冬はありったけの指示を飛ばすと、職員室の扉を開けて直ぐに目的の場所へ目掛けて走り始める。
(くっ!? えぇい、走りにくい!!)
少しだけヒールの高さがある靴へ舌打ちして、それを脱ぎ捨ててから再度走り始めた。
地震のような揺れではなく、爆発した時の衝撃から来る揺れに千冬が一つの結論に辿り付く。地下特別区画に誰かが侵入し、破壊活動を行っている。そして、犯人にしても大よその見当がついた。
地下特別区画への入り口になっている隠し扉は三つある。そして、一気に降下する別の方法が二つだけあった。
千冬はその場所に到着すると、ストッキングを履いた足の状態のままに思い切り一箇所だけを蹴り上げる。
ガッ!ガツンッ!
一般の廊下に設置されていたダミー加工されている排気用ダスト口の金網が壊れて外れると、地下へと続く緊急用スロープが顔を覗かせた。
千冬はその場所へすぐに飛び込むようにて滑り降りていく。地下へ向かう中で、不意を突かれた己自身の能力の無さに内心で激しく叱咤した。
目指す場所はただ一つだけ、同じ地下特別区画に眠っている自身の武器となるもの。それは千冬自身が勝利をするために必要なISである『暮桜』が鎮座している場所だ。
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千冬が必死に地下特別区画へ向かっている頃、同じように地下へ向かおうとしている人間たちがいた。
既に三人ともがISを展開している。更識 楯無の指示を受けながら織斑 一夏と更識 簪が後に続いて目的地を目指していた。
迂闊だったと楯無は自分の判断を悔いる。迷子と聞いてはいたが、まさか子供が学園の襲撃者になるとは思っていなかったからだった。
「一夏くん、簪ちゃん! 行くわよ!!」
楯無は学園裏まで来ると、地上に設置されていたプレハブ式の簡易な建物の幾つかのうちの一つを蛇腹剣《ラスティー・ネイル》で薙ぎ払うように破壊する。すると、ダミーとして隠されていた地下特別区画へ通じる入り口がIS一機分くらいの大きさでぽっかりと口を覗かせた。
「この入り口から一気に地下の施設へ行くことが出来るわ!! 強襲を掛けて来た相手の数が把握できてないの!? 着いたらすぐに戦闘の可能性があるから注意して!!」
「「はい!!」」
楯無の突入に続いて、残りの二人が後に続いた。
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アリーナの方から黒煙が上がっている。地面から来る衝撃の後で大騒ぎになり、どこからとも無くそんな声が聞こえた。
食堂ラウンジでも生徒同士が困惑しながら会話を続けている。
「一年生の子が暴走したらしいわ!!」
「なによそれ! そんなことしたら、重罪扱いになるんじゃないの!?」
「フランス代表候補生のデュノアさんが突然暴れだしたって、ISって暴走なんてしない筈なんじゃないの!?」
逃げ惑う生徒たちの言葉に耳を傾けていた篠ノ之 箒と凰 音鈴が、それを聞いて驚きながら互いの顔を見合わせる。
「何でシャルロットが暴走しているのだ!?」
「そんなんをあたしが知るわけないでしょうが!? 行くわよ箒! あそこにはラウラとセシリアが居る筈だけど、ラファール=リヴァイブⅢの能力が未知数であの二人が対応しきれるか解らないわ!!」
「ああ、直ぐに止めに行くべきだ!!」
二人はそれぞれ3階以上ある高さの窓からジャンプして外へ飛び出す。重力に従って落下する途中でそのまま揃ってISを展開させると、すぐさまもうもうと煙の立ち込めている方へ向かって飛翔した。
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アリーナ内の地面が木っ端微塵に破壊されていた。
シールドバリアーも一点集中攻撃を受けた部分が幾つか破損している。アリーナの中央では、ラファール=リヴァイブⅢが宙を乱舞していた。
あれはなに?
あれは恐い。
あれは僕をどうするの?
あれは僕を壊してくるのかもしれない。
どうすれば良い?
だったら、僕が壊されない為に戦うしかない。
『シャルロットさん!! 目を覚まして下さいまし!?』
『駄目だセシリア!? 回避しろ!!』
ゥゥゥヴッ! ヴヴヴウウンンンン!!!!!
