「あのぉ……メカニカスさん……?」
ユズ。
ゲーム開発部の部長であり、極度の人見知りとしても知られる生徒である。
彼女は一人でゲーム『TSC』の初代作品を作り上げた、れっきとした天才プログラマーだ。
その後、モモイやミドリ、アリスたちと出会い、ゲーム開発部は少しずつ賑やかになっていった。
しかし、部員が増えれば増えたで、部長には部長の仕事が生まれる。
そう。
生徒会やセミナーとの会議である。
「うぅ……」
モモイとミドリからは、無理をしなくてもいいと言われていた。
二人とも、ユズが人前で話すことをどれほど苦手としているか知っているからだ。
だが、それでもユズは部長である。
自分が作ったゲームを、自分が率いる部を、自分の手で守りたい。
ならば、苦手だからといって逃げ続けるわけにもいかない。
そう思い、勇気を振り絞って会議に出席しようとしていたユズだったが――。
「待てい、ユズよ!」
そこに待ったをかけた生徒がいた。
ゲーム開発部の仮部員。
そして、元の世界では異端の技術革新派メカニカスとして知られていた、アローである。
彼女はユズの悩みを聞くと、しばらく考え込んだ。
そして、何かを理解したように大きくうなずいた。
「なるほどのぉ……つまり、お主は人と目が合うから緊張するのじゃな?」
「えっ? あ、はい……」
「ならば、目を合わせずに会議へ出られるようにすればよい!」
「えっ?」
「なぁに、任せておけ!」
そう言い残すと、アローは工房に引きこもった。
そして数日後。
ユズのモモトークに、一件のメッセージが届いた。
『完成したから取りに来てほしい』
それだけだった。
添付画像も、説明もない。
ただ、完成したという事実だけが伝えられていた。
「な、何が完成したんだろう……?」
ユズは恐る恐る工房へと向かった。
この時点で、彼女はまだ知らなかった。
自分の人見知りを解決するために、銀河の戦場で数多の戦士を恐怖させた兵器の面影を持つ何かが生み出されてしまったことを。
「101010101……おお! ユズか! ドアを開けて入ってくれ!」
工房の扉越しに、ノイズじみた言葉が響いた。
メカニカス独自のバイナリ語。
機械神への祈りと機械言語が混ざり合ったような、一般人には到底理解できない会話形式である。
もっとも、彼女たちはその直後には普通の言葉に切り替えてくれるため、会話そのものに支障はない。
ないのだが。
「お、お邪魔します……」
ユズは恐る恐る扉を開けた。
そして。
「えぇっ!?」
目の前にあったものを見て、思わず声を上げた。
そこにいたのは――ロッカーだった。
ただし、普通のロッカーではない。
二本の脚で大地を踏みしめ、どっしりと安定した下半身を備え、左右の腕を頑丈な肩部機構で支えた、二足歩行型のロッカーだった。
そして、腕の先には三本指のマニピュレーター。
メカニカス大歓喜の、あの三本指である。
さらに、両腕の下部には重機関銃めいた兵器が据え付けられていた。
巨大な箱型の胴体。
分厚い装甲。
武器を支える無骨な腕。
そして、いかにも頑丈そうな二本の脚。
それは、ロッカーという家具の概念を、力任せに戦場へ引きずり出したような代物だった。
否。
もはや家具ですらない。
二足歩行する戦車。
それが、ユズの目の前に鎮座していた。
「101010101……カッカッカ! なかなか楽しい息抜きであったぞ! 久しぶりにドレッドノートの整備ができたわい!」
「えぇ……いや、私、こんなの希望してないですよ!?」
「そりゃそうじゃわい! 私が勝手に作ったんだからのぉ!」
「勝手に!?」
「本当なら、特別仕様のフルフェイスヘルメットでも作ってやろうと思っておったんじゃがな!」
「それでいいですよ!? もっと簡単に、サングラスとかでも……!」
「カッカッカ! 初対面のとき、私のドクロマスクが怖すぎて泣いておった娘が言うわい!」
「だ、だって……あれは誰だって泣くと思います……!」
ユズは思わず反論した。
「ロッカーを開けたら、目の前にドクロマスクがあったんですよ!? しかもゼロ距離で! 心臓が止まるかと思いました!」
「カッカッカ! すまんすまん! どうにも仲間内では価値観が同じになってしまうものでな!」
まったく悪びれていない。
むしろ、ユズの反応を楽しんでいる節さえあった。
「それで、どうじゃ? このロッカーノートは!」
「ロッカーノート……?」
ユズは改めて、目の前の巨大なロッカーを見上げた。
「うむ。ロッカーを見て思い出したんじゃ。私が現役だった頃に活躍しておったドレッドノートの内部構造が、こんな感じでのぉ。今は型式が違うらしいが……」
「えっ……それ、ゲームのネタにできそう……!」
先ほどまで怯えていたユズの目が、わずかに輝いた。
「あとで詳しく聞いてもいいですか?」
「カッカッカ! もちろんよいぞ!」
アローは満足げにうなずいた。
そして、次の瞬間。
「じゃが、まずはテストじゃ!」
「えっ」
「ほれ、これが操作手順じゃ! さっそく覚えてくりゃれ!」
「……私が操縦するんですか!? これを!?」
「そりゃそうじゃ。会議に参加するために作ったんじゃからの!」
「いやいやいや! そもそも、会議室に入れないですよ!?」
「問題ないぞい!」
アローは自信満々に言い切った。
そして、ユズの手に何かを押しつけた。
ゲーム機のコントローラーだった。
「……え?」
無線式のコントローラー。
ボタン配置も、スティックの位置も、どこか見慣れた家庭用ゲーム機のそれに似ている。
しかし、その通信先は明らかに目の前のロッカーノートだった。
「えぇ……ぽちっと」
ユズが恐る恐るBボタンを押した。
ガシュンッ!!
