「ユッユーザ……専門外だが一応カウンセリングならいつでもやるぞ?」
「まっまぁ色々あるよねー?ボクに言えば何かスッキリするかもよー?」
(まさかここまでの感情を溜め込んでいたなんて……私が口を開けば火に油を注ぐ事になりそうですね……)
「分かったから、少し落ち着け。さっきの発言も取り消す。」
あまりユーザの興奮度合いにネイションを始めとしたその場の全員が引いていた。
(全く……そこまで言うほど追い詰められているのか?この精神状態を内に秘め怪人に立ち向かっていたとは……ん?)
ネイションはユーザから何か違和感を感じとった。
ユーザはまだ腹の虫が治っていないようだ
「おん、何見てんだよ?文句あっか?」
「いや?何でもない……」
ネイションはユーザに悟られないようユーザをじっくり観察し、その上で思考を巡らせる。
(……やはり気のせいではない。怒っているコイツから今まで感じなかった邪気を微かに感じる。まるで怪人のような。何故だ?やはりただ顔が似ているだけではないという事か………なっ!)
ネイションが色々と考えていると突然動きを止めて身震いし始める。
頭に血が昇っているユーザもネイションの様子に疑問を持つ。
「おい、どうしたんだよ?ネイション。……さっきから突然震えて。お前らも何か感じるか?」
後ろを振り向きバカ医者達にも同意を求めるが
「いや何も感じないぞ感じだぞ?」
「ボクも何にも感じ無いねー?」
「不味い伏せろ!」
ネイションがそう言った瞬間、3人の頭は無理矢理押し込められた
「なっ何だよ!説明し」
「とにかく従え!死ぬぞ!」
ネイションのそんな一言が聞こえた瞬間、周囲を照らす明かりが全て消える。
そしてユーザ達の近くに周囲に何かがやってきた来た足音がし、その後鈍い金属音とネイションの掛け声が聞こえたと思いきや何かが吹き飛ばされて地面に落ちる落下音がした。
その後また周囲が照らされる。
「何があったんだ!?」
ユーザは頭を抑える手を退けて立ち上がる。
手の正体はコウモリの怪人だった。
「えっプテラリーザだったのかよ!?」
ユーザが驚いていると目の前に槍を持っているネイションの姿が。
「そんなこと言ってる場合か?お前死ぬとこだったんだぞ!アレを見ろ。」
「うわぁ!何だアレ?」
ネイションに促された方向には一体の怪人の影があった。
だかその姿はどの怪人にも似ているが似ていない奇異な見た目だった。
体全体のベースはグフゴだが頭部はウルオフカミのような形状になっており、白目を向いている右腕にシュリプレットのハサミ、左腕にイエルの胴体が巻きついており胸にはサンシェの触腕、左足にはレドレイのヒレまとわりつき体の各部。
特に右足にはブブクラクの赤い甲羅が付いているという異形の怪人がそこにいた。
「シュイェクカァルルレクゥクゥ!」
「なんか色々混ざってるね……」
ハーズが思わず呟く
「生息している海域も深水も違う物達が雑多かつ一貫性もなく混ざっている。これは海への冒涜だ。」
ザッドがバッサリと切り捨てる。
「ルルレクゥクゥカァ!」
怪人がハサミを構えネイションに向かって襲いかかってきた。
「クッ!」
槍を持って攻撃を受け止める。
「フハハ、神への反逆か。受けて立とう!」
怪人が槍に気を取られている隙にネイションは腹にパンチを打ち込む。相手が少し怯んだところに左脇に刃を差し込む。
「そうぉれ!」
そのまま体を持ち上地面に叩きつけようとするが
「シエェェシュウ!」
胸の触腕がネイションの左足に絡みつけ足を持ち上げる。その反動で今度は自分が地面に立つ。そして
「ガアアミイシュゥルル!」
大口が彼の脇腹を捉える
(避けられない!)