ラファール=リヴァイブⅢからの六連装四門のビームガトリングガンが獲物を捕らえようと乱れ撃ちを開始する。面の蹂躙が全てを薙ぎ払うように破壊を撒き散らした。
セシリアはそれを紙一重で回避するとラウラへ呼びかけを行う。
『ラウラさん! 援護をお願いいたします!! あの武器は強力過ぎます、私のブルーティアーズで破壊しますわ!!』
『了解した!!』
セシリアのブルーティアーズから四機の射撃型ビットが射出された。
その間にラウラがセシリアの前面へ出るとAICを発動させる。連続で飛来する大量のビームの弾を防ぎ、その間にセシリアが標的をロックオンを行っていく。
『シャルロットさん! 後で幾らでも文句は聞いて差し上げます!!』
四連続でビットからレーザーが発射されると、ラファール=リヴァイブⅢが攻撃を止めて回避運動を行い始める。機体特有の特化した旋回性能を活かしての回避行動が、異常な俊敏性能を発揮して全ての攻撃を避けようとした。
『甘いですわよ!!』
セシリアが行う偏向射撃による四つの光が、獣のような動きでラファール=リヴァイブⅢを捕らえた。
ジィンッ!!
『くぅ、厄介ですわ!?』
薄緑色の輝きを放ちながら、ラファール=リヴァイブⅢが360度の円状シールドによる全面展開を解き放つ。ミラーシールドシステムが発動して四つのレーザーを反射した。
そして、それはそのまま各自のビットへ映像の巻き戻しのように戻って行く。驚きを露にしつつ、セシリアはギリギリで全てのビットに回避運動させる。そして、セシリアの防御を担当していたラウラが苛立ちを口から吐き出した。
『喜久はまだなのか!? あいつの武装ならシャルロットを傷つけずに助け出せる筈だというに!!』
喜久の専用ISであるブラックペタルに装備されているグリコシドは、相手を傷つけずにISを停止状態にもって行くことが出来る。騒ぎを聞きつけて直ぐに駆けつけて来ると思っていたラウラが舌打ちした。
ラウラとセシリアは喜久がどこに居るのかを知らない。そして、三体のIS無人機を相手にしていることも解らない。
『なあ、そこの一年。お前らなにやってんだよ? さっさとそこのISを壊しても良いから止めるべきだろ?』
『そうっスね。なにやってんです1年生、ささっと被害を最小限に抑えるべきッスよ?』
やる気の無い声がラウラとセシリアの耳に入る。アリーナの上空に二体のISが佇んでいた。
上級生のダリル・ケーシィとフォルテ・サファイアの二人が呼びかけてくる。姿勢はだらけていたが、目が細まって暴走したラファール=リヴァイブⅢを睨むように見ていた。
『待って下さいませ!? もう少しだけお時間を下さい!!』
喜久が来るまでは防御に徹して今は耐えるべきだ、そう思考しながらセシリアが叫ぶとダリルとフォルテは面倒臭そうにする。
『どうすっかなー。フォルテ、お前が行ってちゃっちゃと終わらして来いよ?』
『待って欲しいって言ってんだから、こっちは待機で良いんじゃないッスか?』
『だりぃなー。しっかし、そうも言ってられないみたいだな』
ラファール=リヴァイブⅢから二人に向かって、計六発分の空対地ミサイルが食らいついてきた。
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ペタルが四散しつづける中で、俺はギリギリの攻防に徹している。
ガツンッ!!
「クソが!! デブは防御系じゃなかったのかよ!?」
腕で回転させているドリル型のペタルが火花を散らす。攻撃を当ててきたのは小型のISもどきだった。
装甲重視の防御型だとばかり思っていたISは、戦闘を開始するなり計四つのパーツに分離してそれぞれが小人のようになる。そして、両手の形がブレードとシールドになっているところを見るとガンナータイプの一機以外全てが近距離型のみのISとなっているのを理解した。
無人機にしか出来ないやり方に俺は敵の手数が幾つあるのか判断できず、今は防御重視の攻防を強いられている。
ボオォオッ!!!!
【また撃ってきたわよ、あの乱射魔IS】
「何発も撃ち込んでんじゃねぇよ! このヘボスナイパーが!!」
俺は今すぐシャルロットの元へ行きたいという思いから焦りが生れて判断が鈍っている。
【後ろを取られたわよ】
ザァンッ!!
