QCの記憶   作:qw4

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第10話

──警報の余韻がまだ空気に残る中、UMAの攻撃は止まらなかった。

 

実菜水は即座に判断した。

攻撃は無理、避けるしかない。

 

鋭い爪が視界を裂くたび、紙一重で身をひねり、床を滑り、弾丸のような連撃をかわしていく。

だが、それも限界だった。

 

「……っ!」

 

迫る一撃を完全には避けられず、実菜水は腕を差し出して防いだ。

骨が砕ける衝撃、焼けるような痛み。右腕が千切れ飛ぶ。 本来なら、ショック死してもおかしくないほどの激痛。

 

だが、極限状態のアドレナリンが、脳の痛覚を麻痺させていた。

 

そのおかげで、彼女の意識は途切れず――見てしまった。 UMAが間髪入れず、新足に狙いを変える瞬間を。

回避しようとするが、すでに腹の傷で動きが鈍っていた。

 

「ぐっ……!」

 

渾身の拳を腹に叩き込まれ、新足の身体は壁に叩きつけられる。石壁が軋むほどの衝撃。

血を吐き、膝をつく彼の姿に、実菜水の胸に絶望が広がった。

 

(もう……勝ち目はない……)

 

その瞬間。

 

カツン。

 

乾いた靴音。煙の向こうから影が現れる。

 

「——チッ、ひでえ有様だな」

 

兎真だった。

 

彼はためらいなくスモークを投げ、視界を封じる。

「実菜水、邪魔だ。一人で逃げろ」

 

「……そんなわけにはいきません!」

実菜水は震える声で返す。「あなた一人でどうにかできる相手じゃない。それに……新足さんを見捨てれば、確実に死にます!」

 

兎真はほんの僅かに目を伏せ、低く言った。

「……時間がない。頼む」

 

切ない響きに、実菜水の胸が痛む。だが、UMAの視線が煙の中で兎真を捕捉する。

迫る攻撃に、兎真はナイフで応じ、わずかな隙を生み出す。

 

実菜水は唇を噛み、「UMAが現れたことを報告します……だから、耐えてください」と告げて全力で離脱した。

 

残された兎真は、再びスモークを展開。銃を撃ち、手榴弾を転がす。

轟音。爆炎。だが煙が晴れたとき、そこに立つUMAの肉体にはかすり傷程度しか残っていない。しかも、その傷さえも瞬時に再生していた。

 

「……やっぱり怪物だな」

 

兎真が歯を食いしばったとき、背後から階段を駆け上がる音が響く。

 

「爆発音が聞こえたから来てみたら……これは大惨事だな」

 

三国だった。いつもの軽口ながら、声には鋭い緊張が混じる。

 

そのすぐ後ろに河凪も現れる。

「……まだ、生きていたのか」

低く、怒りを押し殺した声。新足の瀕死の姿を見て、銃口をUMAに向ける。

「新足をやったのは……お前か」

 

引き金を引く。しかし弾丸は効かない。

 

「兎真、一人じゃ無理だろ。俺も行く!」

 

三国が刀を振り下ろし、鋭い斬撃がUMAの肉体を裂いた。わずかだが血が散る。UMAは目を細め、距離を取る。

 

兎真、三国、河凪は背を合わせるように立ち位置を固めた。

「倒すのは無理だ。……だが、時間を稼ぐ。実菜水が援軍を呼んでる。生き残れ」

兎真の言葉に、全員が頷いた。

 

再びスモークが焚かれ、戦闘が続く。

兎真と三国が左右から攻め、河凪が援護射撃。UMAは冷笑しながら全てをはじく。

 

その最中、新足が意識を取り戻す。

「……リーダーなのに……すまない」

 

「大丈夫です。動かないで!」河凪が叫ぶが、新足は首を振る。

「もう……長くはもたん。だが俺の銃なら……」

 

新足は震える腕で銃を構え、UMAの片目を正確に撃ち抜いた。

UMAが苦悶の声を上げ、三国が斬撃を叩き込む。兎真も刃を突き立て、ようやくダメージを与える。

 

だが、UMAはすぐに新足を脅威と認識し、一気に迫った。

「させるかッ!」

 

河凪がUMAに飛びつき、その動きを封じる。

「新足のところには行かせない!」

 

必死の抵抗にUMAは苛立ち、叩き落とそうとするが、そこに三国が追撃。

「おいおい、こっちも見ろよ!」

 

刀が背中を裂き、兎真が体当たりを加える。UMAは一瞬バランスを崩し、大きく距離を取った。

 

「案外……俺たちだけでもやれるかもしれねえな」兎真が吐き捨てる。

「でも距離を取られたら攻撃できるのは新足だけだ」三国が冷静に返す。

 

睨み合いが続いたその時——。

 

銃声が響く。

 

「仲間を置いて逃げるなんて、できませんから」

 

その声とともに駆け寄る影。実菜水だった。

彼女は新しい銃を構え、素早く仲間に物資を渡す。

「組織に連絡しました。すぐに援軍が来ます。それまで……皆で生き残りましょう!」

 

再び希望の光が差した——その矢先。

 

「……もういい」

 

UMAが低く呟いた。

「今まで手加減していたが……もう面倒だ。皆殺しにしてやる」

 

その身体からあふれ出すオーラは、死を呼ぶ“絶望”そのものだった。

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