ユーザ達は水棲生物達に助けてもらいなんとか岸に上がることが出来た。
「それにしても何であんなヤツらが来たんだ?」
「どうやらあのイルカが起点を効かせた結果らしい……」
海の声が聞けるザッドが説明した。
「でももうオレクタクタだ…タキガワの所行くの明日にしようぜ。もう日も落ちてきてるし。」
ユーザが空を指差す。
そこには既に光だけを残し自分は床に入り始めている太陽があった。
「…そうだな。」
ユーザ達はひとまず事務所に戻り体を休めることにした。
だが彼らはいつもの道を歩く程の体力も残っていなかったので、浜辺で予め待機していた馬達に乗せてもらい事務所への帰路へ着いた。
「見えてきた!」
「あぁー久しぶりの空気だなユーザ!」
まるで昔からいたかのようにバカ医者が言う。
「お前がそれを言うのか………」
「お前は久しぶりどころか初めてだろうがバカ!」
ユーザは激しいツッコミを。
キンノミヤはボソりとツッコンだ。
キンノミヤが持っている事務所の鍵で扉を開ける。
「たっだいまー!ってオレッちは自転車だから外かよ……ちぇっ。」
リンが最速で入ったがすごすごと戻って行った。
その後ろ坂を見ながら、
「まっまぁ!リンはほっておいてオレ達は中に入ろう。」
ユーザ達は実に一ヶ月半ぶりに事務所の空気を吸う。
「はぁ戻ってきたぁ!」
ユーザとハーズは同じセリフを言いながら畳の床に寝転がる。
「いやーボクもここにここまで愛着が沸いてたなんて気づかなかったよ。」
「だよなぁこうやってここの空気を吸い込めばいつも通りのオレ達に元通………ん?ここって…こんなに埃ぽかったっけ?」
「後なんか生臭くない?」
ユーザとハーズは室内に違和感を感じた。
「人がいないのにホコリが発生するなんておかしいよな?」
「後この生臭さも気になるよね?」
「ぎゃあああ!」
奥の部屋にいるキンノミヤが悲鳴を上げる。
「何だ!何があったんだ!?」
ユーザが部屋に入るとキンノミヤが顔を真っ青にして何かを指差していた。
ユーザが指先の方向に視線を追いやるとそこには
「これは……金庫か?でも金が、」
「無いんだよ、無いんだよ!金が、ウォータスに来てからの予備の貯金130万カレンが……全部無い!全部、全部…… くうっうぅうっわぁぁぁうわぁわぁぁうわぁーわぁぁぁうわぁー!なぁぁああうんでぇぇえ!アアアアグウウゥゾオオオォォォオウウウアアァア!!」
キンノミヤさっきまで真っ青だった顔を今度は真っ赤にしてとてつもない怒声と嗚咽を吐き出しで泣き出した。
だが感情の昂りに対し涙はあまり出ていなかった。
どうやら感情の起伏に涙腺が追いついていないようだ。
「おっおぉ!キンノミヤ辛かったなぁ?それだけの金だったって事だろう?」
(でもこの金っておそらく金持ちを騙くらかして得た金何だよなぁ………)
だがそれは言わず、ユーザは一応キンノミヤを慰めようとした。
だがそれが逆に彼の逆鱗を買ってしまった。
「ふざけんな!お前に何が分かる!?この金にはなぁ色々詰まってんだよ!こびりついてんだよ!かかりまくってたの!」
キンノミヤに怒りの叫びに対しバカ医者が一言。
「そんな金は汚そうだから掃除しよう。」
「わかるか?わっかんねぇんだろどうせ!言葉が安いんだよテメェは!有り得なぁいだろこんなの!?」
ユーザの言葉により、変なスイッチが入ってしまったキンノミヤに対しバカ医者が一言。
「でも私はそんなお前の言葉が分からなぁいだよそうなの!?」
「ごね得が許される世の中じゃねぇんだよ。だから奪ったんだろうが?えぇ!何なんだよ貴様は!?それで義理人情換算してみぃ。」
バカ医者が一言。
「だいたい平均して500から900くらい?」
「もういいわ!キンノミヤはもうほっとこう!バカ医者にメンタルケアでもさせときゃいい。」
彼らの受け答えにユーザ達痺れを切らした。
「ボク達が留守の間に誰か忍び込んだのは明白だもんね。」
ユーザは付喪神達に指示を出す。
「ハーズはオレと一緒に二回を探索する。ザッドはオレと別の場所と一階を見てくれ。あぁ後、外にも痕跡がないかリンにも調べさせてやれ。何か異変だと思う物や一ヶ月前と違う物だったり本当に些細な異変でも何でもいいから見つけ次第直ぐに知らせるんだ。」