背後から接近戦に特化したタイプの無人機ISが六本分のブレードを連続で振るって攻撃を仕掛けてくる。
「沈めや鉄屑がぁ!!!」
ガッ!
ギリギリのところでISTSを発動させて攻撃を回避すると、俺はそのままIS無人機の体の表面に背中から分離していたビットと合わせて四つ分のグリコシドを打ち込んだ。
【小さい雑魚を先に破壊なさい、堂々巡りになるわよ】
「ちぃ、ふざけやがって!!」
小人のようなIS無人機四体が、俺のグリコシドを全てシールドで防御する。俺は乱戦を避けるために、その場から瞬時加速《イグニッション・ブスート》を使いながらバックダッシュした。
バンッ!!
くそったれ! 今度はなんだってんだ!?
突然背後で強烈な打撃音が聞こえたが、俺は攻撃を避けながらの対応で音のしたほうを向く余裕がない。
『喜久!?』
『よっちゃん!!』
「一夏!? お前どうやってここまで来た!?」
一夏と更識の声が聞こえて、俺はさらにそのまま後ろへ下がる。一応の間合いを取ると、やっと少しだけ横を向く余裕が生まれた。
「喜久、大丈夫なのか!?」
「一夏、ここはお前に任せる!! 俺はシャルロットの方へ行く!!」
「どういうことなのよっちゃん!?」
「時間的な余裕が無いからな、後で必ず理由を話す!! 頼んだぞ!!」
俺はエレベーターの方へ向かってダッシュする。しかし、当たり前のように小人のIS無人機が俺の行く手を阻んだ。
ドドドドォオオンッ!!!!
次の瞬間、大量の小型ミサイルがIS無人機へ突き刺さって爆発する。
『喜久!!私達の使ってきた通路の方が早い!!』
「解った!!」
簪の呼びかけに、俺は天井に一箇所だけ開いた穴から地上へ向けて地下から脱出をする。背中にペタルを全て出現させると、瞬時加速《イグニッション・ブスート》をかけて一気に音速の壁を突破した。
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爆発音は途切れなく続いている。地下特別区画は衝撃によって天井からパラパラと埃が落ちつづけていた。
その中を織斑 千冬が走りつづけている。未だに戦闘が続いていることから、専用機持ちの学生たちが頑張っていてくれいることに千冬は申し訳なさによる罪悪感に駆られていた。
(ふがいない! なにがブリュンヒルデだ!!)
やっとの思いで目的地の部屋に辿り付く。その部屋には最近改修作業を終えたばかりのISが一機だけ鎮座していた。
第一世代中に千冬をモントグロッソの優勝へと導いた機体は、この前のタッグマッチの後でやっとその作業を終えている。第一世代型から第二世代型に改修して『雪片』ともう一つ、薙刀の形状をした『不知火』が新たに装備されていた。
そして、暮桜が新たに持つことになった千冬にだけに使いこなすことの出来る装備が今回追加されている。暮桜の外見は打鉄の形に無駄な物を一切排除したような形で、極端に装甲となる部分が削れていた。
しかし、その分だけ機体の機動性が上がっていることが外観から確認でき、それには千冬の提案で採用されたものが反映されていることがわかる。『私が敵の攻撃を全部避けきれば問題はない』と、ただこの一言だけで防御的装甲が完全に無視された機体が完成した。
千冬が装甲の一部に触れると、『暮桜』は鼓動を打ち始める。その勢いのままに彼女は乗り込むと、視界画面が起動して、最終確認の項目が滝のように羅列され始めた。
項目の流れがストップし、オールクリアの終了サインが出される。
「束、お前が楽しんでいる茶番もここまでにしてもらうぞ」
朱のボディとラインに深い赤のISが搭乗者に答えるようにして宙に浮いた。『暮桜』が出陣する。
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地下特別区画では三対六の乱戦が続いていた。
『はあぁああ!!!』
ザンッ!!
一夏が零落白夜を纏いながら雪片弐型を振るって小人型のIS無人機を切伏せる。斬られたIS無人機がその場で爆散した。
『おねーさんの攻撃はそんなに温くないわよ!!』
ガァンッ!!