重々しい機械音が響いた。
次の瞬間、ロッカーノートの胴体部分が大きく開き、内部から何かが展開される。
ジェット機構が点火。
轟音とともに、ロッカー部分が本体から離脱した。
「えええええええっ!?」
ロッカーが飛んだ。
いや、正確にはロッカー部分が、ジェット推進によって本体から離脱したのである。
そのまま空中を滑るように移動し、ユズの目の前へと接近。
そして、着陸。
ガシャン。
「…………」
ユズはコントローラーを握ったまま固まった。
ロッカーが、自分の目の前に着陸していた。
「その昔、ドレッドノートに離脱機能を組み込もうとしたことがあってのぉ!」
アローは実に楽しそうに語り始めた。
「じゃが、当時は『聖なる機械への改造は邪教につながる』などと言われて中止になってしまったんじゃ!」
「は、はぁ……」
「まさか、ここで実現することになるとはのぉ! いやぁ、技術革新とは素晴らしい!」
「そ、そうですね……?」
「ちなみに、こいつにはタウ・エンパイアのドローン技術を参考にした反重力装置も組み込んでおる!」
「反重力装置!?」
「うむ! ジェットによる緊急離脱と、遠隔操作による制御系統の切り離しも可能じゃ!」
「制御系統の切り離し……?」
「つまり、万が一、操縦者が危険にさらされた場合でも、本体から離脱して逃げられるというわけじゃな!」
アローは誇らしげに胸を張った。
「さらに内部には食料、簡易寝具、通信機器、各種工具、応急処置用品まで詰め込んでおる! もはや一人でも移動できる、移動式シェルターのようなものじゃ!」
「なんですか、その無駄に高性能なロッカー!?」
「無駄とは何じゃ! 生存性は大事じゃぞ!」
「それはそうですけど!」
「反重力装置の浮遊高度は、現状では一メートルから二メートルほど。移動速度も人間の歩行程度しか出んがのぉ」
「十分すごいですよ!?」
「じゃが、それでは緊急離脱には足りん! そこでジェット装置を併用するわけじゃ!」
アローは指を一本立てた。
「こいつなら一気に五十メートルまで上昇できる! そして着陸時には反重力装置を自動起動! 衝撃を吸収して、ほぼノーダメージで着地できるんじゃ!」
「何と戦う想定なんですか、それ!?」
「そりゃ、もっぱら悪魔とか異星人とかじゃが?」
「そんな普通のことですが? みたいに言われましても!?」
「まあ、今のキヴォトスに来るのは、オルクの馬鹿か渾沌の馬鹿くらいじゃろ。大丈夫じゃ!」
「何も大丈夫じゃないですよぉ……!」
ユズは頭を抱えた。
人と目を合わせずに会議へ参加したい。
ただそれだけだったはずなのに。
どうして自分は、五十メートル上空へ緊急離脱できる移動式シェルターの試運転をさせられているのだろう。
しかも、その外見は元の世界の戦士たちにとって、悪夢そのものと言っても過言ではない。
だが、製作者は至って真面目だった。
「さあ、再ドッキングのテストじゃ!」
「まだあるんですか!?」
こうして、ユズのロッカーノート試運転が始まった。
試験場所は、ミレニアムの校庭。
広い場所で動作を確認するのは、機械の試験としてはごく普通の手順である。
問題があるとすれば、試験対象がロッカーの形をした二足歩行戦闘機械であることと。
それを操縦しているのが、人前に出るだけでも緊張してしまうゲーム開発部の部長であることくらいだろう。
「よ、よし……歩行テスト……」
ユズはコントローラーを握りしめた。
スティックを前に倒す。
ガシャン。
ガシャン。
ガシャン。
ロッカーノートが歩き出した。
足取りは重い。
だが、安定している。
脚部のサスペンションが衝撃を吸収し、胴体の姿勢制御装置が機体の傾きを補正する。
三本指のマニピュレーターは、試験用の標識を器用につかみ上げた。
左右の重機関銃は安全装置が作動しており、銃口は下向きに固定されている。
「お、おお……すごい……」
ユズは感心した。
操縦は思ったより簡単だった。
操作に対する反応もよく、機体の動きも予想以上に滑らかだ。
何より、これなら人と目を合わせずに移動できる。
