三国が物陰から、ふらつきながら立ち上がった。
それを見て、河凪が叫ぶ。
河凪「三国、力を貸してくれ! こいつには僕の攻撃は意味がないんだ!」
三国はボロボロの体を引きずりながら、うつむいたまま声を絞り出す。
三国「……俺には、こいつを倒すことはできない」
――刀で戦って、負けた。
あの敗北が、三国の心に深い無力感を刻みつけていた。
だが、河凪の声は真っ直ぐだった。
河凪「お前なら……刀が好きなお前なら、奴を斬れる!」
ブレードチャリに警戒しながらも、河凪の視線は三国に向けられていた。
その目には、確かな信頼が宿っている。
河凪「三国、お前、刀が好きだろ? よく言ってただろ。刀の形が好きで、斬る動きがかっこいいって。だったら信じてやれよ、自分の刀を。その刀で奴を斬れるって――お前なら、きっとできる」
――三国視点
俺は刀が好きだった。
切ったときの感触が気持ちよかった。昔話の侍が、ただただかっこよくて憧れた。
よく棒を借りて、型もないのに刀の振り方を真似した。楽しかった。
組織に入り、化け物を倒すよう命じられ、本物の刀と出会ったとき――運命だと思った。
ナイフじゃ物足りなかった。刀を持つだけで、戦いが楽しくなった。
チャリの腕を切ったとき、心の底から気持ちよかった。
でも……あいつには、通じなかった。俺の刀が斬れなかった。
だから、自分には無理だと、そう思った。
だけど――河凪は違った。俺の刀を信じてくれた。
できるはずだと、まっすぐ言ってくれた。
嬉しかった。自分でも無理だと思っていたのに。
理由なんて、わからない。でも、信じてみよう。
俺が刀で、こいつを斬るんだ――!
そのときだった。
体の奥で、何かが熱く、生まれた。
力が湧いてくる。今の俺なら……斬れる。
だが、ブレードチャリも体勢を立て直しつつある――!
河凪が動いた。
ナイフを握りしめ、一直線に奴へと駆け出す。
チャリはその動きを見ていたが、警戒はしていない。
自分の腕の方が長く、攻撃される前に叩き落とせる――そう思っていたのだ。
だが、河凪はナイフを振るわず、突如それをブレードチャリの顔に向かって投げつけた!
鋭利な刃が奴の顔をかすめる。奴が怯んだ――!
河凪の手には、もう武器はない。それでも、彼の足は止まらない。
そのまま地面に転がる“あるもの”を拾い上げる。
三国が以前の戦闘で切り落とした、チャリの腕――!
河凪はその腕を振りかざし、ブレードチャリの攻撃と激突させる!
腕と腕がぶつかり、鈍く湿った衝撃音が鳴り響く。
肉が潰れ、骨が軋む感触が、手に直接伝わってくる。
河凪の目には一切の迷いはない。ただ、勝利をつかむため、その一瞬にすべてを賭けていた。
三国はその姿を見て、確信する。
三国「……やれる!」
三国はブレードチャリの側面へと一気に回り込み――
ブレードチャリはそれに気づき、河凪のことを蹴り、距離を取らせて、その左手で三国の攻撃を止めようとするが
三国「――断閃」
渾身の力で、刀を振り抜いた。
その攻撃は――
左手を斬り、
さらに胴体を断ち割る。
巨大な体が断ち割られ、ブレードチャリが崩れ落ちる。
戦闘は、終わった。
遠くから、血まみれの高橋が歩いてくる。
彼は三国と河凪の姿を見て、苦笑いを浮かべた。
高橋「……二人とも、大丈夫ですか 少し、休憩しますか」
三国「そうだな」
三国は静かに頷き、その場に座り込んだ。
――しかし、その頃。
建物の外。闇の中を、何かが走っていた。
ただ、人を殺すために。