使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

25 / 79
第25話 闇に雫が垂れる時、役者と小道具は揃い上がる。

「………という事がありまして、」

「それは本当か!?」

「はい!現に何台か襲われましたし、これが証拠です。」

馬車のうち何台かは警備隊の事務所に連絡を入れていた。

馬車の騎手は証拠として、荷台の後ろに指を刺す。

そこには青色の液体が掛かっていた。

 

「これは?」

「間違いなく怪人の血液です。これが怪人の体から飛び散ったのを見ました。調べればすぐ出ると思います。」

「そうです。私も見ました。」

そう言いながら青い液体をポケットから取り出したガラス瓶に採取し警備隊員に押し付ける。

「そうですか。他に情報は?例えば、怪人ば何処に現れたとか今の位置情報とか。」

隊員は地図を広げながら尋ねる。

 

「突然飛びかかってきたので何処にいたかは分かりません。でもカラーボールを投げたので大体の位置は分かると思います。」

地図のある場所に指を指しながら騎手は言う。

隊員は地図の指差された場所に印を付けて少し考えながら

「分かりました、すぐに本部に報告だ!」

と言い足早に去っていった。

 

その頃当の怪人達は建物の屋根を飛び乗って移動していた。

彼らが追いかけていたのは水族館へ連絡のため向かっている馬車だ。

怪人達は馬車を目で捕らえ虎視眈々と狙っていた。

 

自分達も狙われてるとも知らずに。

 

「ふーん。」

診療所での話し合いは続いていた。

「あとそういえばあの男と付喪神を連れていましたわね。なんだか独特な形の鈴?で確か自分は付喪神じゃないと言ったらしたわ………いつの間にか居なくなってましたの。」

「そうなんだ…」

(自分を付喪神じゃないっ言い張るなんておかしいヤツ。一応ユーザ達にも報告しとくか…って報告!)

「いっけね!オレッちタキガワ連れてすぐもどらなきゃきゃいけなかったんだ!だからタキガワ載れ。」

 

「あっでもキンセツが」

タキガワがキンセツの事を気にかけると

「キンセツのことなんかいいよ。早く戻れってユーザに言われてんの!」

「でも事務所からここまで結構離れてないですか?」

彼の懸念をリンは気にせず進む。

 

「大丈夫。まずカーブを直進して」

「はい?」

「あっちとそっちに行って、」

「えぇ??」

「右に左折すれば」

「あぁ???」

 

「着いた!」

タキガワは上に乗ってハンドルを握っているだけでなすがままで事務所の前に来てしまっていた。

「いっイマイチ容量を得ないルートですね…誰の案内か大体察しが察しがつきますが。」

「それな。」

リンはユーザにタキガワの事を報告した。

「戻ったぞユーザ、タキガワもいるぞ!」

 

「おーそうか!さっそくだけどタキガワさん。キンノミヤの機嫌を治してくれねぇか。」

ユーザがタキガワをキンノミヤの金庫の前へ案内する。

そこには涙で床を尋常じゃない程に濡らしているキンノミヤがそこにいた。

 

「ユーザさん、キンノミヤ様!無事だったんですね。」

タキガワがユーザの元へ駆け寄る。

「まぁ、なんとか。そういえばライドエンプの件とかも」

「聞きました。協力させて頂きます。なのでキンノミヤ様をお借りします。」

 

 

「ユーザ!こっちへ来い!」

ザッドに呼ばれユーザはそちらへ向かいながら

「わかった!じゃそういう事で。」

と一言言って向かっていった。

ザッドがユーザを呼び出した場所には

「これを見ろ」

「これは……人?」

 

ザッドがいたのは2階の部屋だ。そこには男性が倒れていたのだ。

ユーザはその男を起こそうとする。

「おい起きろ!おいって!」

 

「う〜ん……んあぁ〜え?ああああ!」

起きるなら男暴れ出すがすかさずハーズが腹パンを食らわせて静止される。

 

「オイお前がやったのか?今までココで何しようとしてた。答えろ!答え次第じゃわかってるんだろなぁ!」

ユーザが男の胸ぐらを掴んで怒鳴ると男は泣きながらこう答える。

 