他の小人型のIS無人機が一夏への不意打ちを狙おうとしてブレードを振るうが、楯無のミステリアス・レディ蛇腹剣《ラスティー・ネイル》がそれを強烈な打撃で弾き返す。そんな様子を遠巻きに安全圏から眺めている少女がいた。
一夏たちの猛攻が、もともといた六体のIS無人機に対して優位に立ち始めている。それに対して内心で不快感を示す。
(予定外ですね、暮桜の確認作業が残っていますのに。しょうがないです、束様の保険を使用させていただきましょう)
透明な状態の久遠が自身の鞄から硬球程度の大きさがある無機質な塊を一つ取り出す。そして、それを地面に放置するとゆっくりと他の場所へ移動する。地面に放置された数十秒後、そのISが地面から生えたかのように展開を開始した。
ギチィッ! ガチギチガチガチガチガチッ!!!
『なっ!? お姉ちゃん!!』
ガンナータイプのIS無人機と戦闘をしていた簪が楯無に向かって大声で叫ぶ。
『さっきまでこんなISは存在してなかった筈なのに!?』
『くそ!! 一体この空間に何機の敵がいるんだ!?』
三頭犬のような、最早人型ではないISが姿を表した。
地獄の門番を司るといわれいる神話から抜け出たような出で立ちは、見るもの全てを威圧する。
(束様の許可がありますので織斑 一夏以外は消滅させて構いません。お行きなさい、ケルベロス)
久遠の想いに答えるように、機械が放つ無機質な冷たい光が発光を開始する。それは目の位置に当たるレンズアイが静かに殺人行為を肯定する赤い光だった。
犬嫌いの楯無が本気で嫌な顔をする。
『一夏くんお願い!! 私と簪ちゃんで他のを相手するわ!?』
楯無は一夏にケルベロスの相手を押し付けた。
『はい!! 来い、お前の相手は俺がしてやる!!』
そのことに気づかない一夏は当たり前のように頷いた。
ダッとケルベロスが地を這いながら凄まじい勢いで一夏のほうへ飛び込もうとする。それを一夏は雪片弐型を下からの切り上げで対応しようとした。
ジュッ!!
『ぐっ!!』
ケルベロスの両上腕からパカリと装甲が一部開閉して、瞬間的に熱線が放射される。不意を付かれた一夏がそれをギリギリでかわしながら、そのまま一回転して勢いを殺さずに続けざまの回転切りを仕掛けた。
『くらえ!!』
ガンッ!!
三頭犬特有の六つの内の視界どれかが反応すれば攻撃に対応出来る。ケルベロスの一つの頭が反応し、武装の一つとしている牙を剥き出しにして一夏の雪片弐型に対応した。
『うおおぉぉおお!!!』
一夏の反応速度が最高潮に達して、片方の腕を放すと雪羅の荷電粒子砲が放たれる。
ズンッ!!!
頭の一つが吹き飛んでケルベロスも後ろへ吹き飛ぶ。しかし頭部は後二つあり、ケルベロスは一旦後ろに引き下がった。
一夏も雪片弐型を構え直してケルベロスの出方を窺う。
『一夏! 避けてぇ!!』
『なっ!?』
ボオォオッ!!!!
簪が戦闘していたガンナータイプのISから巨大なレーザーが一夏に迫る。一夏は簪の呼びかけに答えて瞬時加速《イグニッション・ブスート》をすると、一気にその場から離脱した。
敵の一体に気を取られ続けると、いきなり来る他からの攻撃に対応しきれなくなる。
(喜久は一人で何体もの敵と渡り合ってたってのに、今の俺にはこれが限界なのか!?)
ティアーニのサポートがプラスされているのもあるが、喜久は状況に応じ相手の出方を見ることが出来る。だが、今の一夏にはその部分が経験不足となっていた。
それは一夏がISでの戦闘の際に常に一対一、多対一の経験しか積んでいないことが原因にある。その状態に一夏は苛立ちを覚えた。
しかし、それは裏を返せば乱戦に対応できている喜久の育ってきた環境が平穏でなかったことを意味している。喜久の過去を知らないのもあるが、その部分まで考える智慧が今の一夏にはない。
(あいつは頭を使って戦闘を組み立てる。だったら、俺もそれに従うべきだ!!)
