使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第23話 鏡よ鏡 チンピラとバカはど〜なる? 土手っ腹がバラッバラにゴボボボ

雅之は超常大陸側に。

カミカミ男はバブル側に。

それぞれ真反対の方向に飛んで行った。

 

カミカミ男の辞世の句は

「やっぱかみ?」

それを言い残した瞬間カミカミ男はその時点で世界で最も長く空中にいた屍となった。

そして屍はみるみる高度を下げていく。

そんな彼の墓場は

 

「なっなんで怒るんだよ!サバサバ系の性格じゃないのか!?」

何故かサバを怒らせてしまっていたバカ医者の真横だった。

彼はこの間ずっと海でバカカ《ばかぢから》を発動し大陸棚を泳ぎ回っていた。

それをバブルが手配し砂浜に呼び集められた騎手達が

奇異の目で見ていた。

 

「ホルモンバランスが乱れてるならこれを飲めばいいぞ。って薬がない!何で?何で?」

戸惑うバカ医者の真横に屍が飛び込んでくる。

バカ医者は屍をまだ生きていると勘違いして

「おい!アンタ!私の薬見なかったか!な!………?これってぇ……えっ死んでる。」

話しかけてしまったが一応医者なのですぐ気づいた。

 

「ぎゃああああええ!ナンデェー!?」

バカ医者は突然の見ず知らずの人間の告別式をさせられたので怖くなり水馬で火事場の馬鹿力を発動し泳いで逃げ始めた。

バカカと馬鹿力。

同音異義語の相乗効果でとんでもないスピードで水を掻き分け進んで行った。

 

その頃真反対方向の沖ではではイルカ馬車がついに地上へ顔を出す。

「やっと地上だ〜。なーんか眩しくない?」

「うむ。夕陽に照らされる波はとても美しい物だが異様に照りが強く感じるな。」

車内ではユーザ達が上陸を待っていた。

「まぁオレ達ずっと海底にいて直射日光と無縁の場所にいたからな。ていうかもう夕方か。キンノミヤ、タキガワの所行くの明日でも良くないか?」

「ダメだダメだ!1週間しか猶予が無いんだ!」

「1週間()あるだろ?」

「やはり旅人の時間感覚はルーズ過ぎる……」

いつも通りの空気が流れている。

はずだった。

突然イルカが進路を変えたのだ。

 

「うおっ!なんだ一体!」

「うへっ!水上でも車ってクラッシュすん……!ギャアアアア!!」

リンが突然叫び声を上げる。

 

「このような狭い場所で叫ぶなリン。海のような広い心を、グフッ!」

ザッドがリンをたしなめようとして吹き出す。

 

「どうしたの?2人とも驚き………」

ハーズに至っては固まってしまった。

「何だ何だ一体何を見たんだよ…ってウソだろ!?」

ユーザは窓を見た瞬間、度肝を抜いた。

 

「何でバカ医者がココにいるんだよ!」

馬車にバカ医者が変な顔で張りついていたのだ。

 

「なんだコイツは?随分と阿呆面だな。」

キンノミヤは首を傾げ、そう告げた瞬間

 

「おい今アホっつったか?オォン!」

窓を突き破ってバカ医者が車内に入ってくる。

「バカとはいくらでも言ってもいいいさ。だが許さない。アホ。その2文字を言った者は絶対許さない!」

キンノミヤにバカ医者が殴り掛かるがユーザがその腕を捻り封じ込める。

「何だよ!もう訳分かんねぇよ。あっでもこの有耶無耶にまみれるとウォータスってか地上に戻ってきた感覚がすんなぁ〜。」

 

「ユーザァ!お前感覚麻痺してるぞ!?」

キンノミヤがすかさずツッコんだ。

「お前が言うな!」

ユーザがツッコミ返した。

 

その頃雅之はウォータスの郊外に落ちていた。

 

「イテテテ……なんだよもぉ〜あのチェンジャーとか言うヤツヤベェよ。何なの?異世界にもああ言うキチがいるの?もうヤダ……」

弱音を吐いていると突然後ろからこえが聞こえてくる。

「おっ何か見たこと無いものはっけ〜ん!」

「なんそれ。売れそう?」

「いや見たことない物だから分からん。でも持ってくか。」

(イヤイヤ見た事の無い落とし物を自分の物にしようとするお前らの思考が判らん!)

