使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第11話 不審者同時出現 VSもーいーかい

「ハッ………!」

男は未知の場所で目を覚ました。

 

「ここは………えぇ?」

男は辺りを見回す。

 

「まさか…………まさか……日本じゃない?」

彼の視線には日本とは程遠い光景が広がっていた。

 

「そんな……どういう!」

男はたじろぎながら自身の頭を抑える。

そして俯き記憶を探り始める。

 

「オレは、確か…神を敬っていたら訳わかんねぇのに絡まれて………ん?」

 

「あれは…………」

男の眼前には本を持った子供がいた。

 

「カミサマだ!」

彼をその子供を蹴飛ばしこう叫ぶ。

「おい貴様!紙を粗末に扱うんじゃない!紙は神何だゾォー!」

 

その頃事務所内では

「タキガワちゃんとやってるかなぁ〜。そろそろ出来ないのかなぁー?」

キンノミヤは鍋をかき回しながら呟く。

 

「最低一ヶ月かかるって言ってたろ。ほら、言われた具材切っておいたぞ。」

ユーザは野菜を乗せたまな板をキンノミヤに渡す。

 

「おぉサンキュサンキュ。」

キンノミヤは鍋に野菜を投入しさらに煮込み始める。

 

キンセツの件から3日。

ユーザ達は暇を持て余していた。

 

「「いただきます。」」

ユーザとキンノミヤは2人だけで机に向かい合って昼ご飯を食べ、食事をとるという概念の無いハーズやザッドはその場で談笑していた。

 

「どーだ!オレの地元の料理の味噌汁ってやつだ。ホントは具もいっぱいあるし、スプーンで救って食べるもんじゃないんだけど…美味いだろ!」

キンノミヤはいつものように明るく振舞う。

 

そんな中ユーザは黙々と味噌汁を飲んでいた。

「そんな事よりキンノミヤ、お前に聞きたいことがある。」

「何だ?」

「お前さぁ、サムライじゃないよな。」

 

「!」

キンノミヤのスプーンが止まる。

そして静かにスプーンを持ち替え、ユーザの顔に突き立てる。

 

「グッ!」

ユーザはハーズはそれを受け止める。

そして、ハーズの腕力で椅子から引きずり出し、机に叩きつける。

 

「ハァ!」

ハーズが追撃を加えようとしたら、いつの間にか間合いから消えていた。

机には味噌汁の残骸だけが残っていた。

 

「食事の時ぐらい黙ってろよ。」

呆れながら低い声でキンノミヤが言う。

服には味噌汁のシミ1つ付いていない

 

「初めて会った時も、キンセツを切った時も、お前は妙な技を使っていた。お前は何なんだ?答え次第じゃ………分かるよな?」

少し考えたあと呟く。

「…答えられない…………殺らないのか?」

 

「今はな。」

 

しばらくの沈黙の後、2人は微笑みだす。

「食事の続きだな。」

そう言ってキンノミヤは器に汁を注ぎに鍋の方へ器を持っていく。

 

「これでいいの?」

「いいのだ。ツワモノ同士。何か感じ取ったものがあるのだろう。」

ザッドはハーズに静かに言う。

そんなこんなで食事は再会した。

 

その頃バカ医者のいる診療所では

 

「よーしズズズッ、診察もぐもぐ、始めるぞぉ。」

バカ医者豚骨ラーメンを食べながら診察していた。

 

「えぇ?」

足の骨を骨折した患者は戸惑う。

 

「この濃厚なスープがさぁ、紅生姜とマッチしててさぁ、糸みたいなバリカタがよく絡んでさぁ、キクラゲがいいアクセントでさぁ、ペチャクチャペチャクチャ」

 

ラーメンの話をしながら、バカ医者は診察を続ける。

「いや、豚骨よりも僕の骨の話してくださいよ。」

「え?カニバリズム?趣味悪いねぇ〜アハハハ!」

 

