QCの記憶   作:qw4

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第2話

<兎真視点>

河凪がうずくまっている。その姿を一瞥し、俺は実菜水の方へ向かう。

 

彼女がこちらに気づいて、柔らかく声をかけてきた。

 

「兎真さん、戦闘お疲れ様です。怪我はないですか?」

 

「ない。」

 

即答する。こんな連中に傷を負わされるなんて、今までの鍛錬が無意味だったと言っているようなものだ。そう考えるだけで、無意識に拳を握っていた。

 

そこへ、三国と高橋が軽い足取りで近づいてくる。三国は笑いながらゴビーの頭をぶら下げていた。

 

「マジでこいつの顔面、キモいよな!」

 

まだ戦闘の興奮が残っているようで、そのまま俺に話しかけてくる。

 

「おい、兎真。そっちはどうだったかって――聞くまでもねぇか。」

 

そう言って、高橋の腕をぐいっと引く。

 

「こっちはこいつのおかげで楽勝だったわ。」

 

その言葉に実菜水がはっと思い出したように口元を手で押さえた。

 

「うっかりしていました。兎真さん、討伐確認のために頭部を切り取って荷台に入れてください。」

 

面倒な作業に、俺はわずかに肩をすくめる。

 

『はぁ、だりぃ……』

 

心の中でぼやきながら、近くにいた高橋に押しつけた。

 

「高橋、お前がやれ。こっちはもう一体分やってる。戦闘中、ほとんど動いてなかったんだからできるだろ。」

 

一瞬、何か言いたげな顔をしていたが、高橋は観念したようにうなずいた。

 

「わかりました。」

 

ナイフを片手に、ゴビーの死体へ向かっていく。しばらくして、頭部を荷台に入れて戻ってきた頃――新足が口を開いた。

 

「おい、兎真。河凪、なんであんな様子なんだ?」

 

「オケアニスの体にビビって動けなくなった。役に立たないって言ったら、あんな風になった。あんな奴、置いてったほうがいい。」

 

苛立ちが収まらず、何度か地面を蹴る。しかし新足は即答した。

 

「仲間なんだから、置いていくわけにはいかない。」

 

そう言って、河凪に声をかけながら歩み寄っていった。

 

(……河凪は俺が組織に誘ったが、どうやら向いてなかったか。ビビって動けないような奴なら、辞めさせるのも手かもしれない。)

 

皆が集まると、実菜水が口を開いた。

 

「この先に倉庫と思われる場所があります。移動しましょう。」

 

倉庫の中には鉄の棚が無造作に並び、弾薬箱や武器が雑に置かれている。床には薬莢が散らばり、靴が踏み潰す音が時折響いた。

 

それを見て、三国が目を輝かせた。

 

「上の奴らが言ってたんだ。現地で見つけた武器は自分のもんにしていいってな。」

 

そう言って、刀を素早く手に取った。

 

「俺はこれ、もらうぜ。」

 

それを見た新足が釘を刺す。

 

「武器はいいが、弾みたいな消耗品は皆で分けるって決まってたろ。」

 

説教を聞き流しながら、俺はこっそりナイフを数本、懐にしまう。

 

(やっぱ銃よりナイフのほうが性に合ってる。)

 

初期装備よりマシな武器を手に入れた俺たちは、戦力が少しは上がったはずだ。近くの箱の上に腰を下ろし、休憩を取る。

 

やがて索敵を終えた実菜水が、状況を説明する。

 

「先は二手に分かれています。右の部屋にはゴビーが3体。左の部屋には1体ですが、異常種かと。頭が2つ、腕が4本あります。」

 

「強い方はこっちか……なら、俺が行く。」

 

「兎真さん一人では危険です。誰かを連れて行くべきでは?」

 

少しムッとする。実力を疑われたようで、気分が悪い。だが、一人では確かに厳しいのもわかっていた。

 

視線を河凪にやる。先ほどまでの怯えた顔は消え、少しだけ闘志が宿っていた。

 

俺は彼の元へ歩き、言った。

 

「河凪も連れていく。」

 

驚いたような顔をしたが、彼は静かに、だがしっかりと答えた。

 

「僕も左に行く。」

 

その決意を見て、新足が全体を見渡した。

 

「高橋、残ってこの倉庫を守ってくれ。オケアニスが来たら連絡手段がなくなるしな。」

 

「了解です。どうせ僕、戦闘向きじゃないですし。ついでに倉庫の片付けでもしておきます。」

 

新足がうなずいた。

 

「荷台もここに置いていって構わない。」

 

(高橋はああ見えて、よく考えてる。自分を過小評価しすぎだが、あいつならここを守ってくれるはずだ。)

 

その後、右の部屋には三国・実菜水・新足が向かうことに決まる。

 

(新足の実力は折り紙付き。実菜水の観察力もあるし、大丈夫だろう。)

 

「皆さん、怪我はしないでくださいね。」

 

実菜水の言葉を背に、俺たちは動き出す。

 

河凪は、さっきまでとは違う顔をしていた。落ち着きのある目で、前を見ている。

 

「戦闘は俺がやる。お前は補助に回れ。」

 

そう言うと、河凪は小さく息を吸い、真っ直ぐに俺を見た。

 

「さっきは助けられましたが……僕も強くなりたいです。」

 

怯えていたあの河凪が、迷いのない目で言う。

 

「補助じゃなく、一緒に戦いたいです。」

 

一瞬、言葉が出なかった。

 

――やっぱり、組織に誘ったのは間違いじゃなかったな。

 

俺はわずかに口角を上げ、拳を軽く握った。

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