「えっえっと、これは…あの、ボクはやってません!やったのはボクの彼女です!彼女を止めて下さいお願いします!このままじゃあ、このままじゃ水族館が!」

男はパニックのあまり呂律が回っていなかった。

「落ち着いて!こちらも語気が荒くなってしまって……すいません。何があったんです?」

ユーザも掴み掛かったことに謝罪する。

その後男が語ったのはにわかには信じられない話だった。

 

その頃雅之はある場所にいた。

 

「アンタ達…付喪神だよな?」

男が雅之とペキオラを拾い上げる。

「よ〜くわかったねぇ。なんか訳アリなカンジ〜?」

「オレはクリゴ。色々あって付喪神と一緒にいる。」

「てやんでぇい!オレぁトースだ!なぁんだオメェは?ウォータスにゃまだ付喪神がいたのか?」

 

「私はペキオラ。まぁ正確にはキョクア出身だけどねぇ。」

「上野雅之です。まぁ…ホントは付喪神じゃないんだけど。」

 

「なんで付喪神が人間といないでこんな所にいたんだ?」

クリゴは雅之達が何故ここにいたのか、疑問を持っていた。

「付喪神って一定時間人間と一緒にいないと動けなくなる筈なんだが……」

「そうだそうだ!オレも威勢良くやれるのはクリゴといる時だけだぜべらぼうめぇ!」

 

彼らの指摘にペキオラは首を傾げる。

「え〜そうなの?ワタシはそんなことないけどなぁ〜」

「えっそうなのか?」

 

「うん。ワタシを含めキョクアの付喪神は割とそうだね。ま、付喪神にも色々あるんじゃな〜い?」

ペキオラはいつも通りのボンヤリとした態度で言ったのを見てクリゴは

 

「色々あるのか………そうだよな!人間だって色々いるしな。」

クリゴはそつなくその言葉を飲み込んだ。

「えっそんな簡単飲み込んじゃうの?聞く意味ある?」

雅之が思わず口に出してしまった途端

「なぁんだオメェ!クリゴはこの性格でずっとやってきてんだ。文句あっか?」

トースが食ってかかる。

「いやいや、無いです。すいません。」

(この水筒怖っ!水筒なのに怖っ!)

 

すると突然ペキオラが

「てゆうか今〜ウォータスに怪人がいるんだよねぇ〜。」

とさりげなくこぼした瞬間

「怪人が!ウォータスに!?それは本当か詳しく聞かせてくれっ!」

クリゴが身を目の色を変えて驚きだしペキオラの方を見て身を乗り出し怪人についての話を質問し出す。

「なっ、早速許容量を超えたのか?」

 

その後、クリゴは怪人の脅威について説明する。

「本来怪人は非常事態を除いて超常大陸にしか出現しないんだ。怪人は本来超常大陸の土壌や水で育った動植物を食べる事でしかでしか生きられない。それ以外のものを口に入れた瞬間死ぬはずだが……」

「でも普通に人間食べてピンピンしてたよ〜?」

 

「なっ?それは本当か?あり得ない……でもウソをついているようにも見えないし……そうなのかあ。その怪人は何をしていた?」

「な〜んか水槽の馬車を襲って魚も食べてたねぇ〜。」

「水槽の馬車?まさか!」

「クリゴ、こうしちゃられねぇぜ!」

ただでさえ慌てているクリゴとトースの声がさらに焦燥感を帯びたものになる。

 

「多分怪人の狙いは水族館だ!早く行って向かえ打たないと」

「えっ警備隊は〜?」

ペキオラが尋ねると

 

「キョクアは知らないがウォータスの警備隊は少なくともアテにならない。さっき言った通り怪人が来ないから怪人に向けた訓練もしてないからな。多分来ても足手纏いにしかならない。」

即座に警備隊の必要性を否定する

 

「じゃっじゃあアンタなんなのさ!」

雅之が心の声を漏らすとクリゴ

「オレは怪人ハンターだ!」

の一言で済ませた。

 

(ちょっとちょっと、怪人ハンターって何よ?てか()()()()()()()()()()()()非常事態じゃねぇのかよ!)

