使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第30話 水に流そう。

「怪人は人智を超えた力を持つ。だからこそ差を埋めるため、5年間訓練と対策を怠らなかった。なのに」

「………まさか我々の力はこの程度だったとは。」

 

怪人対策本部は自分達の無力さに打ちひしがれていた。

それもその筈。

警備隊は碌に怪人を倒せないまま水族館に怪人の侵入を許してしまったからだ。

そんな中彼らにさらに衝撃的なニュースが舞い込んでくる。

 

「こちら本部。水族館内に一般人が1人取り残されていた模様!」

椅子にもたれ掛かっていた現場長はそれを聞いて思わず耳を疑う。

「何っ!人が入れる場所は手当たり全て探したはずだ。どこにいたんだ!」

 

本部が呆然とする中さらに報告が続く。

「こちら第5班!その…」

「何だ、早く言え!」

 

戸惑いながらも連絡を伝える。

「……第4班エリアにいた一般人が突如第5班エリアに侵入。エリア内の怪人全6体を討伐……」

「はぁ……」

もはや驚愕する気力も無かった。

 

そして第5班エリアの一般人その人は

「ったくどんだけ包囲してたんだよ、ここから水族館の敷地って割と離れてるだろ!」

アスカと共にリンに跨り水族館へ向かっていた。

 

「怪人が中に……もしかしたらラメルが!そんな!」

ユーザの後ろにいたアスカは最悪の事態が頭をよぎり声を荒げる。

「落ち着いて!まだ中に居るかも決まった訳じゃないですから。もしかしたらさっきみたいに隊員が避難させてるかもしれないし。」

ユーザが必死に言葉をかけるが彼の落ち着きは収まらない。

 

「いやそれはないです。実は彼女は、ここの職員だから……」

「え?そうだったんですか!」

予想外の事実にユーザはハンドルが狂いそうになった。

「はい、ボクが狂ってた時に勝手に彼女にしたらしく……いやもちろん相思相愛ですよ!でも彼女が逆に狂ってしまって…多分職員しか知らない通路を使ったんだと思います。」

 

「なら尚更探すのに時間がかかりそうですね……」

 

アスカの勘は的中していた。

彼女のラメルは隊員も立ち入れない非常口から中に忍び込んでいた。

「ここは全て私が包囲した!魚共覚悟しやがれ!」

ラメルは水槽に向かって突っ込んでいく。

 

「とにかくそのナタは返してもらうぞ!」

「えー?前負けたのにそれないでしょー。」

そしてチェンジャーとクリゴはナギをかけて睨み合っていた。

「ちょっ…そんな、」

 

その頃バカ医者は付喪神と戯れていた。

「ウエノマサユキって長いし独特な名前だな!」

「まぁ、そうかも。」

 

「でお前は?」

「ワタシはペキオラ〜。よろしくね〜!」

ペキオラはこの様な状況にも関わらず一切取り乱す事なく平常運転で自己紹介する。

「わっワタシが目の前にいるぞ!それも顔だけ?!」

「あらら〜チミィ鏡知らないの〜?」

ペキオラの言葉も聞かずにバカ医者は鏡面に映った自分の顔に必死に話しかける。

「大丈夫か!なんでオマエそんな狭いとこにいんだ!ちゃんとご飯食べれてんのか!おい、何でおんなじ言葉喋ったんだよ?もしかしてて生き別れの双子か?もしくはアレか?ワンチャン三つ子か?」

 

「あっ、あら〜キミっ独特な感性をお持ちで。」

ペキオラでも彼の言動に少し表情が引きつりだす。

「それにしてもコイツバカみたいな顔してるのな。でもブサイクじゃないからオッケーだよねぇ〜!」

「そうだよねぇ〜!」

「「ねぇ〜!!」」

 

おわかりいただけただろうか。

 

「???鏡の中身が……!喋ったぁ!?」

「ウソだろ!?」

ペキオラと雅之は震え上がる。

 

「え?あんたにそういう能力があるとか?」

雅之が聞いてみるが、

「いやこんな能力しら〜ん!」

ペキオラは雅之の指摘を即座に否定する。

 

「ナンコレ?ちょいアンタたち?なんか心当たりないの?一緒にいるんでしょうよ〜!」

ペキオラは即座にツミとラブクープに尋ねてみるが2人は

「まあ……あのバカはルール無用ですし。」

「まともに付き合ってたらキリがありませんわ。私たちにできるのは起きた事象にどう対処するか。それだけですのよ?」

2人は分からない事を受け入れて既に構えていた。

 

「達観がすごい……」

「きっ肝が座ってるんだねぇ〜。」

雅之達はツミ達の姿勢に感心していた。

 

「何その目は?やるのー?」

その頃血眼でクリゴはチェンジャーを見つめていた。

「いや、只オレはナタを返して貰えればそれでいいんだ。それだけで。それだけの事で……いいのに………」

「随分と重い感情だねー。ボクには理解できないやー。」

 

「?お前には無いのか?何かを大切に思う心ってものが。」

クリゴが槍を振り下ろしクランボで受け止め、2人は近距離で顔を見合わせた状態で問う。

しかしその問いはチェンジャーには対して響かなかった。

「人は人。物は物。怪人は怪人。それはバカだろうが付喪神だろうが関係ない。まぁ……強いて言えば強い存在は好きになっちゃうかもなー。だからキミは嫌いじゃないよー?でもボクには勝てなかっただけでー。」

クリゴの槍を押す力が強まるのをクランボが察知し

「チェンジャー様。挑発はその辺りにしておきましょう。」

「え?ボクは気持ちのまま喋っただけだけどー。」

(不味い……チェンジャー様は全く気づいていない。)

 

「分かったよ!クリゴの兄貴!オイラ戻るよ!それでいいだろ?これでこの件は水に流そう!」

ナギが自分でこの場を収めようとするが

「キミは自分がボクのところに行く代わりにクリゴには手を出さない約束をしたの覚えてるかいー?」

突然チェンジャーがそんな事を言い出す。

「え、それってまさか」

「今ナギくんがクリゴの手に渡ったらクリゴはどうなるか分からないよー?」

そういうチェンジャーの目はクリゴに対する闘争心が溢れ出そうとしていた。

 

クランボは考えていた。

(さて……どうしたものか。今のチェンジャー様はクリゴ様をいつ殺してもおかしく無い。でもチェンジャーの将来を考えると殺傷は絶対させるわけにはいかない。何か……血を洗う事もなく闘争心を抑えられる方法は…)

クランボはふとバカ医者の方をみやる。

 

「ジャンケンポン!」

「鏡のお前やるな…」

「フッ…お前こそやるな…」

バカ医者2人はじゃんけんをしていた。

(これだ!)

 

「次私はチョキを出すぞ。」

「じゃあ次私はグーを出す。」

 

「ジャンケンポン!」

 

「えっなんで負けた!」

「よっしゃ勝ったぞー!」

 

「じゃあ……最初はパー!」

「何ぃ!最初にパーだとぉ!?」

2人はジャンケンに夢中だ。

 

(バカだ………)

クランボは目を背ける。

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