「だが2人では海へ行くには足りぬ。もう少し探さなねば。」
そう言って釣竿の付喪神はどこかへ行ってしまった。
「あぁ待ちなさい!うっ、」
ツミが追いかけようとするが床に崩れ落ちる。
「おいどうした、んなっ、」
トースも倒れる。
(人と触れてないから動けなくなったんだ。覚醒したばかりの2人は尚更辛いはず。)
「…ボクも大分辛いんだけど。」
バカ医者は状況を飲み込めずあわあわしておりとても頼めそうにない。
「あわあわアワ!あわアワ!あわあわアワアワ!」
(慌ててる時ホントにあわあわ言う人っているんだ………)
「アワアワあわあわ……あわ?泡!といえば蟹だ!新味早速たべよーっと!」
「あんなの絶対頼れない……てかボクも限界…」
床に落ちるハーズを誰かが受け止める。
「どうしたハーズ。どういう状況だ?」
ハーズを受け止めたのはユーザだ。
薬の影響か、彼の最初の頃より顔色は大幅に良くなっており、声や動きにもキレが増していた。
「待ちくたびれたよ〜」
ユーザの登場にハーズは思わず涙を流す。
「えっ付喪神も泣くの!?てかあの薬すごいかったぞ!あそこで起きてからのボーッとした感じや体の凝りとか不調全部治ったんだよ!。馬鹿と天才は何とかってやつかな?」
そう言い20メートル級の大ジャンプをかます。
空にいたのはイーグレブだ。
「え、何で飛んだの?てかアレ!」
「あぁ、こいつもオレを追ってやって来たらしい。でも楽勝。」
籠手をつけてない拳で殴ったのに一瞬で倒した。
イーグレブは上空に吹き飛び断末魔を上げる間も無く爆発四散した。
ハーズは呆然とする。
「えぇ?いっ一撃で……」
「アレはまぁ怪人でも大分弱い方だ。武器を持たないオレが半分の力も出さずに勝てるレベルのな。」
ユーザ完全復活の瞬間だった。
その後ユーザはここまでの事情を説明してもらった。
「そうか。オレが苦しんでる間にそんな事が」
「すぐあの釣竿を追おう!」
「ならならぁ〜オレっちを使ってちょ。」
中古屋の瓦礫から声が聞こえる。
出てきたのは
「……何だコレ?」
大きい輪っかが二つついた細い金属の塊が出てきた。
「まさか天上天下完全無欠最強のクロスバイクことリン様知らないちゃん?本気まじのマジwー?チョーつまらんな〜ファッファッファッwwwww」
(ナンダコイツ………)
「ってまた付喪神!?何この中古屋!」
「物語の流れにおいて都合が良すぎるだろーが!作者はラクをしようとしてないか?」
「何言うてますの?だーかーらーさーアイツを追いかけたいんっしょ?乗るの?乗らないの?どっちどーっち?」
そのクロスバイクの付喪神、リンはユーザに詰め寄り一方的に二者択一を迫る。
「いや、まぁ協力してくれるんなら有難いが………」
「キミは釣竿の事、知ってるの?」
「乗ったらおしえたげるー!」
ユーザは結局リンに乗り釣竿を追う事にした。
「これどうやって動かすんだ?」
「御託はいーっちゅの。はい出発進行ー!」
「おっとっと!コレ慣れるの時間かかるな………」
ユーザはツミとトースも連れてペダルを漕いでいく。
その頃ラブクープは
2キロほど離れたところで釣竿と話していた。
「お主女だったのか。」
「声を聞けば殿方かどうか判別できるでしょう!んもー!全く」
何処までも勝手な釣竿に対してラブクープはご立腹の様子だ。
「すまん。其方から磯の匂い……特にカニの強い匂いがしたものでつい我を忘れてしまい…」
「それは私がカニ用スプーンだからですわ。それに私は生まれも育ちも山育ちですのよ。」
「偶然か必然か我も山育ちだ!」
「とにかく早く糸を解いてくださいませ!」
「わ、わかった。」
ラブクープはやっと解放された。
その後彼女から釣竿に話を振り出す。
「そういえば貴方名前は?」
「ザッドだ。」
「貴方あの中古屋にいましたわね。まさか……」
「ほほぅ、その言い草お主もそのまさかなのか?この匂いは…今度こそ正真正銘海の男獲ったりぃ〜!」
ザッドがまた釣り糸を伸ばす。
そして間髪入れず竿事そのままどこかに行ってしまった。
「何なのですの一体……」
その頃バカ医者は