その声が聞こえた頃には雅之は手に収められていた。

 

「わっ!」

持ち上げられて雅之は思わず声が出てしまった。

「ワッ、チリチリ言ってる。コレ鈴じゃね?」

(えっ、うーわ……)

持ち上げた人物とその周りにいた取り巻きを見た途端雅之は心の中でため息を漏らす。

(1番嫌いなタイプ何だけど……)

何故なら彼らの醸し出す雰囲気が雅之が現世にいた時絶対近づきたくなかった人種であるチンピラに酷似していただ。

 

「アレ?なーんか声が聞こえてきたんだけど〜。」

「ジュウ!コレもしかして前拾った()()()の仲間じゃね?」

「あっ聞いたことある!付喪神ってヤツでしょ〜!」

チンピラの1人が懐から鏡を取り出す。

 

(なんか盛り上がり始めたよなんか……ん?今付喪神って……)

鏡は懐から出てきてから眠そうな声で喋り出す。

「ん〜?ペキオラにな〜んかよ〜うですかぁ〜?」

 

馬車は海上で右往左往に暴れ回る。

アホと罵られたバカ医者は馬車の中で暴れるのと連動してだ。

 

「ちょっと待て、一回落ち着けバカ!」

「追いついていられるか〜」

「追いつくじゃない落ち着くだ!」

彼の思考回路は暴走して尚健在だった。

「もうゴールしてんだよ!阿呆面になぁ!」

バカ医者はそう言ってキンノミヤを目標に変えて飛びかかる。

「こっちくんなよ、ユーザ追い出せ!」

「今やってる!でもコイツ……妙に力が強い!」

バカ医者は単純な腕力だけなら怪人を倒せるユーザやそのユーザと渡り合えるキンノミヤよりも強かった。

「ねぇユーザ!水が……漏れ出してる!」

 

「ウソだろー?!」

彼が車内で暴れるせいで馬車に穴が空き水が漏れ出してしまったのだ。

「コレじゃバカ医者じゃなくて破壊者ってか?つまらなすぎてベル生えるわwww」

リンがツボにハマって笑い出し車内の揺れが増すにつれて漏れ出す水の量も増えていた。

 

「んなアホなこと言ってる場合かぁー!」

ユーザがツッコんでいる間にも水はどんどん流れ込んでいた。

 

その頃、雅之は肝を冷やしていた。

「お前なんか面白い事やれよ!」

「……でっ出来るわけないだろ?オレ付喪神じゃねぇし。」

「おかしいだろ!?拾ってやったのにその言い草はどうなんだよアァン!この鏡は一芸出せたぞ!」

(わっけわかんねぇよ!?アイツはアイツ。オレはオレだろ。こういう変な怒り方すっからチンピラは嫌いなんだよ!)

雅之の独白が加速すると同時にチンピラ達の怒りもエスカレートしていく。

 

「オン?何黙りこくってんだよテメェよぉ?黙っていいかなんて一言も言ってねぇだろぅよ!」

男は雅之を放り投げる。

「痛っ!」

 

硬い地面に放り投げられた衝撃と痛みで雅之は思わず

声を出してしまう。

その瞬間先程のチンピラ男がやってきて開口一番

「オメェ何人様の許可もなく喋ってんだゴラァ!鈴のくせに人間様をおちょくるのもいい加減にしやがれ!」

「うん、マジ舐めてるわコイツ。」

「もしもコイツ人間だったら首無くなってたぜ。」

男の理不尽極まりない言い掛かりにチンピラの取り巻きが次々と賛同する。

 

(んえ〜〜〜〜!?!?なんなんコイツ?自分で喋ってておかしいと思わんの?異世界現実世界関係なくこういうホンットにバカっているんだねぇ関心関心。)

あまりにも理不尽な言動を繰り返す半グレのチンピラ達に雅之は怒りや呆れを通り越してもはや感嘆の域に入っていた。

 

「ハァーッ……。なーんでこーなっちまったんだ?」

雅之はため息混じりに呟く。

「うるせぇぞ!鈴の癖にしゃべりやがって!」

「ひいいっ!すいません!」

(ホントにふざけんなよ!何でキチガイの手を離れたと思ったら半グレに捕まってんだよ俺〜〜〜〜〜!)

やはり怒りに心を囚われていた。

 

そして海上では

 

「そうだよなそうだよな!アホとかいうやつだもんな〜。塩水風呂とかいう民間療法にハマるわけだな。………しっかり治療をしろ!………まず医者にかかれ!………ッフゥーー………。」

水が中に侵入し過ぎててまるで湯船のようになってしまっていた。

馬車の中でバカ医者が1人で盛り上がっていた。

「いや誰のせいでこうなってんだよ!てか1人で勝手に盛り上がって1人で勝手に疲れてんじゃねぇよ!」

 

「そういえばイルカはどうしてんの?」

ハーズがイルカの存在を思い出す。

「そうだ!イルカー!さっきから何してんだー?」

ユーザが大声で呼ぶが何も返答はない。

人間にイルカの言葉は分からないので当然といえば当然といえよう。

そこでザッドが一肌脱いだ。

「我が聞いてやろう。海の力を得た我は海の全てを見聞可能だからな。」

そう言うとザッドはイルカに向かって声を張って話しかける?

