ln   作:kiarina

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[NumberingTitle_日本国家代表]

 

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『ご来賓のみなさまより、祝辞のお言葉をちょうだいいたします。まずはじめに、日本IS国家代表者、瀬名川《せながわ》 裕香《ゆうか》様にご挨拶をちょうだいいたします。瀬名川様、よろしくお願いします』

 

司会アナウンスを行っている女子の声がスピーカーに拡声されてよく響く。ホールで行われている卒業式の日、着席している生徒は皆が聞き入るようにして演壇の方を見ている。そんな中、俺は一年生用の席に座って欠伸をかいていた。

横を見れば隣の席に座っている一夏も同じような感じで気だるそうにしている。本人は昨日の遅くまで卒業式の準備に散々こき使われていたのだから、しょうがないと言えばしょうがないのかもしれない。顔の向きを変えれば窓の外では晴天の陽気に気持ちいいくらい澄み渡っている空が見える。暖かい日差しが卒業生の門出を祝っているように見えた中で、登壇者のスピーチが始まった。

 

『皆さん、ご卒業大変におめでとうございます。日本の現IS国家代表を勤めさせて頂いております瀬名川と申します。今日はこのような場所にお招き頂きまして、誠にありがとうございます。私といたしまして―――

 

ふーん、あれがこの国のIS国家代表ね。

ショートで整えられた黒髪にきりっとした目、若い割に少しだけ風格を感じさせるようなスーツを着た女が丁寧な口調で挨拶をしている。毎度のことだが、かったるい行事は慣れない。だんだんと眠気に襲われて舟を漕ぎそうになった。

誰かが肩を軽く揺すってくる。

 

「おい喜久、お前寝かけてるぞ」

「ああ、悪ぃ。えーっと、今どこの辺り?」

「寝ぼけすぎだ…。まだ今の人のスピーチも終わってないぞ」

 

一夏に起されて意識を戻せば、未だにスピーチが続いているのがわかった。

顔をもう一度演壇の方へ向けると、感情が入っているのか瀬名川とかいうのが身振りと手振りを混じらせて演説している。

 

―――ISが登場して以来、女性の活躍は目まぐるしい発展を遂げました。ですが、女尊男卑の社会と言われている現在に至っても未だ国を動かしている中心は男性となります。これから時代の先を変革し行くのは男性ではなく、全ての分野で女性です。私はもっと女性の社会は発展していくべきだと考えています。今日IS学園をご卒業される皆様、この場所から羽ばたいて行かれる皆様は世界中の女性の希望です。皆様の躍進したご活躍を心より祈らせて頂きまして私の挨拶とさせて頂きます。今日はお招きいただきまして、誠にありがとうございました』

 

すげぇな、ガッチガチの女性優位主義者だよ…。

ホール中で盛大な拍手が鳴り続け、挨拶を聞いていた生徒たちは嬉しそうな顔で瀬名川を見ていた。

げんなりとして横を向けば、一夏は少しムッとした表情をしている。俺は挑発に感じたのだろう本人の肩に手を置いて笑いかけた。

 

「怒んなよ一夏、言わせときゃ良いんだよあんなもんはさ。ISだのなんだのだって、所詮問われんのはその人のあり方だけだろ?」

「ああ…、確かにそうだな。でもな喜久、あれだけはっきりと言われるとちょっとな」

「あんな奴に感化されんなよ、お前はお前だろ。なぁ、一夏?」

「気が立っちまった、ありがとな」

 

一夏が礼を言って演壇の方を向きなおす。俺はといえば、瀬名川の言ったことに内心で苦笑いしている感じだ。正直な話だが、女性も男性も同じ立場にあることはとても大切なことに感じている。どちらかの主張が強すぎることは問題だが、誰もが対等で平等な立場というのは生きている人にとっては当たり前の権利でもあるのだから。

そんなことを考えていると、俺の後ろに位置していたボーデヴィッヒが珍しく話し掛けてきた。

 

「一夏が喜久のことを止めると思っていたがな、随分と大人の対応だな?」

「大人も子供も関係ねぇよ、俺は男女の天秤がどちらかに傾かない世間くらいが丁度良いと思ってるだけだしな」

「ほう、確かにお前らしい考え方だ。私も見習わせてもらうとしよう」

 