ネイションが目を瞑った瞬間
「ガン!」
「オイ、神の力はそんなモンか?」
「ユーザお前……?」
まさか助けてくれるとは思わなくて気の抜けた声を出してしまう。
「このパンチはどうだ!」
「ゼリャア!」
ハーズの鉄拳を受け怪人は遠くに吹き飛ばされる。
そして宙を舞う怪人同速度でハーズが
「いくよー!」
クランボの一撃を背に当てて空高く怪人を上げる。
「行くぞザッド!」
「一本釣りキャスト!」
舞い上がる釣り糸は怪人の口を確かに捉える。
「落ちろぉ〜!」
そのままロッドを振り下ろす。
急降下する怪人の真下にはチェンジャーがバックパックを開けて待ち構えている。
(コイツら人間の癖にやるな………)
ネイションにとってユーザらの強さは誤算だった。
バックパックの中には多くの凶器が入っており完全に剣山状態。
上に掲げた瞬間多くの刃が穴を作り血の雨が降り注ぐ。
「ガアアァシュルアァ!」
呻く怪人をチェンジャーは蹴り飛ばす。
その先は崖で怪人は谷底に落下していった。
「これで良グハァ!」
チェンジャーの一言が突然書き消される。
「チェンジャー!?すぐ治療する!」
バカ医者が駆け寄る。
「これは……毒針!」
「バカ医者逃げろ!」
「逃げろってなんの事……うわああああ!!」
バカ医者の前にはさっき落ちたはずの怪人が立っていた。先ほどまでの傷も全て回復している。
「しぬしぬしぬしぬ!にすにすにすにす!」
バカ医者は猛ダッシュで逃げる。
さ行とな行が逆になるほどのパニックに陥っていた。
「シュルルクウゥュエイ!」
怪人はユーザとネイションの2人を見てニヤついている。
「おそらく奴等はウォータスにいた怪人の邪気が集まって誕生した融合怪人だ。よっぽどオレの事が嫌いらしい。」
ネイションは笑いながら言っているが額には脂汗が浮かんでいる。
「どうすんだコレ……オレ達2人でやるとか言わないよな。」
ユーザが恐る恐る尋ねる。
「……言ったらどうする。」
「祝勝祈願の神頼みだ。」
サッパリと言いきる。
「神に祈願するのか………」
「冗談はこの辺にしてマジでどうするんだ?オレ怪人に懐かれるからオレ達2人だけじゃさっきみたいな誘導作戦は無理だぜ。」
「怪人に懐かれる?………待てよ。お前まさか」
「オレについてなんか知ってんのか?」
突然の発言にユーザは目を見開いて尋ねる。
「いや今はいい。ヤツに集中だ。」
ネイションは少し目を伏せて話をやめる。
「……だな。いやホントにせめてもう一人いればな……」
ユーザも怪人に思考を切り替えた時怪人の頭上に何かが降り注いだ。
「シュレイ!」
怪人は難なく弾いたのは手裏剣だった。
気配なく物がやって来る感覚にユーザは覚えがあった。
「ハァ〜全く、どこで道草食ってんだぁ?」
耳元に声が聞こえる。
「まさかその声……キンノミヤか!?」
ユーザの後ろにはキンノミヤが欠伸をしながら立っていた。
「帰るのが遅いと思って槍をやった後それでも遅いから気配を消して観察していたら、超常大陸にいた。何があったんだ?」
やや呆れ顔キンノミヤは言う。
「あぁーこの槍キンノミヤがくれたのか。」
「元々オレ用の槍を改良したものだ。ってそんなことどうでもいい。話を聞かせろと、言いたいところだが………」
キンノミヤは周囲を見渡し1つ息を吐く。
「サクッと終わらせるぞ。時間は金じゃ買えないんだ。」
「あっそ。キンノミヤらしいや。」
キンノミヤは刀剣を取り出し構える。
融合怪人はユーザ達の方に突進していく。
「オレに向かってくるから、キンノミヤは背後をとれ!」
「お任せあれ!」
ユーザの読み通り怪人はユーザの方向に触腕を伸ばす。
ユーザはザッドの釣り糸を振る。
針は触腕を確かに引っ掛け怪人の体を前に仰け反らせる。そこですかさず
ネイションが懐に入り込む。
「ソレっ」
ネイションが槍を振ると槍の先が大釜の様な形状になる。
そして大きな刃で胴体ごと怪人の右腕を切り裂こうとする。鎌の刃先が右腕に接触した瞬間
「ヌルッ」
「おっとぉお前はそのヌルテカが持ち味だったなぁ。」
イエルの胴体が巻きついている右腕には刃が通らなかった。
だが怪人の意識が右側にいるネイションに移ったことで左半身に隙が出来た。
「イヤァ!」
キンノミヤが左肩に刀剣を振り下ろす。
すると
「ブゥバククラァ!」
怪人の背中から泡が膨れ出す。
「背中にも顔があるのか!」
怪人の背にはブブクラクの顔があった。そこから泡が吹き出す。
「不味い!ブブクラクは泡で相手の視界を奪う。その上自身は泡を出す事でスピードが強化される。一旦退け!」
ユーザが言った通り開始マンの周囲は泡で包まれる。ネイション既に一歩引いていたが。キンノミヤはその泡の中に包まれる。
「なっ、そんな!」
泡の中でキンノミヤは怪人に押し倒されていた。