機体の中に引きこもったまま、会議室へ向かうことだって可能かもしれない。
そう考えると、少しだけ希望が湧いてきた。
……その時だった。
『あ、あれ……?』
遠くから、誰かの声が聞こえた。
『あれって……』
『うそ……』
『なんで……?』
校庭の端にいた生徒たちが、ロッカーノートを見つめていた。
一人。
また一人。
顔から血の気が引いていく。
膝が震え、その場にへたり込む者がいた。
頭を抱えてうずくまる者がいた。
何かを思い出したかのように、叫び声を上げる者までいた。
「……あのー、アローさん」
『どうしたんじゃ、ユズ?』
「なんか、このロッカーノートを見るたびに倒れる生徒がどんどん増えていってるんですけど……」
『ふむ?』
アローは少し考え込んだ。
『集音マイクをそやつらに向けられるかの?』
「えっ、あ、はい……」
ユズは機体の頭部を操作し、集音マイクを生徒たちの方向へ向けた。
すると。
『こわいよー! くらいよー! せまいよー!』
『もうヘルブルートは見たくない! ドレッドノートはもっと見たくない!』
『皇帝陛下のためにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!』
「…………」
『…………』
しばしの沈黙。
かつての戦場。
鋼鉄の棺に閉じ込められた戦士。
内部から響く、機械と肉体の軋む音。
そして、かつて自分たちが見た悪夢。
それらを思い出した元40K世界の生徒たちが、ロッカーノートの姿に耐えられなくなっていたのだ。
一方、アローはその悲鳴を聞いて、しばらく黙り込んだ。
そして、感心したようにうなった。
「101010……さすがのワシも、トラウマを呼び起こすほどの完成度を誇るとは予想外じゃったわい」
「どうするんですか、これぇ!?」
ユズの悲鳴が、ミレニアムの校庭に響き渡った。
その日、ミレニアムの生徒たちは新たな教訓を得た。
技術的に優れていることと、誰もが安心して使えることは、必ずしも同じではない。
そして何より――。
ロッカーは、戦場に持ち込まない方がいい。
キャラ紹介
アローメカニカス
メカニカスの中でも異端であっ技術革新派のメカニカスだった彼は機械神の宗教論争の矢面に立たされた
それは聖なるドレッドノートに改造を施すということだった。
なお内容は
1ドレッドノートの生存能力をアップさせるための自爆&脱出機能
2狂化してしまった際の遠距離からの操作能力の停止
という真っ当な物であった。
そんな彼は機械神信仰からは最も遠い惑星でティラニッドに喰われるという最期を迎えた
彼の考えが実行されていればデスカンパニーや狂ったドレッドノートを誘導する者の生存性をアップさせてたことを理解しているのはベリサリウスカエルのみであったという。
キヴォトスに来た彼は思った、こここそ機械神の真なる技術革新をもたらしてくれるエデンであると。
そう感じた元彼、現彼女はエンジニア部のOBであり、今は趣味で人間サイズのボルトガンなどを製造している。
なおかなり銃も弾薬も高級なので一部のマリーン生徒しか買えてないのは彼女も悩みであるという。
最終目的はボルトガンを一般まで浸透させることと乗り込み式インヴェクターバトルスーツとカステラン・ロボットの普及にいそしんでいる
なんでもかんでも自爆機能とロマン嗜好な現エンジニア部には一部賛成一部反対という考えを持っている。
だが彼女も弾けるときはハジケる
それが彼女が深夜テンションで作り出したロッカーノートである
ロッカーノート
これを見た元40k宇宙の一部の者はトラウマを呼び起こされ、泣き叫んだり、突撃して破壊しようとしたり、逆に逃げ出したりした者がいた。
だが本兵器はその全てを無力化し、その兵器としての有効性をはじけさせたこととなる。
見た目は完全に ヴェネラブル・ドレッドノートであり、装着する兵器もそれに準じている。
本来装甲車や戦車に乗せるべき砲台を片腕にし、反対に両方とも兵器を持つための腕とすることも可能
重作業や工業、果てには兵器としても使えるベストセラーオートマタとなった。
たまに自己を確立し勝手に行動するヤツがいる