「うん。やろうユーザ!」
「うむ。直ちにリンの元へ向かう。」
ユーザと付喪神達は、事務所内の探索を開始した。
会話のドッヂボールは未だなお続いていた。
「本気を解って話してたことあるか?ジャスティスだの正義だの知らんがボケゴラァ!」
「薬剤師のヤ・ク・ザ〜!」
指を振りながらバカ医者が言う。
「そんなこともあろうかと130用意したんじゃんか!氷も溶けるわこんなんさぁ!」
「じゃあ130以上用意すれば良かったんじゃないか?」
正論を言い出してキンノミヤは少し落ち着く。
「まぁそれそうなんだけどさ。トノサマバッタの戯言以下だよ。ふさげんなってことなの要するに。」
彼の言動は落ち着きを取り戻しより支離滅裂になっていく。
そして涙が追いつき眼球から大量の涙が溢れ出し、床に水たまりを作る。
「雀の涙とかいうけどぉ、それがゴールじゃ無いんだよ?これ大企業でも出てくる常識。だからさぁ、アウアウウウウアア!」
そこから彼はただ涙を流すだけの生き物に成り果ててしまった。
バカ医者が一言。
「これじゃあ脱水症状待ったなしだな。水はどこだ〜」
バカ医者はそう言って別の入り口から外に出た。
ザッドはリンに事の成り行きを伝える。
「なるほどねぇ。でもオレッち達クタクタじゃんか。そんな状態で探すの?じゃあもうちっと人手がもうちょい欲しくない?」
「お前にしては随分とロジカルな……」
余りにも冷静な判断にザッドが驚く。
「そりゃオレッちもまともになんないとユーザが過労死しちまうよ。」
「まぁ確かにな………話を戻すぞ。となるとやはりタキガワに声を掛けるべきか?」
「そうだね。だから鍛治工房行ってみない?」
そんな会話を何故か聞いていたバカ医者がポツリと呟いた。
「鍛治工房?そういやキラッキラのハサミを診療所で見たな〜?」
「キラキラのハサミ?もしや、」
ザッドは変わりたいと言い放っていたハサミの付喪神の存在を思い出す。
ザッドは一応ユーザに相談する。
「キンセツだっけ?なんで診療所に……でも診療所に行けば!」
ユーザもすぐ理解してくれた。
「タキガワに会えるかも知れぬと言う事か?」
「ついでにキンノミヤの機嫌も治るかも!こうしちゃいられないっしょ!頭の回転より車輪の回転!ユーザ!タキガワのツテが分かったかもしんないから行ってもいい?」
「すぐ戻ってくるから!あとザッドは残れ!」
ユーザはリンを送り出し、リンは診療所に向かって走り出す。
怪人達は腹を空かせていた。
7、8人の人間を食べても彼らの胃袋では前菜にもならないようだ。
怪人の1人は近くの建物の屋根に飛び乗って辺りを見渡す。
「シュウラァ……?」
怪人遠方を見て何かに気づく。
怪人の目に溜まったのは荷台で何かを運ぼうとしている馬車が何台も走っていた。
馬車は怪人のいる道の真正面を通っていたが、あまりにも離れていたためまだ気づいていない。
「シュウラ、シュラ!」
怪人は他の2体に馬車を襲うように呼びかける。
「カミカミィ!」
「グゥフフフゥ!」
怪人達は二つ返事で了承し、怪人達は馬車を襲うと画策し始める。
「グゥファ!」
「うわあっ!」
怪人の1人が片足で車体を無理やり止める。
「カミィ!」
「シュラア!」
他の怪人達は車体の横に飛び付き、無理やり馬車を止める。
怪人達の出現に御者達は驚く。
「なんで怪人が!?ウォータスに!」
「そんな事いいから早く逃げろ!」
「すぐ警備隊に連絡だ!」
幸い怪人に襲われていない馬車も何台かいたのでその馬車達は直ちに走り去っていった。
「これでもくらえ!」
「おらぁ!」
襲われ取り残された馬車の御者達は怪人に何かを投げつける。
「シャア!?」
御者が投げつけた球状の物体は怪人の体に命中する。球状の物体には粘度の高い液体塗料が入っており、命中した瞬間、弾け液体が体に飛び散る。
「カァァミイ……カミィ!」
突然の出来事に興奮した怪人達はそのまま御者達を撲殺する。
そのまま怪人達は馬車の後ろについている荷台を無理やり引き離し、中身をほじくり出す。
