ln   作:kiarina

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 アメリカのスラムに点在する公園には、普段からバスケットボールに興じる若者たちと、麻薬の売人がたむろしている。ボールが弾んでリングに当たる音を横耳にしながら、待ち人は壊れかけのベンチに腰掛け、ニット帽を目深に被っていた。日当たりは悪くないが、雰囲気は重く、遊ぶ子どもの姿などどこにもない。

 手にしたシリアルの詰まった箱をまさぐると、ビニールが擦れる音が小さく鳴る。無造作にひとつまみ掴んでは口に放り込み、気だるそうに欠伸をした。

 やがて数分が経ち、公園の入り口からスーツ姿の女性が現れる。色の濃いサングラスに視線は読めないが、彼女はまっすぐに男へと向かって歩いてくる。

「目立つな。仮装行列に混じっても違和感ない服、なかったのか?」

「悪いわね。服のセンスは私の趣味じゃないの。支給元が堅物でね」

 女性は男の隣に腰を下ろすと、少し顔をしかめて鼻に手を当てる。

「……あなた、浮浪者の演技にしては、匂いがキツすぎるわ」

「ミュージカルの国だ。役作りにはこれくらい必要だろう?」

「じゃあ満点をあげるから、帰ってシャワー浴びなさい。まさか、あんたの仲間もこんな感じ?」

「一人は女でな、拒否された。もう一人は“趣味じゃない”とか言い出すし。結局、消去法で俺が汚れ役ってわけだ。割に合わんよ」

「それにしても……」

 ナターシャは公園の奥に視線を投げながら言葉を続けた。「ここ、なんだか様子が変わったと思わない?」

 サンティアスも目線だけを動かして周囲を観察する。ベンチの背後にある大きな木、その幹の陰に、さっきまではなかった靴の先が少しだけ覗いていた。

「……見張りってわけでもなさそうだな。あの靴の持ち主、体重のかけ方が素人じゃない」

「ええ。ああいうのは、こちらから仕掛けると火がつくタイプね。無視するのが得策」

「同感だ。だが、俺は気になると寝つけないタチでね」

 サンティアスはゆっくりと立ち上がる。古びたベンチがギシリと音を立て、シリアルの箱が地面に落ちて、少しこぼれる。ナターシャは顔をしかめるが、止めようとはしなかった。