「おいそこの水棲哺乳類!」

「キュー?」

「おっ通じた!」

 

「あとほんの少しやる気を出して我らを運べ。己を信じろ。」

「キュウキュウキュ?」

イルカは少し懐疑的な声色で返す。

「案ずるな。怪獣を釣ることの出来た我が言うのだ心配はいらない。」

「キュッキュキュ!?」

怪獣を釣れると言った瞬間イルカの態度が変わった。

 

「それに海もお主らにエールを送るっているはずだ。海の声を特別に聴かせてやろう。」 

 「キュキュ?」

 

するとザッドは何やら念じ始めるするとイルカの脳波に変化が起こる。

 

「キュ…キュ…キュ…キューーーー!!」

するとイルカは目を虹色に輝かせ始め吠える。

 

「おい、なんか騒がしいぞ?」

「海とシンクロしたのだ。」

 

海とシンクロしたイルカの脳内には言葉が浮かび始めた。

それこそ正真正銘海の言葉だった。

イルカは耳を傾ける。

 

       『正直山登りたくね?』

 

(しょーーーーーーーもな。)

イルカは思考を停止し体が真っ白になる。

そして波に漂うだけの生物となってしまった。

 

「イルカァーー!!」

 

「なぁなぁユーザ?」

ユーザが振り向くとそこには怒りを完全に忘れていた。バカ医者がいた。

「もう何よ!」

ユーザが乱暴に聞くとバカ医者は

「ここでオシッコしても水の中ならバレへんか……」

「どうでもいいわーー!」

ユーザは海の真ん中で本気の怒りをぶつけた。

 

そして雅之は街の真ん中で恐怖を叫んでいた。

「キャアア!」

彼の前にいた怪人達がチンピラ達を貪っていたからだ。

 

「あっ……あぁ………。」

雅之は目の前の事態が理解出来なかった。

 

それは一瞬の事だった。

雅之に鏡の付喪神がチンピラ達に気づかれないように小声で話しかけてきた時である。

 

「アンタさぁ〜。大変だね〜?」

「へっ何!何なの!」

雅之は誰の声か分からず周りを見回す。

その慌てふためいた姿を見て、ペキオラの顔には思わず笑いが溢れる。

「ハハハッアンタちょっと面白いね〜。なんかぁ…他の付喪神と何か違う感じがするぅ〜。」

「いやだから!付喪神じゃ無いんだって!元人間なの!別の世界にいて鈴に転生した人間。」

 

雅之は馬鹿正直に打ち明ける。

だがペキオラはそれをを聞いてまるで子供のお話を聞くお母さんのような眼差しになる。

(いやっ何でだ!?この世界の人間は喋る物体信じれて転生の事信じれないのか!端から見りゃどっちアリエナイ話だろうが!)

雅之は心の中で悶える。

それが表情に出ていたらしく、

「……やっぱぁ、アンタ面白いよ〜。」

ペキオラはさらに彼の事を面白がっていた。

 

その時である。

 

「シュウラァー!」

「カミカミィ!」

「グゥフフフゥ!」

明らかに人ではない、人智を超えた鳴き声が一帯を駆け巡る。

「何だ何だ!」

「ホッホラ上!」

「えなにこれ!?」

チンピラ達も騒いでいた。

 

「グゥフゥ!」

鳴き声の主の1人がチンピラの1人を右肩を殴り飛ばす。

「ゴハァッ!」

攻撃を受けた男は上半身の右半分が無くなり体液が混ざり合ったものがあれば辺りに飛び散り完全に動かなかなったていた。

 

「なっ何だよ…コレ?」

チンピラ達は動けなかったが無理もない。

仲間の1人の命が一瞬で息絶えたのだから。

「あっあっあっ……あああぁあ!」

 

そんな中さっきのチンピラ男の彼女の半グレ女が目の前の怪人に殴りかかる。

が、

 

「ガゥア!」

怪人の攻撃を後ろから受け、彼女の腹に黒い大きな針のような物が刺さる。

「シュウラァシャラァ……」

突き刺したのは目の前にいるのとは別の怪人だった。

その後、彼女の腹にさらにトゲが突き刺ささる。怪人はそれを乱暴に引き抜く。

その衝撃で彼女の上半身と下半身は完全に真っ二つになってしまった。

もうそれを見ていた頃には彼らは完全に気絶していた。

 