俺は手をぶらつかせると適当に笑いながら彼女に答える。

 

「そんなご大層なもんじゃないよ。俺の考え方なんてのは、いつでも中途半端だ」

「中途半端ときたか、面白い例えだ」

「そうだな、喜久も俺もまだまだ中途半端だな」

 

ボーデヴィッヒが小さく笑い、一夏が俺に同調する。織斑姉の方を見れば、雑談をしている俺たちの方を睨んでいるのがわかった。

演壇の方へ顔を向けると、学園長の挨拶が始まっている。俺は声だけ出して一夏とボーデヴィッヒに話しかけた。

 

「一夏の場合は良くも悪くも発展途上だ、そういうことにしとけよ。それとな、俺たちのことを軍曹が睨んでるぞ?」

「うわ、やばいな…。これは三人仲良く千冬姉から拳骨か?」

「教官、申し訳ありません…」

 

一夏とボーデヴィッヒの顔が青くなる。俺は気にせずもう一度欠伸をかいた。

 

 

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無事に卒業式も終了し、クラスのホームルームで山田先生が教壇に立って今後の説明をしている。

 

「みなさーん、それではホームルームを始めますよ~。これから、二年生ではクラス替えと既に決った専門の過程によってクラスわけされます。今日がこのクラスでの最後のホームルームとなりますので、よろしくお願いしますね」

「えー、私は次のクラスも山ちゃんが良いなー」

「五組の先生はおっかないしねー、山ちゃんの方が優しいし。もう一年持ってもらえないのー?」

「私は整備科だから、他の先生確定なのよね。山ちゃん、整備科の先生にはなれない?」

 

山田先生に二年でも担任になってほしいと、クラス中の女子たちが大合唱のような声で要求していた。

この一年、山田先生は生徒たちから優しい姉のような立場と見られて絶大な信頼を得ているらしい。とうの本人は困った表情で、どう対処したらよいか悩んでいる感じだった。

二年生では専門科目に分かれるために操縦科と整備科、情報科が選択項目になる。これは本人の希望を最優先にして適正等を含めて今後の専行先を決定しているらしい。操縦科も整備科も文字通りで、情報科は主にISの情報開発がメインとなっていた。

要はIS全体の技術発展が目的で、武器開発等とは一部てきに切り離されるかんじだ。ISにおいて一番の根幹で縁の下を支えることになり、特例の亜種で言えばISへのアプローチ的にAI補助などの開発がある。半縄の笹崎なんかはこの部分に当たる人間だった。

一学年で七クラス、二百十人程度の生徒のうちで三つの専門分野に分けられる。操縦科が四クラスと整備科が二クラス、情報科が一クラスだ。今後の新クラス発表では適当なクラスに分けられるのだろうことが予想できる。が、特に人のいうことを聞かない俺は強制的に織斑姉のクラスにされそうな気がした。

思考に耽るのを中断して教壇の方を向けば、山田先生が気を持ち直して律儀に今後のことを説明している。

 

「それではまず、今後の大きい学年行事についてですね。五月に行われる学年別チームトーナメントのグループを発表しますので、机の内臓ディスプレイで表示されている内容を確認して配布データを管理しておいて下さいね」

 

俺の机に内蔵されているディスプレイ内でパッとチームトーナメント表が画面表示される。パネル操作で適当に情報を漁っていき自分が所属しいるチームを探した。

あーあ、知ってる人間が一人も居やしねぇでやんの…。

1チームが八人から九人の24チームになっていて、内訳は操縦科が五名と整備科が二名か三名、情報科から一名か二名となる。俺の所属する場所は整備科と情報科の人間が一人ずつ減った八人のチームだった。

専用機持ちの連中は完全にバラけるために、お互いが対戦相手になる。適当に辺りを見渡せば、プライドが高いクラス連中の顔が『私が勝つのよ』とばかりに意気込み方がいつもと違っているのがわかった。

