使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第15話 もうやだこのめんどくせぇ世界

「?あれ?」

 タキガワが驚いている内にキンセツは遥か空中に浮いていた。

刃を地面側に向け、急降下していた。

「その髪、切らせてもらんヨォ!」

チェンジャーに狙いを定めて。

 

「カミサマは何処へぇー!」

その頃診療所を抜け出した不審者のカミカミ男は意味も無く街をひた走っていた。

彼の着ているシャツにはリンの轢き逃げアタックで付けられたタイヤ痕が痛々しく、色濃く残っていた。

「どぉこぉなぁのどーこー!」

みっともない走りでは他の追随を許さないカミカミ男の頭上に何かが落ちてきた。

 

「「痛っ」」

悲鳴は男だけでなく空中からの物体からも聞こえた。

 

物体はそのまま男の頭を跳ねて地面を転がり滑り、やがて止まった。

その時の反動でチリンと音が鳴る。

「はっ?」

カミカミ男は呆然とするしかなかった。

 

一方物体は1人でブツブツと喋り込んでいた。

「ったくよぉーあのクソ神!大体こういうのってさぁ、レベル999だのSSSランクだのチートスキルだの持った冒険者か貴族辺りになって悠々自適な異世界ライフとかじゃないの!?なんでベル?それも何故自転車の?解せぬ。理解できぬぅ!」

 

彼は鈴に転生した異世界人のようだ。

 

「マジで何でベル?何あのクソ神サイクリング趣味なの?なら自分の趣味押し付けるなっつーの!」

 

自転車のベルは癇癪を起こしていた。

 

「あ〜あ俺もステータスオープンとか言いたかった!ハーレム築いてスローライフしたかった!もーなんでぇこーなるの〜!」

 

彼の言葉でカミカミ男の脳内には超世界が繰り広げらていた。

 

(ヤツ転生とか言ってたな、オレも転生者だ。でもクソ神とか言ってやがる!どういう事だ!?オレはなんの前触れもなくこの世界に放り出された。そもそも神の事を悪く言うヤツは許せん!多分アイツも前の世界にいた、紙に印刷やお絵描きなどと言う愚の骨頂とも言うべき不敬を働く闇の戦士のシンパだ、問い詰めてやろうふざけるな!)

 

転生者同士のイザコザが始まろうとしている中

 

一方チェンジャーは

「グゥッ!」

「ハサミは武器じゃないはずのになー?」

自分に向かってきたキンセツを掴み取り、握りしめていた。

バカ医者はその場で落とされたがまだ目覚めなかった。

 

「キミが何したいのか知らないけど来たからには相応の態度があると思うからさー。」

「ギャァ!」

チェンジャーはキンセツを握る手に力を込め始める。やがてキンセツからミシミシと音が鳴り始める。

 

「それに…」

そして何を思ったかバックパックから剣を取り出しタキガワに刃を向け始める。

「キミは持ち主でしょ?だからさぁー。」

剣を構えながら真っ直ぐタキガワを見据えるその表情に偽りは無かった。

 

対してタキガワは

「………なるほど。そういう…………人間なんですね。ならば」

懐から隠し刃を取り出し初める。

チェンジャーとタキガワは落ち着きながらも目をギラつかせ相手を見据える。

チェンジャーが先に刃を振り下ろす。

だが、

「チェンジャー様、ハサミば武器ではありません。ですからこの勝負。直ちに取りやめていただきたい。」

 

「!?」

クランボが自らの肉体でチェンジャーの攻撃を遮ったのだ。

それを聞いてチェンジャーは目を見張る。

「チェンジャー様にはこれ以上、無益な殺傷は謹んでいただきたい訳です。それが()()()()()()となると言ったはずです。」

 

それを聞きチェンジャーは口をポカンと開き何かを思い出したかの様な口調で

「そう。じゃあ辞めにしようかー。これ返すよー。」

何事も無かったかのように彼は剣を片付けキンセツを返す。

チェンジャー以外は誰も会話の意味を理解できなかった。

 

「は?はぁ……」

拍子抜けした表情でタキガワはキンセツを受け取る。

「じゃあ診療所を目指そうー!」

チェンジャーは何事も無かったかの様に言うがタキガワはその変わりように着いていけなかった。

「いやなんの時間だったんですか今の!?あぁーキンセツ!そもそも何でこんな事したんだ!」

タキガワは訳が分からないままキンセツに説明を求めた。

 