「は???」

患者の脳内がより疑問で埋め尽くされる。

「なぁ牛の骨で作った豚骨ラーメンって上手いのかな?ちょっとベッドで寝てる人にも聞いてみない?」

彼が指を刺したのは肺炎の隔離病棟だ。

 

「イヤ……ダメでしょ。」

患者が真っ当な事を言うと

「患者が医者に口答えするな!」

彼は突然キレ出す。

 

「いやするでしょこれに関しては!さっきからラーメンの話しかしてねぇし。」

バカ医者の態度に患者は言葉を荒くする。

 

「えぇ〜困ったなぁ……」

当のバカ医者本人は呑気に腕を組む。

 

「あっそういえば今日晴れだね!くもったらやーやーなの!」

そして突如手を打ちながら言い出す。

「何故に天気の話?!」

患者は怒りを通り越し呆れ果てる。

彼は今日も平常運転だった。

 

昼食を終えたなんでも本舗。

 

「よしじゃあ買い出し行ってくるから。」

ユーザはハーズとリンで食料の買い出しに向かった。

「キンノミヤの事、ホントにアレでいいの?」

 

ハーズは先程の昼食の際の出来事が腑に落ちなかった。

「あぁ、何というか……アレに関しちゃあんま掘り下げない方がいい気がするんだ。」

「掘り下げない?」

ユーザは声をひそめる。

 

「多分他言無用の暗殺術なんだ。だから触れない。それだけだよ。そんな事より買い物だ。セールの内に買っちまおー!」

そう言いながらユーザはリンのペダルを漕いで行く。

 

キンノミヤは事務所でザッドと留守番していた。

すると、入り口に設置したポストに手紙が届く。

「どれどれ………おっうちで働きたいのか。ウチも結構売れてきた?」

 

ユーザは市場に向かうが違和感を感じる。

「なんだこれ?」

市場に向かうにつれてどこか騒々しい雰囲気が漂っていた。

「なんか警備隊の数が馬鹿に多いんだけど………」

ハーズも呟く。

 

「もしかして………野次馬ってヤツ?オレッち達も混ざろーぜ?」

「いや混ざらないから!でも人が多過ぎて肝心の店に辿り着けないな………」

ユーザはリンから降りる。

 

(ホントになんなんだ…………)

ユーザは人々の視線が集まる方向を覗き込む。

 

「だーかーらー!紙に不敬な事をするな!神様なんだぞ!木造建築反対!オイ邪魔すんじゃねぇ!」

そこには市場の前では男が叫んでいて警備隊に取り押さえられていた。

 

「助けてーキチガイに襲われてまーす!紙にバカな真似する奴でーす!助けてくださーい!キチガイヤローいまーす!」

野次馬は皆化け物を見るような目で男を見ていた。

 

「アイツ紙の神とか言ってたな……」

「もしかして付喪神の事?」

ハーズと言い合っているとまた男が声を荒げる。

 

ユーザは不安ながら人混みの中から呼びかけてみた。

「おーい付喪神って知ってるか!」

「神?紙を知ってるのか!やっと話の通じるやつが出てきた!今行くぞー!」

 

彼らは男を事務所に連れて帰ることにした。

「大丈夫なの?」

ハーズは彼を連れていく事に反対していたが

 

「まぁなんかあったら追い出せばいいだろ。オレもアイツも強いし。」

「まぁそうだけどさぁ……」

(オレッち達、意外と武闘派チーム?)

 

ユーザらは道中、男から話を聞く事にした。

「ヘェ〜お前別の世界の人間なんだぁ。」

「オレの話信じるのか?」

男は目を剥く。

 

「まぁね。喋る籠手とかいるし。アナタは異世界じゃ何してんだ?」

「神を不敬に扱う馬鹿共を成敗したり、世界に警鐘を鳴らしていた。」

男が雄弁に語る様を見てユーザは驚く。

「凄いなぁ。異世界には神様がいるのか?」

 