「ブブシイィェエルルュルカ!」
「マズイ…」
目にも止まらぬ速さで繰り出された触腕はキンノミヤを地面ごと砕く。
だが周囲には一切の血痕一つ無かった。
「シュ?」
だが怪人は確かに何かを突き刺した。ハサミの方を見やると、ハサミに突き刺さっていたのはただの木だった。
「ククゥ!?」
怪人が驚いていると後ろから声が聞こえる。
「墓穴を掘ったな。」
「ザクッ!」
キンノミヤは右腕と左足を同時攻撃する。
「カアァァ!!」
2人のキンノミヤが喋り出す
「初級忍者の資格持ってるオレに密室でスピード勝負するのが運の尽きだったな。」
「おっと泡も消えた来たし戻るか…忍者である事はバレたら面倒だから」
泡が消えた頃には血を流し倒れている怪人と無傷のキンノミヤが出てきた。
「おっお前よく生きてたなぁ!」
「侍を舐めるなってね。てかそれにしても」
キンノミヤはユーザに駆け寄り
「付喪神の仕事で飯食わしてもらってる身分なのに付喪神の事であそこまで腹を立てるなんてな〜。付喪神の仕事に従事しているのに。」
「そっそれは……」
キンノミヤはユーザを横目にわざと明るい大きな声で言う。
キンノミヤが超常大陸に来た時はユーザが付喪神への不満を吐き出している真っ最中だった。
「いや勘違いすんなよ!もちろんオレはコイツらの事は好きだし信用してる。でも、だからこそ不満が際立つんだろうが!」
ユーザは慌てた口調で取り直そうと必死になるが
「えぇ〜今好きってぇ言ったよねぇ?」
「そうかそうか。信用しているか。そうかそうか。」
案の定言葉狩りを受けてしまった。
「いや言ったけど、言ったけども!!それは言葉の綾で…」
「アラアラアラ言葉の綾とかゆーとりますけどもねおたく。それってもう運命の糸は紡がれてるって事でぇでぇでぇ!………どうしたそんな疲れた顔して?怪人の戦いはまだ始まったばかりだぜ!」
リンがあおっていく。
ユーザは深く長いため息をした後キンノミヤに振り向く。
「ごめん今のナシ。オレ付喪神の事やっぱ大嫌いだわ。」
するとキンノミヤは平然と
「あっそ。じゃー付喪神の事大好きで不満も出なくなるくらい今までの何倍も働こーか!」
ユーザの肩に、満面の笑みで手を置く。
「「「それがいい!」」」
付喪神達も負けず劣らず満面の笑みで頷く。
「もうヤダコイツらー!」
ユーザがまた叫ぶ。
「いい加減にしろ衆愚共!目の前に敵がいるんだぞ!」
無駄話をするユーザ達にネイションが痺れを切らし怒る。
「そうだそうだ!サクッと終わらせるんだろ!?」
「シュルルルゥクカァ!」
「来るぞ!」
融合怪人は三人の足元に毒針を発射してきた。
三人は何とか避ける。
「うぉっ!いつの間に復活!」
「やはりな。7つの怪人の力を持っているため怪人の核も7つ。それも同時にやらねばすぐ再生するようだ。」
「一気にやるぞ!リン、ギア90!」
「やっちまうぜぇ!」
ユーザはリンに乗り、トップスピードで突っ込んでいく。
「2人は何とか動きを止めてくれ!」
「全く………神使いが荒いヤツだ。」
「物使いや人使いも荒いぞ!」
毒付きながらも2人は動き出した。
ネイションは波動を出す。
「ガァジュラルアサルル………」
怪人は必死にもがくが動けないようだ。
「ほう。従えられなくても動きは止められるか……今だ人間達!」
キンノミヤは猛スピード動き自分の残像を作り何回も空中で切り掛かる
対してユーザはリンのサドルから飛び降りて槍を構える。
「行くぞ!」
サドルからジャンプしたユーザは左腕で槍を思い切り胸に突き出す。
「イヤアァ!」
「ゼエェリャア!」
ユーザとキンノミヤが前後から頭と胴体を貫く。
「ジェガアアァ!」
怪人の体内の核が7つ爆発し、肉体は弾け飛んだ。
「よし、」
「これで決まったな。」
着地したユーザ達をバカ医者とチェンジャーが迎える。
「マンボー!マジでマンバーだよ!!」
「バカ医者……それを言うならブラボーだろ。」
「やっぱ強いんだねー。」
「お前……大丈夫そうだな。」
チェンジャーはとてもさっきまで倒れていたようには見えないほどにピンピンしていた。
「コイツ凄いぞ!毒にも傷にも強い!」
「医者のお墨付き貰っちゃったー。」
「じゃ、帰るぞユーザ。」
キンノミヤが帰ろうとユーザ手を引っ張るのをネイションが止める。
「いいよ。オレが送る。オレがお前らを巻き込んだからな。どこへ向かえばいい。」
ユーザが一歩歩み出て言う。
「じゃあ全員診療所だ。何かと体を休めなきゃだろ。」
「分かった。さっきの場所だな。」
そう言いながらネイションは鎌を振り錫杖に変えた。
「カチュバチェリ・エウルブラダァ・ルブルスネド」
呪文を唱えた後、月光が日光に番を渡しまだ寝静まっているウォータスに人物達の談笑が聞こえ始めた。