 男は手をポケットに入れたまま、靴の影に向かって数歩進む。そして、何気ない調子で声をかけた。

「おい、そこにいるなら、せめてタバコの一本くらいよこしてくれよ。さすがに話だけじゃ乾くだろ」

 反応はなかった。だが確かに、微かに空気が動いた。葉の擦れる音が風の流れとは逆に揺れたのを、彼は聞き逃さなかった。

「沈黙とは粋だな。どっかの情報屋か、それとも新入りのCIAか。どっちにしても、タイミングがよすぎる」

 ナターシャがため息をつきながら立ち上がり、彼の横に並ぶ。

「やっぱり気づいてたのね」

「ニオイが違った。ああいうのは、武器を持ってても持ってなくても、空気に混じるんだ。気配ってやつだよ」

 彼はわざと靴の方に背を向けて、落としたシリアルを拾うふりをする。そして、ふいに低くつぶやいた。

「三秒以内に出てこなきゃ、爆竹でも投げるぞ」

 その瞬間、木の陰から一人の少年が姿を現した。年のころは十五、六。痩せぎすで、黒いパーカーのフードを深く被っている。

「……悪い、見てただけなんだ。あんたたちの会話、なんか映画みたいでさ」

「ただの野次馬か?」

「かもな。でも、あんたの名前……アノード、って言ったよな。うちの兄貴がその名前、ずっと探してたんだ。昔、同じチームだったらしい」

 ナターシャが目を細める。

 「チームって、どこの?」

 少年は答えなかった。言葉を飲み込み、わずかに後ずさると、そのまま公園の茂みの中へと走り去っていった。

 しばしの沈黙のあと、ナターシャが苦笑する。

「なんだか、今日は登場人物が多いわね。まるで劇場よ」

「ミュージカルの国だからな。舞台装置も役者も、勝手に集まってくるってわけさ」

「ご愁傷様。今さらだけど、よくIS学園に潜入しようなんて思ったわね」

 女性は持っていたバッグをそのまま男に渡す。男は受け取り、中を確認して紙幣が詰まっているのを確かめた。

「中には二百万ドル入ってるわ。もちろんアメリカ紙幣。記番号もランダムになってるから安心して」

「助かる。俺たちじゃ、せいぜい銀細工くらいしか手に入らんからな。……あんたが使うのか?」

「ええ。残りは予備にさせてもらうわ」

 男はポケットからアクセサリーを二つ取り出した。ラファール=リヴァイブⅡの待機状態にある首飾りは、沈黙のまま宙に垂れ下がる。互いが触れ合い、かすかに金属音を立てる以外は何も語らない。

 サンティアス・アノードは、疫病神がようやく離れたかのように、どこか肩の荷を下ろしたような気分だった。

 受け取ったナターシャ・ファイルスは軽くうなずきながら、それをスーツの胸ポケットに無造作にしまい込む。

「これまでの話は、あくまで私からのオファー。でも、これからはCIAからの伝言よ。もし仕事を探してるなら、紹介するって。報酬は——あなたたちの首にかかってる懸賞金の除外だそうよ」

「ほう、そりゃ助かる。……と言いたいが、最近は高値に釣られたら痛い目見たからな。高給取りはリスクが高い」

「あら、私が保証してあげるわよ。幸運の女神は、いつだって正しい方に微笑むのよ?」

「悪いが、あんたの保証じゃ心許ないな」

 そのとき、サンティアスの視線の先にすっと手が現れた。上下に振られたその手には、一枚の名刺が収まっている。まるで手品のようだった。

 その手は、サンティアスの顔よりも後ろから伸びていた。耳元から聞こえたのは、妙に落ち着いた男性の声。

「僕からも保証しよう。我々、CIAが君たちにかかっているお墨付きを外すことを」

 背後の男の顔は見えない。だが、声には営業スマイルを張りつけたような響きがある。気配だけで察し、サンティアスはゆっくりと両手を上げた。

 

 ◇

 

 日差しは強くとも、八月は終わろうとしていた。新学期の足音が、少しずつ近づいてきている。午後の密閉された室内では、空調の効いた空間にペンの走る音が心地よく響いていた。

 生徒会長室で決裁書類に目を通していた更識 楯無は、ドアのノック音に手を止めた。ペンを扇子に持ち替え、笑顔を浮かべて訪問者を迎え入れる。

「どうぞ」

「失礼します」

「ようこそ、箒ちゃん。生徒会室へ」

 入ってきた篠ノ之 箒は、視線を左右に泳がせた。楯無は苦笑し、安心させるように手招きをする。促されるように、箒はソファに腰を下ろした。

「私を呼び出したとありましたが」

「ええ、そうよ。今は人払いをしてあるから」

「すみません……」

 あまり人に会いたくない。これが箒の偽らざる本音だ。楯無は向かいのソファに腰をかけ直し、テーブルにタッチパネル式の端末を置いた。電源を入れて起動すると、保存されていたデータファイルを開く。

「まあ、だいぶデリケートな話題なのよね。ここに、箒ちゃんの資料があるわ」

 紅椿の稼働に関する現状報告が、一覧で表示されていく。その結論には《暴走状態》の文字が浮かんでいた。ふと気づくと、箒は無意識に左手首をさすっていた。待機時の紅椿が装着されていた場所だ。今、その機体は箒の手を離れ、学園の地下区画に厳重保管されている。

「これは先日届いた、国際IS委員会からの通達よ。読んでみて」

 画面が切り替わる。続く書類の見出しには、

 