そこからはあまり時間はかからなかった。

もう一匹の怪人もその場に現れ、チンピラ達は全員殺され、その肉体は怪人等が美味しく頂く事になった。

 

怪人が人肉に夢中になっている頃、雅之とペキオラは鈴と鏡だったので無事だったが少なくとも雅之は正気を保っては居られなかった。

(何なんだよアレ……そりゃあさ?異世界だもん。ああいうバケモノみたいなのと対峙する事もあるさ。そりゃ念頭に入れてたよ……でも怖い!怖すぎる。パッと見子供の頃見てた戦隊モノの着ぐるみみたいな感じなのに怖い!人肉食べるなんて普通に怖い!ゴリゴリSAN値削られて行くもん!オレ無理だわ…冒険者とか勇者に転生しても多分戦えない……ある意味鈴で正解だったかもしんない。)

心の独白が止まらない雅之をよそにペキオラは目の前に起きている状況が分かっているのか分かっていないのか微妙な表情をしていた。

それを見て雅之は

「おい何だよ表情?目の前で人死んだんだぞ?何々ヘラヘラしてんだよ!もうオレ無理だよぉぉ!」

ペキオラに対して怒鳴り出し、そのまま泣き出してしまった。

 

「カァミィ?」

肉を粗方貪り尽くした怪人はその声を聞いて混乱した。

周りに人の声がするのに人の匂いや気配を一切感じないからだ。

 

ペキオラはそれを見てすかさず自力で動き出し

「あ〜んもぉ〜怪人の前で声出しちゃあ駄目でしょお〜!」

雅之を鏡面に載せて地面を這うようにその場を去る。

 

それをある人物が見ていた。

「あれは……付喪神?」

 

その頃ユーザ達は砂浜に漂流物の如く倒れていた。

 

「ハァハァ……死ぬかと思った。」

「奇跡的に帰れたな……あの時ザッドがいなかったら、今頃海の藻屑に…」

 

「ヤバイヤバイヤバイ!ホンットに沈むって!」

「とにかく馬車から出よう!」

ユーザはバカ医者の開けた窓口をさらにこじ開け大きくし、そこから馬車へ脱出する。

 

「皆も早く!」

ユーザは手を伸ばし、キンノミヤ達を馬車から出す。

イルカにザッドは呼び掛ける。

 

「おい!ボサっとするな!バブルから救援を呼んでこい!」

イルカはハッと気を取り直し、猛スピードで海底を潜っていく。

 

「でもどんだけ早くたってせいぜい20分は掛かるぜ?それまでずっと水掻いてろってか!オレは泳げんぞゴボゴボ」

キンノミヤが沈んでいく。

「オイ上がれ!死ぬぞ!ハーズ、引き上げるぞ。」

ハーズに呼び掛けるが、

 

「ごめんユーザ、実はボクもゴボボボ」

ユーザの左腕からハーズの補助が消える。

 

「軽量化必須ガバババ」

金属製のリンも沈み始める。

 

「マジか!?クソーッ!」

死に物狂いで何とかキンノミヤとリンを引き上げるも人1人と自転車一台を担いでしかもハーズの補助無しで水の上で常時浮き続けるのはユーザでも負担が大きかった。

「クソッ……左腕が訛ってる、ハーズに頼り過ぎてたツケが回って来たな…」

 

その頃バカ医者は意外にも泳ぎが得意なので魚と戯れていた。

「アジだろお前味がいいからいつも美味しく頂いてるぞ!ワッそんな怒るなってぇ。」

能天気なバカ医者を見てユーザは怒鳴る。

「おいバカ!誰のせいでこうなったと思ってんだ!」

「水臭え事言うなよ。水入ってるのに。」

 

「訳わかんねぇ事言うなよ!」

「ん?私はお前の言ってる事いつも訳分かってないぞ!バカだし。」

 

「ハァ〜〜〜?マジでブッ飛ばすぞ!」

そういった瞬間、沈みかけたのでユーザは慌てて水をかく。

「えっ衝撃の事実に目から鱗ってなんないの!?海にいるのに」

 

「なるか!」

「ヘェ〜でも鰻の蒲焼きは美味しいから大丈夫だよね?これ言うとアナゴが怒るんだよ」

「お前はもう海の住人になれ…。」

 

そう言っている内にイルカがやってきた。

 

「キュー!」

イルカはシャチとシロイルカとシャークを連れてきた。

「もしかしてコイツらに助けられるのか!?」

 

コイツらに助けられたのである。

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