「ガリガリ君のズワイガニ味美味ぇ〜あっこのたそがれの
ガリガリ君を堪能していた。
その頃ユーザ達は釣竿を追い続けていた。
ユーザようやく二輪の運転にも慣れてきたようだ。
「このクロスバイクってのすごい楽だな!ありがとリン?」
「そうだろそうだろもっと褒めろぉ!何も出ないけど。」
「一応ベルから音は出るね。」
同乗している付喪神とも会話をする余裕も出てきた頃、空から釣竿らしき影が見え始める。
「ヤツからお出ましか。行くぜ!」
そう言うとユーザはサドルの上に立ち、そのまま車体の勢いで前にジャンプし右足を思いっきり振り上げる。
「知らないちゃんクレイジーだねぇ。」
「来い!海の男ぉ!」
「ゼェリャァア!」
2人の直接対決が始まる。
ザッドは釣り糸をユーザの足に引っ掛け、そのまま体をぐるりと回して糸を巻きつける。
「フゥン!」
ユーザも糸を手で引っ張って応戦するが糸は手にも絡まってしまう。
「フハハ。手足そのまま切ってくれるわ!」
「ならこのまま、」
ユーザは糸に構わず、ロッドにつま先を叩きつける。
そのままロッドの先端を持ち、リールに手を伸ばす。
「甘い!」
ザッドはリールを巻いて糸の緊張を強くする。
糸が手足に食い込み、腕から血が滲み力が一瞬弱まる。
その隙を逃さない。
リールを弱めてあと緩めたら、針を袖に引っ掛ける。
そのままロッドのしなりを利用し、地面に思い切り叩きつけた。
「…少しやりすぎたか。だがこの程度で死ぬ奴に海の男は勤まらグテァ!」
とんでもない衝撃がやってきた。
それはさっきロッドを蹴られた箇所だ。
立っていたのはユーザだった。
ダメージ部位を的確に突く蹴りはザッドを完全に真っ二つにする。
ユーザは言い放つ。
「じゃあお前にも務まらないな。だから諦めろ。そのかわり話は聞かせてもらう。だから命は保証するぞ。」
「……甘いな…とても……甘い。あのような蹴りを繰り出す物の言葉だと…は……思…えん…」
ザッドは気を失う。
「……かもな。」
そう言い放つユーザの目は不自然かつ無意識に笑っていた。
「ん…む?ここは…」
ザッドは目を覚ましたのはあの中古屋だ。
「やっと起きたか。話聞かせてもらうって言ったろ?」
ユーザはザッドを起こす。店内にはクリゴ、中古屋の店主。付喪神ハーズ、トース、ツミ、ラブクープ、リンがいた。バカ医者も何故か戻って来ていた。ユーザが最初に切り出す。
「まず付喪神達に聞きたい。お前らは何なんだ?覚醒の条件とかいろいろ聞きたい。」
ハーズが応える。
「覚醒の条件は長い年月に渡り持ち主に大切に使われる事よりも必要なのは感情だと思うんだ。ボクは記憶喪失で覚えてないけど皆は?」
バーズが促すと付喪神は口々に言い出す。
「オレが覚醒したのはクリゴを助けてぇからだな。その前から周りの音は何となく聞こえてたからだぜ。嬢ちゃんもそうなんだろ?」
次に応えたのはツミだ。
「私も確かに声は聞こえていました。聞こえていたからこそ!あの医者の言動にストレスが溜まり過ぎて、それが爆発したと同時に覚醒しましたわ。」
ツミの声は怒りが伺える。よっぽどストレスだったのだろう。
「アノ医者ってダレ?バカ医者とは言われたこと何回もあるけどなぁ。」
バカ医者は1mmも気づいていない。
「ま、まあなるほど、何かしら強い感情が引き金になると。」
「でも俺っちは違うよーん。」
次に喋り出したのはリンだ。
「ちゅーかラブクーもザッちゃんも元々喋れたんだじょ。何故なのかはワッカリッマセーン↑」
「本当か?」
「あぁ我は前からずっと海の男を探し求めていた。」
「私も買われるために黙っていましたの。まあ…あの男の前では猫を被る必要ありませんでしたが。」
「そうなのか…じゃあやっぱこの中古屋おかしいんじゃないのか!」
ユーザは店主を指差す。
「おかしいんじゃないのか!」
バカ医者は反対方向を指差す。
「いやそっち反対な」
「待て待て待て!驚きたいのはこっちだ!ワタシだってこんなだったなんて今知ったんだよ。」
そして店主は中古屋の付喪神を見て
「思い出した。確かあのぉ一週間くらい前だ。」
店主は話し始める。