【篠ノ之 束の親族、篠ノ之 箒に関する所属移動処置について】

 と記されていた。箒は目を見開き、テーブルに手をついて前のめりになりながら続きを読む。

 

 一、重要人物保護プログラムにより、当人の身柄をIS学園より国際IS委員会ヨーロッパ本部に送致。以後、委員会の直轄管理とする。

 一、IS第四世代機はISコアと分離後、機体と共に永久凍結とする。

 

 その一文を目にした瞬間、箒の胸の奥に、冷たい針が突き刺さるような感覚が走った。

 ――永久凍結。

 たった五文字に込められた、その絶望の重さ。紅椿は、彼女の夢だった。姉のように、誰よりも強くありたくて、誰にも負けない力を欲した。努力して、傷ついて、ようやく手にしたものだった。確かに、暴走した。確かに、それが引き起こした結果は重すぎる。それでも――。

(私にとって、紅椿は……たったひとつの、証だったんだ)

 篠ノ之束の妹として、常に周囲から比較されてきた。誰かに期待されているようで、実際にはその期待は姉に向けられていて、自分はその影にすぎなかった。姉が作った紅椿に、自分が唯一触れられる存在であること――それが、箒の心の支えだったのだ。

 それを、「凍結」という名のもとに、ただ封印されてしまう。

 まるで、自分の存在そのものが「危険」と断定されたような気がして、息が詰まる。

(あの時、もっとちゃんと……制御できていれば)

 頭の中で、何度も繰り返し見た記憶が再生される。紅椿の圧倒的なパワーに、身も心も飲み込まれそうになった瞬間。恐怖と高揚。混乱と快感。あの感覚は、まるで、自分ではない何かに身体を乗っ取られていたようだった。

 ――でも、あれもまた、自分だった。

 力を欲した。誰かを守りたかった。自分を認めてほしかった。一夏がいたから。そんな思いが暴走に繋がったのだとしたら、それは機体のせいではなく、自分の未熟さゆえなのだ。

 だからこそ、箒は知っている。

 紅椿を凍結するということは、ただ一つの機体を封印することではない。それは、彼女が今まで背負ってきた、過去の努力や願い――すべてを、無かったことにされるということだ。

(私の全部を、誰かの判断で、なかったことにされる……)

 震える指先が、膝の上でこわばっていく。視界の端で、机の影が揺れている。いや、揺れているのは自分だ。わかっている。だけど、止まらない。怖い。悔しい。虚しい。

 心の奥で、何かがポキリと折れる音がした。

(私は……このまま、消されるのだろうか?)

 誰にも見えない場所で、静かに、そして確実に消えていく。そう思った瞬間、箒の中で何かが叫んだ。いやだと、終わりたくないと、このままじゃないと――。

(……だったら)

 唇を噛み締め、涙を堪える。逃げたくない。紅椿を失っても、何かを守れるなら。それが、私にできる最後の償いになるのなら――。箒の目の前が真っ暗になった。急に棚や机が揺れ出す。地震ではない。視界が、足元が、体が、奥歯が鳴り出す。自分が震えていることに気づき、思わず両腕で体を抱え込んだ。

 楯無は小さく嘆息し、投影ディスプレイの表示を落とした。

「委員会は、紅椿と箒ちゃんを檻に閉じ込めておきたいのでしょうね。どこかの都市がインドの二の舞になってしまうのを恐れている。あるいは、新たな篠ノ之博士が生まれることを、目も当てられないと思っているのかもしれない」

「そんな……こんな……」

 理不尽などと、どの口が言えるのか。たった一日で、インドの都市部を吹き飛ばした。それが現実だった。まがまがしい記憶が、脳裏を駆け巡る。

「これが今、箒ちゃんに与えられている道よ」

 乾いた音とともに、長細い封筒が机に置かれる。中身は旅客機のフライトチケット――監獄へ直行するための片道切符だった。それは、ただ恐ろしいだけの紙切れで、とても素直に手に取る気にはなれなかった。