一夏は冷静に喜久の思考を真似る。自身の機体と敵の機体との差はどこか、持っている武装の違いは、有効射程範囲の程度はどうか。人間より犬の方が速い、しかしそこはISでならイーブンに持ち込める。こちらは余裕を幾つ残して戦闘できるか、攻撃の順番を一気に思考の中で組み立てていく。
『勝負!!』
一夏が叫んで自身に喝を入れつつ、零落白夜を纏いながら白式の得意としている機動性で一気に間合いを詰めていく。ケルベロスもそれに答えるように身構えた。
『おおぉおおおっ!!!』
再びの熱線がケルベロスの両上腕から放たれる。それを雪羅のバリアシールドでガード、さらにケルベロスからの牙による攻撃を荷電粒子砲で対応してもう一つ先への行動へ転じていく。ケルベロスは足の裏に装備しているバーニアを瞬間的に噴かして一夏の攻撃を回避し、その動きを読みきっていた一夏からの横薙ぎによる雪片弐型の攻撃で真っ二つに切り飛ばされた。
ケルベロスが爆散して粉々になる。一息つく暇もなく、一夏は油断せずに楯無と簪の方へ首を向けた。
『楯無さん!! こっちは終――
ギチィッ! ガチギチガチガチガチガチッ!!!
ギチィッ! ガチギチガチガチガチガチッ!!!
二つの膨れ上がる機械音に、一夏は大慌てで視線を彷徨わせて音源の発生位置を見つける。そこには新たなケルベロスが二機、計十二個のレンズアイが無機質に一夏の方を見つめていた。
(これでストックは終了ですね。さて、暮桜がくるまでこちらのお人形さんたちがもてば良いのですが)
久遠が安全圏から戦闘の観察を続ける。激しい攻防は、まだまだ終わりを告げる鐘が鳴ることはなかった。
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アリーナは混乱の極みに達していた。
ラファール=リヴァイブⅢは依然その猛威を振るっている。ラウラが攻撃に対応する為にAICを発動させた瞬間、近距離戦に持ち込んでいたラファール=リヴァイブⅢがいきなり急激な旋回運動を開始した。
『ラウラ!! 避けろ!?』
アリーナに駆けつけて一緒に行動していた箒の叫びに応じようとしたラウラの回避行動が間に合わない。ラファール=リヴァイブⅢが一度その間合いに入れば、一番の注意すべきは独立稼動する八枚のウィングスラスターの連動した機動性になる。一瞬で後ろへと完全に回り込まれたラウラが全身に寒気を覚えた。
そして、物理盾となる部分からラファール=リヴァイブⅢの一番強力な武器が姿を覗かせる。
ズズズガァンッ!!!!!!
『ぐあぁっ!!!!』
ラウラの駆るシュヴァルツェア・レーゲンのエネルギーが尋常ではないくらい一気に削られていく。それは、ラファール=リヴァイブカスタムⅡに搭載されていた最大の攻撃力を誇るシールド・ピアーズがさらに進化を遂げた武器だった。
三本分のシールド・ピアーズを一度に打ち込むことが出来る武装名はトリプル・シールド・ピアーズ、別名"城壁殺し"と名づけられている。
『ラウラさん!?』
『これ以上は待てないわよ!! シャルロットはISの機能が守ってくれるわ!!』
セシリアが叫び、鈴が痺れを切らしてラファール=リヴァイブⅢへ突貫して行く。衝撃砲を撃ち出しながらそのままの勢いで双天牙月を振るった。
が、ビームシールドでガードしていたラファール=リヴァイブⅢが高速切替《ラピッドスイッチ》共に六連装計四門ビームガトリングガンを展開して、さらにミラーシールドシステムを発動させた。
ジィンッ!!
『ぐうっ!! そんな、同時に行動が可――
ゥゥゥヴッ! ヴヴヴウウンンンン!!!!!