「男はいるぞ。そこら中にな。例えるなら右にキリスト左にアマテラス状態だったな。」

「ちょっとよく分かんないけどまあそういう感じなんだな。」

そんな会話をしている内に事務所に辿り着く。

 

「ようこそ!なんでも本舗へ!」

事務所の外装を見て男は愕然とする。

「これは……和室…?という事は障子が……」

男はワナワナと震え始めた。

「貴様裏切ったなぁ……裏切ったなぁー!」

男はユーザに飛びかかる。

 

「何だいきなり!」

「貴様も同類ダァー!」

圧倒的な力でユーザを羽交締めの大勢で押し倒す。

「コイツ…腕力だけならオレより強い…異世界人って力強いのか?」

力は収まるどころか益々力を増す。

ハーズでも太刀打ち出来ない程に。

 

「流石にマズイ……キンノミヤー!こっち来い!」

目一杯叫ぶが返答が無い。

「おい聞いてんのか!キンノミヤー!」

「ユーザ!今不審者の対応に追われてそっち行けない!」

やっと帰ってきたら返事は期待できそうになかった。

 

「お前もか!」

事務所の中では小刀を持ってキンノミヤが構えていた。

対して相手は真剣を持っている。

相手はキンノミヤニに対してこういう。

「お主、かくれんぼは好きか?」

 

少し考えて彼は応える。

「好きじゃないなぁ。鬼ごっこの方が好きだ。てかよりによってオレにそれを聞くかぁ……まあいい。名を名乗れ。」

「拙者、隠れん坊将軍でござる。鬼ごっこをする不届きものは……」

「…………………」

「成敗!」

沈黙の末、不審者とのチャンバラが始まった。

 

その頃、診療所では、

「いーやーだ!絶対いく行くもん!」

バカ医者はユーザを追いかけて旅に出ようとしていた。

「やめなさい!あなたには、医者としての使命があるでしょう!」ラブクープが

「ユーザに追いつくんだ!」

「あぁまた始まりましたのね。発作が」

ツミはため息まじりに呟く。

 

「邪魔すんなぁ!」

ラブクープの静止を振り切ってバカ医者は飛び出す。

「えぇ!?」

本当に飛び出すとは思わなかったのだろう。

ラブクープはひどく驚いていた。

「追いかけますわよ。」

「えぇ。早急に捕まえますわ。」

2人はバカ医者を追いかけるが馬鹿力で逃げたため、見失ってしまった。

 

バカ医者はウォータスを流れる川よりも早く駆け抜けた。

「ユーザにぃ追いつくんだあ!」

でも彼はユーザのいる場所の真反対を走ってしまっていた。

彼はウォータスの中心地にを抜けてしまい、来たこともない郊外の街で力尽き果ててしまった。

 

「あれれー?すごいのが向こうから来たと思ったら、ここで力尽きちゃったー。」

「兄貴!クリゴといた時の記憶でコイツみたことある!ウォータスで有名なバカ医者だ。」

「へぇー面白そうだねー。」

チェンジャーはバカ医者の果てた顔を覗き込み、ほくそ笑む。

ある意味最恐の不審者に声をかけられてしまった。

 

「んむ〜…ガリガリ君じゃない……」

バカ医者は布団代わりに被せられているのチェンジャーの上着を噛みながら寝ていた。

「うーん…マズイよぉ〜…コレマズイよぉ…ってええ!何!えっどういう…えっ?何!ココドコ!?」

 

「起きたかい。意外と長かったねえー。」

彼の目の前にはチェンジャーが座っていた。

「誰?ってか生臭っ!なんだこの服は!ダイヤモンドより臭い!」

バカ医者は余りの臭さに目が覚める。

「ダイヤモンドの匂いって何ー?」

バカ医者はチェンジャーを見るなり

「それに汚い!焼き魚食べた時の皿より汚い!」

「……どういう事?」

 

「そんな事どうでもいいから、こっち来い!風呂屋で体と服洗ってやる!」

「いいよ水浴びで済むから。」

バカ医者はチェンジャーの肩を掴み、風呂屋に連れて行こうとする。

すると突然、神社のバックパックから何かが飛び出す。出てきたのはクランボだった。

「チェンジャー様。ここはこのお方の言うことに従ったほうが良いと思われます。現在のチェンジャー様の衛生状態ははっきりって最悪そのものですから。」

クランボは従うように促す。

「ほうら付喪神も言ってる。行くぞ。」

(この人、付喪神を知ってる?)