「出発日は少し先だけど、荷物をまとめる時間はそう多くないわ」

「……くっ」

 楯無は、怖気づく箒に再び微笑みかけた。

「さて、ここに委員会とは別に、おねーさんから箒ちゃんへの、新しい道の提案があるの」

 彼女は、別のA4サイズの茶封筒を机に置いた。箒は眉をひそめ、不思議そうな表情を見せた。

「これは……?」

「見てごらんなさい。ここに、箒ちゃんの平穏な学園生活へとつながる鍵が眠ってるわ」

 無言で封筒を持ち上げ、中を見る。中には一枚の簡素な紙。それには英文が記されており、頭の中でたどたどしく翻訳を試みる。文面には、見慣れない単語がいくつかあった。

 ナンバー34に関する移動経路予定。アメリカ軍横須賀基地からの軍用機離陸に合わせ、ハワイ・ヒッカム空軍基地を経由、西海岸上空でISによる上空切り離し飛行、地上にてCIAエージェントと合流――

「34の数字があるでしょう。これは、よっちゃんのナンバーよ」

「34……?」

 どんな意味だろうか、見当がつかない。箒は謎かけのような数字に眉を寄せる。楯無は少しの沈黙の後、言った。

「過去によっちゃんへ割り当てられていた、被験体番号よ」

「被験……なんの?」

「ISへの遺伝子操作適性化実験よ」

 一夏と喜久は、ISに搭乗できる特別な存在だ。一夏の過去は知っている。幼馴染だから。そのため、ISの素養があることに驚きはあったが、それ以上に再会の興奮が勝ってしまっていた。