そんな中で、きっと俺だけがやる気がないのだろうことが解る。同じグループで組む連中には悪いが、はっきり言ってやる気がしない。専用機とか関係なく、俺のモチベーションは最初からゼロに等しかった。

そんな教室中が熱気に包まれているところでコンコンコンッと、不意に出入り口のドアからノック音が聞こえる。

 

「瀬名川です。失礼するわね?」

 

ガラッとドアを横にスライドさせながら、女性優位主義者が教室内に入ってきた。

卒業式の締まった感じではなく、顔はにこやかにしてリラックスしきっている様子が窺える。瀬名川が嬉しそうに山田先生へ話しかけた。

 

「真耶、久しぶりね~」

「えぇ!? 裕香! 今は授業中ですよ、何考えてるんですか!?」

「大丈夫よ、千冬先輩にはちゃんと許可を貰ってるからっ♪」

 

二人のやり取りを見ていると、どうも同期の友人らしいことがわかった。

 

「織斑先生…」

 

山田先生が項垂れたようにして後ろへもたれ掛かる。瀬名川はそんな本人の肩をぽんぽんと軽く叩いていた。

クラスの連中はいきなりの出来事に呆気に取られた感じだ。俺は関係ないので眠気も手伝ったこともあり、そのまま机の上で上半身を寝そべらせることにした。

 

「へぇー、生で見るのはこれが初めてだけど。ふーむ、確かに君は千冬先輩に似てるわね」

「えーっと、初めまして。織斑 一夏です」

「締まりのない顔以外はだけれど」

「ぐっ…」

 

これは篠ノ乃とボーデヴィッヒが面白くないだろうな。

聞こえてくるやり取りの会話だけだと、瀬名川の言葉に一夏がへこんだような声が聞こえる。スピーチの時から予想はしていたが、上から目線のような会話に俺は内心で辟易した。

そんな中で瀬名川の高圧的な会話が続いていく。

 

「男性操縦者だって聞いて楽しみしていたけど、君はどのくらいISを扱えるのかしら?」

「一年間学んだんで、そこそこは使えると思ってますけど」

「そこそこねー。今日このクラスに来たのは、君ともう一人の男性操縦者に用事があったからなのよ。織斑 一夏君、今日の放課後に顔を貸してちょうだい。私は君の実力が見たいわ、もちろん了承してもらえるわよね?」

「……。わかりました! 俺でよければ是非ともやらせてもらいます!!」

 

一夏の阿呆が、下らない挑発に乗りやがって…。

卒業式でのスピーチも効いているんだろう、我慢の限界に達したらしい奴の怒鳴り声が聞こえる。俺は内心で呆れながら溜息を吐いた。

 

「で、そこの寝ている君、起きなさい」

「…俺っすか? 話は聞こえてましたけど、俺は模擬戦なんてパスさせてもらいますから」

 

すると、今度は瀬名川が俺のほうに喋りかけてくる。俺はだるいなと思いながら顔だけ上げて対応した。

 

「千冬先輩から成績のことは聞いたけれど、学年でトップの実力をとる学生の気質には見えないわ。君は貴重なISを操縦するという自覚に欠けているのではないかしら?」

「気質があろうがなかろうが、そんなもん別にどっちでも良いじゃないすか。結果が出てるんだから問題ないでしょ?」

「問題なら大有りよ、君の態度がそれでは学校全体への模範として示しがつかないわ。ましてや、君は今まで誰も初期起動すら出来なかった半縄の専用機を使用しているのよ?」

 

ん? この瀬名川ってのは、なんで半縄の事情を知ってるんだ?