すると中からは大量の海水と共に魚が出てきた。
「シュウラシュラア!」
「カァミカミィ!」
怪人達は喜び魚と死体、それから馬を平らげた。
それから怪人は味を占め、魚の入った馬車を探すため夜の闇に溶け込んだ。
生き残った馬車達は警備隊と水族館への連絡のため直走っていた。
彼らはラジャーア1の大きさを誇る水族館の飼育用の魚を運ぶ馬車だったのだ。
「診療所へレッツラゴーーー!」
そんな事が起きているとも艶知らず、ユーザとリンはすっかり日の落ちたウォータスの街を爆走していた。
が急ブレーキでとまった。
「ウォータスの診療所って………ドコ?」
リンはウォータスの診療所を知らなかったのだ。
「あっちだっけ?そっちだっけ?こっちだっけ?どっちだっけ?うーん…そうだあの医者連れてこ!癪だけど……仕方ない!」
思いついたリンは大急ぎで来た道を戻りバカ医者を乗っける。
リンの姿を見てバカ医者は
「わっなんだこれ!?栄養失調の……馬か?」
「馬じゃねーし元気100倍だよぉだ!はいこれ握って」
「なんて?肺から吸って?スゥーーー」
「吸ってじゃねえよ握ってだよバカ!」
何とかバカ医者にハンドルを握らせてリンはまた走り出す。
「ちょっくら診療所の場所教えてちょ。」
するとバカ医者は
「え!あっあっちを右に左折だ。」
「どうすりゃいいんだよ!」
「そう。じゃあ次はあっちとそっちに行ってくれ。」
「どっちとどっち?」
次第に怒りを通り越して呆れてくる。
「カーブを直進しろ!」
「あっそっすか……」
リンはバカ医者の突飛すぎる発言にもう混乱しきっていた。そして5分後……
「どうだ。完璧な案内だったろ?」
「こんなんで到着しちゃうのな〜ぜな〜ぜ?」
街一つ分は離れている診療所に僅か5分で辿り着いてしまった。
「たっだいま〜!」
朗々とした声でバカ医者は中に入ると同時に
「バカァ!どこで油を売ったらしたの!」
ラブクープが一直線に突撃してきて首に刃を突き立てる。
「だからそこ頸動脈だからそこ!死ぬってマジで!」
バカ医者が必死にもがきラブクープを首から引き剥がす。
「全く……貴方はどこまでも……うん?後ろのクロスバイクは……」
「え?ラブ姐さん何でココに?」
ラブクープと物見知りのリンはすぐに気づく。
「それはこちらのセリフですわ!なんで貴方も……ユーザさんは大丈夫でして?」
「えっええ?何の何の何!」
ラブクープは聞きたい事が多過ぎて思わずリンに詰め寄る。
するとそこに
「キンノミヤ様も無事なんですか!」
「はぁ?って、え〜〜と…」
リンは顔を見たことがあるが包帯に包まれたせいで中々誰なのかが浮かんで来なかった。
「あっタキガワです。包帯で分かりにくいかも知れませんが……。」
タキガワは顔面を包帯でぐるぐる巻きにされた状態で出てきた。
そこからバカ医者は治療に駆り出され、リン、ラブクープ、タキガワは話し合いを外で始めた。
何故ならリンは室内に入れないからだ。
まずリンがここ一ヶ月半の事の成り行きを説明した。
「………と言うわけでなんでもほん……じゃなくって!ハッピー・マテリアライズの職員は全員ライドエンプに行くことになってさ。いやホントはもっと極秘の情報なんだろうけどさ。」
リンは打ち明けてしまった。
「理解しましたが許容するのが難しい話ですね。そんな大変な事に巻き込まれているなんて……ユーザさんもそんな秘密のありそうな人には見えませんでしたし。」
タキガワは目を見据え真剣に聞いていた。
「てかタキガワはなんでそんなになっちゃったの?」
リンは包帯の件を尋ねる
「これは…………という事がありまして。」
「えぇ!あの不審者生きてたの!?そりゃ災難だったな。やっぱあの時完全に轢き殺して良かったかな?」
物騒な事をリンが言っていると
「いえ、その後チェンジャーさんが始末したと聞いたので……」
タキガワがちょこっと呟く。
「チェンジャー?」
(なんかユーザから聞いたことあるな…誰だっけ?)
「今チェンジャーさんは治療中ですわ。体中に治療しなくてはいけない大量のキズがそのままになっていて動けているのが奇跡なんですって。」
ラブクープが付け足した。
「ふーん。」