 だが、喜久の過去は知らない。適性化実験と聞いても、具体的に何が行われていたのかは想像もつかない。

「よっちゃんは、この秋にアメリカへ向かうの。私は彼の護衛として同行する予定――だったんだけどね」

 楯無が扇子を広げる。そこには『限界突破』の四文字が書かれていた。

「ここに、箒ちゃんをあてがうわ」

「私を、ですか?」

「紅椿は、生徒会権限で一時的に箒ちゃんのもとへ。よっちゃんの陣営には、CIAとアメリカ軍、そしておねーさんがつく。そして、よっちゃんの敵は――アメリカ軍よ」

「アメリカ軍、ですか?」

「そうよ」

 なぜアメリカ軍が喜久を狙うのか、箒には理由がまるでわからなかった。だが、適性化の被験体という話が関係しているのは、なんとなく察せられる。

 ふと、思い出す。今年の春、短期留学で来ていたアメリカ国家代表候補生のことを。確か、アラルティア・アトウッドという少女は、やたらと喜久に固執していた気がする。

 箒の怪訝な表情に、楯無が笑みを浮かべる。

「少し思い当たる節があるのね。ゴールは大統領官邸、ホワイトハウス。よっちゃんを無事にたどり着かせれば、箒ちゃんの勝ちよ」

「待ってください。なぜ私が“勝つ”んですか?」

「向こうと話をつけたの。第四世代機を護衛につける見返りに、箒ちゃんが自由に生活できるよう、後ろ盾になるって。欧州もアメリカの意見を無視できないから」

 つまりアメリカが、箒の自由に対して他国へ口添えしてくれるということ。他国はそれを承認し、自由の檻もいくらか広く用意される――そういう話だった。

「ただし、向こうで待ち受けている条件は生やさしくない。私の掴んだ情報だと、軍も動いているけど――“銀の福音”を復帰させたらしいわ」

「銀の、福音……!?」

「そう。箒ちゃんが去年の臨海学校で戦った、あのアメリカの軍用ISよ。それも、今回の搭乗者はISのスペシャリストだって聞いてる」

 あの化物じみた強さのISが、再び襲ってくる。仲間が次々と撃墜されていったあの記憶がよみがえり、背中に冷や汗が吹き上がる。

 私は……あれに勝てるのか――。

 楯無が真剣な表情で箒の瞳を射抜いた。広げていた扇子を閉じると、室内に一つ、澄んだ音が響く。箒はその緊張に肩を軽く震わせた。

「篠ノ之 箒さん。あなたはここで、自分が有用な人間だと世界に示さなければならない。ISの暴走を制御し、紅椿の唯一の搭乗者は篠ノ之 箒であると」

「私は……」

「選びなさい、箒ちゃん。一生、自由のない監獄に入るのか。死ぬ覚悟で、よっちゃんと共に今の生活を守るため、アメリカの後ろ盾を得るか」

 クマの穴に、武器なしで入れば喰い殺される。今の箒には、何もなかった。

「あ、そうそう。言い忘れてたわ。アメリカ行きの場合は、一夏君もつけるわよ。最強の騎士様に守ってもらいなさいっ♪」

 ためらっていた心の揺れが、最初から存在しなかったかのように静まっていく。手の震えは、もうなかった。

 箒は迷わず、机に置かれていた一枚を掴み上げた。

 

 ◇

 

 その一室は、ひんやりと冷えた空気に包まれていた。空調が静かに稼働し、室内を均一に冷却している。

 空中投影モニターには、ある一場面が映し出されていた。船、それも巨大なアメリカの軍艦だ。次の瞬間、映像はその航空母艦の中央を、直径およそ100メートルに渡って、赤黒い光と共に文字通り“消滅”させた。

 モニターを鑑賞していた二人の人間は、それぞれ異なる表情を浮かべていた。一人は楽しそうに、もう一人は無骨な面持ちで。

「これが、僕たち亡国機業の実力です。まあ、この件に関しては完全に僕の独断ですがね。他の幹部に知られたら、僕は抹殺されるでしょう」

「未だに開発の目処が立っていない反物質技術を、試作兵器として使ったか。しかも標的が、ビッグフットの親指とはな……。随分と大それた真似をしたものだ」

「ISがいかに優れているかを、世間に示す絶好の機会ですよ。もっとも、アメリカはこの事実を封殺するでしょうけど。愚鈍の塊に乗った六千人と、ISに乗ったたった一人――兵器の格が違いすぎるのです」

 空中投影モニターには、未だ沈みゆく戦艦の映像が流れ続けていた。

 楽しそうにしていた男は、さらに嬉しそうに語り続ける。

「いやはや、ISというのは本当に魅力的な兵器ですね。ちなみに、僕以外の幹部は頭が固くて困るんですよ。有用性にまったく目を向けようとしない。あの考えこそナンセンスです。今の幹部連中は、ISの完全な隔離を目的としていますからね」

「――それで。私には“表向き”、亡国機業の計画に従事せよということか?」

「ええ、あくまで“表向き”ですがね。組織としての建前と、僕の本音は乖離しています。貴方への見返りは――巨万の富と繁栄をお約束しましょう。ただしそれは、貴方がこれまで築き上げてきた“本当の財産”を放棄することと同義です。要するにこういうことです――表では従順なふりをして、裏ではその数倍以上の利益を叩き出していただきたい」

 ヴァレール=デゥノアは、しばらく考え込むような素振りを見せたのち、覚悟を決めたように手を差し出してきた。

 男は楽しげに笑いながら、その手を握り返し、さらに言葉を重ねる。

「ああ、そうそう。確か貴方の娘さん、IS学園に通ってらっしゃいましたよね。秋口には、一度帰国させることをお勧めいたしますよ」

「意味がわからんな。なぜだ?」

「あそこ、ちょっと邪魔なんですよね。さっきお見せした反物質砲を、学園の文化祭の日に使用する予定でして」

 つまり――男の言っていることはこうだ。

 IS学園に、反物質砲を撃ち込む予定がある。学園は戦場になる。その前に娘を退避させておいた方がいい――と、助言しているのだ。

 だがヴァレールは、静かに笑い返した。

「かまわん。運が良ければ助かるだろう。なければ、それまでのことだ」

 

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