 

「「ユーザのトコの付喪神が来たってホント!」」

「はい、そうで」

「なんで言わなかったのかなー?」

「ワタシ達を抜いてお楽しみか?あ?」

チェンジャーとバカ医者はタキガワがいなくなってから状況を伝えられた。

 

「ちょっと近いですぅ〜!」

「ガリガリ君の新味とユーザの情報はいち早く私に伝えろって言ったろ!」

「これは許されない事だと思うよー?」

2人は女性職員に詰め寄り責める

「すっすいませ…んうっうぅ、」

彼女は涙を流してしまった。

 

「なんで謝る?」

「何故泣くのー?」

「全くレディを泣かせるんじゃありません」

バカ医者はラブクープに刺されながら、チェンジャーはツミに首を締め付けられながら理由を問うと彼女は

「ぐす、だってこんな変な人達に絡まれたら私も変な人って思われそうで…だから……ううぅう嫌だぁあああ!」

 

理由を聞いて2人ずっこけた。

「いっ一応ワタシ達同僚だぞ?」

「キミ、その精神性なら、たっ多分強くなれると思うよー?」

2人は思った以上に精神ダメージを受けていた。

 

「でもこうしちゃいられない!」

「ユーザのところへいこー!」

「イヤー!付喪神カモーンヌ!」

2人は付喪神達を連れてユーザ求め夜を駆ける。

 

「さぁーていろいろ聞かせてもらいましょうか?」

「海の男の選りすぐりの具材の海鮮丼だ。食え。」

 

事務所の空いている一室でユーザ達は取り調べをしていた。

 

「まず名前は?」

「アスカです。」

 

「じゃあ早速ですけどここにいた理由は?」

ユーザが問いかけるとアスカはゆっくりと話し初める。

「まずボクの話になるんですけど、実はボク『自分が肉を食べた瞬間魚に世界を支配されてしまう』という妄想にかかっていた時期があったんです。」

「おっおう。」

ユーザはそれを聞いた瞬間机をタンと叩いて空を仰ぎ目を瞑る。

 

「その時の記憶があまり定かでは無いんですがどうやら精肉店や牧場にしょっちゅう迷惑行為を働いていて街でも要注意人物扱いされていたらしいんです。」

「なるほど。また………そういう系か…………」

ユーザは深いため息を吐く。

 

「でもある時に不可抗力で肉を食べてしまったんです。するとその瞬間に、自分の考えていることが妄想だって気づいて、正気に戻れたんですよ!」

「そりゃ良かったですね。」

ぶっきらぼうに喜ぶ。

 

「ただ、」

アスカは次第に遠い目になる。

「ボクにはラメルという彼女がいるんですが彼女が今度はその妄想にかかってたんです。」

「何でよ?そうはならんだろ!」

ユーザは立ち上がり呆れる。

「その……どうやらボクが妄想にかかっている時彼女に妄想の内容を四六時中聞かせて洗脳紛いの行為を行っていたらしいんです。今思うと狂ってますよね。その時の記憶は無いんですが……」

「その記憶が無いっての……便利だな。」

「記憶改ざん疑惑のユーザがそれを言う?」

ハーズが呟くがユーザは無視した。

 

「で彼女が今度はおかしくなってしまって、『ここを人類の魚から救う防衛の為の戦線基地とする』言い出してココに勝手に住み始めたんです。」

「……はぁ、なるほど?」

 

「ボクはもちろん止めようとしたんですが彼女に鉄棒で殴られ一切の記憶無くて……」

「結局シラフになっても、記憶は無いんだな。」

 

「はい………ですんでラメルをどうか止めてください!勿論迷惑を掛けた分の金は全て払いますので!大切な彼女なんです!」

机に頭を押し付けてアスカは頼み込んだ。

 

「まあアンタの言い分は分かりましたよ。それじゃあ取り敢えず水族」

さっきまで普通に元気だったユーザはいきなり倒れた。

「えぇ、何で!?」

アスカは突然のことに驚く。

 