するとキンセツは

「あんな綺麗で長い髪、切る以外いないでしょ?見た途端興奮しちゃったよ。失敬失敬。」

彼の口調はやや興奮気味だったが前のキンセツにあった暑苦しい雰囲気は取れていた。

むしろどこかおちゃらけているがどこかスカした雰囲気も待ち合わせる、似て非なる性格に生まれ変わっていた。

 

一同は首を傾げる。ツミ以外は。

「いやそういう事を聞いてるんじゃでは無くてだな…」

「確かにそう思いますわ!」

「だよねだよね!」

「はえ?」

 

「えぇ!チェンジャーさんは少し思考が読み取れない所が怖いですが、あの顔と髪は間違いなく光る原石ですわ。」

ツミが早口になり、キンセツに語りかける。

キンセツもツミの言葉に大きく頷く。

「うんうん。藤色っていう独特な髪色に負けてないんだよな顔が。それでさ…」

その後キンセツとツミはチェンジャー改造計画談義に花を咲かせ始める。

 

当の本人は

「どっどういう事ー?」

チェンジャーは乗り気どころの話では無く、そもそも着いて行けていなかった。

「まっ…まぁ髪は切った方がいいとオイラは思うよ。そんな長いと前も見にくいだろうし。」

ナギの言葉にクランボも同意する。

「確かに、チェンジャー様の髪が戦いや普段の生活において不必要に長いのは否定できません。まあここは従えばいいでしょう。」

「わかったー。」

チェンジャー達は一応否定はしないが肯定もしない様子でことの成り行きを見守っていた。

 

(なっ何で貴方達が見てんの?)

タキガワは心の中で呟く。

 

因みにバカ医者は未だに目を覚まさなかった。

「とにかくどうするかは中に入って決めますわよキンセツさん。」

「あぁ、OK!」

タキガワはもう着いて行けなかった。

その場で、立ち尽くす事しか出来なかった。

 

(ユーザさん、キンノミヤ様、助けて!)

 

その頃、カミカミ男と雅之の転生者2人組は

「あぁーなるほどね?……つまり紙を神様だと思ってたら天罰がくだって転生したと。」

雅之は男の言葉を聞いて一つの確信に辿り着く。

(あぁーなるほどね?コイツ完全に頭イッチャッテル系ね。関わっちゃいけない系の奴なのね。なんでよりによってこんなのと絡んじゃったの不幸レベル高過ぎねオレ?)

そして雅之は自分の不運さを嘆いていた。

「お前も日本人何だろ?どういう経緯でココに?」

 

(コイツに日本人だの何だの言われたくねぇ……)

雅之はそんな事を思いながらも自分が転生するまでの経緯を正直に打ち明けた。

(まぁいっか。ウソついても仕方あるまいし。)

「ほほぅ。うだつの上がらないブラック企業勤めで満身創痍な状態で帰路に着いていたらトラックに跳ねられて転生したと。いや待てよ会社員だと!やはり神に仇なす闇のシンパではないかぁ〜〜ベルになっていなければ殺していたぞ。」

 

(こんな平然と物騒な事を………うんやっぱおかしいわ。コイツ。)

「てかアンタそのタイヤ痕何?轢かれたの?」

雅之はずっとシャツのタイヤ痕が気になって仕方なかった。

「あぁ、神を紙という事を理解できないこの世界の住人にクロスバイクでやられたんだ。絶対許さん、今度会ったら神の裁きを与えねばならん。」

カミカミ男は拳を掲げ雄弁に語る。

「そっそう……なの?」

(え?ファンタジーかと思いきやクロスバイクとかある世界観?てか引かれてんのになんでピンピンしてんの?やっぱ異常者だ。こいつ)

 

「あぁアイツの事考えてたら何かイライラして来た。あの野郎を、ぶっ殺して堪らなくなってきた。おいベル!行くぞ。聖戦の時だ。」

カミカミ男の脳内にはユーザの顔が浮かんでいた。

 

(は?イチャモンの間違いだろ?何かこんなのに因縁つけられるとか不幸すぎね?人の事言えないけどさ。)

雅之は勝手にユーザの事を不憫に思っていた。

訳のわからない因縁を付けられたユーザは、むしろ起きてこない方がいっそ幸せかもしれない。

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