 

「使用も何も、テストパイロットがAIに蹴飛ばされただけの話しでしょうが。俺が選んだわけじゃないし、AIが選んだだけのしょうもない理由ですから」

 

はぁ、気難しいAIの責任を俺に押し付けんなよ…。

半縄に詳しそうな発言に、俺はもしやと思って瀬名川へ質問をしてみる。

 

「それに、瀬名川さんだっけ? あんた、もしかしてティアーニに蹴飛ばされた口か?」

【そういえばメモリーに残ってるわね。確かに、私は彼女を受け入れずに降ろしたデータが残ってるわ】

 

そら、一般人がISTSなんて使えるわけないもんな。

適当に言っただけだが、どうやら当たりだったらしい。俺の発言に瀬名川ではなくティアーニから返答が帰ってくる。瀬名川がくっと口をへの字にして、恥ずかしい思いをしたのか顔が赤面しだしているのがわかった。

墓穴を掘ったらしいが、本人はなんとか顔色を戻して再び俺に話しかけてくる。

 

「市隈 喜久君で名前はあっていたわよね。君も放課後に顔を貸してくれないかしら?」

「だからあ、はぁ…。たく、わっかんねぇ人だな。俺は行かねぇって言ってんだろが、一回で人の言った言葉を覚えろよ」

 

しつけぇな…。

いい加減、俺はイライラしだして付き合ってられないとばかりに敬語を取っ払う。瀬名川は不適な笑顔で余裕そうに俺を見ていた。

 

「目上には敬語を使うものよ、きちんと習わなかったのかしら?」

「うるせぇ、バカバカしいんだよ。手前に使う敬語なんて必要ねぇだろうが?」

 

一気に互いが喧嘩腰の会話に突入していく。山田先生はどこで話を切ればいいのかわからない様子で困惑しているのが表情からわかった。

瀬名川が偉そうに喋ってくるのがわかると、俺は日本国家代表者のクソな浅さを理解する。女尊男卑の象徴のような目の前の存在が、どうしようもなく醜悪な存在に見えた。

 

「気に入らないわね、そんなに俺様主義が好きなのかしら?」

「あんたがどう思おうと俺の勝手だろ? こちとら、安い挑発に乗るほど馬鹿じゃないんだよ」

「それに生意気な態度も減点だわ、親もどういう教育をしてるのかしら。これでは程度がしれてるわね」

 

おいおい、なに他の人間を攻撃しだしてんだよ。なめてんのかこいつ?

そもそも俺に元々本来の親なんて存在しないんだよ、的外れな挑発なんてのは間抜け以外のなんでもないな。

 

「顔も見たことない他人を攻撃してんじゃねぇよ。代表になれるだけの力がある織斑先生より下の癖に偉そうなこと吼えんな、負け犬の遠吠え女が。どうせ日本代表ってのもおこぼれ頂戴であぶく銭を受け入れただけだろうが、カスが代表の名誉にしがみ付いてるのは本当に惨めだな」

「なんですって!? もう一遍、言ってみなさい!!」

 

俺の罵倒に反応した瀬名川が激昂して怒りだす。もう、そこに大人としての威厳なんてものは存在しなかった。

 

「若いのに痴呆なんて哀れだな、何度でも言ってやるよ。お前みたいな乞食は残飯を漁るのが本当に得意だよなって言ったんだよ」

「…いいわ、それだけの大口を叩くのだったら勿論、私より貴方の方が強いことを証明してくれるのよね?」

「バーカ、誰がやるかよクソッタレ。勝手に言い負かされて相手にものを要求してんじゃねぇよ、ババアはさっさと腐った巣にでも戻れや」

「バ、ババアですって!? 私はまだ22よ!!」

 

こっちは問答なんて面倒臭いマネはごめんなんだよ。

余りにもやってられなくなり、俺は鞄を担ぎ上げるとそのまま立ち上がって教室を出ようとする。瀬名川《頭に蛆の湧いた女》が俺の行動を止めようと声を張り上げた。

 

「ちょっと! まだ話は終わってないわよ!?」

「山田先生、俺は気分が悪くなったんで保健室と早退ってことでよろしくお願いします」

「えぇ!? 市隈くん、待ってください!! そんな解り―――

 

俺は問答無用でドアをスライドさせて開閉すると、そのまま騒音のような教室を後にして寮に向かった。

 

 

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喜久が突然のフェードアウトを敢行すると、クラス中の人間が呆気に取られてしまった。

一夏も例外ではなく、自身以上に罵詈雑言の意見で瀬名川 裕香を突っぱねたことに驚いている。

 

(あいつ…、本当にやりたい放題だな。しかし、若い女性にババアは言い過ぎだよな)