「ダメだ、反応がない」

「まぁ仕方ない。今日だけでいろいろあったからな。だが今倒れてもらっては困るな。せめて医者がいれば……」

 

「いるぞ。」

バカ医者がザッドの後ろで囁く。

 

「うわっいつの間に!」

「どうやら私の出番のようだな。ユーザにはこれを飲ませる。」

チェンジャーは顔を覗き込んで

「ふーんコレがユーザなんだー……何か普通の人間なんだね。」

 

「アレ、おたくどなた?」

「ボクは……」

チェンジャーが自己紹介しようとする瞬間

 

「あああー!んあまぁい!!何だこれ!舌がどげるぅ!」

ユーザが叫びながら起き上がりえずいていた。

「やっぱさクレーマー味のある薬ってないじゃん。でもさ私の調合技術なら、出来ちゃうんだよな〜〜コレが!やっぱこの辺天才のツラさ滲み出ちゃてるよねぇ?」

 

「それを言うならクレーマーじゃなくてクリーミーだろ!下手なショック療法よりも苦しいぞ!」

「でも下手なショック療法よりも?」

ユーザは心底嫌そうな顔で

「効くから余計イヤなんだよ!おかげさまでオレの体ピンピンだよ!ったくよぉ……」

「ハハハハハ!」

 

バカ医者とユーザはいつも通り軽快な掛け合いを繰り広げる。

そしてユーザはチェンジャーに向き直ると

「アンタは?」

名前を尋ねる。

「ボクはチェンジャー。キミにいつか会いたいと思ってたよー!」

チェンジャーは目を輝かせながら自己紹介する。

 

「あぁそりゃどうも。」

(コレがチェンジャー?コイツがクリゴさんをやったヤツ?なーんかロングヘア以外は特に特徴は無いな。オレより年下っぽいな。まぁなんかあったら、オレが何とかするか……)

 

「ってゆーかオレ達は水族館行かなきゃならないんだ。用があるならあとにしてくれないか?あぁその薬キンノミヤにも飲ましてくれ。」

 

「もう飲ました。ホレ見ろ。」

キンノミヤはあまりの衝撃に正気に戻っていた。

「この薬は味以外は完璧だ。……キミ、付喪神って興味ある?」

 

「なくは無…」

バカ医者が何も考えず安請け合いしそうなった直前

「いえいえなんの興味もありませんわ。」

「あくまで私達はビジネスパートナー以上でも以下でもありませんので。」

ツミとラブクープが断固拒否する。

「ふーん。」

(このアホはともかくこっちの付喪神はまだ食えない感じか……)

 

「それよりユーザ早く行くぞ!水族館で事件だぞ!海の男として見逃せない!」

ザッドはユーザを必死に急かす。

 

「そうだな。取り敢えずアスカさんの彼女をいち早く取り戻そう。」

 

「ワタシ達も行っていいか?」

医者から自分を指差して言うと、

「どうせダメっつっても来るだろ?ならいいよ。」

ユーザは止めるのを当に諦めていた。

 

こうしてクリゴと雅之達、3体の怪人、ハッピー・マテリアライズwithバカ医者チェンジャー、彼等は一つの場所に集まろうとしていた。

 

 

──超常大陸

あらゆる怪異が跋扈し蠢めくこの変の内に人間の言葉が一つ響いていた。

「オレなぁ、最近文末に『なぁ』つけるのハマってんだよなぁ。オカシイかなぁ?オカシクナイって言えよなぁ?」

1人の男が四つん這いの怪人に足を組み座りながら目の前に跪いている怪人の額をつま先でグリグリ擦りながら尋ねていた。

 

すると男の前に別の怪人が跪く。怪人は何やら呻き始める。

「ほうほう不届モノが3体もイルンダナァ?よく無いなぁー?制裁を加えないとなぁ!」

うめき声にしか聴こえない怪人の声の

意味をしっかり聴き取った男は立ち上がる。

 

「さぁて、久々の神事だ!あっ『なぁ』ってつけるの忘れた。」

 

紫と黒と金の髪を振り乱し、灰色の瞳孔を瞬かせながら男は歩き出す。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。