クリゴは怪人の近くにいた彼にさらに近づいて姿を見た。
そして確信を得た表情で
「お前、何でここにいる。本当にケガはないか?自分で……動けるか。」
一応状況確認の為に救助が必要か声を掛けるが、その声には力が籠っており、視線もやや睨んだものになっていた。
(前会った時より悪臭と小汚さが取れて髪もサラサラになってるように見えるが、あの目だ。間違いなくアイツの目だ……!)
「ボクは大丈夫だけどー?」
チェンジャーは本当にケガはしていなかった。
なのでいつもの様に何も考えずそう返答した。
だがそれがクリゴの怒りを買った。
「やはりその気の抜けた声……そして同じく抜けているようで獲物を虎視眈々と狙っている眼差し……。何も変わらんな。」
少し微笑しながら槍を構える。
「ふざけたマネしやがってこの盗人野郎!オレの大切なナタを返しやがれぇー!」
心の中に溜まっていた感情を槍を怪人ではなくチェンジャーに向けて襲いかかった。
「おっとっと!」
チェンジャーはやや慌ててながらもクランボで対応した。
「全くこんな近くにいたなんてな!オレに対する当てつけか?」
チェンジャーはクリゴの力任せな攻撃をいなしていく。
「当て付けー?まあ攻撃は当てるよう努力はしてるけどねー?」
「あぁイライラする。初めて会った時もそんなような事を言っていたな!」
(………コイツの攻撃、少し前に受けた記憶があるなー。でも前より明らかに重たい…でも何処かで受けたようなー?)
チェンジャーはクリゴの攻撃を捌きながらそんな事を考えていた。
そしてバックパックの中のナギは
(これ……オイラ出るタイミング完全見失ったよね?)
この間ウルオフカミずっとほったらかしだ。
「カミカァミ!」
さっきから放って置かれているのに嫌気が差したのか2人の間に割って入ってくる。
「邪魔だ!」
クリゴはそれを右足で蹴飛ばす。
そして
「いまお前と遊んでる暇は無い!」
槍を空に垂直に放り投げる。
そして右足で回し蹴りをして落ちてきた槍の柄の末端を蹴り込む。
槍は真っ直ぐ飛んでいきウルオフカミの胸の核に刺さり込む。
「ガアアァァー!」
体内の核が完全に破壊されたウルオフカミは断末魔をあげながら爆発四散した。
爆発の衝撃で飛んだ槍をクリゴがキャッチしたのとチェンジャーが
「あああー!」
と目を見開いて叫んだのはほぼ同時だった。
「?」
「そうか君か!そういえばクリゴなんて名前だったねぇー!あの綺麗な右回し蹴りで思い出したよ!」
「………」
チェンジャーの言葉をクリゴは黙って聞いていた。
「ボクが右足を砕いたキミかー治ってたんだねー。キミは初めてボクと会った時も同じ攻撃をナタでしていたねー。あぁあの時ナタ、ちゃんと持ってるよー。」
僅かにクリゴの眉が上がった。
チェンジャーはバックパックからナギを取り出す。
「うぇっ今!」
心の準備が出来てないナギは声が若干上擦っていた。
「えっえーと久しぶりクリゴ!あのそんな怖い顔しないで!オイラは元気だよ!あっ、あの後からチェンジャーはオイラに何にもしてないから。……ってか付喪神が増えたんだね。賑やかでしょ!付喪神がいるとね、ハハハ……」
ナギは何とか言葉を絞り出しながら自分は大丈夫だという事を必死に証明した。
その頃ユーザ達はバカ医者のいる方向と反対側に向かってしまっていた。彼らがいるのは第5班エリアだ。
因みに怪人達は
「フン。いくらもがこうがこの網は怪獣であっても破れぬ。大人しくしていろ。」
ザッドが作り出した網に閉じ込められていた。
「ったく……アイツらドコ行ったんだよ!」
ユーザ達は怪人に警戒しながらも2人を探していた。
「たーぶんラブクープちゃんとかツミちゃんいるし割と大丈夫なんじゃね?」
リンがひょうひょうとした調子で言い張る。
「そうか?うーんでもな……アイツは常軌を逸してるからな。いやでも……」
ユーザは不安になりながらもチェンジャーの事を思い浮かべる。
(クリゴさんがナタを奪われた時に言った名前と同じだがまさかな?とても強いようには見えなかったが……でもリンのスピードに普通に脚力で追いついてるんだよなぁ。バカ医者がアイツと一緒にいるならある程度は怪人に襲われないかも……)
そんな事を考えているうちに声をかけられる。
「キミ、こんな所にいたらダメじゃないか!早く戻らないか。」
「いやぁ今人探しをしてるんです。」
「人探し?ってキミは……」
隊員はアスカの顔を見るなり少し怪訝そうな顔を浮かべる。
「あっいやこの間は本当にすいません。いや実は……」
アスカは申し訳なさそうに事のあらましを説明した。
「じゃあアスカさんはもう生魚を外に放り出したり、肉屋に不買運動を呼びかけたりはしないんだね。」
「えっそんな事してたの!?確かにおかしかったとは聞いてたけどここまでとは…」
ユーザは
(って事は彼女さんもそういう感じなのか?はぁ〜またそういう頭おかしい系を相手にせねばならんのか!)
と重いため息を吐く。
「でもまだここにいるかいないのかさえも分からなくて……」
「分かりました。では探しますから皆さんは抜けて」
「総員集合!怪人の数が増した!」
「なっ……了解!ホントに戻れよ!」
必死の形相でユーザ達に発破をかけて隊員は走り去っていった。
「ユーザどうする!」
「さっきの隊員達を見てるとどうにも不安だ。行くしかないだろ。リン飛ばせ!」
「はい飛ばし一丁入りました〜!ギア70で参りまーす。」
リンは一気に加速していく。
「ちょい、いきなり70はヤバいって!40くらいにしろ危ねぇだろ!」
「いやオレッち偶数嫌いだからさ。」
だがあっという間に戦場には着いた。
「お前らはここに残れ!絶対アスカさんを守るんだ!」
ユーザはサドルから飛び降り、怪人の元へ突っ込んでいく。
「レドレイとウルオフカミが2体にサンシェが3体か……面倒なのばかりだ。」
ひとまずユーザは目の前のレドレイの顔に飛び膝蹴りを放つ。そして怯んだ所に左腕の鉄拳を打ち込む。
「ゼリャアー!」
「アアァァカァァ!」
レドレイは大きく吹き飛ばされる。
そして背後のレドレイにも回し蹴りを放とうとした瞬間。
「ヤべっ!」
「カァ!」
相手は右腕から何やら針を飛ばす。
間一髪の所で避けきれたが
その針は向こうに先程吹き飛ばしたレドレイに命中する。
「ッ!ガッガゥアアァア!………」
途端に苦しみ出したかと思いきや途端に息絶える。
「何あれ!」
「ヤツの毒針を喰らうと怪人でも呼吸困難と痙攣で死ぬ。人間に当たったら……分かるよな?」
そう言うユーザの目には焦りがあった。
「どうする?さっきみたいにはそう簡単にはいかねぇぞ。あぁ〜やっぱ槍があれば」
ユーザが槍を懇願した瞬間空から何かが降ってきた。
「えっ槍?」
空から槍が降ってきた。