 

女尊男卑ということを鼻にかけた裕香への怒りは散霧してしまい、一夏は彼女のストレスが溜まったことに同情した。

裕香が文句を言いたくても喜久は既に退散している。そして、どこからともなく溜息が二つほど聞こえた。

 

「うぅ…、はぁ。いつものこととは言え、学年最後のホームルームでこんなことになるなんて。私は織斑先生になんと言えば…」

「はぁ、学年トップの生徒があんな問題児だなんて。OGとして恥ずかしいわ…」

「裕香! 元を正せば貴方が原因でしょう!? 恥ずかしく思う前に反省してください!!」

「それは謝るわ、ごめんなさいね真耶。私も頭に血が上ったとはいえ、まだまだ精神的に未熟だわね」

 

裕香が素直に謝り、真耶が呆れながら手で額を抑える。既にクラス最後のホームルームは中断して滅茶苦茶な状況になっていた。

 

「織斑君、それじゃ私は応接間の方にいるから。昼食後に声をかけに来て頂戴ね」

「はい、わかりました」

「それと、ホームルームを中断してごめんなさい。せっかくのめでたい日なのに、皆さんの気分を害させてしまったことをお詫びします」

 

裕香は深々とクラスの生徒に一礼して教室を出て行った。

一夏は高慢な態度と直ぐに礼節を尽くした彼女の心変わりに戸惑う。一体どの顔が普段の本人の自然なものなのかと。

 

(なんか、台風みたいな人だったな…)

 

現国家代表者、千冬がなっていたであろう座に着いている女性。国の中で頂点の実力がなければなれない場所に位置する人間の第一印象を一夏は戸惑いながら思い浮かべる。

 

(なんだろう、国家代表のイメージが随分と崩れて実感が湧かない…。てか、国家代表ってみんなあんなかんじなのか?)

 

彼以外もクラス中の生徒たちが戸惑い、雲の上のような存在だった国家代表の株が急落していく。先ほどの裕香と真耶のやり取りを見ていた箒が疑問に感じたことを質問した。

 

「山田先生、今来られた国家代表の方とはご友人なのですか?」

「えぇ、そうです。裕香は私の友人ですね、昔から破天荒なところは市隈くんによく似ているといったところでしょうか。あ…」

 

真耶は失言をしてしまったことに気づき、思わず自身の口元に手を当てる。しかし既に時遅し、市隈という単語にクラス中の生徒たちが興味を示す。国家代表となる人間が学生時代にどんなことをしていたのかと。次の瞬間、わっと生徒たちが麻耶を質問攻めにし始めた。

一夏がその光景を呆れながら眺めていると、専用機持ちのメンバーが彼のほうにやってくる。ラウラが面白そうに笑いながら一夏に話し掛けた。

 

「一夏、本当に国家代表者と戦うのか?」

「ああ、どこまでやれるかわからないけど。今まで遊んできた訳じゃないし、自分の力がどこまで届くのかも知りたい。それに、なにより男が一度口にしたことは絶対に曲げるわけにはいかないからな」

「因みに言っておくがな一夏、国家代表クラスともなると教官より下程度の実力者だぞ?」

「関係ねぇよ、そんなこと。俺は自分の力を信じてやりぬくだけだ!」

 

一夏が意気込んで机から立ち上がる。すると、シャルロットと箒がその場で溜息をついた。

 

「一夏、国家代表は僕やセシリアみたいな候補生よりもISに乗っている時間がずっと多いんだよ?」

「う…」

「本当に一夏は、こういう頑固なところが昔から変わらないな」

「しょうがないだろ」

 

そして、セシリアも二人の後に続いて発言をする。

 

「まあ、一夏さんは体で覚えるタイプですから。論より実践の方が、よくお分かりになるのでしょう」

「そこまでいわなくても…」

 

一夏が項垂れながら出入り口のほうを見る。記憶に残っている瀬名川の背中姿を現実に重ね合わせると、彼はもう一度自分に喝を入れた。

 

(乗っているのは化け物でもなんでもない、俺と同じ人間なんだ。だったら、勝機は必ずあるはずだ!)

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