双天牙月を弾かれた分の攻撃した衝撃が全て鈴に返り、そのまま大量のビームの弾幕が彼女を襲う。寸でのところで、その攻撃をセシリアの射撃ビットが全て鈴の前面に出現して防御する。ビットが盛大に爆散してその隙に鈴が回避行動を取る。
『迂闊ですわよ鈴さん!!』
『助かったわ、セシリア!!』
セシリアの叱咤に鈴は感謝してラファール=リヴァイブⅢから更に距離を置く。
『クソッタレが、鉄屑どもが手間取らせやがって!! おい! シャルロットは無事か!?』
【助けに来た王子役の台詞にしては最悪な決め台詞ね】
短気の塊のような人間が汚い口調を発しながら、黒い機体を駆ってやって来た。
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俺がシャルロットの元にかけつけるとアリーナ中が破壊され、普段は整地されている地面が全て抉れて施設の数箇所が煙を噴いていた。
ボーデヴィッヒが負傷しているのが解ると、俺は篠ノ之 束に対して怒りが込み上げる。篠ノ之の方を見て、奴の困惑している表情から姉の罪を理解していないことがわかった。
妹に辛い想いをさせて、不幸にして…。
篠ノ之 束! お前はそんなに肉親の苦しむ姿を見たいのか!!
『喜久さん! シャルロットさんが突然――
「んなことは、わかってる!! あのクソ快楽者が仕組んだんだからな!! セシリア! 援護してくれ、俺がシャルロットを止める!!」
『はい!!』
しかし今はそんな怒りに駆られた私情よりも先にやらなきゃならいけないことがある。俺はセシリアに指示を飛ばして、そのままラファール=リヴァイブⅢへと突撃を開始した。
ISに汚染されたシャルロットが武装を両手で構えてこちらに攻撃を仕掛けてくる。
ゥゥゥヴッ! ヴヴヴウウンンンン!!!!!
「ちぃ! あの武装がアリーナを破壊したのか!?」
前に戦闘した福音のような大量に放たれるビームの弾幕攻撃に、俺はペタルを全て前面に出現させる。ものの五秒と経たずに、そのまま防御用に張ったペタルがみるみるうちに削られていく。俺は回避に徹する為にバックダッシュで距離を離した。
【駄目ね。一旦、離れた方が無難だわ】
「実際に見るのは初めてだ、これじゃ他の武装も火力が高そうだな」
前にシャルロットから軽くスペックを教えられているが、それを聞いて予想していたものより実際の威力がかなり高いことがわかった。
それじゃなくても、今の攻撃から八枚の独立稼動型ウィングスラスターによる旋回性能が厄介この上ないことが判断できる。
『喜久!! 援護をする、隙を見て仕掛けろ!!』
『暴走なんてさせてないで、早くシャルロットを止めるわよ!!』
「ああ、わかった!!」
篠ノ之と凰がそれぞれの武装から砲撃を始める。しかし無人機ではなく福音の時のように搭乗者が気絶していない、今は完全にシャルロット自身がISを操縦していた。
無人、気絶している有人、気絶していない有人。さっきから他の連中が援護攻撃をしてくれてるが、ラファール=リヴァイブⅢはシャルロットが的確に判断して攻撃を回避あるいは防御しているのが解る。
くそ、シャルロット自体の能力値も高いからな。近付くにしても一筋縄じゃいかなそうだ。
『おい一年、私らも援護してやるからささっと終わらして来い。女を焦らすのが趣味なのかと思うくらい来るのが遅いぞ』
「俺だって急いできたんだ、サボってた訳じゃないんだから勘弁してくれ!!」
タッグマッチで見た上級生のISから声をかけられる。
『やっと来たッスね。私らに感謝するッスよ、フルフェイス君? あの暴走一年生には誰も手を出していません。女を待たせる男は嫌われるッスよ、ここ重要だからメモっといたほうが良いかも』
「冗談なら後で幾らでも聞いてやるよ!! 援護頼んだぞ先輩!!」
援護を頼んでから、ラファール=リヴァイブⅢに向かって俺は突撃を開始する。
【どうするつもり、闇雲に行っても返り討ちにあう可能性が高いわよ】
「シャルロットの武器をグリコシドで使い物にならなくする!! その後は俺に考えがあるから戦闘には口を出すな!!」
背中に搭載しているビットを射出してラファール=リヴァイブⅢがそれを狙い撃ちしようとしたが、俺はそのままビットが破壊させるのを無視して更に真っ直ぐ突貫する。
「それは囮だ!! なに!?」
【右よ】
腕から放たれたグリコシドをラファール=リヴァイブⅢが超高速度旋回で避けきる。そしてそのまま俺の後ろへ異常な速度で回り込もうとした。
「くそが!!」
ズズズガァンッ!!!!!