 

その頃事務所ではユーザ達が不審者と戦っていた。

ユーザはカミ男の圧倒的な腕力でねじ伏されていた。

「ヤバい…ホントに死ぬ、リン!轢き逃げアタックだ!」

「ガッテン承知!」

リンは少し離れて助走をつける。

そして猛スピードでカミ男の背中にぶつかっていく。

「グハァ!」

カミ男は派手に吹っ飛び、道の真ん中に放り出される。

「やったぜ!」

 

その頃事務所の中では鍔迫り合いが繰り広げられていた。

「フゥン!」

隠れん坊将軍が太刀を払うと、キンノミヤはシノギで刃を受け止め、体を半身にして避ける。

そして、身をかがませ腹に刃を突き立てる

「ハッ!」

将軍は咄嗟に腕を時計回りに回転させ、キンノミヤノを腕を振り払う。

小刀は弾かれて、手を離れる。

その隙を逃さず、居合を繰り出す。

 

「……ッ!」

室内から他人の気配は完全に消えていた。

ただかくれん坊将軍の鼓動だけが響いている。

かくれん坊将軍は微笑しだす。

一息つくと

「もーいーかい。」

突然唱え出すが応答はない。

「もーいーかい。」

また応答はなかった。

 

「ならばこれなら…」

隠れん坊将軍は懐からお札を取り出す。

 

「これ燃やしてもーいーかい。」

「まーだだよ!!」

さらに小銭にも取り出して、

「これ折ってもーいーかい。」

「まーだだよ!!」

戸棚の奥がガタガタと揺れる

それを見て将軍はニンマリとしながら

「10秒以内にじゃあ殺してもーいーかい。」

室内を物色し始める。

 

(…………マズイ。不審者の洞察力を甘く見てたぜ。まさかオレが金が好きなことを知っていたとは。)

向こうの部屋の戸棚に隠れていたキンノミヤは必死に息をひそめる。

額からは大量の脂汗が滴っていた。

9、8、7、

足音が近づいてきた。

6、5、4、

戸を開けて部屋に入ってきた。

3、

足音が益々音量を増す。

2、

何も音がしなくなった。

1、

戸棚から光が漏れ出す。

「見いつけ」

 

「秘技、キャッチ&リリース!」

将軍の服に針が刺さり、そのまま糸が針を引っ張っていく。

取ろうともがくが体勢を崩し、刀も落としてそのまま引きずられる。

 

「フハハハハハ!干潮の如く静けさを持つ我には、流石のお前も気づかなかったようだな!」

ザッドは上機嫌で糸を巻いて引き上げる。

そして体をのけぞらせその反動で、将軍を投げ飛ばす。

将軍は向こうの部屋まで吹っ飛んで行く。

 

「ナイス!」

戸棚から出てきたキンノミヤの手にはさっき落とした刀が握られていた。

そして刀を飛んできた将軍目掛けて振り抜く。

 

「みっ峰打ち?」

「掃除大変だからな。」

うつ伏せに倒れ込み気絶する。

キンノミヤの勝利だ。

「はぁ。掃除が大変だ。」

随分と慣れた口調でボヤく。

 

「キンノミヤー!大丈夫だったか。って何だこれ!」中に入ってユーザたちは驚く。

「お前こそ、」

「あぁ、あの後ウチのチラシを配ったら急に喜びだと行きやがった。変なやつだったぜ。」

「……何だったんだろうなアイツ。」

「……考えるだけ無駄だ。」

 

彼らの行動原理などという物はない。

だからこそ不審者は不審者なのかもしれない。

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