なんだこの馬鹿げた威力のある武装は!?
瞬間的に背中の後ろへペタルを出現させるとギリギリ間に合ったが、十二枚全てが一瞬で四散する。記憶を探ると、ラファール=リヴァイブⅢの中で確かに一番強力な武装を思い出す。
【距離を置きなさい、あれを食らえばひとたまりもないわよ】
俺は瞬時加速《イグニッション・ブスート》で一気にその場から離脱する。
くそ、こうなったら強行突破だ!!
【シャルロットはISに汚染されているわ、彼女を助けるにしてもグリコシドでは対応しきれないわよ】
「解ってんだよそんなこと!! だから俺の能力行使でISの汚染を消滅させてやる。前にボーデヴィッヒのAICを振り切ったことがあるからな、上手く行けば中のウイルスも潰せる可能性があるかもしれない」
ボーデヴィッヒと喧嘩した時に、俺はISTSを使用して奴のISを侵食したことがある。だから、それを使えば何とかなるかもしれないと考えた。
【確証が見えないわね、私はお勧めしないわ。他の手を考えなさい】
「だったらお前が対案を出せ、ティアーニ。どっちにしても無理に稼動停止したってシャルロットに後遺症が残って最悪は植物状態だ。だったら! 俺はその確率を少しでも無くしてやる!!」
俺は背中に全てのペタルを出現させて、ラファール=リヴァイブⅢに向かって突撃を開始する。
【回避なさい】
「そんなもんは必要ねぇんだよ!!」
ラファール=リヴァイブⅢが高速切替《ラピッドスイッチ》をしながら、こっちに向かってミサイルとビームガトリングガンの発砲で応戦してくる。が、セシリアたちからの援護攻撃を受けてすぐさま防御へと切換を行う。俺はISTSをフルで発動させて攻撃を回避しながら、シャルロットの駆るラファール=リヴァイブⅢへそのまま体当たりをかました。
ジィン!!
「ぐっ!!」
【守りが強固ね、やはり――
「あぁああぁああああ!!!」
他からの攻撃で避けきれなかったラファール=リヴァイブⅢがミラーシールドシステムを使用する。が、俺は自分がくらった反動を押し切って迷わずそのままISTSで相手のISへ侵食を開始した。
ラファール=リヴァイブⅢに搭乗しているシャルロットが、もがくようにして俺の方へ両腕を伸ばしてくる。
「がっ!」
ラファール=リヴァイブⅢが首をそのまま締め上げてきた。
くそったれがぁあああ!!!!
【下がりなさい、仲間を頼って他の方法を考えるべきよ】
プッと、自分の何かが切れるような感覚が体に走る。普段の何倍もの能力行使をしているのが感覚でわかった。
【脳への影響が出始めているわ、貴方が危険状態になるわよ】
「そんな、ん、知ったことかぁあああ!!!!」
目の前でシャルロットの顔が恐怖に歪んでいる。そんな顔を俺はいつまでも見ていたくはない。
プツッと、今度は本当に自分の耳へ何かの音が聞こえた。
【体に損傷が出始めたわ、もう充分試したのだから引きなさい】
「まだだぁああ!!!」
どんどん俺の首が締め上げられていく。体中が酸素を求めて発作のように悲鳴をあげる。
「…よし、ひ、さ」
シャルロットの声が聞こえた。
「ぐ、おあぁああああ!!!!!」
俺の寿命も何もかも、全部くれてやる。誰かを助けるために使う命なら、それは俺が無意味に命を捨てることになるわけじゃない!!
【やめなさい、これ以上やったら貴方自体が崩壊するわよ】
「だ、か、らぁ!! 全部が全部、てめぇの思い通りになると思ってんじゃねえぇぇえええ!!!!!」
あらん限りに俺は咆哮する。そして、ぐっと何かを押し込みきって、その先にある消滅の手応えを感じた。
あ……クソ…ったれ…篠ノ之 束…め、ざまあ…み……ろ―――
暴走していたラファール=リヴァイブⅢが停止するのが解ったと同時、俺の視界が消し飛んで真っ黒になった。